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ルクレティウス編
078.『迷いの森の先で』2
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悠樹は過去の魔女捜索の報告資料をスレッダに依頼して取り寄せ、実際に捜索にあたった兵へ聞き込みをしたが有力な情報は得られなかった。琢磨はよくお見舞いに行き、そのひょうきんなキャラクターを活かし、杏奈を笑わせた。三人は杏奈のいない間家事をできるだけ平等に分担した。杏奈がいたときもそうしていたつもりだが、実際には杏奈が誰よりもよく家事をこなしていてくれたことが彼女がいなくなってみると痛いほどよくわかった。真琴は杏奈への感謝を魔女捜索への情熱へと変えてそれを決行日まで募らせていった。
出発の朝はよく晴れた。真琴は馬に跨りルクレティウスの北門の前までやって来た。彼は甲冑をまとい、帯剣していた。普段固く閉じられているその重く大きい扉が、その日は大きな口を開けていた。城壁と門に囲まれた地区にあって、そこから見通せる外の世界はまるで切り取られた絵画のように妙に明るく新鮮だった。思えば初めてこの世界に来たとき以来の街の外だった。杏奈が倒れて入院した日から六日が経っていた。北の森はそう遠くない。何事もなければ昼に辿り着ける。とはいえ往復となれば野営は必須であり、森での遭難の危険性もあるため、長期の行軍の備えが必要になる。馬にはそのための大きな荷物が括りつけられてあった。
「気を付けてな」
見送りに来た悠樹が心配そうに言った。
「こっちのことは俺たちに任せろ」
琢磨が努めて明るく言った。
「おう」と真琴も明るく答えた。ジンは真琴を見上げた。不安と期待の入り混じった目だった。彼は何か掛ける言葉を探したが、どれも適切でない気がしてやめた。真琴は何となくジンの胸中を察して、自分から声を掛けた。
「行ってきます」
「ああ、気を付けて」
小さく頷いて真琴は前を見た。真琴が腹を蹴ると馬は嘶きもせず駆け出した。大きな蹄の音があっという間に小さくなり、真琴と馬の身体も門と外の世界に吸い込まれてあっという間に小さくなった。真琴が出るとすぐに軋みをあげて門が閉ざされた。悠樹はそのあともしばらく神妙な目で閉じた門を見て、その向こうを走る真琴を思い浮かべていた。
門を出てしばらくは石畳の道が続く。その東西に畑が広がる。冬のため乾いた畑には人影もない。畑を抜けると大きな川があり、橋がある。橋を渡ると道は急に狭くなり、舗装のないむき出しの地面になる。左右も畑ではなく草むらになる。道に生える草の背が次第に高くなる。枯草だから良いが夏にここを通るのは難儀だろうなと思う。遠くに低い山が見える。山のふもとから高い木が茂って森になっている。あれが北の森、魔女の住むとされる場所だ。稜線は東西に長く続く。森は広い。真琴は手綱を握る手に今一度力を込めた。森まではイネ科の背の高い植物ばかりの平原である。道は細いがたしかに続いている。北へ、ほぼ真っ直ぐに。
真琴の孤独な行軍は極めて順調に進んだ。しかし敵との遭遇は恐ろしく、その他にも馬の体調変化や急な雨など様々なリスクがあり、彼の不安を煽った。真琴は自分が死ぬことを怖れなかった。しかし自分が死ぬせいで杏奈が死ぬことを怖れた。幸いなことに森に辿り着くまで盗賊にもアーケルシア軍の残党にも遭遇しなかった。天候にも恵まれ、風もなく日も暖かかった。
正午には森の入口に辿り着いた。真琴は少し迷った。侵入する者をことごとく阻み、遭難させると噂される森だ。しかもベテラン兵でさえ。こんな森で夜を迎えたら大変だ。森の入口で野営し、翌朝早くに捜索を開始すべきか。
しかし杏奈にどれだけの時間が残されているかわからない。時間が惜しい。真琴は甲冑を脱いで麻の袋にしまい、野戦用の食糧を少しだけかじった。彼は馬を森の入口の木に繋ぎ止め、野営用の荷物を背負い、大きく息を一つついて深い森へと潜って行った。
森へ続く道は森へ入っても続いていた。より細く、足元は悪くなるが、道の続く限り真琴はそれを辿ることにした。勾配はほとんどなかった。見晴らしの良い草原ならともかく、森へ入るともう遮蔽物だらけで遠くの盗賊や獣に気付くことはできなくなっており、いつ何者に襲われてもおかしくなかった。甲冑も脱いでしまった。しかしそう思えばこそ真琴は開き直って大胆に進むことができた。道は枯れた沢に合流していた。真琴は沢を登った。沢からは勾配がきつくなった。あらゆる疑問を捨て去ってここまで来た真琴だが、たった一つだけ新たな疑問が湧いた。
——本当にこんなところに人が住んでいるのだろうか…?
