90 / 104
*90 次のステップへ *
タリーの台所は、閉店した。とはいえ、すぐに屋台営業を始めることはできない。まずは、店を片付けなくてはならない。次は雑貨店が入るので、すべて撤去。魔道具関連は、マッキーさんが回収してくれた。
その他もほとんどの物をリサイクル業者に回収してもらう。手元に残ったのは、タリーの台所のレシピ本の他、包丁やまな板などの道具類。これらの物は、オルレアがアリアンポートでも使いたいとのことなので、オルレア専用として使うことにする。
さて、屋台営業のほうだ。大きさは、縁日などで見かける屋台を二台並べたくらい。こっちの基準でも、やや大きめになる。テイクアウトだけでなく、その場でも食べられるようにするので、どうしてもこれくらいの大きさは必要なのだ。
「は~……朝晩は冷え込むようになってきたな」
「そうですね。来月あたりになったら、雪も降りますよ」
「え? マジ? 積もる?」
「うっすら、雪化粧って感じですか。山のほうに行けば積もるみたいですけど、ここらあたりだと、積もってもせいぜいこれくらい、かな」
ボブが言うこれくらいとは、五センチくらいだった。
「ガキの頃は、雪が積もると嬉しくてはしゃいだもんですけど、大人になった今は迷惑でしかないですね。寒いし、滑るし、溶けたらべしゃべしゃになるし……」
「そうだなあ」
分かる。よく分かる。俺がうなずいていると、
「特にダンジョン帰りはサイアクですよ。大抵は震えながら帰らないといけなくて……」
はーっと大きなため息をつくボブ。
帰りは雪が降ってるかもしれないからと、防寒具を荷物の中に入れておく余裕のある探索者なんて、ほんの一握り。たいていの探索者は、そんな余裕はないらしく、小走りで帰りながら寒さをごまかすんだそうだ。
「疲れてるだろうに小走りとは、大変だねえ」
「いや、まったく。エルナトさん、本格的な冬の前に出てこれたらいいんですけどね」
「どうなんだろうねえ」
そこらへんのことは、まったく知らない。
エルは、半月ほど前に、いつぞやのアマゾネスに引きずられて、ダンジョンへ行っている。タリーの台所の最後に立ち会うんだ、参加しねえとわめいていたが、アマゾネスには勝てなかった。
よほどのことがない限り、女性には逆らわないほうが賢明だと思うぞ。俺は。
ところで、屋台のメニューだが一番のお得意さんになるであろう、大工の人たちから
「肉! 肉が食いたい」とリクエストをもらってしまった。
「朝から?」
「肉食系の獣人族は食うぞ。味も濃い目のほうが好まれる」
なるほど。言われてみれば、マートルの言う通りかも。それで思いついたのが、丼ものである。ライスも問題ないとのことだったので、焼肉丼を提供することにした。オニギラズの具材とかぶるので、仕込みは一緒だしな。
というわけで、テイクアウト用にオニギラズと肉まん、あんまん。その場で食べられる系として、焼肉丼。売れ行きによっては、カツ丼やからあげ丼なども考える。
ガッツリ系はちょっと……という人には、クロックマダムかクロックムッシュ。野菜多めの日替わりスープ。飲み物はカヒエと紅茶、ジンジャーティーを用意。
ランチはもちろんコシードである。それから、その日の仕入れによって、大皿料理を用意するつもり。唐揚げやフライドポテトなどは常時用意するつもりでいるが。
あれもこれもと欲張れるのも、すべて〈収納〉があるおかげだ。いい買い物をしたな、俺。
とはいえ、俺の〈収納〉頼みでは困る部分もある。俺が調理をしているときに、アレください、コレ出してください、と言われることだ。
そのあたりのことについては、某小学生男子のように「マキえ~もぉ~ん!」と心の中で呼びかけつつ、マッキーさんに相談した。彼に相談すれば、道具回りのことはたいてい解決する。
相談しといてなんだけど、マジであの人、おかしいからな。
こっちが「こういうのがほしいんだけど」と言うと返って来るのは、「あるよ~」か「作れるよ~」のどっちか。あの頭ン中、マジでどうなってんだろうな。
おまけに納期の短いこと、短いこと。依頼した屋台が、一か月ちょいで納品されたのには驚いた。屋台を作ってくれた大工さん曰く、魔道具を作るのがめちゃくちゃ早いんだそうだ。
「そのくせ、この品質だろ? ありゃ、とんでもねえ、バケモン錬金術師だわ」
と、大工さん。素人の俺でもそう思うくらいなんだから、マッキーさんのすごさは、チート系マンガの主人公かっ! っていうくらい、抜きんでているのだと思う。
でも、そのバケモンクオリティーが、俺たちには必要なんだよな。屋台用に作ってもらったのは、大容量の収納スペースを備えた棚と冷蔵、冷凍庫。コンロと蒸し器、トースター。
何より俺を喜ばせたのは、レジと会計ソフトもどきの存在である。
「はわわわわ。マジ? これ、マジなの?」
「POSレジもどきだねえ。将来的には無線でデータを飛ばせるようにしたいけど、今はまだこのUSBもどきの抜き差しでしか、データを移動させられないんだ。パソコンもどきも会計ソフトもどきオンリーだしねえ」
そんな贅沢、言わないから! これだけで、事務仕事がめちゃめちゃ楽になる! 俺の最大の懸念事項が、今この時をもって解決したのである!
