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『――アリー……』
どこまでも優しい声が、なのにそれでいて熱く熱を孕んで、耳元から流れ込むと私を頭の芯まで蕩けさせる。
『こっちを見て。隠さないで、全部、見せて』
ぎゅっと閉じていた瞳を、おそるおそる開けると、すぐ目の前には、こちらを見つめている綺麗な顔。
『可愛いな、アリー』
すかさず唇がさらわれる。
また新たに口内にもたらされてきた刺激に、小さく…でもはっきりと、自分の身体が反応するのが分かった。
――もう、何度そうやって焦らされてるんだろう。
全てが初めての体験で戸惑うしかできない、そんな緊張に強張る私の身体を、もう全身くまなく愛撫され……何か企んでるかのようにも見える嘘くさいニッコリ笑顔で、『初めてなんだから、まず身体から受け身の快感に馴らしていかないと』とか言われ、肌を這い回る手と舌が、まさにからかって弄ぶかの如く、こちらの弱い部分ばかりを刺激してきて……もはや私が、その思考さえ奪われるほどの快感の波にすっぽりと飲み込まれてしまうのに、そこまで時間は要らなかった。
堪え切れず、既に何度か吐精もさせられている。
私自身の出したもので潤わされていた、その繁みのもっと奥の窄まりには、既に指が何本か差し入れられていて、ついでに、しっかり部屋に用意されていたらしい香油なんてものまでタップリと塗り込められて、絶えずくちゃくちゃと滑った音を立てては、その中を甘く優しく苛んでくれている。
それだけで、もうすぐにでもまた達してしまいそうになっているというのに……なのに、まだ決定的な刺激は与えてくれない。
唇や舌が、全身の敏感な部分を、ただ柔らかく嬲っているだけで、達してしまいそうなところにまで持ち上げては、それ以上をくれない。
『シャルハ様ぁ……!』
呼ぶ声に切迫した色を響かせて、もう涙でぐちゃぐちゃになった顔を、まさに縋るかのような眼差しを向けるしか、もう私には他に何もできない。
『――もう欲しい、アリー?』
『ください……もっと、ちゃんと……!』
『「ちゃんと」? 何を?』
『もう、意地悪しないでぇ……!』
『言ってくれなきゃわからないよ、アリー』
『だから、ちゃんと……! ちゃんと、触ってぇ……!』
『触るだけでいい?』
『やだ……! ちゃんと触ってくれなきゃヤだってばぁ……! もう、ちゃんとイかせてぇっ……!』
もう頭は蕩けて何も考えられなくなっていて、ただ達したいあまりに必要な快感だけが欲しくて、恥ずかしげもなくそう泣きながら子供のようにダダをこねてしまった。
『仕方ないな……私も、もう限界だ』
そんな呟くような言葉と共に、窄まりから差し入れられていた指が抜かれて、また更に大きく脚を開かれる。
開かれた脚の中央、その解されてどろどろに蕩けている部分の入口に、もう既に大きく立ち上がっていた、その先端を添えられた。
『すぐに、もっと気持ちよくしてあげるから』
そうして、その入口をこじ開けられて、ゆっくりと、その大きくて太いものが私の中に押し入ってきて―――、
――そこで唐突に目が覚めた。
「…ちょっと待て」
股間の違和感に掛布を持ち上げて中を覗くと、案の定。
「やっぱりか……」
自分のそれが、夜着の布地までをも大きく押し上げて屹立していらっしゃるではないか。
「ああ、もう、そう寸止めで目が覚めちゃうからー……!」
どうせなら挿入後までキッチリ夢に見させてもらえたら、こんな中途半端なことにはなっていなかっただろうに。――まあ、でも、その場合は、こっそり下着を洗わなければならない情けなさに襲われていたことだろうが。
「とにかく、これ何とかしなきゃな……」
タメ息を吐きつつ、夜着の裾を胸までたくし上げると、下着もずり下げて、剥き身のそれを引きずり出した。
そのまま、ゆっくりと指を動かす。
「あ、ぅんっ……!」
すぐに気持ちよくなってきて、自然と喉の奥から声が洩れてきた。
『――そう、上手だよ、アリー』
ふいに耳の奥に甦ってきた声に、より一層、快感も高まる。
――だって私は、こういうことまで、あのひとに、教わっちゃったんだから……。
『初めてなのは分かっていたが……まさか、これまで自慰すらしたことがなかったなんて……』
どんな罠だ? と、呆れたような声までもが思い出される。
それに、『だって仕方ないでしょう』と、その時の私は、恥ずかしさのあまり赤面しながら、そう膨れっ面で返したものだ。
『女の私に、誰もこんなこと教えてはくれなかったし……訊ける人も居なかったし……』
『しかし、朝起きたら勃っていたことくらいあるだろう? そういう時は、どうしていたんだ?』
