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*23 事件発生! あの人と再会 *
オルレアの身体を支えながら背中を撫でていると、四十前くらいの騎士が俺の前に立った。性格の悪そうな顔である。騎士は、ふんっと腹立たしそうに鼻を鳴らし、
「なんだ、キサマは」
その視線といい、声音といい、態度といい、俺への敵意を隠そうともしない。何なんだ、この人。その真後ろで部下っぽい騎士の人が三人「ガルベス様っ」と慌てた様子。
「何って、彼の友人ですけど?」
俺よりも背が高いから見下ろすことになるのは分かるが、ジロジロ、ジロジロ。見下されている感が強い。
騎士は、職業名であると同時に爵位でもある──最低でも騎士爵ということで、人によってはもっと上の爵位を持ってることも──庶民の俺よりも上の身分だから、この態度も分からないではない。ムカつくけど。
でも、相手は俺より身分が上。対応を間違えるとオルレアに迷惑をかけることになりかねない。大人な対応を心がけるべく、すーっと鼻から息を吐いて、
「そんなことより、本当に酔っ払いの仕業なんですか? これ」
俺はタリーの台所を一瞥し、騎士へ視線を戻す。
どう見ても、酔っ払いの仕業じゃないだろう。被害に遭ったのは、閉店後。だったら、戸締りはきちんとされていたはずだ。なのに、割れた窓ガラスの破片は歩道側に落ちている。
ということは、店の中から外に向かって衝撃を与えたってことだ。入口のドアもない。
一般人の俺でも、酔っ払いの仕業じゃないだろ、って分かるって言うのに。酔っぱらいの仕業とは、怪しすぎる。犯人からわいろをもらってたりしないだろうな、コイツ。俺が疑惑の目を向けると、騎士はぐぬぬとうなり出し、
「なんだぁ!? キサマ、その反抗的な態度はっ!?」
さっと腰から下げた剣に手をかけた。とたん、周囲から悲鳴が上がる。
「ガルベス様っ!?」「おやめください!」「町中で剣を抜くなど──!」
部下っぽい三人の騎士が制止の声を上げる。
「うるさい! 案外、こいつが──っ」
「はぁ!?」何を言い出すんだ、コイツは!
思わずぎゅっと目をつぶり、オルレアを支える腕に力を入れたその時、
「こいつが何です?」
場が凍り付いた。男性の声ではあるが、それほど低い声ではない。なのに、圧倒されるほどの威圧感。
「ひいっ?!」
ガルベスの甲高い悲鳴を聞いて、俺はそっと目を開けた。オルレアを解放するため、腕の力も抜く。彼の口から、ほーっと息を吐く音が聞こえた。
振り返るガルベスは「ひぇっ!?」ともう一度悲鳴を上げて、肩を跳ね上げた。まるで絶滅した昭和の雷親父にいたずらが見つかった子供のようである。
しかし、昭和の雷親父は親父にあらず。その正体は
「チャールズさん!?」
そう。彼である。日本で見ていたホストスタイルではなく、ファンタジーっぽいデザインの制服を着ていた。ケープみたいなマントの下はロングコートで、彼も帯剣している。
マントはライトグレーで、コートはネイビー。めちゃ、カッコイイな。
「お久しぶりです。原……じゃない、フィルドさん」
にこっと笑い返してくれた有能相談員だけれども、ガルベスへ向ける視線は鋭い。っていうか、痛そう。物理的な攻撃力を持ってそうなくらい、鋭い。
「なっ、なん、なんっ……」
まるで陸に上がった魚のように口をパクパクさせるガルベス。そんな上司の姿を見て、戸惑う部下三名。そんな彼らへ、チャールズさんは笑顔で言いました。
「折るぞ?」
ナニを?
