お前を殺人犯にするために死んでやる!!

夜刀神さつき

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お前を殺人犯にするために死んでやる!!


 もうすぐ優人がやってくる。
 その時に、僕は自分で自分の首を絞めて死ぬ。あと、15分くらいの予定か……。
 首絞め用のロープを首にかける。そして、ロープをクロスさせて、いつでも死ぬ準備をしながら、時計の針を見つめていた。
 僕が死んでいる時間にアリバイがあったら、彼が疑わなくなってしまう。
 だったら、10分前とかギリギリと狙おう。

「何をしているんだ?」

 不意に背後から声がかけられた。優人の顔は、死人みたいに青ざめていた。


「どうして入っているんだ?いつも時間通りなのに、何でこんな時だけ早く来たんだ?勝手に入るなよ」
 ああ、失敗した。やっぱり、僕はつくづく運が悪い。

「どうして自殺なんてしようとしたんだ?……そんなに人生が辛かったのか」
「偽善者ぶるのもいい加減にしろ!!どうして?はっ。そんなの一つに決まっているじゃないか。お前を殺人犯の容疑者にするためだよ」

 それを聞いた彼の顔が、凍り付いた。

「そんな……そんなくだらないことのために死のうとしたのか」
「ああん?そんな……くだらないことのためだって?」

 胸の奥底から、ふつふつとどす黒いマグマみたいな感情が溢れて零れてくる。

「僕の両親が離婚する時に何て言っていたか、想像つくか?『こんなニートの面倒誰が見るんだ!』『もっと普通の子供が欲しかった』『どうせ社会に適合できない不良品』……ふざけるな。ふざけんな!お前みたいな人間に僕の気持ちがわかってたまるか!!どうせお前は医者になって欲しいものを何でも手に入れる人生を送ってきたのだろう!あの時、お前を助けなければどれほどよかっただろうか!!!」

 ああ、小学生の頃に戻って全てをやり直したい。そうしたら、全部、失わないで済むのだろうか。

「全部、お前のせいだ!!!お前を少しでも傷つけられるなら、僕は死んでもいい!!」
 そう怒鳴りつけると、彼は「はははははははは」と壊れたゼンマイ時計みたいに笑い出した。

「ははっ。俺を少しでも傷つけたいなら、大成功だよ。おめでとう」
 優人は、今にも死にそうな老人みたいに弱弱しく微笑んだ。

「……透和。俺は、君を治すために医者になりたかったんだ。お前のことがずっと忘れられなかった」
「……」
「両親の自慢の息子だって?そんなわけないだろう。父さんは、お前が俺を助けて怪我をした時に、一円たりとも払わなかったんだ。そんな冷酷な人間を父親だなんて思えないよ。大学を卒業してから、縁を切った。あの人達を両親だなんて認められない」

 優人は、ゆっくりと僕の方へ近づいてくる。だけど、車椅子に座っている僕はこれ以上後ろに下がれない。
「お前が俺を嫌っているから、俺も必要以上にお前に近づかなかった。だけど、お前が死ぬ気ならこっちだって自分を殺し続けることなんてやめてやる!!死ぬくらいなら、全部、もらってやる!」

 焦げ茶色の瞳は、永遠に朝が来ない夜みたいに暗い色をしていた。

「どうしてお前はそんなに俺を嫌いなんだ?」
 そう聞いたくせに答えはいらないとでも言うように唇で口を塞がれた。そして、全てを奪いつくすように荒々しいキスをされる。口蓋を撫でまわされ、嚙まれ、歯茎をざらりとした舌でなめられる。
「んんっ。何するんだよ、離せっ!!」
 そうやって突き飛ばすが、車椅子の透和は逃げられず、服の中の手を入れられる。

「嫌だ。止めてっ!!!」
「やめてたまるか!!死ぬくらいだったら、お前を犯してやる!!!犯して、犯して、犯して、犯しまくってやる!!!」
「やめっ」

 抗議の声は口で塞がれながら、そのまま車椅子ごと床に押し倒された。
「ひいいいいいい」
 身体に激しい衝撃が来るのを覚悟して目を閉じるが、頭を床にぶつけないように大きな手で支えられていた。
 早く、逃げないと……。
 そう下がろうとするが、洋服をつかまれる。

