完璧なまでの美しい僕は僕であり、あの世界の僕ではなかった。

あしやおでこ。

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第三章。

ロイのルーツ。

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王宮でスパイシー夕食をいただき、大きなお風呂を堪能して部屋に戻ると、僕の長風呂に付き合いきれなかったロイがバルコニーに腰を掛けている。

果実酒の杯を両手に、僕もロイの隣に座り込んだ。
片方をロイに手渡し、さっそく本題だ。

「なあ、気になってたんどけどさ。ロイはさ、イルネージュを知ってるんだよな?」

今更感からか、ロイにしては珍しく呆けた顔をしている。

「ずっと気になってたんだけど、聞きそびれてたんだよな」

ロイは果実酒をくくっと呷る。
杯を両手で組むように握って、視線を落とした。

「話してなかったな、…俺の祖先がイルネージュ出身なんだ。あの塔の出現で故郷を追われた生き残りが、俺の祖先だけって話だ…」
「それじゃ…イルネージュには…」
「誰も見てないだろ?実際どうなったかなんてさ」
「そうだな…」

ロイはゆっくり頷いた。

「だから、イルネージュは見たことのない俺の故郷だ…」
「故郷か…」
「いつか…、自分のルーツを見てみたい…」
「いつか、じゃないぞ。もうすぐだ」
「はは、そうだったな…」

まさかイルネージュにロイのルーツがあるとは。
僕達には少なからず縁があったのか。

「それに俺の髪色と瞳は、イルネージュ特有のものらしくてな」

自身の銀色の髪を摘みながら言った。
サラサラと指の間をすり抜ける、いつもフードに隠されている綺麗な髪だ。

「だからいつもフード被ってんのか?」
「珍しいからな。目立つのはあまり好きじゃない」
「キレイなのにな」

いつも勿体ないと思ってしまう。

ん?
待てよ…待て待て…。

そういやイルネージュで、この髪色と瞳の色をしたNPCを僕は知ってるぞ…、なぜ気づかなかったんだ。
やたらと会話パターンが多い上にNPCぽくないビジュアルも相まって、GMの遊び心が加えられたとか言われてたあの…。
…いやまさか…、な?

でも、ロイはイルネージュ特有だと言うけど、僕が知るのはそのNPCのみだ…どういうことだ?
考えても答えは出ないし、もしイルネージュにあのNPCの家が無事に残っていたら、訪れてみよう。

「俺からすれば、綺麗なのはアキラだけどな」
「まあ、僕は美しいからな」
「少しアホなのが残念だけどな」
「ロイはその減らず口が残念だけどな?」

こんな軽口を叩き合って笑うのが、初対面からは想像もつかない
共にイルネージュを取り戻そうと旅を始めたことも、ロイのルーツを知ることも、巡り合わせとは不思議だ。

イルネージュを救うために僕はこの世界に来たのだと思っていたけど、きっとロイとの出会いは偶然じゃない。

僕自身まだよくわかってないけど、必ずロイをイルネージュに連れて行く。

宣言したあの時よりも、強くそう思うんだ。

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