ライトサイド

タカヤス

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ライトサイド 第1話 「勇者?」

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「ルクス……大好きだよ」
光り輝く少女は、最後に最高の笑みを浮かべた。
こことは異なる異空間へと、魔王と魔族を封印する。
分かりやすく表現すれば、それは閉じ込める為の『蓋』の役割だ。
中身を押さえつける『蓋』に、開かないように『鍵』をかける。
発光し、世界が白く染まっていく中で、青年は叫ぶ。
「やめろ! やめるんだっ!」
誰かの犠牲の上に成り立った勝利や平和など、欲しくはない。
青臭いと言われようとも、青年は本気でそう思っていた。
思い通りに行かないシステムに、抗議の声をあげる。
「………ごめんね」
困ったような、はにかむような、ごちゃ混ぜになった表情で少女は消えていく。
「セフィ……セフィ………僕は……僕は………」

理由は分からない。
だが、この話を知っている。
この帝国の人間なら誰でも知っているおとぎ話。
勇者が仲間たちと魔王を封じ平和を得た、そんな普通の話。
話自体は知っている。
だが、ここまでの臨場感で再現されるこの状況は一体、何なんだろうか?
ぐらり、ぐらりと世界が揺れる。

『聖女』『義務』『犠牲』『魔王』『勇者』。

様々な単語が頭をぐるぐると駆け巡り、視界は光に包まれる。
「………ス…………………―クス……」
<そう、これは僕の記憶であって、君の記憶ではない>
脳裏に響く、青年の声。
(なんというか、随分珍しい夢だなぁ……)
<僕が……>

ごがしゃっ!

「ふぬおわっ!!」
容赦ない鉄拳が後頭部に炸裂し、少年が珍妙な悲鳴を上げる。
「リュークス、私の授業中に居眠りとは…いい度胸ね?」
視界が急速に鮮明になる。
見覚えのある教会の一室。
机に突っ伏すリュークスと、それを見下ろす尼僧(シスター)。
そして、周囲から漏れ聞こえる、くすくすという笑い声。

『子供たちへの義務教育』などという概念の無いこの世界。
子供たちは、貴重な働き手として農作業に駆り出されるのが普通だ。
教育を受けられるのは、貴族や経済的に裕福な層の子供たちだけである。
だがこの村、セリオン領土にある『勇者の生まれる村』は例外と言える。
その名の通り代々勇者を生み出してきたと言われるこの村では、帝国からの補助もあり、教育を受ける事が出来る。

「さて、居眠りリュークス君。
 君が暢気に居眠り出来るのも、帝国が平和なのも、『勇者』が世界を救ってくれたからなのよ。
 そしてその『勇者』をバックアップするのが、聖ルコナーア教会の神父や尼僧たちね」
手加減の欠片もなくリュークスをぶん殴った尼僧、シュティーは、話を続ける。
シスターの服装ながら、律動的に動く様子は、新人教師と言った様子だ。
「『勇者』だからって、絶対に『魔王』に勝てるわけじゃない。
 世界を旅して、各地に存在する力を得なければならない。
 その旅を手伝うのも、やはりあたしたちなわけよ」
ボリュームある胸を張り、シュティーは誇らしげに言う。
「………チチデカの魔獣(ぼそり)」
殴られたリュークスの聞こえるか聞こえないかくらいの報復(呟き)。
「形骸化しているけど、神父たちはその旅をなぞる必要があって、それが巡礼と言うんだけど……そりゃ!
その巡礼の旅はこの村にもやって来るのよっ……と、その教会関係者への道案内を、誰かにやって貰いたいのよ………ねぇえええ……うりゃ!」
にこやかに話ながらも、若いシスターは俊敏かつ的確な動きでリュークスに関節技を決める。
具体的に言うならば、コブラツイスト。
「うごっ!? ぐ……うぐぐぐぐ」
「あー、誰か快く道案内を引き受けてくれる良い子はいないかしらねぇ~」
そこから華麗に、卍固めへと移行する。
「ぎぎぎぎ…ギブギブ!!」
「あたしの聞きたい言葉は、そんな言葉じゃなくって~」
さらに一段階、締め付けが強くなる。
「ぎゃあああああああ! やります! やればいいんでしょう!
 その案内、僕にやらせて下さいぃいいいいいい!!」
「あら、そう。ありがとうリュークス君」
教師シュティーは、何事もなかったかのような笑みを浮かべる。
「せんせー、巡礼に来る教会関係者って、男っすか、女っすか?」
リュークスの友人、ガッタが質問する。
「女の人の場合、若いですか?」
友人マールも追加で質問を加える。
「女性が来る事、前提の質問ありがとう。
 結論から言うと女性、しかも若いわよ」
おおおおぉ、とクラスの半数(男)から声が上がる。
「あたしの後輩で、『百年に一人』と呼ばれるほどの才女よ。
 神聖術法のレベルはかなりのもんだし、格闘術もあたしと互角だもん」
歓声が、えぇ~、という落胆の声へと変化する。
声の主たちはルコナーア教のシスターという事で、おしとやかな女性を想像していたに違いない。

