不器用だけど…伝わって‼

さごち

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二十八話 ~色々と怖い話~

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「なんか怖い話ない?」

 サンドイッチをはむついていた響の前で、細莉はそんなことを言い始めた。
 お互いに色々とぶっちゃけたせいか、この二人はあれからお昼を度々一緒にする仲になっていたりする。
 出会いと敵対と和解の場である階段に腰かけながら、響はジトっとした目で細莉を見る。

「いきなり何?」
「いや、夏っぽいことしようかなって」
「しようと思ったなら自分からしなよ。どうして僕に振るのさ」
「だって私がやると下手糞って言われるんだもん」

 そう言いながら、細莉はコホンと咳払い。
 あぁ、実演するんだ。と響は律儀に背筋を伸ばして細莉の話を聞く姿勢に入った。


「ぎゃあああああああああああああああああああああああああ‼」


 ビクゥ……! と響の肩が跳ね上がる。
 両手を開きながら、いきなり絶叫して変顔をした細莉は、びっくりして目を見開く響を見て、不安そうに、それでいてちょっと何かを期待するような目で響に感想を求めた。

「どう?」
「なにが⁉」
「今の怖いやつ」
「……いきなり奇声あげる怖い奴っていう何かのとんち?」
「え? ホラーゲームとかで怖いシーンってあんな感じじゃない?」
「……怖い話と怖いシーンをごっちゃにしないでよ。別物だから」

 どうやら怪談系の話ではなく、ホラーゲーム的な恐怖を参考にしたらしい細莉の想定外の怖い話に若干心臓をバクバクさせながら、響は持っていたサンドイッチを口に頬張ると手についたパン粉をはたいて落とす。

「怖い話って言うのはちゃんとストーリーがあって、だんだん怖くなっていくのが醍醐味だろう? いきなり叫ばれたって、君が変な奴なんだって印象持って終わりだよ」
「ぶ~、ならやってみてよ」

 正直響も怖い話は得意ではない。
 子供の頃からそういう番組も見なかったし、ホラーゲームにしても蓮が好きでやってるのをたまに見ていたせいで少し知っているくらいで知識があるわけではない。
 だから、世間的には有名な、言い方を変えればありきたりな怪談話すらも始まりから終わりまでをきちんと知らないのだが、確かに今の話の流れでは見本を見せろと言われても仕方がない。
 困った顔になる響だったが、それでもオチまで持っていけるような話なんてないことに変わりはない。
 けれど、適当なうんちくを言ってしまった手前、ここを適当にはぐらかしてもまた細莉は同じようなことを聞いてくるだろう。
 時間を稼げば怖い話を見て、それを覚えて話すという手段も取れるのだが、大前提として怖い話など見たくも聞きたくもないのだから、ここで時間を稼いでも得がない。
 だから、響は少し思い切って、自分が経験した話に嘘を交えながら怖い話風に仕上げて話してみることにした。
 怖い話は噺家がする。
 そんなイメージがあった響はせめて雰囲気から入ろうと、いつもよりもゆっくりとしたペースで、それでいて一語一語をはっきりと発音しながら話を始めた。

「これは僕が実際に経験した話です」
「おぉ……それっぽい」
「蒸し暑い夏の夜でした」

 実話という部分に興味を引かれた細莉は食い入るように響を見ている。
 その反応に満足した響は話の続きを語り始める。


「いきなりヘラった僕は泣きながら夜の街を徘徊していて──」
「あれ? オチから始まった⁇」


 水を差された響が素に戻る。

「どこがオチなのさ!」
「ヘラって泣いている女が夜の街を徘徊してるところ!」
「それは蓮に構ってもらおうと家出たけど、夜中だからもう寝てて感情の行き先がなくなったってだけで……!」
「十分ホラーだから‼」

 ぎゃいぎゃいと少女二人の言い合いは続く。
 そんな声を遠くで聞いている少年が一人。

「あいつらいつの間に仲良くなったんだ?」

 何やら険悪な関係に見えた二人が姦しく、それでいて仲良さげに騒ぐ様子に蓮は不思議そうな顔をするのだった。
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