52 / 79
第三章。
ロイのルーツ。
しおりを挟む王宮でスパイシー夕食をいただき、大きなお風呂を堪能して部屋に戻ると、僕の長風呂に付き合いきれなかったロイがバルコニーに腰を掛けている。
果実酒の杯を両手に、僕もロイの隣に座り込んだ。
片方をロイに手渡し、さっそく本題だ。
「なあ、気になってたんどけどさ。ロイはさ、イルネージュを知ってるんだよな?」
今更感からか、ロイにしては珍しく呆けた顔をしている。
「ずっと気になってたんだけど、聞きそびれてたんだよな」
ロイは果実酒をくくっと呷る。
杯を両手で組むように握って、視線を落とした。
「話してなかったな、…俺の祖先がイルネージュ出身なんだ。あの塔の出現で故郷を追われた生き残りが、俺の祖先だけって話だ…」
「それじゃ…イルネージュには…」
「誰も見てないだろ?実際どうなったかなんてさ」
「そうだな…」
ロイはゆっくり頷いた。
「だから、イルネージュは見たことのない俺の故郷だ…」
「故郷か…」
「いつか…、自分のルーツを見てみたい…」
「いつか、じゃないぞ。もうすぐだ」
「はは、そうだったな…」
まさかイルネージュにロイのルーツがあるとは。
僕達には少なからず縁があったのか。
「それに俺の髪色と瞳は、イルネージュ特有のものらしくてな」
自身の銀色の髪を摘みながら言った。
サラサラと指の間をすり抜ける、いつもフードに隠されている綺麗な髪だ。
「だからいつもフード被ってんのか?」
「珍しいからな。目立つのはあまり好きじゃない」
「キレイなのにな」
いつも勿体ないと思ってしまう。
ん?
待てよ…待て待て…。
そういやイルネージュで、この髪色と瞳の色をしたNPCを僕は知ってるぞ…、なぜ気づかなかったんだ。
やたらと会話パターンが多い上にNPCぽくないビジュアルも相まって、GMの遊び心が加えられたとか言われてたあの…。
…いやまさか…、な?
でも、ロイはイルネージュ特有だと言うけど、僕が知るのはそのNPCのみだ…どういうことだ?
考えても答えは出ないし、もしイルネージュにあのNPCの家が無事に残っていたら、訪れてみよう。
「俺からすれば、綺麗なのはアキラだけどな」
「まあ、僕は美しいからな」
「少しアホなのが残念だけどな」
「ロイはその減らず口が残念だけどな?」
こんな軽口を叩き合って笑うのが、初対面からは想像もつかない
共にイルネージュを取り戻そうと旅を始めたことも、ロイのルーツを知ることも、巡り合わせとは不思議だ。
イルネージュを救うために僕はこの世界に来たのだと思っていたけど、きっとロイとの出会いは偶然じゃない。
僕自身まだよくわかってないけど、必ずロイをイルネージュに連れて行く。
宣言したあの時よりも、強くそう思うんだ。
10
あなたにおすすめの小説
俺の居場所を探して
夜野
BL
小林響也は炎天下の中辿り着き、自宅のドアを開けた瞬間眩しい光に包まれお約束的に異世界にたどり着いてしまう。
そこには怪しい人達と自分と犬猿の仲の弟の姿があった。
そこで弟は聖女、自分は弟の付き人と決められ、、、
このお話しは響也と弟が対立し、こじれて決別してそれぞれお互い的に幸せを探す話しです。
シリアスで暗めなので読み手を選ぶかもしれません。
遅筆なので不定期に投稿します。
初投稿です。
今日もBL営業カフェで働いています!?
卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ
※ 不定期更新です。
【8話完結】強制力に負けて死に戻ったら、幼馴染の様子がおかしいのですが、バグですか?
キノア9g
BL
目が覚めたら、大好きだったRPGの世界に転生していた。
知識チートでなんとか死亡フラグを回避した……はずだったのに、あっさり死んで、気づけば一年前に逆戻り。
今度こそ生き残ってみせる。そう思っていたんだけど——
「お前、ちょっと俺に執着しすぎじゃない……?」
幼馴染が、なんかおかしい。妙に優しいし、距離が近いし、俺の行動にやたら詳しい。
しかも、その笑顔の奥に見える“何か”が、最近ちょっと怖い。
これは、運命を変えようと足掻く俺と、俺だけを見つめ続ける幼馴染の、ちょっと(だいぶ?)危険な異世界BL。
全8話。
悲恋の騎士と姫が転生したら男子高校生だったんだが、姫は俺を落とす気満々だ
つぐみもり
BL
《第一部 翠河の国の姫は押しが強い》
かつて俺は、滅びゆく王国で姫君に忠誠を誓い、命を落とした――
……はずだったのに。
転生したら、なんで俺が男子高校生やってんだ!?
しかも、クラスの陽キャトップ・周藤智哉(すどうともや)は、どう見ても前世の姫君その人。
顔も声も、距離感バグってる性格もそのまま。
今度は身分差も掟もないからって、攻略する気満々で迫ってくるのやめてくれ!
平穏な現代ライフを送りたい陰キャ男子(元騎士)と、全力で落としにかかる陽キャ男子(元姫)の、逆異世界転生BLギャグコメディ!
「見つけたぞ、私の騎士。今度こそ、お前を手に入れる」
「イイエナンノコトカワカリマセン」
忠義も身分も性別も全部飛び越えて、今日も逃げる俺と追いかける姫(男子高校生)
《第二部 熱砂の国からの闖入者》
郁朗と智哉は、前世の想いを飛び越え、ついに結ばれた。
そして迎える高校二年生、健全な男子高校生同士として、健全な交際を続けるはずだったが——
「見つけたぞ姫! 今度こそお前を手に入れる!」
「もしかして、あいつは!?」
「……誰だっけ?」
熱砂の風と共に転校してきた、前世関係者。
千隼と翠瑶姫の過去の因縁が、また一つ紐解かれる。
※残酷描写あり
バツイチ上司が、地味な僕を特別扱いしてくる
衣草 薫
BL
理性的でクールなバツイチ上司・桐原恒一は、過去の失敗から、もう誰も必要としないと決めて生きてきた。
男が好きだという事実を隠し、「期待しなければ傷つかない」と思い込んできた部下・葉山直。
すれ違いと誤解の果てに、直が職場を去ろうとしたとき、恒一は初めて“追いかける”ことを選ぶ。
選ばれないと信じてきた直と、逃げないと決めた恒一。
二人の距離が近づくことで、直は「ここにいていい」と思える場所を見つけていく。
元ノンケ上司×自己肯定感低め部下の社会人BL。※ハッピーエンド保証。
血のつながらない弟に誘惑されてしまいました。【完結】
まつも☆きらら
BL
突然できたかわいい弟。素直でおとなしくてすぐに仲良くなったけれど、むじゃきなその弟には実は人には言えない秘密があった。ある夜、俺のベッドに潜り込んできた弟は信じられない告白をする。
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
-----------------------------------------
0時,6時,12時,18時に1話ずつ更新
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる