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番外編
Drip.1
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隣に横たわっている類が柔い手付きで髪を梳く。
「ぐっすり寝てちゃって、可愛い」
そう小声で囁き、次いで「この愛くるしい寝顔、護るよ」と続けて言った。眠っている藍介には何を囁いていたのかは聞こえていないだろう。
暫くして、手の感触を感じ次第に眠から解放されていく。こちらを見ながら髪を梳く男はいったい──?藍介は瞼を起こしその類と視線を合わせた。
「ん……俺飛んだのか?」
「おはよう、飛んだ。あんあん啼いて可愛かった」
「言わないでくれ。で、ずっと居てくれたのか?」
「こんな可愛い子のそばを離れるなんてムリムリ」
「ありがとう。隣に居なくても慌てたりしない、子供じゃないんだから」
「ふーん。あ、もうすっかり夜だよ藍介」
ふたりは、店が休みで朝から性欲旺盛な藍介に誘われ寝台の上で幾度なく体を重ねた。その最中、藍介が意識を飛ばしてしまったのだ。
それから時間は刻々とすぎていき、辺りはすっかりと暗くなり、空から星々輝いていた。
「藍介、せっかくだから夜の散歩にでも行く?」
「ああ、それいいな。気持ちよさそうだ」
「でも、腰は大丈夫……?」
「大丈夫だ、類が気遣ってくたからな」
「そっか、よし!行こう!」
夜を泳ぐ……とも言えようか、少しそれは文学的で心がくすぐられる想いだが、梅雨の時期に晴れた夜──それは月夜に照らされ恋人の心をつなぐ美しい時を過ごせそうだと思った。
お店の近くにあるこの場所は、初めて出会った場所だ。出会ったあの時のように一緒に歩いてきた。あの時と違うのは、関係性が恋人である事と、今宵が晴れであることだけ。
「──月が綺麗だね」
「うん、死んでもいい──」
知る人ぞ知る愛の告白のことばであり、言葉そのもの以上の意味を持つ。ふたり月明かりに照らされる紫陽花に囲まれ、そして綺麗な月を見あげて気持ちのままに言葉を交わした。そしてふたりは顔を合わせ嬉しそうに笑った。
「たまにこうして夜を泳ぐのも良いものだね」
「こんな素敵な時間過ごせるならまたいつでも」
類がそう言った瞬間、藍介は双眼を細めその目に寂しさを灯し言った。
「俺は愛する人の還る場所になりたい、なれるかな?」
「バカ、……もう、なってるよ」
「あはは、なら……それが永遠に続くよう月に願おう」
いつもとは違う年の差を感じたのは、お互いの生きれる時間だった。いつまでも、永遠に……なんて、どちらかが空を渡れば叶わないものになると思っていた。けれど、例えその時が来たとしても、七夕の織姫と彦星のように想う気持ちが毎年逢わせてくれる気がした。
「類、次の満月の夜もこうして夜の散歩がしたい」
「その時、晴れてるといいな」
暫く夜の散歩を楽しむとまた肩を並べ帰路へ向かった。
「ぐっすり寝てちゃって、可愛い」
そう小声で囁き、次いで「この愛くるしい寝顔、護るよ」と続けて言った。眠っている藍介には何を囁いていたのかは聞こえていないだろう。
暫くして、手の感触を感じ次第に眠から解放されていく。こちらを見ながら髪を梳く男はいったい──?藍介は瞼を起こしその類と視線を合わせた。
「ん……俺飛んだのか?」
「おはよう、飛んだ。あんあん啼いて可愛かった」
「言わないでくれ。で、ずっと居てくれたのか?」
「こんな可愛い子のそばを離れるなんてムリムリ」
「ありがとう。隣に居なくても慌てたりしない、子供じゃないんだから」
「ふーん。あ、もうすっかり夜だよ藍介」
ふたりは、店が休みで朝から性欲旺盛な藍介に誘われ寝台の上で幾度なく体を重ねた。その最中、藍介が意識を飛ばしてしまったのだ。
それから時間は刻々とすぎていき、辺りはすっかりと暗くなり、空から星々輝いていた。
「藍介、せっかくだから夜の散歩にでも行く?」
「ああ、それいいな。気持ちよさそうだ」
「でも、腰は大丈夫……?」
「大丈夫だ、類が気遣ってくたからな」
「そっか、よし!行こう!」
夜を泳ぐ……とも言えようか、少しそれは文学的で心がくすぐられる想いだが、梅雨の時期に晴れた夜──それは月夜に照らされ恋人の心をつなぐ美しい時を過ごせそうだと思った。
お店の近くにあるこの場所は、初めて出会った場所だ。出会ったあの時のように一緒に歩いてきた。あの時と違うのは、関係性が恋人である事と、今宵が晴れであることだけ。
「──月が綺麗だね」
「うん、死んでもいい──」
知る人ぞ知る愛の告白のことばであり、言葉そのもの以上の意味を持つ。ふたり月明かりに照らされる紫陽花に囲まれ、そして綺麗な月を見あげて気持ちのままに言葉を交わした。そしてふたりは顔を合わせ嬉しそうに笑った。
「たまにこうして夜を泳ぐのも良いものだね」
「こんな素敵な時間過ごせるならまたいつでも」
類がそう言った瞬間、藍介は双眼を細めその目に寂しさを灯し言った。
「俺は愛する人の還る場所になりたい、なれるかな?」
「バカ、……もう、なってるよ」
「あはは、なら……それが永遠に続くよう月に願おう」
いつもとは違う年の差を感じたのは、お互いの生きれる時間だった。いつまでも、永遠に……なんて、どちらかが空を渡れば叶わないものになると思っていた。けれど、例えその時が来たとしても、七夕の織姫と彦星のように想う気持ちが毎年逢わせてくれる気がした。
「類、次の満月の夜もこうして夜の散歩がしたい」
「その時、晴れてるといいな」
暫く夜の散歩を楽しむとまた肩を並べ帰路へ向かった。
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