65 / 102
ルクレティウス編
063.『囚われた先で』2
しおりを挟む
すると相手はようやく顔を顰め口を開いた。
「は?」
真琴にはその反応が意外だった。どうやら言葉が通じているらしい。いや、今の「は?」がどこかの外国語である可能性も否定はできないが…。真琴はさらに一歩踏み出した。
「いや、あの、すいません。ここって日本じゃないですよね…?」
相手はさらに露骨に訝しそうな顔をした。
「いや日本って何だよ」
「え…?」
言葉が通じたことに真琴は驚いた。と同時に、にもかかわらず「日本」という言葉が通じないことに驚いた。真琴はこれ以上質問を重ねて相手に疑念を抱かせることは得策でないと判断して「すいません、何でもないです」と言って引き返した。
男は真琴の背中を訝しそうにじっと見つめてから元の通りに歩を進めた。しかしすぐに立ち止まって後ろから真琴に声を掛けた。
「おい」
びくりと肩を震わせた真琴は怪しまれないようにと意識しながらも見開いた目で相手に向き直った。
「何かわかんねえことがあんなら役所行ってこいよ」
真琴は戸惑いつつも相手が好意からアドバイスをしてくれていることを理解すると、ひとまず礼を言った。
「ありがとうございます!」
相手はさらに言葉を継いだ。
「どうせ場所わかんねえんだろ?」
素直に相手の好意に甘えることにした真琴は苦笑を浮かべた。
「はい」
相手は再び一瞬怪訝な表情をしたが近づいて来て役所への行き方を教えてくれた。真琴は厚く礼を言って男と別れた。真琴はみなのところへ戻り、今起きたことをありのままに話した。悠樹はこう言った。
「役所の様子を見てみよう」
他の三人もそれに同意した。五人は周囲の目に気を付けながら役所を目指した。役所はすぐ近くにあった。四階建てで四角くこの街で見た中ではもっとも大きな建物だった。人の出入りは少ない。役所の手前には円形の大きな広場があった。広場の石畳には所々に陥没した跡が見られた。穴こそ石で埋められていたが、そこには放射状に亀裂が走り、そこがかつて強烈な衝撃で破砕されたことを物語っていた。真琴はそれを見て呆気にとられた。
(戦いの…跡…?)
真琴は遠くに目をやった。先刻から気になってはいたが、街を取り囲むように城壁が巡らされ、その四方には物見櫓が据えられていた。真琴はその光景に急に物々しさを覚えた。やはりここはテーマパークなどではない。しかし街行く人々にはその破砕の跡を一向に気に留める様子はなかった。
そのとき、不意に真琴の意識の中を様々な光景が急激によぎった。真琴は唖然とした。妖精のように宙を舞う小さな少女。白いドレス姿の美しい女性。腰の曲がった小さな老人。白い制服姿の剣士。白い光。灰色の巨体。赤々と燃えるような夕焼けの空の下で壊れゆく街と飛び交う悲鳴。
「真琴?」
杏奈にそう呼び掛けられて真琴は我に返った。いつしか彼の呼吸は荒くなっていた。杏奈は不安そうに真琴の顔を覗き込んだ。
「だいじょぶ?」
真琴はまだ急激なフラッシュバックの余韻の中にいたが杏奈を見て小さく頷いた。
「大丈夫」
真琴は再び注意を役所に向けた。しばらくそこを注視していた真琴は言った。
「特に怪しいところはねえな」
役所には普通の市民らしき人々が特に変わったところもなく出入りしている。その表情には歓喜の色もないが悲哀の色もない。警備もいない。特に違和感は覚えない。真琴は四人の顔を順番に見た。悠樹も杏奈も翔吾も異論はなさそうだった。琢磨はまだ覚悟が定まっていないようだが問題なさそうだ。真琴は短く言って歩き出した。
「行こう」