そこは人の住めるような場所だとは到底思えなかった。春や夏ならともかく、冬の森には木の実もなければ獣も見かけない。こんなところで何をしている。何を食べている。飲み水はどうしている。魔女が北の森にいるというのは噂に過ぎない。
真琴は立ち止まり、水筒の水を一口だけ飲み、再び迷いを断ち切るように歩を進めた。ただ注意深く進むしかない。
森へ入って二時間が経った。森の草木は、地面は、枝から覗く空は、どれひとつ同じものがないようでいて、どれも同じであるようにも見える。真琴は心を落ち着けるためにあえて食事を摂ることにした。彼は沢の縁の石に腰掛け、水を飲みパンを頬張った。不謹慎極まりないが野を駆け森を歩いたあとのパンと水は格別においしかった。運動した直後だからというのもあるが、森のさわやかな空気と美しい景観も大きな要因だと真琴は気付いた。森を見渡すと真琴はそこに既視感を覚えた。それは遠足で訪れた関根の森に似ていた。また、それ以上に月見が原の森に似ていた。頭上で大きな鳥が鳴いた。よく見ればそれはつがいの鳥だった。二羽は常に近づいては離れ、離れては近づいた。鳴くのは常に一羽だった。ドライフルーツももって来ていたがそれは我慢することにした。十五分後に真琴は再び歩き始めた。
足元には延々と枯れた沢が続き、その両脇には延々と木々が生い茂る。そんな景色が途方もなく続いていたが、森に入って三時間が経った頃にそこに大きな変化が生じた。はじめそれが何なのかうまく視認できなかった真琴は目を細めて森の奥を見ながら歩を進めた。近づくにつれそれは真琴を呆然とさせた。彼が目にしたのは立ちふさがる崖だった。それも二十メートルほどもありそうな高さの。かつてそこは水が流れて滝だったのだろう、ごつごつとした大きな岩が転がり、滝つぼだったと思われる箇所には今でも土や草が周りよりも少なく、木が生えていない。崖の中でもかつて水が流れていたであろう箇所は周りに比べて岩が露出しやはり草があまり生えていない。真琴は周囲に迂回できる道を探した。しかし左右どちらを見ても崖と深い森が茫漠と広がるばかりだった。
魔女が先ほどの道から森に入り、枯れた沢を登り、森を進んだとしたらここに辿り着いたはずである。ここに行き当たった彼女はどちらに進んだのだろうか。右か、左か——。風雨をしのぐには崖は絶好の地形である。この崖沿いのどこかに魔女が住居を構えている可能性もありそうだ。崖には洞穴のようなものがどこかにあるかもしれない。だとしたらそれも風雨をしのげる天然の住居となり得る。住居を構え定住するならそれは水源の近くであるはずだ。北の森から流れる川。それは東にあったか西にあったか——。真琴はルクレティウス周辺の地図を鞄から取り出して開いた。西に行けば近くに川がある。東にも遠いが川はある。真琴は再び右を見、そして左を見た。どっちだ——。
しかしそのとき、真琴にある考えが浮かんだ。仮に魔女が崖に沿った水源に近い場所に住居を構えていたとしたら、それはこれまでの調査で発見されているはずではないか——? そう、あまりにも簡単すぎる。答えはおそらくもっと斜め上にある。だから事件から約三年が経っても魔女は発見されていないのだ。真琴は再び枯れた滝を見上げた。
少し逡巡したが、彼はその直感を信じることにした。滝から少し離れたところには木があった。彼はまずそれを登った。枝につかまりながら上によじ登り、枝から枝に足をかけた。上に登るにつれて枝は細くなり真琴が体重をかけると大きくしなるようになった。真琴は枝の先に慎重に歩を進め、崖を伝う蔓草に手を伸ばした。それを数本束ねて手繰り寄せると、それはロープのような頑丈さをもっていた。いける。真琴はその頑丈さを半ば無理矢理信じ込んだ。彼は冷や汗を浮かべながら、枝からゆっくり片方の足を浮かせ、その足を伸ばした。蔓と枝に重みがかかったが、両者はそれを支えてくれた。彼は伸ばした足を崖の岩の出っ張りに乗せた。彼はそこで一息ついた。さらに彼は枝に残したもう一本の足も浮かせ、一息に崖の岩の出っ張りに乗せた。