ルコナーア教の神父や尼僧は、『勇者』の手助けをする為に戦闘訓練を受けている。
その戦闘能力の高さは、この場のシスター、シュティーを見ても明らかだ(?)。
その格闘技を目の当たりにしているクラスの男たちにとって、それと互角……
物静かなシスター像が、がらがらと音を立てて崩れているのだろう。

「ぬぅうう……お約束通りの外見筋肉女か…いや、やはり別パターンのお約束で美人か…
 しかし、さらに意表を突いてやはりゴリラ雌……しかし、それで誰が得するんだ……」
マールは一人ぶつぶつと呟いている。
「そうねぇ、そんな大事な後輩だもんね。案内役にガッタ、マールあんたらも追加」
尼僧は今晩の献立を決めるくらいの口調で、それを決定したのだった。





「邪よ……退け」
凛とした女性の声と共に、その手から不可視の衝撃波が発せられる。
襲ってきた2メートル近い魔獣が、吹き飛ぶ。
それだけで魔獣は戦意を喪失したようで、一目散に逃げ出す。
「「す、すげえ……」」
案内役となったリュークスたちから、感嘆の声が漏れる。
「さぁ、進みましょう」
そう言うと、シスターフィリスは柔らかく微笑んだ。

『百年に一人』、そう呼ばれるほどの才女。
長い艶やかな髪に、整った顔立ち。
やや小柄な身体を包むような純白の神官服。
その白い肌は絹のように柔らかそうだが、充分なしなやかさをも併せ持つ。
そして『聖職者(シスター)』というイメージ通りの物静かな様子は、ガッタやマールが思わずガッツポーズを取るほどのものだ。

「フィリスさんは、僕たちと同じくらいの年齢なのに強いんですね……
 シュティー先生と互角ってのも、本当なんですか?」
女性に『強い』などと言う鈍感なリュークスの発言にも、彼女は嫌な顔一つしない。
「先輩とは何度か手合わせして貰いました。
まだまだ及ばないとは思いますが、いずれ現れるであろう『勇者』様の力になれるよう修行していますので」
にっこりと微笑む。
それだけでリュークスたちの顔が紅くなる。
「リュークス、お前だけ、ずるい。…じゃなくて聖女様、こちらです!」
ガッタとマールが、争って道案内を始める。
「ありがとうございます。…………あ、そこの足下、気をつけて下さいね」
フィリスは穏やかに微笑み、巡礼を再開する。

(……?)
それに気づいたのは、リュークスだけだった。
「あの……フィリスさん、どうかしましたか?」
「え?」
問われたフィリスはびっくりした様子で、リュークスを見る。
「あ、いや……すいません」
なんとなく謝ってしまう少年。
女性神官がほんの一瞬、険しい顔をしたように思えたのだ。
しかし、それは気のせいだったのかもしれない。
「あ……いえ。……ほんの少しだけ疲れたのかもしれません」
そんな少年を見ながら、フィリスは内心を隠し、言葉を選ぶ。