マジで、マッキーさんを拝む日々である。
その他もほとんどの物をリサイクル業者に回収してもらう。手元に残ったのは、タリーの台所のレシピ本の他、包丁やまな板などの道具類。これらの物は、オルレアがアリアンポートでも使いたいとのことなので、オルレア専用として使うことにする。
さて、屋台営業のほうだ。大きさは、縁日などで見かける屋台を二台並べたくらい。こっちの基準でも、やや大きめになる。テイクアウトだけでなく、その場でも食べられるようにするので、どうしてもこれくらいの大きさは必要なのだ。
「は~……朝晩は冷え込むようになってきたな」
「そうですね。来月あたりになったら、雪も降りますよ」
「え? マジ? 積もる?」
「うっすら、雪化粧って感じですか。山のほうに行けば積もるみたいですけど、ここらあたりだと、積もってもせいぜいこれくらい、かな」
ボブが言うこれくらいとは、五センチくらいだった。
「ガキの頃は、雪が積もると嬉しくてはしゃいだもんですけど、大人になった今は迷惑でしかないですね。寒いし、滑るし、溶けたらべしゃべしゃになるし……」
「そうだなあ」
分かる。よく分かる。俺がうなずいていると、
「特にダンジョン帰りはサイアクですよ。大抵は震えながら帰らないといけなくて……」
はーっと大きなため息をつくボブ。
帰りは雪が降ってるかもしれないからと、防寒具を荷物の中に入れておく余裕のある探索者なんて、ほんの一握り。たいていの探索者は、そんな余裕はないらしく、小走りで帰りながら寒さをごまかすんだそうだ。
「疲れてるだろうに小走りとは、大変だねえ」
「いや、まったく。エルナトさん、本格的な冬の前に出てこれたらいいんですけどね」
「どうなんだろうねえ」
そこらへんのことは、まったく知らない。
エルは、半月ほど前に、いつぞやのアマゾネスに引きずられて、ダンジョンへ行っている。タリーの台所の最後に立ち会うんだ、参加しねえとわめいていたが、アマゾネスには勝てなかった。
よほどのことがない限り、女性には逆らわないほうが賢明だと思うぞ。俺は。
ところで、屋台のメニューだが一番のお得意さんになるであろう、大工の人たちから
「肉! 肉が食いたい」とリクエストをもらってしまった。
「朝から?」
「肉食系の獣人族は食うぞ。味も濃い目のほうが好まれる」
なるほど。言われてみれば、マートルの言う通りかも。それで思いついたのが、丼ものである。ライスも問題ないとのことだったので、焼肉丼を提供することにした。オニギラズの具材とかぶるので、仕込みは一緒だしな。
というわけで、テイクアウト用にオニギラズと肉まん、あんまん。その場で食べられる系として、焼肉丼。売れ行きによっては、カツ丼やからあげ丼なども考える。
ガッツリ系はちょっと……という人には、クロックマダムかクロックムッシュ。野菜多めの日替わりスープ。飲み物はカヒエと紅茶、ジンジャーティーを用意。
ランチはもちろんコシードである。それから、その日の仕入れによって、大皿料理を用意するつもり。唐揚げやフライドポテトなどは常時用意するつもりでいるが。
あれもこれもと欲張れるのも、すべて〈収納〉があるおかげだ。いい買い物をしたな、俺。
とはいえ、俺の〈収納〉頼みでは困る部分もある。俺が調理をしているときに、アレください、コレ出してください、と言われることだ。
そのあたりのことについては、某小学生男子のように「マキえ~もぉ~ん!」と心の中で呼びかけつつ、マッキーさんに相談した。彼に相談すれば、道具回りのことはたいてい解決する。
相談しといてなんだけど、マジであの人、おかしいからな。
こっちが「こういうのがほしいんだけど」と言うと返って来るのは、「あるよ~」か「作れるよ~」のどっちか。あの頭ン中、マジでどうなってんだろうな。
おまけに納期の短いこと、短いこと。依頼した屋台が、一か月ちょいで納品されたのには驚いた。屋台を作ってくれた大工さん曰く、魔道具を作るのがめちゃくちゃ早いんだそうだ。
「そのくせ、この品質だろ? ありゃ、とんでもねえ、バケモン錬金術師だわ」
と、大工さん。素人の俺でもそう思うくらいなんだから、マッキーさんのすごさは、チート系マンガの主人公かっ! っていうくらい、抜きんでているのだと思う。
でも、そのバケモンクオリティーが、俺たちには必要なんだよな。屋台用に作ってもらったのは、大容量の収納スペースを備えた棚と冷蔵、冷凍庫。コンロと蒸し器、トースター。
何より俺を喜ばせたのは、レジと会計ソフトもどきの存在である。
「はわわわわ。マジ? これ、マジなの?」
「POSレジもどきだねえ。将来的には無線でデータを飛ばせるようにしたいけど、今はまだこのUSBもどきの抜き差しでしか、データを移動させられないんだ。パソコンもどきも会計ソフトもどきオンリーだしねえ」
そんな贅沢、言わないから! これだけで、事務仕事がめちゃめちゃ楽になる! 俺の最大の懸念事項が、今この時をもって解決したのである!