彼は蔓の状態を確かめながら少しずつそれを手繰り寄せ、岩から岩へと足をかけ替えた。木を登ったことで稼げた高さは十メートルに満たない。残り十メートル以上を彼は蔦とわずかな足場を頼りに垂直に進まなければならない。体力的には問題ない。冬だが蔦も青々としている。あとは足場さえ確保できれば…。彼は息を整えた。蔦を手繰る。片足を少し上の岩に乗せ替える。蔦を手繰る。反対の片足を少し上の岩に乗せ替える。彼は冷静になれと自身に何度も言い聞かせ、その地道な作業を延々と続けた。
ついに彼は崖の上端に手をかけ、その上に体を引っ張り上げた。するとその先には彼の想像通りの地形が広がっていた。滝の下と同じような枯れた沢とその脇に広がる平らな森である。これまで遠征に来た兵はいずれも野盗や獣を警戒して甲冑を纏ったままこの森を訪れたのではないだろうか。さらに同じ道を辿り、沢を登り、滝まで行き当たると先ほどの真琴と同じ推察をし、水場に近い洞穴を目指したのではないだろうか。だとしたらここから先に足を踏み入れるのは自分が初めてということになるはずだ。彼は気持ちを新たにし、枯れた沢を登って行った。
もう森に入って四時間が経っていた。日も傾き暗かった。真琴は自身の立場の弱さを今更ながら自覚した。真琴の頼みを聞くとなれば魔女は魔女を殺そうとしたルクレティウスの人間を助けることになる。わざわざこんな森の奥へ隠れたくらいだ、ルクレティウスの人間に会い、その話を聞くだけでも魔女にとっては大きなリスクに違いない。その上治療するとなればルクレティウスの杏奈の病室まで行かなくてはならない。魔女にとっては忌まわしいうえに手間とリスクだらけ。それに見合う礼なんてこの世界に迷い込んだばかりの真琴にはできそうにない。魔女へのお土産に焼き菓子とブレスレットをもって来ていた真琴だが、彼女が負うリスクの代償には到底足りない。
足元がいよいよ暗くなってきた。自分が歩を進める先の地面がどうなっているのか判然としない。もう日が落ちるまでに森の入口に戻るのは不可能だろう。ランプを灯して歩こうかとも思ったが、魔女を警戒させることになるかもしれない。真琴は足元が見える限界まで進み、進めなくなったら森の中で野営する決心をした。
そのときふと気付いた。自分が歩いている場所がすでに沢ではないことに。沢を歩くときは周囲の木の根や草より一段低いところを歩く格好だったが、今は足の横の高さに木の根があり草がある。それは道だった。何者かが頻繁に通ったため、草がまばらになり、踏み固められた地面。獣か、魔女か。暗さもあって用心して歩を進めた。
さらにしばらく行くと、唐突に木のない広いところに出た。切り株と草と落ち葉ばかりの地面。明らかに人が拓いた場所だ。暗いためそこがどれほど広いかわからない。向こう側の広場の終わりが見通せない。方位ももうわからない。道はそこで終わっていた。真琴は仕方なく広場の中へ歩み出た。その広い空間のどこをどう進めば正しいのかわからない。ここで迷えば元の道にさえ辿り着けなくなるかもしれない。そう思って真琴は元来た方を振り返った。
そこに何かがいた。巨大な心音が真琴の内で鳴り響いた。真琴は思わず後ずさりし、低く身構えた。夕陽が逆光になっていてその姿ははっきりとは視認できない。だが目が慣れてくるとその姿が少しずつ明瞭になってきた。相手は真っ直ぐにこちらを見ているようだった。それは小柄な、若い女性だった。