一瞬ではあるが、何かの気配を感じたのだ。
かなり強力な、それも穏やかでない類の気配。
今は消えているので、確信までは持てない。
その気配を探っていた様子を、リュークスに問われた。
(周囲に不安を与えるようでは、私はまだまだ未熟……)
『聖女』たる者、周囲に不安を与えてはならない。
そう考え、彼女は「疲れたかもしれない」と答えたのだ。
フィリスは有能ゆえに、その気配に気づきかけたが、全知全能の神ではない。
未来の全てを予測するなど不可能である。
「そうですか、じゃあ少し休憩しましょう」
彼女は後に後悔する事になるが、それを責めるのは酷というものだった。



「くすくすっ……ながぁいお休みから、目覚めた気分はいかが?」
楽しげな、どこか軽い女性の声が洞窟内に響く。
薄暗い洞窟と同色の黒いローブをまとった人影が、くすくすと笑う。
「……ここは……私は封印されていたのか………くっ、忌々しい」
楽しげな声に応えたのは、逆に不機嫌な声。
声の主はゆっくりと起き上がる。

艶やかに伸びる長い髪。
すらりと伸びた手。
肉付きはやや薄いが、その体は女性特有の柔らかさと膨らみがある。
だが、彼女は人間では無い。
何故なら、彼女の腰よりも下にあるのは二本の足では無く、鱗に覆われた蛇のものだったからだ。
ラミアと呼ばれる魔物である。

「その気配……お前も『闇の娘』か。そして私の封印を解いたという事は……」
ラミアの女性は久方ぶりの肉体の感覚を確かめるように、身体を動かす。
「ええ、魔王様が復活されました。ですので、ご協力願いますわぁ、アルミラさん」
同格である同じ『闇の娘』。
いや、魔王にそれを認められたのは自分の方が早いはずだ。
にも関わらず、この口の利き方……
「……ふん、まずは人間たちから力を奪い取らないと」
アルミラは釈然としないものを感じながらも、一応封印を解いたのが目の前のローブの女だと思い、不機嫌そうに答える。
「くすくすっ、丁度良い事にこちらに向かっている人間たちが居るわよ?」
黒ローブの女は、愉しそうに笑っていた。



「ガッタさん、マールさん、下がって!」
フィリスの真剣さを含む声に従い、二人ともダッシュで下がる。
彼女が魔獣の気配を敏感に察知したのだろうと思い、足手まといにならない為の措置だ。
「へぇ~。なかなか上物じゃない」
獣の唸り声が聞こえてくるかと思いきや、予想に反し聞こえてきたのは女性の声だった。
「あ、あれ? 女の人? ……あ、いや、魔物か」
「……ラミアです。それもかなり………強い」
フィリスが油断無く、メイスを構える。
現れたのは上半身が人間の女性、下半身が蛇の魔物、アルミラだ。
「その服、くそ女神のくそ神官ね。昔っから随分としつこいわねぇ」
不覚を取った過去を思い出したのか、魔族の女は、その神官服を認め毒づく。
「封印されていた魔物ですね。……考えようによっては丁度良いでしょう。
あなたを再び封印します」
少女が静かに宣言し、気を張り巡らせる。
「封印? この私を? ……笑えない冗談だねぇ。小娘が」
アルミラが腕を振ると、鋭く伸びる爪が広がる。
「……ルコナーア様、ご加護を」
フィリスは短く唱え、全身に気を滾(たぎ)らせる。
そして二人の戦いが始まった。



― ◇ ― ◇ ― ◇ ―



「くっ! 万全の体調であれば、こんな小娘にっ!!」
アルミラが、口惜しげに言葉を吐く。
当初は互角であった戦いも、時間と共に勝敗がはっきりとしてきた。
それは、すっかり観戦モードに入っていたリュークスたちにも分かるほどだ。
「凄いや、フィリスさん!」
「勝てますよっ、聖女様っ!」
少年たちから歓声が上がる。