四人はそれに続いた。入口には木製の門があったが開け放たれていた。役所というにはやはり簡素な造りに見える。五人は緊張しながら、しかし平静を装いつつそれをくぐった。建物の中に入った五人はその内部について役所というより古い欧米の映画に出てくる銀行のような印象を受けた。木製のカウンターがあって、その向こうに係員が座っており、そのさらに向こうでは役員が書類仕事をしている。いくつか窓口がある。どの窓口に行くのが適切かは案内がないためわからない。真琴は目が合った正面の窓口の女性のところへ吸い寄せられるように歩いて行った。四人もそれに続いた。女性は笑顔で迎えてくれた。
「こんにちは」
やはり言葉は通じる。真琴が挨拶を返した。
「こんにちは」
「どういったご用件ですか?」
真琴は不自然な印象を与えないように意識して返答を試みた。
「ちょっとどこへ行けば良いかわからなくて。教えていただけますか?」
女性は一瞬だけ真顔になってすぐにまた弾けるような元の笑顔に戻った。彼女はこう言って席を立って奥へ消えた。
「お調べしますね、少々お待ちください」
真琴は女性が一瞬だけ見せた真顔が気になった。きっと怪しまれたに違いない。しかし今はあの女性を信じるしかない。それに自分たちにはやましいことなどない。ただここがどこで、どこへ行けば助かるか知りたいだけなのだ。女性はなかなか戻って来なかった。所在ないまま時間が過ぎ、それにつれて不安は募った。
違和感を覚えて後ろを振り向いたときには遅かった。入口から先ほど通りで見かけたような甲冑を着込んだ男が三人入って来ていた。真琴は彼らのうちの一人と目が合った。相手は冷厳な目をしていた。彼らは真っ直ぐこちらに向かって来ていた。翔吾も悠樹もそれに気付き、遅れて琢磨と杏奈も気付いた。五人は頭が真っ白になった。真琴と目が合った甲冑の男の一人が言った。
「はい、言う通りにしてね。ちょっと来てもらうだけだから」
男には有無を言わせぬ威圧感があった。テーマパークの演者には見えない。鎧も腰の剣もおそらく本物だろう。真琴は従順を貫くことにした。彼は諸手を挙げて言った。
「わかりました」
男は脇の階段へと歩き出した。五人が付いてくることを疑ってもいない、それがさも当たり前であるかのような歩き出し方だった。五人は先に行った男に遅れまいと歩き出した。そのあとを二人の男が付いて歩いた。五人は前後を挟まれるような格好になった。翔吾以外の四人は恐怖に顔をひきつらせていた。一行はフロアの脇の階段を上り始めた。琢磨は会話に活路を見出そうとした。
「ここはどこですか? 僕た——
「うるせえいいから黙って歩け」
先ほどまで黙っていた後ろの兵士の一人が押しかぶせて言った。低く重く、迷いのない声だった。五人は大人しく従うほかはないと悟った。二階より上には多くの兵がいた。その建物は兵士の詰所か兵舎かを兼ねているようだった。五人は先頭を歩く兵士に率いられるまま階段を四階へと上った。階段を上がって正面に扉があった。入口の衛兵と思しき二人がそれを開いた。八人はそこへ入って行った。
部屋の奥には三名の男がいた。大柄な兵士と小柄な兵士が一人ずつ立ち、その中央に中世ヨーロッパの貴族のようななりをした男が座っていた。中央の男は冷ややかな視線をこちらに送っていた。先頭の兵士は目の端で残りの七人が部屋へ入り切ったことを確認してから口を開いた。同時に入口の二人の衛兵が扉を閉めた。
「怪しい人物を連れてまいりました。ゲレーロ様」
真琴が抗議した。
「待ってください。本当に僕た——
「黙れ。殺すぞ」
それをゲレーロと呼ばれた貴族のようななりをした男が遮った。真琴は押し黙った。ゲレーロは淡々と語り出した。
「フラマリオンはルクレティウスやアーケルシアに比べると小さい。しかも大国に挟まれている。ここの土地の連中はこいつらなりに身を守るために自警団ってのを作った。小せえ組織だから大国を攻めるほどの力はない。代わりにこの小さな国を守るためのゲリラ戦に長けている。自警団なんてたいそうな名は付いてるが、その実そいつらがやってたことは姑息なレジスタンス活動だ。全員一度は牢獄にぶち込んでやったがアーケルシアの間抜け連中が解放させちまった。また一匹残らず捕まえなきゃならねえ。それを思うとどうも気分が悪い」
