私の剣は性感帯です!

桐生デンジ

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1.契約


 それは今から、約三年ほど前のことだった。
 ナルガ王国王立騎士団に入団し、師匠の元で日々剣術の腕前を磨いていた私は、ある夜奇妙な夢を見たのだ。


「若く美しき生娘よ、アナタは剣術を嗜まれているようですね。更なる力を欲しますか?」

 鮮明な夢の中で、黒いローブに身を包んだ男性は私に語りかけた。
 母の話で聞いたことがある。このようにハッキリと夢の中で人に話しかけられたなら、それはきっと悪魔の囁きであるから、決して耳を傾けてはいけないと。
 その話を思い出し、私は口を開かず、ただそこに立ち尽くしていた。

 男性は続ける。

「実は私、所謂淫魔インキュバスというやつでね。アナタがこうしてこの夢にいざなわれたということは、私にはアナタの身体にということが可能なのです。なぁに、心配は要りませんよ。ついさっき、別の女性にを一つ授けてきたところですから、アナタに手を出そうという気は今の私には少しも無いのです」

「ただ、ちょっとした遊び心から、一つアナタにやってみたいことがありましてね。これを行うことによって、アナタは今とは比べ物にならないほど鮮やかな剣術を身に着けることができるでしょう――と、ここまで私のような悪魔が話すと、どうせ魂でも捧げろなどと言い始めるのだろうと、お思いになられるのも無理は無いだろうと思います。しかし違うのです」

「アナタは毎日道場にて剣を振るっておられますね。私の術にかかれば、アナタが今悩んでおられる軽い足さばきを身に着けることや、男性のように速く重い剣戟を叩きこむことも、非常に容易となるのです。少し興味が湧いては来ませんか?」

「……先ほどから黙りこくっておられるようですが、悪魔に遭ったら無視しておけば良いと、誰かに教わったのですかね?この場所に居る限りは、私がいつでも無力なアナタに精を授けることが可能だということをお忘れにならないでいただきたい。少しくらい話を聞く姿勢を見せたって、構わないのではないでしょうか?あまりプライドの高い女性は、男性に逃げられてしまいますよ」

 早く夢が覚めないかと念じ続けていた私だったが、悪魔の誘惑から逃れることはできず、結局彼と対話をして何が目的なのか、訊くことになった。

「よくぞ訊いていただきました。先に申しておきますが、私たち悪魔は人間との契約については、一つも嘘をつくことができません。それが決まりなのです。ですから、つい疑り深くなってしまうのは分かりますが、無用な質問は控えていただけると嬉しいですね――それでは本題に移りましょう。ハッキリ申し上げますと、アナタには剣を振るう度に、性的な快感を味わっていただきたいのです。剣を振る度に生き物としての本能が疼き、得た強力な剣術はその興奮によってさらに高められるかもしれません。もっと申せば、アナタが握る剣そのものが所謂アナタの性感帯となります。見た目に変化はありませんが、どのような剣を握っても同じことです。逃げ出すことはできません。しかし、その分先ほども申したように、アナタは素晴らしく鮮やかな剣術を、代わりに身に着けることができるのです。……ふつうこんなことは悪魔の方から申し上げることは少ないですが、この契約をお断りになられたなら、私はアナタに淫魔としての本質を見せようと思っています。この言葉の意味はお判りでしょう?それほどまでに私は退屈しているのです」
「私にそんな術をかけて、何かあなたに良いことでもあるの?」
「ありますとも。アナタが振れば気持ちよくなれる剣を腰に携えて歩いている様子を観察するだけでもとても愉快な気分になれるだろうと思います……フフフ」

 悪魔は下卑た笑いを口元に浮かべた。

「さすがに趣味が悪いわね。だけどこの契約を断れば、私も淫魔の被害者になるってわけね。分かったわ。私も強さが欲しいのは確かよ。それに、その性的な気持ちよさっていうのがどんなものかは知らないけど、さらに剣術を磨けるというのならば、何も言うことは無いわ」
「ほう――思ったよりも良い返事で驚きましたよ。分かりました。それでは契約成立です……私はずっとアナタのことを見ていますよ、それではまた」

 悪魔にそう言われ、私は再び深い眠りに落ちて行った。
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