【完結】前提が間違っています

蛇姫

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転生悪役令嬢は乙女ゲームをしたことがない

何の恨みがあるんだ!

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「ルナリア・ドラグーン公爵令嬢!幾ら公爵令嬢でもやっていいことと悪いことがある!リリアちゃんに謝ってください!貴女の婚約者がリリアちゃんを選んだのも………」
「選んだのも……何かな?」

ヴォルフ様との楽しい昼食の時間に何事かと思えば、入学式の時に見たあの変な女子生徒はリリアというのね。殿下狙いなのかと思っていたけれど、ヴォルフ様の素晴らしさに気が付いて此方に狙いを移したということ?えっ………困る、非常に困る。

「誰ですか?貴男には関係ないですよね?」
「…………え?リリアちゃん、ドラグーン公爵令嬢の婚約者と仲良くなったから……ドラグーン公爵令嬢に虐められたって………」
「そうですけど………いいの………私が悪いから………」
「リリアちゃん……彼のことは知ってるよね?」
「えっ…………知らないですけど」

リリアと呼ばれた女子生徒の取り巻きたちが青褪め始めている。まあ……【私の婚約者と親しいから私がリリアを虐めている】はずだったものね。私の婚約者を知らない時点で、私が彼女を虐める理由が瓦解するのは当然のこと。そんなことより、別にヴォルフ様に狙いを移したわけではないのね。良かった、本当に良かった。

「「「申し訳ありませんでした!!」」」
「それは、誰に対する謝罪かな?」
「いや……あの……」

男爵令息の額から冷や汗が流れている。私に謝罪を要求した男子生徒だ。他の二人よりヴォルフ様の怒りは大きいように思われる。え?私?私はヴォルフ様を知らない生徒がいた事には驚いているけれど、特に怒っていない。勘違いは誰にでもある。他の誰かと間違えたのではないかと思う。二度と関わりたくはないけれど。

「ヴォルフ様、勘違いは誰にでもありますわ」
「………そうだね、ルナ。勘違いは誰にでもある……君たちも【勘違いでした】は今回だけにしてくれるかな?」
「「「はい!!寛大な御心に感謝いたします!!」」」
「えっ……ちょっと……」

まだ何事かを云おうとしている変な女子生徒は放置して、ヴォルフ様と私は場所を移動し食事を再開した。例の三人も彼女を置いて席に着き、食事を素早く終わらせた後、窓越しに此方に向かって深々とお辞儀をしてから北棟に戻って行った。

「彼らは大丈夫かしら?」
「……彼らなら今回だけは若気の至りで済ませられるよ」
「良かったですわ、けれど何故あの様な勘違いをしたのかしら?」
「何故だろう?不思議だね?」
「ええ………本当に」

私とヴォルフ様は首を僅かに傾げながらも、この日はこれで終わったのです。そう………この日は。彼女の取り巻きは三人だけではなかった。何れも下位貴族や裕福な商家の息子たちで、幾度となく同じことを繰り返す羽目になるのだけれど、最終的には向こうが深々と謝罪をして終わる。いい加減にして欲しい。
ヴォルフ様が傍にいる時は直ぐに終わるのだけれど、ヴォルフ様が生徒会で忙しい時には、私一人で食事しているものだから昼食抜きになることも多々ある。慣れたので構わないけれど。
今日もヴォルフ様は生徒会の皆さんと食事するので、私は一人で食堂に来ている。そして始まる……地獄の時間。

「ルナリア・ドラグーン公爵令嬢!!リリアに謝れ!!」

今回もですか……入学から早一ヶ月。流石にしんどい。目立ちたくない。何なの……このピンク頭め。私に恨みでもあるのか。

「私に何を謝罪しろと?」
「決まってるだろう!?お前の婚約者がリリアと仲良しだからとかいう理由で虐めるとか有り得ねぇ!!」
「私の婚約者はお忙しい方ですのよ?何時、仲良くする時間がお有りなのかしら?」
「は?そんなの休憩時間とか!!」
「休憩時間?生徒会は今とても忙しい時期ですわ。私の婚約者が仕事を放り投げる様な殿方に見えて?」
「えっ………生徒会?」
「左様でございますわ」

今回の殿方は割と早くに顔を青褪めさせた。察しは良いのに情報収集能力には欠けると……。残念な人だなぁ。それとも見た目に騙された?それはそれで大丈夫か?

「リリア……どういう事だよ?」
「私のことを疑うの?」

一瞬でうるうるした瞳になった。嘘泣き女王と心で呼ぶ分には自由だと思う。たった一ヶ月で全女子生徒に厭われて、有能な男子生徒に避けられるって凄いことだよ?絶対になりたくないけど。
あれ?先程まで終わる雰囲気だったのに……終わっていない。昼食抜きコースだ……と考えていた時だった。

「リリアが泣いてるんだ!お前が嘘を言ってるのは分かってるんだぞ!謝れ冷徹女!!何時まで座ってるんだ!!」

私は勢いよく椅子から引き摺り落とされた。周囲から女子生徒たちの悲鳴が聞こえ、流石にマズイと察したのか周囲にいた男子生徒の一人が教師を呼びに行った。

これはマズイ。これ迄は許せる範囲内だったけれど、これは完全に暴力だ。それも子爵令息が公爵令嬢に暴力行為をしたとなれば大問題。学園側の責任問題に発展する。更に問題なのは、これをヴォルフ様に見られたことだ。身体を鍛えているのに恥ずかしい。

「ルナ!」
「「「「え?」」」」

ヴォルフ様が私を抱きしめ、私を引き摺り落とした男子生徒と、それをニヤニヤ笑って見ていた男子生徒数名に微笑みながら云った。

「君たちは僕のルナに何をしているのかな?」
「えっ………俺たちはリリアのために」
「また貴男ですか?関係ない人は出てこないでください!」
「「「「…………は?」」」」

そこで察した。自分が引き摺り落とした女子生徒は無実であり、自分たちが騙されただけなのだと。しかし……もう遅い。公爵令嬢に暴力行為をした張本人と、ニヤニヤ笑って見ていた男子生徒数名の顔は完全に青を通り越して白くなっている。

私は鍛錬が意味をなさなかった事の方が恥ずかしくて、何かもうそれどころではないけれど、一つだけ言いたい。ピンク頭め……私に何の恨みがあるんだ!
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