マジで、マッキーさんを拝む日々である。
あなたにおすすめの小説
即席異世界転移して薬草師になった
黒密
ファンタジー
ある日、学校から帰ってきて机を見たら即席異世界転移と書かれたカップ麺みたいな容器が置いてある事に気がついた普通の高校生、華崎 秦(かざき しん)
秦は興味本位でその容器にお湯と中に入っていた粉を入れて三分待ち、封を開けたら異世界に転移した。
そして気がつくと異世界の大半を管理している存在、ユーリ・ストラスに秦は元の世界に帰れない事を知った。
色々考えた結果、秦は異世界で生きることを決めてユーリから六枚のカードからスキルを選んだ。
秦はその選んだスキル、薬草師で異世界を生きる事になる。
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。顔立ちは悪くないが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?
2025/09/12 ★1000 Thank_You!!
異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました
黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。
彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。
戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。
現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと!
「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」
ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。
絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。
伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進!
迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る!
これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー!
美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。
人生、逆転できないことなんて何もない!
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました
taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件
『穢らわしい娼婦の子供』
『ロクに魔法も使えない出来損ない』
『皇帝になれない無能皇子』
皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。
だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。
毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき……
『なんだあの威力の魔法は…?』
『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』
『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』
そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。
姉(勇者)の威光を借りてニート生活を送るつもりだったのに、姉より強いのがバレて英雄になったんだが!?
果 一@【弓使い】2巻刊行決定!!
ファンタジー
リクスには、最強の姉がいる。
王国最強と唄われる勇者で、英雄学校の生徒会長。
類い希なる才能と美貌を持つ姉の威光を笠に着て、リクスはとある野望を遂行していた。
『ビバ☆姉さんのスネをかじって生きよう計画!』
何を隠そうリクスは、引きこもりのタダ飯喰らいを人生の目標とする、極めて怠惰な少年だったのだ。
そんな弟に嫌気がさした姉エルザは、ある日リクスに告げる。
「私の通う英雄学校の編入試験、リクスちゃんの名前で登録しておいたからぁ」
その時を境に、リクスの人生は大きく変化する。
英雄学校で様々な事件に巻き込まれ、誰もが舌を巻くほどの強さが露わになって――?
これは、怠惰でろくでなしで、でもちょっぴり心優しい少年が、姉を越える英雄へと駆け上がっていく物語。
※本作はカクヨム・ノベルアップ+・ネオページでも公開しています。カクヨム・ノベルアップ+でのタイトルは『姉(勇者)の威光を借りてニート生活を送るつもりだったのに、姉より強いのがバレて英雄になったんだが!?~穀潰し生活のための奮闘が、なぜか賞賛される流れになった件~』となります。
最弱Sランク冒険者は引退したい~仲間が強すぎるせいでなぜか僕が陰の実力者だと勘違いされているんだが?
月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
冒険者のノエルはSランクパーティーの荷物もちだった。
ノエル自体に戦闘能力はなく、自分のことを足手まといだとすら思っていた。
そして、Sランクになったことで、戦うモンスターはより強力になっていった。
荷物持ちであるノエルは戦闘に参加しないものの、戦場は危険でいっぱいだ。
このままじゃいずれ自分はモンスターに殺されてしまうと考えたノエルは、パーティーから引退したいと思うようになる。
ノエルはパーティーメンバーに引退を切り出すが、パーティーメンバーはみな、ノエルのことが大好きだった。それどころか、ノエルの実力を過大評価していた。
ノエルがいないとパーティーは崩壊してしまうと言われ、ノエルは引退するにできない状況に……。
ノエルは引退するために自分の評判を落とそうとするのだが、周りは勘違いして、ノエルが最強だという噂が広まってしまう。
さらにノエルの評判はうなぎのぼりで、ますます引退できなくなるノエルなのだった。
他サイトにも掲載