「くすくすっ……勝って貰っちゃ困るのよねぇ」

突然沸いた別の女性の声。
「「えっ」」
そして、その声と同様に黒い靄(もや)のようなものが、広がる。
「なんだ、これ………黒い……霧??」
少年たちの腹から胸、そして顔のすぐ近くまで黒い霧が広がって行く。
「しまった! ガッタさん、マールさん、リュークスさん!」
状況に気づき、フィリスが声を上げる。
だが、それに答える声は無い。
「しゃあああああっ!!」
三人に気を取られていた隙に、アルミラの爪の一撃が振るわれる。
「くっ………」
フィリスは飛び退き、距離を取る。
「くすくすっ……だめよ、目の前だけじゃなくって周囲も気をつけないと」
女性の声が、黒い霧の中から響く。
「くっ……三人を放して下さい。その人たちは、無関係です」
人質を取られた不甲斐なさ、悔しさにフィリスはメイスを強く握る。
「くすっ、どうしようかしら?
 あなたのお願いを聞いてあげてもいいけど、そうすると私のお願いも聞いて貰いたいわ」
黒い霧から響く声に、尼僧は手にしたメイスを放り投げる。
見た目よりも重量のあるそれが、ごろりと転がった。
「……これで良いですか」
フィリスが悔しげに言う。
「ふんっ、新入りに助けられるのは癪に障るが……借りといてやる。
 さぁて……動かないでね」
劣勢だったアルミラは、ゆっくりとフィリスに近づく。
「………っ!?」
無抵抗の少女神官の身体に、アルミラの蛇部分が絡みつく。
フィリスは完全に動きを封じられる。
「ほほほほっ!」
毒々しい長い爪がフィリスへと伸び、たやすく神官服を引き裂く。
みずみずしい白い肌が露出する。
「んっふふふ。つやつやした肌。羨ましいわねぇ」
「くっ……嬲(なぶ)るというのですか」
羞恥と悔しさから、フィリスの肌が赤く染まる。
「そんなんじゃないわ………ただ」
アルミラの紅い舌が、少女の白い首筋を舐め上げる。
「血を貰うだけよ」
ラミアは、少女の首筋に歯を突き立てた。



状況は完全に不利だ。
黒い霧の中、リュークスは思う。
この場に居たのがフィリス一人であれば負けなかっただろう。
それに不利になれば、逃げるという選択肢もある。
彼女の力なら、難しくは無い。
だが、少年たちが人質に取られている今の状況では、それは不可能だ。
「僕たちの事より、逃げてフィリスさん! くそっ! この霧」
いくらリュークスが声を上げ動いた所で、霧は晴れない。
自然界に存在しないこの黒い霧は、魔族の能力なのだろう。
そしてフィリスは、今、ラミアに噛み付かれた。
血と共に命を吸われている。
「早くっ! 早くなんとかしないとっ!!」
この数メートル先さえ見えない霧を脱出して……
(あれ? なんでフィリスさんが危ないって分かるんだ、僕?)
少女神官の危機は、黒い霧の中見えないはずである。
冷静に考えれば、リュークスにそれが見えるはずがない。
<僕の力で見ているんだ。まやかしじゃなく実際に今、起こっている状況だ>
リュークスの脳裏に、唐突に若い男の声が響く。
「なっ、誰!? いや、そんな事よりも……」
<力が欲しいかい? この状況を打破出来る力を>
少年の思考を先回りしたかのような言葉。
言葉だけ聞いていれば、焦らすような言い回しだが、不思議とリュークスはそう感じない。
まるで必要な手順を踏んでいる、そんな印象を受ける。
「力? この状況をどうにか出来るのか? だったら……」
<けど、力を得たら君は責任も負う事になる。それでも…>
「早くしてくれっ! 人の命が、フィリスさんやガッタやマールが危ないんだ!」
まとわりつく黒い霧の中、リュークスが叫ぶ。
自分の力で誰かを助けられるならば、助けたい。
それは謝礼を期待してのものではない。
人間に元から備わっている、純粋な感情。
「よく分からないけど、何か方法があるならやってくれ!
 今、使わないでいつ使うっていうんだっ!!」
声の主の顔は分からない。
だが、納得して頷いたように、リュークスには思えた。
<ここに契約は成された。……呼ぶんだ。君のみが扱える『勇者』の力を>