ゲレーロはそこで区切ってあらためて真琴を見た。ゲレーロの目には殺意が宿っていた。
「話が長くなったが要するに俺は今気分が良くないという話だ。そんでもって俺の許可なく口を開くなという話だ」
真琴は顔中に冷や汗を浮かべ、相づちさえ打つべきかどうか迷った。相づちを打てば「勝手に口を開くなと言っただろ」と言って殺されかねない、返事をしなければ「俺の言葉を無視するのか」と言って殺されかねない、選択を間違えば殺される、そんな緊張の中で真琴は指一本口一つ動かせずにいた。幸いにもこの場合沈黙がゲレーロの機嫌を損ねることはなかった。悠樹も琢磨も杏奈も怯えていた。ゲレーロは兵士を見て言った。
「報告を続けろ」
兵士は言った。
「はい。この者たちは先ほど役場に現れ、受付の女に対してこう言ったそうです。『ちょっとどこへ行けば良いかわからなくて。教えていただけますか?』。この狂気じみた発言から察するにこの者たちはアーケルシアの残党かフラマリオンのレジスタンスです。厳正な処分を」
男は言いながら含み笑うような節があった。それを受けてゲレーロは顔色一つ変えずに言った。
「よし。五人とも死刑。この場で即時執行」
五人は耳を疑った。
「かしこまりました」
「きゃっ!」
杏奈の悲鳴が聞こえた。真琴が振り向くと一番後ろを歩いていた長身の兵士が乱暴に杏奈を組み伏せていた。悠樹はそれを見て激昂した。
「何すんだてめえ!」
すると先頭を歩いていた兵士が悠樹の顔面を殴った。悠樹は顔を手で覆った。続いてその兵士は悠樹の腹を殴った。たまらず悠樹は頽れた。ゲレーロの脇にいた二人の兵士はそれぞれ剣を抜き真琴と琢磨のもとへと向かって来た。真琴には懇願することしかできなかった。
「待ってください! 俺たちほんとに何もしてないんです!」
するとゲレーロはあっさりと言った。
「だめだめ。怪しいから死刑」
琢磨は叫んだ。
「お願いします! 助けてください何でもします!」
しかし琢磨も真琴も杏奈と同じように床に組み伏せられた。真琴は左を向いた。悠樹はまだ兵士によって顔や腹を蹴られていた。杏奈と琢磨は兵士によって組み伏せられている。真琴はちらと翔吾に目をやった。すると彼は五人の後ろを歩いていた兵の一人をむしろ逆に組み伏せていた。組み伏せられた兵は呻いた。
「何だてめえ! くそっ!」
翔吾はその顔に容赦なく拳を浴びせた。骨の砕けるような鈍い音がした。その様子を俯瞰していたゲレーロが言った。
「おいちょっと待て」
その一言でその場の全員が動きを止めた。組み伏せられた四人の若者はゲレーロの温情に期待を寄せた。しかしそれは裏切られた。
「その女は俺のペットに加える」
「わかりました」
長身の兵士はそう言うと杏奈を乱暴に起こして服を引っ張ってゲレーロのもとへ連れて行った。
「ふざけんじゃねえ!」
真琴が吼えた。するとすぐに背中の兵士から頬を殴られた。杏奈は真琴を振り返りながら抗議した。
「やめてください! 私は何をされても構いません! だからみんなは許してください!」
どれだけ殴られたかわからない悠樹はもうぴくりとも動かなくなっていた。琢磨はただただ震えていた。真琴はなおも叫んだ。
「杏奈今助けてやる。そんなヤツらの言うことなんか聞く必要ねえぞ!」
彼は暴れた。しかし甲冑の重みと体勢の不利が真琴に自由を許さなかった。さらに真琴は先ほどよりも強く頬を何度も殴られた。杏奈は真琴に訴えた。
「やめて真琴! あたしはいいから!」