「誰…? あたしに何か用?」
よく澄んだ若い女の声だった。かすれそうなほど小さな声だったが、どういうわけか耳朶を強烈に打った。セミロングの髪。上下揃いの白衣。何か答えなくては、と真琴は思う。だがうまい言葉がみつからない。小柄な女性という点では魔女の特徴に合致する。いや、こんな場所に一人で女性がいる時点で魔女以外にはあり得ないのではないだろうか。真琴はそれを確かめるために「あなたは魔女ですか?」と尋ねてみようかと考えたが、それが彼女の機嫌を損ねるリスクを考えると憚られた。
「何しにここまで来たの?」
そう尋ねる彼女の声音には明確な警戒の色があった。何とか彼女の警戒を解かなくてはと真琴は思った。魔女に会ったら何を話そうかと色々シミュレーションしていた真琴だが、いざそのときを迎えると彼はそれをすべて忘れてしまっていた。早く何かを話さなくてはそれこそ魔女に警戒されてしまう。心音は相変わらず速く鳴り響いた。
そこで突如として真琴は何かに気が付いた。それは漠とした大きな違和感だった。真琴の思考のすべては急激にその違和感の正体を突き止めることに動員された。それは魔女が急に背後に現れたことによって生じたもののようにも思えた。魔女が思っていたよりも若いことによって生じたもののようにも思えた。
だがそれとは決定的に違う何かが真琴に大きな違和感をもたらし、彼の思考を支配していた。ふとその正体に行き当たったとき、真琴は愕然とした。それは違和感というより既視感だった。彼女の声に聞き覚えがあった。彼女の姿に、顔に見覚えがあった。彼は呟くような声で恐る恐る目の前の人物に問うた。
「由衣…?」
出発の朝はよく晴れた。真琴は馬に跨りルクレティウスの北門の前までやって来た。彼は甲冑をまとい、帯剣していた。普段固く閉じられているその重く大きい扉が、その日は大きな口を開けていた。城壁と門に囲まれた地区にあって、そこから見通せる外の世界はまるで切り取られた絵画のように妙に明るく新鮮だった。思えば初めてこの世界に来たとき以来の街の外だった。杏奈が倒れて入院した日から六日が経っていた。北の森はそう遠くない。何事もなければ昼に辿り着ける。とはいえ往復となれば野営は必須であり、森での遭難の危険性もあるため、長期の行軍の備えが必要になる。馬にはそのための大きな荷物が括りつけられてあった。
「気を付けてな」
見送りに来た悠樹が心配そうに言った。
「こっちのことは俺たちに任せろ」
琢磨が努めて明るく言った。
「おう」と真琴も明るく答えた。ジンは真琴を見上げた。不安と期待の入り混じった目だった。彼は何か掛ける言葉を探したが、どれも適切でない気がしてやめた。真琴は何となくジンの胸中を察して、自分から声を掛けた。
「行ってきます」
「ああ、気を付けて」
小さく頷いて真琴は前を見た。真琴が腹を蹴ると馬は嘶きもせず駆け出した。大きな蹄の音があっという間に小さくなり、真琴と馬の身体も門と外の世界に吸い込まれてあっという間に小さくなった。真琴が出るとすぐに軋みをあげて門が閉ざされた。悠樹はそのあともしばらく神妙な目で閉じた門を見て、その向こうを走る真琴を思い浮かべていた。
門を出てしばらくは石畳の道が続く。その東西に畑が広がる。冬のため乾いた畑には人影もない。畑を抜けると大きな川があり、橋がある。橋を渡ると道は急に狭くなり、舗装のないむき出しの地面になる。左右も畑ではなく草むらになる。道に生える草の背が次第に高くなる。枯草だから良いが夏にここを通るのは難儀だろうなと思う。遠くに低い山が見える。山のふもとから高い木が茂って森になっている。あれが北の森、魔女の住むとされる場所だ。稜線は東西に長く続く。森は広い。真琴は手綱を握る手に今一度力を込めた。森まではイネ科の背の高い植物ばかりの平原である。道は細いがたしかに続いている。北へ、ほぼ真っ直ぐに。
