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第二章。
King of...
しおりを挟む「ずいぶんと…積極的だね?」
「…は?」
何を言ってるんだと怪訝な表情を向けると、「これ」と僕に掴まれたままの腕を指差した。
「あ…、悪い、じゃない。私としたことが申し訳ございません」
ロイに与えられた設定を思い出し、今更ながら淑やかに男の手を離した。
「共の者と間違えて手を引いてしまったようです。ご迷惑をおかけいたしました」
精一杯の裏声を出して、男に頭をさげた。
あとはここを立ち去るだけだ!!
「待って」
男は壁に腕をついて、僕の進路を妨害してきたじゃないか。
間違えた僕が悪いけど、何の用なんだ。
にしても、上背がでけえ男だ、ロイよりちょっと高いくらいか。
「あの…?私、共の者を探さなくてはなりませんので…」
「ねえ、君はどこから来たのかな。少しだけ俺と遊んだりしないかな?」
「申し訳ありませんが…」
男の顔は徐々に近づいて、もはや腕の中に閉じこめられる系の壁ドンの体勢だ。
やたら甘ったるい香気を振りまいてんのもコイツなのだろうか…、女の子ならポッと頬を染めてもおかしくないだろうが、残念だったな僕は男だ。
「緊張してるのかな、ね、少し遊ぼう?」
と、考え事をしていたら緊張していると勘違いされてしまった。
そして、腰に手を回され、鼻先が触れそうなほどに引き寄せられた。
「綺麗な瞳だね、はじめてみる虹彩だ…とても珍しい。ずいぶん遠い場所から来たのかな?」
「いや、あの、離して…」
おい、ロイ!顔は見られないんじゃなかったのか!
アホほど覗き込まれてるぞ!!
それにコイツしつこくて面倒くさいぞ!!!
腕を思い切り突っ張らせても身体の距離が離れない、僕の力が弱いのか…コイツが馬鹿力なのか。
「君…、女の子じゃないね?柔らかくない…。何故、顔を隠しているの?」
背中あたりをさわさわと撫でられて、ゾゾッと背筋に悪寒が走る。
男だとバレているなら開きなおろう。
「わかってんなら離せよ。男の腕の中にとどまる趣味はない」
「ん~、もうしようかな?」
「どうしもしない、とっとと離せ」
男の唇が僕の顔を覆うヴェールを咥え、躊躇いなく引き抜いた。
「な、お前!」
「凄いね…これは…隠すのも無理はない。悪い人に連れ去られてしまうよ?」
おおお、何だ、何なんだ!
King of話が通じない人だ!間違いない!
「人の話を…、聞け、よっ!」
「申し訳ないけれど…、俺はね美しい物が好きなんだ。そこに性別は瑣末な問題でしかないよ」
「僕はっ、イヤ、だッ!!」
「君は、おうちに連れて帰ろうかな?」
「人の話をっ、聞けッッ!」
魔法は使えないし、力も叶わない。
急所でも蹴り上げて逃げるかと思案したところで、男の腕は掴みあげられた。
「ロイ!!」
救世主ロイが現れた!
「すみませんが、この方を離していただきたい」
「おや…、騎士様の登場かな?残念、タイムオーバーだね?」
男が開放すると、ロイは僕を背中に隠した。
ロイの背中は何とも頼もしくて、それに比べて僕は何とも情なし…、トホホだ。
「おや、俺も迎えが来たようだね。次は引く腕を間違えないようにね?」
男はそう口にしながら去り際に僕の手を掬い上げて、手の甲に唇を押し当てた。
「なっ!!」
「縁があれば、またね?」
細道から覗く大通りには、男の言う通り数人のお迎えが見えていた。
「何だあいつ…どっかのボンボンか」
手の甲をアオザイにゴシゴシと擦りつけていると、ロイは溜息混じりに僕を見た。
「こんなに混み合うとは思っていなかった。はじめからこうしていれば良かった」
言うなり僕の手を取り指を絡めて握りしめた。
所謂…恋人同士つなぎと言うやつだ。
何だロイめ、恥ずかしいことをするヤツだ。
ロイの顔を見上げると、フードの隙間から頬を染めているのが見えた。
「照れるなら、するなよ。恥ずかしいヤツだな」
「…アキラも真っ赤だぞ」
照れ隠しについた悪態は、まさに墓穴だった。
それから手をつないだままマーケットを見て、カルナヴァル名産の肉料理やフルーツを夕食に買い込んで、屋台のオープン席に並べて少しだけ贅沢をした。
スパイシーな料理はどれも美味しくて、すっかり陽も落ちたアラビアンナイトの雰囲気を惜しみなく楽しんだ。
そしてまた手をつなぎ厩舎に戻った。
宿泊施設もあるけれど、厩舎に預けてあるソリに宿泊するのも普通のことらしい。
キャンプでキャンピングカーに泊まるようなものだろうな。
ソリに乗り込もうとしていると、守衛から声をかけられた。
「おかえりなさいませ、手紙を預かっております」
「ご丁寧に…」
ロイが受け答えると、封蝋のされた何だかちょっと立派な封筒を手渡された。
守衛は頭を下げ去っていった。
「…ロイ?どうした?」
口が真一文字だ。これは難しい顔をしているに違いない。
「中に戻ろう」
ドームの中に入ると、ロイは手紙を見つめて盛大な溜息をついた。
「面倒なことになったな…」
一体その手紙が何だと言うのだろうか…。
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