「えっ?」
黒い霧を操るローブの女性は、それに驚きの声をあげた。
光の尾を引きながら、何かが飛来し、地面へと突き刺さる。
「この光……この力…………まさか………『勇者』の………」
黒い霧が霧散する。
突き刺さっているのは、光り輝く一振りの剣。
霧の拘束が無くなり、友人たちが倒れ込む。
(胸が上下している……大丈夫、二人は死んでない)
リュークスは冷静に、当然のように目の前の剣を引き抜く。
「はっ!」
呼気と共に地を蹴り、ラミアへと斬りかかる。
普段のリュークスの動きでは無い。
フィルムのコマを飛ばしたような、俊敏な動き。
「むっ!?」
何者かの攻撃を感じ、アルミラは下がった。
手に抱えていたはずの女性神官の重さが無い。
(動きが見えなかった!? 一瞬で取り返したというの!?)
無力な、ただの村人だと思っていた少年。
その変貌に、油断無く爪を構える。
「………リュークス…さ………ん……?……」
薄れる意識の中、フィリスは視界の隅に少年の姿を認める。
<多少、血を吸われているが、命に別状はない>
「……良かった」
リュークスは呟きながら、ゆっくりと少女神官を寝かせてやる。
「あんた……いったい何なの?」
光り輝く剣を持つ、突然の乱入者。
ただそこに居るだけでの、この威圧感はまるで……
(魔王様以外に……こんな…………まさか)
「……………」
少年は静かに立ち上がる。
(何なの? と、聞かれても……あの……僕は何なの? あとこの力とか剣は?)
<後で説明する。今は、目の前の『闇の娘』を倒す事を考えよう>
リュークスは無言のまま、内心は上記のやりとりがあるのだが、剣を構える。
「そう……くくっ、好都合よ。今の内にぶっ殺してあげるわ!!」
「………(こっ、怖ぇえええええええ!!)」
戦いが始まった。



「ぐっ……こんな、こんな事って………」
1日に2回も敗北を味わい、アルミラは唇を噛みしめる。
リュークスの口が何かを呟き、左手を振る。
ぴいぃいいん
「結界魔法!? くそっ、この人間ごときがっ!!」
自分の身体なのに、他人に操られるような感覚に、リュークスは首をひねる。
<冷酷なようだけど、『闇の娘』を逃がすわけにはいかない。
 魔王を倒す為に、その力を吸収しなければならないんだ>
(……吸収?)
勝手に動く身体に、少年の頭はついて行けてない。
<精神感応が最も強い部分を接触させ、生命線を構築。
そこから行為により、力を吸収する必要がある>
脳裏で爽やかな青年の声が聞こえるが、リュークスにはよく分からない。
(えっと、よく分からないんだけど……簡単に言うと?)
<性交……セックスだね>
「え……えぇえええええええええっ!?」
簡単に言い過ぎ、もう少しオブラートに包んだ言い方をして欲しい、などと少年は思う。
<まぁ、言い方を変えた所でやる事は同じなわけで……
詳しいメカニズムについて説明してもいいけれど、それは後にしたい>
驚愕するリュークスの意志とは無関係に、その身体は呪文を詠唱する。
「はぐっ! くっ、人間ごときに……このアルミラ様がっ!」
弱った彼女は、何かしらの術で動きを封じられたらしい。
(説明はいらないけど……その………うぅーん)
<…なんなら、僕が全て担当しても構わないけれど>
「ああっ! もう、やればいいんだろう! やればっ!!」
自棄になりつつ、リュークスが叫んだ。