しかし真琴はなおも暴れた。彼はさらに兵士に殴られ、彼の意識は次第に朦朧としていった。翔吾に組み伏せられて殴られた兵士は動かなくなっていた。翔吾は立ち上がって他の四人の援護に入ろうと素早く視線を走らせて状況を確認した。それらのやり取りをゲレーロが言葉で制した。
「はいはい、うるさいうるさい」
その場にいる全員が再び動くのをやめてゲレーロの方を向いた。ゲレーロは立ち上がり、杏奈の脇まで歩いた。彼は腰の剣を抜き、それをためらいもなく杏奈の首筋に据えた。
「おい、そこのチンピラ」
それはゲレーロが翔吾に向けた言葉だった。翔吾は静かにゲレーロに鋭い視線を投げていた。
「それ以上暴れたら女殺すぞ」
翔吾はゲレーロを睨んだまま何も言い返さなかった。ゲレーロは翔吾以外のその場の人間に順番に視線を向けて言った。
「とにかく女はペット。男は死刑。この場で即時執行」
すると三人に跨る兵士たちは起き上がって剣を抜いた。琢磨は命乞いをした。
「あああ! やだ! やめてください!」
真琴はなおも身を捩り、兵士から逃れようとしていた。しかし兵士は真琴を蹴ったり踏みつけたりしてそれを許さなかった。悠樹はやはり動かない。翔吾は杏奈を人質にとられて動けずにいるもどかしさに顔を顰め肩を震わせた。ゲレーロの傍らに連れて来られた杏奈は目一杯声を張り上げて懇願した。
「お願いしますやめてください!」
しかし三人の兵士たちは無情にも剣を振り上げた。彼らの顔には歓喜の色も狂気の色も怒りの色もない。ただ冷淡に無機質に作業をまっとうしようとしている。それを眺めるゲレーロも同じ顔をしていた。琢磨は念仏のように命乞いをした。
「お願いしますお願いしますお願いします…」
翔吾は叫んだ。
「やめろ!!!!」
しかしそれに構うことなく三人の兵士は同時に剣を振り下ろした。杏奈は悲鳴をあげた。無機質な空間に肉が裂ける音が響いた。血が噴き出して床を派手に赤く染めた。
「は?」
真琴にはその反応が意外だった。どうやら言葉が通じているらしい。いや、今の「は?」がどこかの外国語である可能性も否定はできないが…。真琴はさらに一歩踏み出した。
「いや、あの、すいません。ここって日本じゃないですよね…?」
相手はさらに露骨に訝しそうな顔をした。
「いや日本って何だよ」
「え…?」
言葉が通じたことに真琴は驚いた。と同時に、にもかかわらず「日本」という言葉が通じないことに驚いた。真琴はこれ以上質問を重ねて相手に疑念を抱かせることは得策でないと判断して「すいません、何でもないです」と言って引き返した。
男は真琴の背中を訝しそうにじっと見つめてから元の通りに歩を進めた。しかしすぐに立ち止まって後ろから真琴に声を掛けた。
「おい」
びくりと肩を震わせた真琴は怪しまれないようにと意識しながらも見開いた目で相手に向き直った。
「何かわかんねえことがあんなら役所行ってこいよ」
真琴は戸惑いつつも相手が好意からアドバイスをしてくれていることを理解すると、ひとまず礼を言った。
「ありがとうございます!」
相手はさらに言葉を継いだ。
「どうせ場所わかんねえんだろ?」
素直に相手の好意に甘えることにした真琴は苦笑を浮かべた。
「はい」
相手は再び一瞬怪訝な表情をしたが近づいて来て役所への行き方を教えてくれた。真琴は厚く礼を言って男と別れた。真琴はみなのところへ戻り、今起きたことをありのままに話した。悠樹はこう言った。
「役所の様子を見てみよう」
他の三人もそれに同意した。五人は周囲の目に気を付けながら役所を目指した。役所はすぐ近くにあった。四階建てで四角くこの街で見た中ではもっとも大きな建物だった。人の出入りは少ない。役所の手前には円形の大きな広場があった。広場の石畳には所々に陥没した跡が見られた。穴こそ石で埋められていたが、そこには放射状に亀裂が走り、そこがかつて強烈な衝撃で破砕されたことを物語っていた。真琴はそれを見て呆気にとられた。
(戦いの…跡…?)
