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0章「プロローグ」
彼女の名はエリカ
しおりを挟むここはありふれた剣と魔法の世界「アトランティス」
剣を使って戦い、魔法で日常生活を豊かにしている、そんな世界
そしてアトランティスには、不思議な剣を持ったとても強い女性がいる
ある時は、長い銀髪をおろし、なびかせながら双剣を華麗に操り
またあるときは、長い黒髪をひとつに纏め自分の身長と同じ大きさの大剣を豪快に操る
彼女の名は「エリカ・ヴァイス」
「王都セドニック」のヴァイス家の元お嬢様だ
なぜ元が付くかというと、彼女は1度死にゾンビとして蘇っている
つまり不死者だ
この世界では魔物がいたるところに蔓延っている
或いは深い森の中、或いは遺跡の中、果てには湖や海といった水中にもいる
弱い魔物なら小鬼や不定形生物などが、強い魔物なら龍や鬼などがあちこちにいる
魔物はニンゲンを襲う傾向がとても強いため、討伐が推奨されている
そうでなくても、ニンゲンは貪欲な生き物
魔物の素材の価値を見出し、生活の一部としている
先に出てきた不死者も魔物に分類される
そのため現在の彼女は不死者なのを隠し、ただのエリカとして冒険者ギルドで活動している
なぜ彼女がニンゲンの生活圏で活動できるかは、また後ほど──
彼女の実家、ヴァイス家は伯爵家でありながらも代々聖騎士の家系ということもあり、民を守ることに重きを置いていた
また、エリカの父、ヴァイス家当主の「アレックス・ヴァイス」は王国騎士団の騎士団長をしている
そしてエリカは幼少の頃、父の戦う姿に憧れ、剣の鍛錬を騎士団の人達に混じって行っていた
また髪の色も冒頭のモノとは違い、美しいブロンドヘアーだった
もちろん、伯爵家のお嬢様なので社交界にも出るために、社交の所作、及びマナーの勉強もしていた
お転婆だったのも相まって訓練時には着替えるのが面倒だった彼女は、『ドレスを着ながら剣を振ったほうが優雅なのでは?』と、およそ伯爵家のお嬢様とは思えない破天荒なことを考えるようになった
彼女が10才のとき、巷を騒がせていた盗賊団「強欲」を壊滅させるために突き止めたアジトへ、父のアレックスと一緒に乗り込んだことがあった
初めもアレックスはエリカの実力を考慮し、何度も「ダメだ」とエリカに言ったが、それでも「私も強くなりましたから、行きますわ!」と聞かなかった。
アレックスは『自分から絶対に離れないこと』を条件に渋々同行を許した
エリカは「強欲」のメンバーで比較的ヒョロい体型の賊を見つけた
そして彼女は簡単に倒せると勝手に判断し、その賊に真正面から向かった
相手がヒョロいとはいえ、そんじょそこらの盗賊団では無いためかなりの手練
一撃一撃をいなされ、返り討ちにあう
的確に心臓を狙われ、彼女は呆気なくこの世を去った
盗賊団「強欲」は父の騎士団により壊滅した
エリカただ1人の犠牲者を出して
父アレックスは同行を許可したのを悔いた
お転婆が過ぎるとは思ったがここまでとは思わなかった
そして2度として最愛の娘は帰らぬ人となったのだ
結果として決断したのはアレックス
娘を死地に向かわせた、その罪を一生背負って生きていくことになる
エリカを墓地に埋葬し、団長の座を辞退した
アレックスは2度とこのような事がないように徹底して鍛える鬼教官として後生をすごした
『後に不死者となった娘と再開することになったのは、また別の話──』
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