真琴の孤独な行軍は極めて順調に進んだ。しかし敵との遭遇は恐ろしく、その他にも馬の体調変化や急な雨など様々なリスクがあり、彼の不安を煽った。真琴は自分が死ぬことを怖れなかった。しかし自分が死ぬせいで杏奈が死ぬことを怖れた。幸いなことに森に辿り着くまで盗賊にもアーケルシア軍の残党にも遭遇しなかった。天候にも恵まれ、風もなく日も暖かかった。
正午には森の入口に辿り着いた。真琴は少し迷った。侵入する者をことごとく阻み、遭難させると噂される森だ。しかもベテラン兵でさえ。こんな森で夜を迎えたら大変だ。森の入口で野営し、翌朝早くに捜索を開始すべきか。
しかし杏奈にどれだけの時間が残されているかわからない。時間が惜しい。真琴は甲冑を脱いで麻の袋にしまい、野戦用の食糧を少しだけかじった。彼は馬を森の入口の木に繋ぎ止め、野営用の荷物を背負い、大きく息を一つついて深い森へと潜って行った。
森へ続く道は森へ入っても続いていた。より細く、足元は悪くなるが、道の続く限り真琴はそれを辿ることにした。勾配はほとんどなかった。見晴らしの良い草原ならともかく、森へ入るともう遮蔽物だらけで遠くの盗賊や獣に気付くことはできなくなっており、いつ何者に襲われてもおかしくなかった。甲冑も脱いでしまった。しかしそう思えばこそ真琴は開き直って大胆に進むことができた。道は枯れた沢に合流していた。真琴は沢を登った。沢からは勾配がきつくなった。あらゆる疑問を捨て去ってここまで来た真琴だが、たった一つだけ新たな疑問が湧いた。
——本当にこんなところに人が住んでいるのだろうか…?
そこは人の住めるような場所だとは到底思えなかった。春や夏ならともかく、冬の森には木の実もなければ獣も見かけない。こんなところで何をしている。何を食べている。飲み水はどうしている。魔女が北の森にいるというのは噂に過ぎない。
真琴は立ち止まり、水筒の水を一口だけ飲み、再び迷いを断ち切るように歩を進めた。ただ注意深く進むしかない。
森へ入って二時間が経った。森の草木は、地面は、枝から覗く空は、どれひとつ同じものがないようでいて、どれも同じであるようにも見える。真琴は心を落ち着けるためにあえて食事を摂ることにした。彼は沢の縁の石に腰掛け、水を飲みパンを頬張った。不謹慎極まりないが野を駆け森を歩いたあとのパンと水は格別においしかった。運動した直後だからというのもあるが、森のさわやかな空気と美しい景観も大きな要因だと真琴は気付いた。森を見渡すと真琴はそこに既視感を覚えた。それは遠足で訪れた関根の森に似ていた。また、それ以上に月見が原の森に似ていた。頭上で大きな鳥が鳴いた。よく見ればそれはつがいの鳥だった。二羽は常に近づいては離れ、離れては近づいた。鳴くのは常に一羽だった。ドライフルーツももって来ていたがそれは我慢することにした。十五分後に真琴は再び歩き始めた。
足元には延々と枯れた沢が続き、その両脇には延々と木々が生い茂る。そんな景色が途方もなく続いていたが、森に入って三時間が経った頃にそこに大きな変化が生じた。はじめそれが何なのかうまく視認できなかった真琴は目を細めて森の奥を見ながら歩を進めた。近づくにつれそれは真琴を呆然とさせた。彼が目にしたのは立ちふさがる崖だった。それも二十メートルほどもありそうな高さの。かつてそこは水が流れて滝だったのだろう、ごつごつとした大きな岩が転がり、滝つぼだったと思われる箇所には今でも土や草が周りよりも少なく、木が生えていない。崖の中でもかつて水が流れていたであろう箇所は周りに比べて岩が露出しやはり草があまり生えていない。真琴は周囲に迂回できる道を探した。しかし左右どちらを見ても崖と深い森が茫漠と広がるばかりだった。