「っ! 触るな! 汚らわしい人間がっ!」
近づくリュークスにアルミラは強く言い放つ。
だが、それで止めるわけにもいかず、少年は性行為を始める。
(えっと………)
友人たちとの深夜トークで、おおよその知識は得ている。
後はそれを実践に移すのみだが……
「くっ! 触るなと言っている!!」
魔族女性の言葉に困惑しつつも、まず目に付いた胸に手を伸ばす。
形の良いお椀のような膨らみを握る。
「……っ! ………っ………」
(わっ、柔らかい)
むにむにと形を変え、心地よい弾力が返って来る。
両手で鷲掴みにするように、揉みしだく。
「…っ………ぅ……………あ……」
片方は先端部分をつつき、もう片方は胸全体を包むように揉む。
手の隙間からこぼれるような柔らかさと弾力を楽しむ。
「くぅ……調子に乗って………っ……んっ………」
自由の利かないアルミラの身体をゆっくりと横たえる。
露わになっている乳首をゆっくりと口に含む。
「…っ………ぁ……………んっ…………」
(母乳とかやっぱり出ないよな……あんまり、味はしない……かな?)
色々考えつつも、本能に従い、先端を舐める。
「くぅ…なんでこんな程度の……愛撫で……あっ………」
柔らかい双丘から、リュークスの手は腰へと伸びる。
意外にきめ細かいつるつるした肌を滑る。
「んあっ……ぅ…そうか……これも…………きゃ……んっ……」
アルミラはぷるぷると身体を震わせる。
それが怒りを堪えてのものか、快楽に反応したものかは分からない。
だがその声には、着実に甘いものが含まれ始めた。
「あっ…………んっ……ぅ…………ぅう……んっ……」
少年の手はなだらかな臍(へそ)付近に、そして更に下へと動く。
「っ! …そこはっ………はんっ………くっ……こんな………」
へその下部分、茂みの奥の花弁へと指を這わせる。
ぬるりという感触。
こぼれ落ちる程の愛液が溢れている。
(うわぁ、凄いぬるぬるだ………さらに下は……あ、蛇部分だ)
太もも辺りから、蛇の身体となっている。
だが幸いな事に、その上の女性器は人間のものと変わらない。
「くっ……うあっ……み、見るな………んっ……」
割れ目の周囲の花弁部分を指で開いてみる。
にちゃ、という音と一緒に愛液の糸が垂れ下がる。
「…く、屈辱……こんな……あんたなんかに……ああっ……」
初めて直に見るその部分に軽いショックを受けながら、リュークスは行為を続ける。
(ああ、女の人ってこんな風になってるんだ……うわーうわー)
ぬめる液体を割れ目全体に塗りつけるように、指を上下する。
「ん……あっ……あ……んあっ…………ああっ……」
リュークスの指が、小さな突起に触れる。
同時にぴくりと、アルミラの身体が反応する。
(ここ、気持ち良いのかな?)
女体のあちこちを舐めながら、指を動かす。
「くっ…んっ……もっ……と………ああっ…くっ…いやっ……」
指の動きに合わせるように、アルミラの腰が前後する。
(あぁ、もう我慢できない!)
リュークスはズボンを下げる。
完全に降ろすものもどかしく、中途半端なまま、アルミラの腰に押しつける。
「っ! …ひっ……やっ………そんな……いやよっ………ああっ……」
逃れようと身体を動かすが、その動きは逆に少年の腰と擦れる。
ぬるり、という感触がリュークスの下半身を襲う。
(暖かくて…気持ち良い……うっ……うわぁ、やばい……)
まだ挿入する前だというのに、その秘所は暖かくぬるぬると湿っている。
少年が腰を前後させるだけで、男根には耐え難い快楽が伝わる。
「ひっ……はっ…あっ……あんっ……あっ…………」
「くっ………うっ!」
アルミラの腰を固定し、堅く膨れあがった竿を突き入れようとする。
「あっ…ああっ……あくっ………はぁ…んっ………」
だが上手くいかず、穴の上を滑り、それが彼女のクリトリスを刺激する。
びくんびくんと身体が震える。
「ひあああっ……やっ…それ…だめぇ……あっ……ああっ……」
リュークスは意図していなかったが、何度かトライし、それがアルミラに快楽を与える。
「あっ……ああっ…くっ……んっ………ああっ……あ……ああっ……」
「今度こそ………っ」
ぬぷり、とアルミラの中に侵入する。
「あっ……ああああぁ!!」
男根が入った刺激に、喘ぎ声が大きくなる。
同時に包み込まれるような暖かさと、ぬるぬるした刺激がリュークスに伝わる。
(うああっ、凄い……!)
心地よい肉の壺に、少年の腰は自然と動いてしまう。
「あっ、はぐっ……あっ……あ…あああっ………んっ……ぅああああっ……」
突き入れるたびに、アルミラの喘ぎが聞こえる。
熱と快楽が結合部分からせり上がって来る感覚。
高級な酒を飲んだ時のような、表現しようのない酩酊感が全身を覆って行く。
「ああっ……い、いやっ……感じちゃ…う……人間なんかにっ……あっ……あああっ」
全身を覆った快楽が、再び結合部分へと流れていく感覚。
抗いがたい快楽の波を放出する為に、腰を激しく動かす。
「あっ……ああっ…あ…いっ…ふぁあああああああああ!」
どくん、どくんと脈打つ。
全身を真っ白に覆い尽くすような、最高の放出感。
「あ……………」
リュークスはアルミラを吸収した。