真琴は遠くに目をやった。先刻から気になってはいたが、街を取り囲むように城壁が巡らされ、その四方には物見櫓が据えられていた。真琴はその光景に急に物々しさを覚えた。やはりここはテーマパークなどではない。しかし街行く人々にはその破砕の跡を一向に気に留める様子はなかった。
そのとき、不意に真琴の意識の中を様々な光景が急激によぎった。真琴は唖然とした。妖精のように宙を舞う小さな少女。白いドレス姿の美しい女性。腰の曲がった小さな老人。白い制服姿の剣士。白い光。灰色の巨体。赤々と燃えるような夕焼けの空の下で壊れゆく街と飛び交う悲鳴。
「真琴?」
杏奈にそう呼び掛けられて真琴は我に返った。いつしか彼の呼吸は荒くなっていた。杏奈は不安そうに真琴の顔を覗き込んだ。
「だいじょぶ?」
真琴はまだ急激なフラッシュバックの余韻の中にいたが杏奈を見て小さく頷いた。
「大丈夫」
真琴は再び注意を役所に向けた。しばらくそこを注視していた真琴は言った。
「特に怪しいところはねえな」
役所には普通の市民らしき人々が特に変わったところもなく出入りしている。その表情には歓喜の色もないが悲哀の色もない。警備もいない。特に違和感は覚えない。真琴は四人の顔を順番に見た。悠樹も杏奈も翔吾も異論はなさそうだった。琢磨はまだ覚悟が定まっていないようだが問題なさそうだ。真琴は短く言って歩き出した。
「行こう」
四人はそれに続いた。入口には木製の門があったが開け放たれていた。役所というにはやはり簡素な造りに見える。五人は緊張しながら、しかし平静を装いつつそれをくぐった。建物の中に入った五人はその内部について役所というより古い欧米の映画に出てくる銀行のような印象を受けた。木製のカウンターがあって、その向こうに係員が座っており、そのさらに向こうでは役員が書類仕事をしている。いくつか窓口がある。どの窓口に行くのが適切かは案内がないためわからない。真琴は目が合った正面の窓口の女性のところへ吸い寄せられるように歩いて行った。四人もそれに続いた。女性は笑顔で迎えてくれた。
「こんにちは」
やはり言葉は通じる。真琴が挨拶を返した。
「こんにちは」
「どういったご用件ですか?」
真琴は不自然な印象を与えないように意識して返答を試みた。
「ちょっとどこへ行けば良いかわからなくて。教えていただけますか?」
女性は一瞬だけ真顔になってすぐにまた弾けるような元の笑顔に戻った。彼女はこう言って席を立って奥へ消えた。
「お調べしますね、少々お待ちください」
真琴は女性が一瞬だけ見せた真顔が気になった。きっと怪しまれたに違いない。しかし今はあの女性を信じるしかない。それに自分たちにはやましいことなどない。ただここがどこで、どこへ行けば助かるか知りたいだけなのだ。女性はなかなか戻って来なかった。所在ないまま時間が過ぎ、それにつれて不安は募った。
違和感を覚えて後ろを振り向いたときには遅かった。入口から先ほど通りで見かけたような甲冑を着込んだ男が三人入って来ていた。真琴は彼らのうちの一人と目が合った。相手は冷厳な目をしていた。彼らは真っ直ぐこちらに向かって来ていた。翔吾も悠樹もそれに気付き、遅れて琢磨と杏奈も気付いた。五人は頭が真っ白になった。真琴と目が合った甲冑の男の一人が言った。
「はい、言う通りにしてね。ちょっと来てもらうだけだから」
男には有無を言わせぬ威圧感があった。テーマパークの演者には見えない。鎧も腰の剣もおそらく本物だろう。真琴は従順を貫くことにした。彼は諸手を挙げて言った。
「わかりました」
男は脇の階段へと歩き出した。五人が付いてくることを疑ってもいない、それがさも当たり前であるかのような歩き出し方だった。五人は先に行った男に遅れまいと歩き出した。そのあとを二人の男が付いて歩いた。五人は前後を挟まれるような格好になった。翔吾以外の四人は恐怖に顔をひきつらせていた。一行はフロアの脇の階段を上り始めた。琢磨は会話に活路を見出そうとした。
「ここはどこですか? 僕た——
「うるせえいいから黙って歩け」
先ほどまで黙っていた後ろの兵士の一人が押しかぶせて言った。低く重く、迷いのない声だった。五人は大人しく従うほかはないと悟った。二階より上には多くの兵がいた。その建物は兵士の詰所か兵舎かを兼ねているようだった。五人は先頭を歩く兵士に率いられるまま階段を四階へと上った。階段を上がって正面に扉があった。入口の衛兵と思しき二人がそれを開いた。八人はそこへ入って行った。