『収まるまで放っておきました』
『――放っておいて収まるものなのか、それは……?』
『難しい本を読んでみたりとか、別のことをして気を紛らわせていれば、どうにかなりましたよ。幸い女性の衣装は、勃ったままにしておいても見た目にはさほどわかりませんしね』
『それはそうだろうが……とはいえ、そうやって溜め込んでばかりいたら、夢精したりはしなかったか?』
『たまにありましたが……それはさすがに乳母にも気付かれまして、でも、生理現象だから病気などではないし気にしなくていい、と言われたので、じゃあ別にいいかと、やはり放っておきました。たまに下着を汚すだけのことなら、そこは月経とでも思っておけばいいか、と』
『何ていうか……君は逞しいな、色々と……』
どうりで男の身ながら二十五年間も女として生きてこられたわけだな、と、そこで何だか妙な納得のされ方をしてしまった。
『…ならば今後のためにも、そのやり方くらいは憶えておかないとな』
そして、いきなり身体を持ち上げられて、後ろ向きに、その膝の上に座らせられる。
『な、なんですか……!?』
『男として生きていく以上は、これは絶対に必要なことだからな』
ふいに私の手を取ったかと思うと、座らせたままで脚を大きく開かせて、その中心に立ち上がっていたそこに添えさせた。
『ほら、ちゃんと手を動かせ』
『ちょっと、何を……!』
そこに添えた私の手を、また更に上から大きな手が覆うようにして、無理やりのように動かされる。
自分の手が、指が、立ち上がったそれを這い回るたびに、じくじくとした何かが湧き上がってくるような……ものすごい変な気分になる。
『朝勃ちした時くらい、こうやって自分で触って慰めてやれ。これからは女装が出来ないんだから、そのまま放っておいたら外にも行けないぞ。勃起したまま歩き回って誰かの目にでも触れさせようものなら、すぐに変態扱いされてしょっぴかれるからな』
『うー……それはさすがに嫌ですー……』
『だったら、文句言わずにやれ。ちゃんと触って、自分が気持ちいいと思う部分を見つけてみろ』
『でも……こんなの、恥ずかしいです……』
『馬鹿だな。そもそも恥ずかしいことだから感じるんじゃないか』
まさに面白がっているような口調で言われて、更には、からかうように背後から耳を舐められる。
『ふひゃあんっ……!!』
『そうだな……やはり、敏感なのはココだな』
そして、ふいに勃起した先端部分、先走りに濡れているそこへ、ぐりっと指が差し入れられた。
『う、にゃああああっ……!!』
途端、びりっとしたような何かが全身を走り抜ける。
触れられたそれ自体も、まさに全身を震わせるかのように、ぴくっと大きく跳ね上がった。
『そこ、気持ちよかったか?』
『わ、かん、ないっ……!』
『だったら、もっとしつこくやってみればいい。――ほら、手が止まってる』
耳元で囁かれ、息を吹きかけられて、舌でまで舐められて。
その片手は、相変わらずその先端で指をぐにぐに動かしているまま、離れてはくれないし。
もう一方の片手は、私の乳首をくりくり弄りまくってくれちゃってるし。
――それだけで、もう、どうにかなっちゃいそうなのに……!
そのうえ、自分の手でそれを扱くなんてことまで……もはや自分がどうなってしまうのかわからなくて、ただ怖いだけじゃないか。
目に涙まで浮かべて震えているだけの私を、相当に見かねたものか、やがて『仕方ないな』という呟きと共に、その先端を弄んでいた手が、ゆっくりと下に降りてきた。
『ならば、まずは感じてみろ』
ゆっくりと、その手が大きく上下に動かされる。
その速度が徐々に上がっていくたびに、私の息も乱れてゆく。
それをしながら、思い出したように耳を甘く噛み、舐め上げて、そして乳首を弄ばれる。
そうやってもたらされる刺激に、私が抗えようはずもなく―――。
『――今度は自分の手でやってごらん』
「あ、はっ、ぅんっ……!」
あの時にされた手の動きを、そして感じた熱い吐息を、伝わってきた体温の熱さを、思い出しながら私はそれを絶頂に導く。
「もうっ……こんなこと、絶対に、忘れたり、しない、の、にっ……!」
『――ほら、イッていいぞアリー』
耳の奥で響くその声に、促されるまま私は精を吐き出した。
荒く弾む息を吐きながら、身体をくの字に折り曲げて、掛布の上に突っ伏す。
「傍に居てくれないなら、夢に出てきたりなんてしないでよぅ……!」
余計に会いたくなってしまうじゃないか、と。
またタメ息を吐いて、そのままごろんと横向きに転がった。
「会いたいよぅ……シャルハ様―――」
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