魔女が先ほどの道から森に入り、枯れた沢を登り、森を進んだとしたらここに辿り着いたはずである。ここに行き当たった彼女はどちらに進んだのだろうか。右か、左か——。風雨をしのぐには崖は絶好の地形である。この崖沿いのどこかに魔女が住居を構えている可能性もありそうだ。崖には洞穴のようなものがどこかにあるかもしれない。だとしたらそれも風雨をしのげる天然の住居となり得る。住居を構え定住するならそれは水源の近くであるはずだ。北の森から流れる川。それは東にあったか西にあったか——。真琴はルクレティウス周辺の地図を鞄から取り出して開いた。西に行けば近くに川がある。東にも遠いが川はある。真琴は再び右を見、そして左を見た。どっちだ——。
しかしそのとき、真琴にある考えが浮かんだ。仮に魔女が崖に沿った水源に近い場所に住居を構えていたとしたら、それはこれまでの調査で発見されているはずではないか——? そう、あまりにも簡単すぎる。答えはおそらくもっと斜め上にある。だから事件から約三年が経っても魔女は発見されていないのだ。真琴は再び枯れた滝を見上げた。
少し逡巡したが、彼はその直感を信じることにした。滝から少し離れたところには木があった。彼はまずそれを登った。枝につかまりながら上によじ登り、枝から枝に足をかけた。上に登るにつれて枝は細くなり真琴が体重をかけると大きくしなるようになった。真琴は枝の先に慎重に歩を進め、崖を伝う蔓草に手を伸ばした。それを数本束ねて手繰り寄せると、それはロープのような頑丈さをもっていた。いける。真琴はその頑丈さを半ば無理矢理信じ込んだ。彼は冷や汗を浮かべながら、枝からゆっくり片方の足を浮かせ、その足を伸ばした。蔓と枝に重みがかかったが、両者はそれを支えてくれた。彼は伸ばした足を崖の岩の出っ張りに乗せた。彼はそこで一息ついた。さらに彼は枝に残したもう一本の足も浮かせ、一息に崖の岩の出っ張りに乗せた。
彼は蔓の状態を確かめながら少しずつそれを手繰り寄せ、岩から岩へと足をかけ替えた。木を登ったことで稼げた高さは十メートルに満たない。残り十メートル以上を彼は蔦とわずかな足場を頼りに垂直に進まなければならない。体力的には問題ない。冬だが蔦も青々としている。あとは足場さえ確保できれば…。彼は息を整えた。蔦を手繰る。片足を少し上の岩に乗せ替える。蔦を手繰る。反対の片足を少し上の岩に乗せ替える。彼は冷静になれと自身に何度も言い聞かせ、その地道な作業を延々と続けた。
ついに彼は崖の上端に手をかけ、その上に体を引っ張り上げた。するとその先には彼の想像通りの地形が広がっていた。滝の下と同じような枯れた沢とその脇に広がる平らな森である。これまで遠征に来た兵はいずれも野盗や獣を警戒して甲冑を纏ったままこの森を訪れたのではないだろうか。さらに同じ道を辿り、沢を登り、滝まで行き当たると先ほどの真琴と同じ推察をし、水場に近い洞穴を目指したのではないだろうか。だとしたらここから先に足を踏み入れるのは自分が初めてということになるはずだ。彼は気持ちを新たにし、枯れた沢を登って行った。
もう森に入って四時間が経っていた。日も傾き暗かった。真琴は自身の立場の弱さを今更ながら自覚した。真琴の頼みを聞くとなれば魔女は魔女を殺そうとしたルクレティウスの人間を助けることになる。わざわざこんな森の奥へ隠れたくらいだ、ルクレティウスの人間に会い、その話を聞くだけでも魔女にとっては大きなリスクに違いない。その上治療するとなればルクレティウスの杏奈の病室まで行かなくてはならない。魔女にとっては忌まわしいうえに手間とリスクだらけ。それに見合う礼なんてこの世界に迷い込んだばかりの真琴にはできそうにない。魔女へのお土産に焼き菓子とブレスレットをもって来ていた真琴だが、彼女が負うリスクの代償には到底足りない。