部屋の奥には三名の男がいた。大柄な兵士と小柄な兵士が一人ずつ立ち、その中央に中世ヨーロッパの貴族のようななりをした男が座っていた。中央の男は冷ややかな視線をこちらに送っていた。先頭の兵士は目の端で残りの七人が部屋へ入り切ったことを確認してから口を開いた。同時に入口の二人の衛兵が扉を閉めた。
「怪しい人物を連れてまいりました。ゲレーロ様」
真琴が抗議した。
「待ってください。本当に僕た——
「黙れ。殺すぞ」
それをゲレーロと呼ばれた貴族のようななりをした男が遮った。真琴は押し黙った。ゲレーロは淡々と語り出した。
「フラマリオンはルクレティウスやアーケルシアに比べると小さい。しかも大国に挟まれている。ここの土地の連中はこいつらなりに身を守るために自警団ってのを作った。小せえ組織だから大国を攻めるほどの力はない。代わりにこの小さな国を守るためのゲリラ戦に長けている。自警団なんてたいそうな名は付いてるが、その実そいつらがやってたことは姑息なレジスタンス活動だ。全員一度は牢獄にぶち込んでやったがアーケルシアの間抜け連中が解放させちまった。また一匹残らず捕まえなきゃならねえ。それを思うとどうも気分が悪い」
ゲレーロはそこで区切ってあらためて真琴を見た。ゲレーロの目には殺意が宿っていた。
「話が長くなったが要するに俺は今気分が良くないという話だ。そんでもって俺の許可なく口を開くなという話だ」
真琴は顔中に冷や汗を浮かべ、相づちさえ打つべきかどうか迷った。相づちを打てば「勝手に口を開くなと言っただろ」と言って殺されかねない、返事をしなければ「俺の言葉を無視するのか」と言って殺されかねない、選択を間違えば殺される、そんな緊張の中で真琴は指一本口一つ動かせずにいた。幸いにもこの場合沈黙がゲレーロの機嫌を損ねることはなかった。悠樹も琢磨も杏奈も怯えていた。ゲレーロは兵士を見て言った。
「報告を続けろ」
兵士は言った。
「はい。この者たちは先ほど役場に現れ、受付の女に対してこう言ったそうです。『ちょっとどこへ行けば良いかわからなくて。教えていただけますか?』。この狂気じみた発言から察するにこの者たちはアーケルシアの残党かフラマリオンのレジスタンスです。厳正な処分を」
男は言いながら含み笑うような節があった。それを受けてゲレーロは顔色一つ変えずに言った。
「よし。五人とも死刑。この場で即時執行」
五人は耳を疑った。
「かしこまりました」
「きゃっ!」
杏奈の悲鳴が聞こえた。真琴が振り向くと一番後ろを歩いていた長身の兵士が乱暴に杏奈を組み伏せていた。悠樹はそれを見て激昂した。
「何すんだてめえ!」
すると先頭を歩いていた兵士が悠樹の顔面を殴った。悠樹は顔を手で覆った。続いてその兵士は悠樹の腹を殴った。たまらず悠樹は頽れた。ゲレーロの脇にいた二人の兵士はそれぞれ剣を抜き真琴と琢磨のもとへと向かって来た。真琴には懇願することしかできなかった。
「待ってください! 俺たちほんとに何もしてないんです!」
するとゲレーロはあっさりと言った。
「だめだめ。怪しいから死刑」
琢磨は叫んだ。
「お願いします! 助けてください何でもします!」
しかし琢磨も真琴も杏奈と同じように床に組み伏せられた。真琴は左を向いた。悠樹はまだ兵士によって顔や腹を蹴られていた。杏奈と琢磨は兵士によって組み伏せられている。真琴はちらと翔吾に目をやった。すると彼は五人の後ろを歩いていた兵の一人をむしろ逆に組み伏せていた。組み伏せられた兵は呻いた。
「何だてめえ! くそっ!」
翔吾はその顔に容赦なく拳を浴びせた。骨の砕けるような鈍い音がした。その様子を俯瞰していたゲレーロが言った。
「おいちょっと待て」
その一言でその場の全員が動きを止めた。組み伏せられた四人の若者はゲレーロの温情に期待を寄せた。しかしそれは裏切られた。
「その女は俺のペットに加える」
「わかりました」
長身の兵士はそう言うと杏奈を乱暴に起こして服を引っ張ってゲレーロのもとへ連れて行った。
「ふざけんじゃねえ!」
真琴が吼えた。するとすぐに背中の兵士から頬を殴られた。杏奈は真琴を振り返りながら抗議した。
「やめてください! 私は何をされても構いません! だからみんなは許してください!」
どれだけ殴られたかわからない悠樹はもうぴくりとも動かなくなっていた。琢磨はただただ震えていた。真琴はなおも叫んだ。
「杏奈今助けてやる。そんなヤツらの言うことなんか聞く必要ねえぞ!」
彼は暴れた。しかし甲冑の重みと体勢の不利が真琴に自由を許さなかった。さらに真琴は先ほどよりも強く頬を何度も殴られた。杏奈は真琴に訴えた。
「やめて真琴! あたしはいいから!」