「はぁ…はぁ……はぁ………」
短距離を全力疾走したような呼吸の荒さ。
そしてそれが収まるにつれ、眠りに落ちそうな感覚が全身を襲う。
(このまま眠ったら……かぜ……ひいちゃう…………かも………)
それだけ考えたところで、リュークスの意識は途絶えた。



リュークスたちから離れた森の中。
黒いローブを着た女性が、静かに佇む。
その表情は黒い影に覆われ、伺う事は出来ない。
コントラストで病的なまでに白く映るその口元が、言葉を紡ぐ。
「あの光……あの波動は『勇者』のもの……。
 しかし今はそれを感じない………ルクス」
ローブの下、紅く引かれたルージュが、更に言葉を続ける。
「くすっ、勘違いにせよ、完全に覚醒していないにせよ……
 魔王様の邪魔になるものは……排除しましょうか?」
その場に居るのは、彼女一人だけ。
にもかかわらず、会話のように『黒霧』は言う。
「魔王様の為にこそ、ちゃあんと覚醒して貰わないと……ね?
そうでしょう? くすっ、くすくすくすっ……」
女性の笑い声が遠ざかり、完全に消えた時には、その姿もまた消えていた。





To Be Continued・・・























ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

あとがき

このお話は、容易に想像出来ると思いますが、勇者の話です。
まぁ、よくあるザッピングっつーやつです。(多分)

ぶっちゃけ、魔王の逆。
『ダークサイド』が、「魔王が主人公」「ソフト陵辱(?)」の話だったわけですが、その逆です。
「勇者が主人公」「ソフト陵辱される(笑)」という話になっていく予定です。
あ、今回は勇者君が攻めですね……


お話の解説に戻ると、勇者編のラスボスは魔王。
魔王編のラスボスは勇者。
となると、光と闇の決着は!?
勇者と魔王の戦いの結末は!?
というか、そこまで続くのか、この小説!?(まて)

何度も繰り返すようですが、私はプロでは無いので、過度の期待はしないで下さい。
それが、二流、あるいは三流の小説を楽しむ方法です(笑)

では、ちゃんと矛盾が少なく(無いとは言えない)話が続く事を祈りながら。


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