でも、それで意味は通じたらしい。ガルベスはガクブル震えだし、
「てっ撤収するぞぉ~っ!」
半泣きで、逃げた。慌てて、追いかける部下の人たち。なんて言うか、苦労してそうだな。
「え~っと……助けていただいてありがとうございました」
「どういたしまして。ところで、どういう状況なのかお伺いしても?」
知らんかったんかい。
「あ、えっと……もしかして……クロウリー……さん?」
「えっ?! オリー、チャールズさんと知り合いなの!?」
おずおずとチャールズさんに訪ねるオルレアを凝視したら、「たぶん?」という返事。どういうこと? と視線をチャールズさんに戻したら、
「出向前は、ここの常連だったんです。十日ほど前にこちらに戻って来まして、落ち着いたので久しぶりにコシードをいただきに。ところで、エキザカムご夫妻は?」
なるほど。地元って言ってたもんな。こういうこともあるか。いやあ、世間って狭いなあ~、なんて思ってたら、すぐ隣からしゃっくりの音が。どうした? と思ったら、オルレアがまた涙ぐんでいた。なんか、オルレアの涙腺が崩壊したっぽい。
慌てる俺とチャールズさん。あわあわしながら、二人でウサギさんを宥めにかかるのだった。
「なんだ、キサマは」
その視線といい、声音といい、態度といい、俺への敵意を隠そうともしない。何なんだ、この人。その真後ろで部下っぽい騎士の人が三人「ガルベス様っ」と慌てた様子。
「何って、彼の友人ですけど?」
俺よりも背が高いから見下ろすことになるのは分かるが、ジロジロ、ジロジロ。見下されている感が強い。
騎士は、職業名であると同時に爵位でもある──最低でも騎士爵ということで、人によってはもっと上の爵位を持ってることも──庶民の俺よりも上の身分だから、この態度も分からないではない。ムカつくけど。
でも、相手は俺より身分が上。対応を間違えるとオルレアに迷惑をかけることになりかねない。大人な対応を心がけるべく、すーっと鼻から息を吐いて、
「そんなことより、本当に酔っ払いの仕業なんですか? これ」
俺はタリーの台所を一瞥し、騎士へ視線を戻す。
どう見ても、酔っ払いの仕業じゃないだろう。被害に遭ったのは、閉店後。だったら、戸締りはきちんとされていたはずだ。なのに、割れた窓ガラスの破片は歩道側に落ちている。
ということは、店の中から外に向かって衝撃を与えたってことだ。入口のドアもない。
一般人の俺でも、酔っ払いの仕業じゃないだろ、って分かるって言うのに。酔っぱらいの仕業とは、怪しすぎる。犯人からわいろをもらってたりしないだろうな、コイツ。俺が疑惑の目を向けると、騎士はぐぬぬとうなり出し、
「なんだぁ!? キサマ、その反抗的な態度はっ!?」
さっと腰から下げた剣に手をかけた。とたん、周囲から悲鳴が上がる。
「ガルベス様っ!?」「おやめください!」「町中で剣を抜くなど──!」
部下っぽい三人の騎士が制止の声を上げる。
「うるさい! 案外、こいつが──っ」
「はぁ!?」何を言い出すんだ、コイツは!
思わずぎゅっと目をつぶり、オルレアを支える腕に力を入れたその時、
「こいつが何です?」
場が凍り付いた。男性の声ではあるが、それほど低い声ではない。なのに、圧倒されるほどの威圧感。
「ひいっ?!」
ガルベスの甲高い悲鳴を聞いて、俺はそっと目を開けた。オルレアを解放するため、腕の力も抜く。彼の口から、ほーっと息を吐く音が聞こえた。
振り返るガルベスは「ひぇっ!?」ともう一度悲鳴を上げて、肩を跳ね上げた。まるで絶滅した昭和の雷親父にいたずらが見つかった子供のようである。
しかし、昭和の雷親父は親父にあらず。その正体は
「チャールズさん!?」
そう。彼である。日本で見ていたホストスタイルではなく、ファンタジーっぽいデザインの制服を着ていた。ケープみたいなマントの下はロングコートで、彼も帯剣している。
マントはライトグレーで、コートはネイビー。めちゃ、カッコイイな。
「お久しぶりです。原……じゃない、フィルドさん」
にこっと笑い返してくれた有能相談員だけれども、ガルベスへ向ける視線は鋭い。っていうか、痛そう。物理的な攻撃力を持ってそうなくらい、鋭い。
「なっ、なん、なんっ……」
まるで陸に上がった魚のように口をパクパクさせるガルベス。そんな上司の姿を見て、戸惑う部下三名。そんな彼らへ、チャールズさんは笑顔で言いました。
「折るぞ?」
ナニを?
でも、それで意味は通じたらしい。ガルベスはガクブル震えだし、
「てっ撤収するぞぉ~っ!」
半泣きで、逃げた。慌てて、追いかける部下の人たち。なんて言うか、苦労してそうだな。
「え~っと……助けていただいてありがとうございました」
「どういたしまして。ところで、どういう状況なのかお伺いしても?」
知らんかったんかい。
「あ、えっと……もしかして……クロウリー……さん?」
「えっ?! オリー、チャールズさんと知り合いなの!?」
おずおずとチャールズさんに訪ねるオルレアを凝視したら、「たぶん?」という返事。どういうこと? と視線をチャールズさんに戻したら、
「出向前は、ここの常連だったんです。十日ほど前にこちらに戻って来まして、落ち着いたので久しぶりにコシードをいただきに。ところで、エキザカムご夫妻は?」
なるほど。地元って言ってたもんな。こういうこともあるか。いやあ、世間って狭いなあ~、なんて思ってたら、すぐ隣からしゃっくりの音が。どうした? と思ったら、オルレアがまた涙ぐんでいた。なんか、オルレアの涙腺が崩壊したっぽい。
慌てる俺とチャールズさん。あわあわしながら、二人でウサギさんを宥めにかかるのだった。
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