足元がいよいよ暗くなってきた。自分が歩を進める先の地面がどうなっているのか判然としない。もう日が落ちるまでに森の入口に戻るのは不可能だろう。ランプを灯して歩こうかとも思ったが、魔女を警戒させることになるかもしれない。真琴は足元が見える限界まで進み、進めなくなったら森の中で野営する決心をした。
そのときふと気付いた。自分が歩いている場所がすでに沢ではないことに。沢を歩くときは周囲の木の根や草より一段低いところを歩く格好だったが、今は足の横の高さに木の根があり草がある。それは道だった。何者かが頻繁に通ったため、草がまばらになり、踏み固められた地面。獣か、魔女か。暗さもあって用心して歩を進めた。
さらにしばらく行くと、唐突に木のない広いところに出た。切り株と草と落ち葉ばかりの地面。明らかに人が拓いた場所だ。暗いためそこがどれほど広いかわからない。向こう側の広場の終わりが見通せない。方位ももうわからない。道はそこで終わっていた。真琴は仕方なく広場の中へ歩み出た。その広い空間のどこをどう進めば正しいのかわからない。ここで迷えば元の道にさえ辿り着けなくなるかもしれない。そう思って真琴は元来た方を振り返った。
そこに何かがいた。巨大な心音が真琴の内で鳴り響いた。真琴は思わず後ずさりし、低く身構えた。夕陽が逆光になっていてその姿ははっきりとは視認できない。だが目が慣れてくるとその姿が少しずつ明瞭になってきた。相手は真っ直ぐにこちらを見ているようだった。それは小柄な、若い女性だった。
「誰…? あたしに何か用?」
よく澄んだ若い女の声だった。かすれそうなほど小さな声だったが、どういうわけか耳朶を強烈に打った。セミロングの髪。上下揃いの白衣。何か答えなくては、と真琴は思う。だがうまい言葉がみつからない。小柄な女性という点では魔女の特徴に合致する。いや、こんな場所に一人で女性がいる時点で魔女以外にはあり得ないのではないだろうか。真琴はそれを確かめるために「あなたは魔女ですか?」と尋ねてみようかと考えたが、それが彼女の機嫌を損ねるリスクを考えると憚られた。
「何しにここまで来たの?」
そう尋ねる彼女の声音には明確な警戒の色があった。何とか彼女の警戒を解かなくてはと真琴は思った。魔女に会ったら何を話そうかと色々シミュレーションしていた真琴だが、いざそのときを迎えると彼はそれをすべて忘れてしまっていた。早く何かを話さなくてはそれこそ魔女に警戒されてしまう。心音は相変わらず速く鳴り響いた。
そこで突如として真琴は何かに気が付いた。それは漠とした大きな違和感だった。真琴の思考のすべては急激にその違和感の正体を突き止めることに動員された。それは魔女が急に背後に現れたことによって生じたもののようにも思えた。魔女が思っていたよりも若いことによって生じたもののようにも思えた。
だがそれとは決定的に違う何かが真琴に大きな違和感をもたらし、彼の思考を支配していた。ふとその正体に行き当たったとき、真琴は愕然とした。それは違和感というより既視感だった。彼女の声に聞き覚えがあった。彼女の姿に、顔に見覚えがあった。彼は呟くような声で恐る恐る目の前の人物に問うた。
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基本まったり時々シリアスな超長編です。複数のパースペクティブで書いています。
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