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第二章。

結託の締結。

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「察しが良くて何よりだね?僕はね自分の国を作りたいんだ。カルナヴァルではなく、自分のね?」

察しが良いと褒められたばかりだけれど、カラムの言わんとしていることがわからない。
国?作る?どうやってだ?
僕達に国作りを手伝えとでも言い出すのだろうか…。
王子の我儘に付き合えるほどヒマじゃないんだが。

「なるほど…」
「え、どゆこと…」
「この国を…自分の国にすると?」
「え…」

まさかのこの国だった!
奪うつもりか!
僕を置いてけぼりに2人の話は続いた。

「そうなるね。僕には弟もいるんだ。王位継承権第一位を譲っても良いくらいには優秀な子でね?」

要は、この国を我が物にするために協力しろと言うことだった。
すでにシナリオは出来上がっていて、たまたま運悪く?そのタイミングで?僕達がチュベローズへ訪れた?ということらしい。
真相は…わからないけれど、シナリオに勝手に乗せられた臭はプンプンする。

「簡単だ、クーデターだよ。内通者の手引でね、すでに内偵も送り込んでいるんだ」
「しかし…」
「騎士様の話し方、素に戻してもらって構わないよ。ここは僕の国ではないし、第一、丁寧な言葉遣いと射抜くような視線はあまりにもアンバランスだよ?」

カラムから王族しかりとした空気感は抜けて、口元には軽薄さが滲んだ。

「了解した。カラム、俺のことはロイと呼んでくれ」
「ありがとう、ロイ」
「て、俺達への見返りは何だ…」
「君達…というよりも神子を手に入れたがっている男が1人この国にいる」
「僕?」
「正確には、神子とは提示はされていない。生捕りの懸賞金がかかっているんだよ。見てごらん」

手渡された1枚の紙には、僕の美しさの1/4しか再現がされていない似顔絵もどきが描かれていた。

「似てないぞ…、僕はもっと美しい」
「ははっ、そうだね?同感だ」

カラムは肩を震わせて笑っている。
そして更に1枚手渡された。

「…………」

絶句だ、1枚目とはまるで比べ物にならない。
カメラアプリのツールでイラスト加工をしたような僕が描かれていた。

「どこのどいつがアキラを…」
「1枚目はどこかの絵描きが、2枚目はこの国の絵師が描いたものだよ。探し人はよほどアキラが欲しいようだ。胸が苦しくなるほど気持ちはわかるけれどね?」
「……、それで…僕達のメリットは?」
「追手の永久幽閉、もしくは処刑。それに神子の保護を提示するよ?」
「保護だと…?」

ローブの下のロイが不愉快丸出しだ。
カラム…触らぬロイに祟りなしだぞ…。
それにさらっと処刑って言ったぞ!恐ろしい!!

「ロイ…最後まで聞くものだよ。正確には保護下に置く、だよ。我が大陸サールジオでは神子への手出しは一切させないと誓おう」
「な…、そんなことが?」
「可能だよ、僕を誰だと?カラム・カルナヴァル・サルジオ、だよ?」

なんてことだ、カラムに後光が差して立派な人に見えてきた!
王族すげえ!

「良いだろう。ただし追加条件がある。今後アキラに触れることを許さない」

カラムは片眉を吊り上げた。
そんな表情もできるのか…、これもまた別人のように見える。

「頷くわけがないだろう?調子にのるなよ、ロイ」

おおおお…、見えるぞ!僕には見える!
火花がバッチバチだ!!!
ここは僕が場を収めるしかないだろう。

ちょぴっとだけ背筋をピンと伸ばした。

「おい、僕を無視するな。カラム、追手の幽閉ならび保護にいたっては感謝する。サールジオの保護下とあれば僕も大いに魔法を使うことができるだろう」
「アキラ…」
「ただ、カラムに僕を差し出すことは生涯をおいて訪れることはない。諦めてくれ」

カラムは肩を竦めた。見慣れたポーズだ。

「代わりに、カラムの身が脅かされることがあれば力になると約束する、………じゃ駄目か?…僕、こう見えてとても強いから役に立つと思うぞ?」
「やれやれ、だね?飲んでしまえば、今後アキラに触れられないじゃないか…、それなのに縁は切れないと言うのか…とても残酷だね?」
「ロイも、それならいいよな?」
「仕方ない…」
「カラムもそれにしとけって!」
「その間に心変りもあるかもしれないしね?その提案を飲むことにするよ…」

カラムは肩を落とし、僕は内心ホッとした。
今後言い寄られることもなければ、サールジオで自由に行動できると言うことだ。

それは、この国の奴隷制度をも変えられる、ということに繋がる。

光明だ万々歳だ。

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