「どこへ行くつもりだよ。お前、足悪いくせに」
 そう鼻で笑われ、あっという間に服をビリビリにちぎられる。白いボタンは、ポーンとはじけ飛んだ。
「やめてっ」
  逃げようとすると上から覆いかぶさってきた。そして、首筋を甘い飴みたいにしゃぶられる。
「おいっ。離せ」
 必死で彼の髪の毛を引っ張るが、彼は、僕の抵抗に全く動じない。抵抗した仕返しをするように、乳首をつねられ、もう片方は激しくなめられる。
「……っ。……あああああ」

 先日、あんあんと大袈裟なくらい喘いでいたAV女優を思い出す。あんなの演技だとバカにしていたが、あんな下品な喘ぎ声が止まらなくなりそうなくらい気持ちいい。
 乳首に気を取られていると、後ろに指を入れられる。

「ぎゃああああ!!やめろ!!!」
 そう叩くが、自分の治りかけている手が痛くなるだけだ。
「ダメだよ、透和。医者から安静にしろって言われているだろう。おとなしくしてろよ」
「ふざけるな!!!」

 そう怒鳴るが、どんどん彼の動きは激しさを増していく。
後ろをふやけそうになるくらい徹底的にほぐされた。息も絶え絶えになっていると、尻の間に彼のものを突っ込まれた。

「うっ……。あああああ」

  始めは、痛みしか感じなかったが、徐々に何故か今まで知らなかった嵐みたいに激しい快楽がこみ上げ来た。あまりの快楽におかしくなりそうだった。

「ああ、ああ、はああああああ。んんんんっあああああああああああああああああああああああああ!!」

 優人の呼吸も少し乱れている。
 一度イった後も、彼は、止まれなかった。
  それから、一晩中、獣みたいに侵され続けた。



「はあ、はあ、はあ……」
 何度も侵された透和は、喘息発作でも起きたように息が切れていた。
「はあ、はあ……。絶対にお前を不幸にしてやる……」
 必死で睨み付けるが、頬には降り始めた雨みたいに優しいキスが落とされた。

「俺を殺人犯の容疑者にしたかった?透和は、俺を刑務所にぶち込みたいみたいだけど、そんな未来は絶対に来ない。俺は、お前が死んだら一緒に死んでやる。世間では、心中みたいにニュースになるかもな。透和が、俺のものになったと世界に証明できるなんて本望だよ」
 ゾッとするくらい低い声で夢見心地に彼は語る。

「優人……」
 優人が全然、知らない人間みたいに思えて怖かった。
「何なら、俺がお前を本当に殺してやろうか」
 優人の温かくて大きな手のひらが、首にかけられる。
 怖い……。そう思って、ギュッと目をつぶると、何か温かいものが頬っぺたに落ちてきた。
 不可解に思い目を開けると、ぽたぽたと大粒の涙をこぼす優人の姿が目に入った。
 どうしてだろう。初めて自分以外の誰かをかわいそうだと思った。いつも自分が世界で一番不幸だと思っていたくせに……。

「昔、透和に告白したことがあっただろう。あの時、付き合えるなんて望んでいなかった。ただ、お前に……好きだと知ってほしかっただけだったんだ。あれから、何度もお前のことを考えた。透和に傷つけられても忘れられなかった。しょっしゅう吐いたし、眠れない夜もたくさんあった……。それでも、いつかお前の足を治したかったんだ。お前だけが、俺の生きている意味だった。お前が好きなんだ。好きで、好きで、おかしくなりそうなくらいだ」

 首にかけられていた手にほんの少しだけ、力が入った。

「俺と一緒に死ぬのと、生きるのはどっちがいい?」

 まるで愛の言葉でも言うように、耳元で優しく囁かれた。
 焦げ茶色の瞳には、あの時みたいに透和だけが写っていた。

             
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