悪女ユリアの華麗なる破滅

さつき

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裏切り者

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 この旅は、とっても疲れるものだった。
 早くシェトラに会って癒されたい。ルータリア帝国から美味しいお菓子を持ってきたの。シェトラにあげたら、喜ぶかしら。
 城にたどり着くなり、ダスティと一緒にシェトラのいる牢屋に駆け付けた。ライリーも何故か私についてきた。もしかしたら、私の思考を探っているのかもしれない。だけど、今はそれどころじゃない。早く誰よりもかわいいあの子に会いたい。
 私が帰ってきたことに気がついたシェトラは、天使のように微笑んだ。

「おかえりなさい、ユリア様」

 そして、懐から銃を出して引き金を弾いた。

「うぐっ……」

 腹部に激しい痛みを感じる。

「ユリア様!!!!」
「ユリア!!!」

 ダスティとライリーが駆け寄ってくる
 ユリアって……私は、皇族なんだから、呼び捨てなんてしないで欲しいな……。そう言ってやりたいのに、舌が動かない。
 血が足りないのかしら……。
 指先さえも動かせない。

 力を失ってその場に倒れていく。

 背後から、誰かに抱きしめられたかもしれないが、それを確認する余裕はなかった。

      *                 *
  
 倒れるユリアを受け止めたのは、ライリーだった。
 どうして自分がそんなことをしたのか、自分でもわからない。ハンスは素早くシェトラから銃を力づくで奪って、彼を拘束した。

「離せっ」

 シェトラを押さえつけたハンスは、銃を二度とシェトラの手に届かないように牢屋の外に飛ばした。
 腕の中にいるユリアは、意識がない。
 そばにいたダスティに「早く医者を呼んで来い」と怒鳴りつける。彼は、一瞬だけ不満げな顔をした後にすぐに走り出した。
 ユリアの傷口を布で圧迫する。
 しっかりしろ、ユリア……。
 お前は、こんなに簡単に死ぬ女じゃないだろう。嵐みたいに激しく生きている女だ。こんなところで、奴隷に殺されて死ぬな。
 お前に死なれると俺が困るんだよ。お前がいないと俺は……。

「離せっ!離せよ!!!」

 シェトラは、ハンスの下で暴れている。

「どうしてユリアを撃った?」

「ああん?皇族なんて大嫌いだからだ。美味しいものをたらふく食べて、何の苦労もしていない人間が嫌いだ!!あいつらは、カルタヤ人の気持ちなんて一ミリも理解していない」

 彼は、さっきまでの天使のような顔から、怒りと憎しみに満ちた悪魔のような顔になって怒鳴りつけた。

「この銃は、誰からもらった?」

「……」

「答えなければ拷問するぞ」

「すればいい。俺を殺したければ、殺せばいい。ただし、その頃には状況が全部、変わっているだろうけどな」

 少年は、まるでライリーを嘲笑うように不気味な笑みを浮かべた。
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