しかし真琴はなおも暴れた。彼はさらに兵士に殴られ、彼の意識は次第に朦朧としていった。翔吾に組み伏せられて殴られた兵士は動かなくなっていた。翔吾は立ち上がって他の四人の援護に入ろうと素早く視線を走らせて状況を確認した。それらのやり取りをゲレーロが言葉で制した。
「はいはい、うるさいうるさい」
その場にいる全員が再び動くのをやめてゲレーロの方を向いた。ゲレーロは立ち上がり、杏奈の脇まで歩いた。彼は腰の剣を抜き、それをためらいもなく杏奈の首筋に据えた。
「おい、そこのチンピラ」
それはゲレーロが翔吾に向けた言葉だった。翔吾は静かにゲレーロに鋭い視線を投げていた。
「それ以上暴れたら女殺すぞ」
翔吾はゲレーロを睨んだまま何も言い返さなかった。ゲレーロは翔吾以外のその場の人間に順番に視線を向けて言った。
「とにかく女はペット。男は死刑。この場で即時執行」
すると三人に跨る兵士たちは起き上がって剣を抜いた。琢磨は命乞いをした。
「あああ! やだ! やめてください!」
真琴はなおも身を捩り、兵士から逃れようとしていた。しかし兵士は真琴を蹴ったり踏みつけたりしてそれを許さなかった。悠樹はやはり動かない。翔吾は杏奈を人質にとられて動けずにいるもどかしさに顔を顰め肩を震わせた。ゲレーロの傍らに連れて来られた杏奈は目一杯声を張り上げて懇願した。
「お願いしますやめてください!」
しかし三人の兵士たちは無情にも剣を振り上げた。彼らの顔には歓喜の色も狂気の色も怒りの色もない。ただ冷淡に無機質に作業をまっとうしようとしている。それを眺めるゲレーロも同じ顔をしていた。琢磨は念仏のように命乞いをした。
「お願いしますお願いしますお願いします…」
翔吾は叫んだ。
「やめろ!!!!」
しかしそれに構うことなく三人の兵士は同時に剣を振り下ろした。杏奈は悲鳴をあげた。無機質な空間に肉が裂ける音が響いた。血が噴き出して床を派手に赤く染めた。
0
あなたにおすすめの小説
チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~
桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。
交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。
そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。
その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。
だが、それが不幸の始まりだった。
世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。
彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。
さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。
金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。
面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。
本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。
※小説家になろう・カクヨムでも更新中
※表紙:あニキさん
※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ
※月、水、金、更新予定!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~
みやま たつむ
ファンタジー
【本編完結しました(812話)/後日譚を書くために連載中にしています。ご承知おきください】
事故死したところを別の世界に連れてかれた陽キャグループと、巻き込まれて事故死した事なかれ主義の静人。
神様から強力な加護をもらって魔物をちぎっては投げ~、ちぎっては投げ~―――なんて事をせずに、勢いで作ってしまったホムンクルスにお店を開かせて面倒な事を押し付けて自由に生きる事にした。
作った魔道具はどんな使われ方をしているのか知らないまま「のんびり気ままに好きなように生きるんだ」と魔物なんてほっといて好き勝手生きていきたい静人の物語。
「まあ、そんな平穏な生活は転移した時点で無理じゃけどな」と最高神は思うのだが―――。
※「小説家になろう」と「カクヨム」で同時掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる