33 / 41
二十八話 ~色々と怖い話~
しおりを挟む「なんか怖い話ない?」
サンドイッチをはむついていた響の前で、細莉はそんなことを言い始めた。
お互いに色々とぶっちゃけたせいか、この二人はあれからお昼を度々一緒にする仲になっていたりする。
出会いと敵対と和解の場である階段に腰かけながら、響はジトっとした目で細莉を見る。
「いきなり何?」
「いや、夏っぽいことしようかなって」
「しようと思ったなら自分からしなよ。どうして僕に振るのさ」
「だって私がやると下手糞って言われるんだもん」
そう言いながら、細莉はコホンと咳払い。
あぁ、実演するんだ。と響は律儀に背筋を伸ばして細莉の話を聞く姿勢に入った。
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああ‼」
ビクゥ……! と響の肩が跳ね上がる。
両手を開きながら、いきなり絶叫して変顔をした細莉は、びっくりして目を見開く響を見て、不安そうに、それでいてちょっと何かを期待するような目で響に感想を求めた。
「どう?」
「なにが⁉」
「今の怖いやつ」
「……いきなり奇声あげる怖い奴っていう何かのとんち?」
「え? ホラーゲームとかで怖いシーンってあんな感じじゃない?」
「……怖い話と怖いシーンをごっちゃにしないでよ。別物だから」
どうやら怪談系の話ではなく、ホラーゲーム的な恐怖を参考にしたらしい細莉の想定外の怖い話に若干心臓をバクバクさせながら、響は持っていたサンドイッチを口に頬張ると手についたパン粉をはたいて落とす。
「怖い話って言うのはちゃんとストーリーがあって、だんだん怖くなっていくのが醍醐味だろう? いきなり叫ばれたって、君が変な奴なんだって印象持って終わりだよ」
「ぶ~、ならやってみてよ」
正直響も怖い話は得意ではない。
子供の頃からそういう番組も見なかったし、ホラーゲームにしても蓮が好きでやってるのをたまに見ていたせいで少し知っているくらいで知識があるわけではない。
だから、世間的には有名な、言い方を変えればありきたりな怪談話すらも始まりから終わりまでをきちんと知らないのだが、確かに今の話の流れでは見本を見せろと言われても仕方がない。
困った顔になる響だったが、それでもオチまで持っていけるような話なんてないことに変わりはない。
けれど、適当なうんちくを言ってしまった手前、ここを適当にはぐらかしてもまた細莉は同じようなことを聞いてくるだろう。
時間を稼げば怖い話を見て、それを覚えて話すという手段も取れるのだが、大前提として怖い話など見たくも聞きたくもないのだから、ここで時間を稼いでも得がない。
だから、響は少し思い切って、自分が経験した話に嘘を交えながら怖い話風に仕上げて話してみることにした。
怖い話は噺家がする。
そんなイメージがあった響はせめて雰囲気から入ろうと、いつもよりもゆっくりとしたペースで、それでいて一語一語をはっきりと発音しながら話を始めた。
「これは僕が実際に経験した話です」
「おぉ……それっぽい」
「蒸し暑い夏の夜でした」
実話という部分に興味を引かれた細莉は食い入るように響を見ている。
その反応に満足した響は話の続きを語り始める。
「いきなりヘラった僕は泣きながら夜の街を徘徊していて──」
「あれ? オチから始まった⁇」
水を差された響が素に戻る。
「どこがオチなのさ!」
「ヘラって泣いている女が夜の街を徘徊してるところ!」
「それは蓮に構ってもらおうと家出たけど、夜中だからもう寝てて感情の行き先がなくなったってだけで……!」
「十分ホラーだから‼」
ぎゃいぎゃいと少女二人の言い合いは続く。
そんな声を遠くで聞いている少年が一人。
「あいつらいつの間に仲良くなったんだ?」
何やら険悪な関係に見えた二人が姦しく、それでいて仲良さげに騒ぐ様子に蓮は不思議そうな顔をするのだった。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件
遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。
一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた!
宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!?
※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。
彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。
遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。
彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。
……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。
でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!?
もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー!
ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。)
略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる