【完結】前提が間違っています

蛇姫

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転生悪役令嬢は乙女ゲームをしたことがない

言ってしまった

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足が痛い。引き摺り落とされた時に捻挫したのかも知れないが、四人の表情から察するに「怪我しました」とは云えない状況にある。学園長と教師が駆けつけた時には、ヴォルフ様以外の生徒会の皆様も周囲におられたが、これは非常にマズイ状況だ。何がマズイって当然だけれど物凄く目立っている。帰りたい。

「話し合いを始める前に、ルナを保健室に連れて行っても宜しいですか?足が腫れているので手当をしたいのですが……」
「ヴォルフ様………」

(貴男は神様ですか?)

「足が腫れている!?」

一人の教師が大袈裟に反応した。確かに足が腫れているけれども、腫れているお陰で痛みが引いてきた。自慢ではないけれど、前世では捻挫の常習犯だったから特に気にならない。貴族令嬢としてはハイヒールを履く機会が多いので困るけれども、捻挫している間はスリッパで暮らせる!やったー!

「ルナ、保健室に行こうか」
「ええ……よろしくお願い致しますわ」

私はヴォルフ様の肩を借りようとしたのだけれど、お姫様抱っこされてしまった。恥ずかしいので下ろしてください。そして近い!ご尊顔が近い!推しにお姫様抱っこされている私は思った。例え世界が明日滅んでも【我が生涯に一片の悔いなし!】
アニオタなら年齢を越えて知っている名言だ。………多分。

「足は痛む?凄く腫れているけれど………」
「大丈夫ですわ、腫れてしまえば痛みは何故か消えますもの」
「ごめんね、僕がもっと確りしていれば……」
「ヴォルフ様に非はございませんわ」
「でも……足が……」

ヴォルフ様が珍しく泣きそうな顔をしている。どんなヴォルフ様も素敵ですけれど、私は推しには笑っていて欲しいのです。だからこそ、前世では全力で推しの恋を応援しておりましたし、推しの成長による変化も瞬時に受け入れた。誰に何と言われようとも、私の推しへの思いは消えない、消せない、無くならない。

「ヴォルフ様は多忙を極めてお出ででした」
「それでも……それでも僕は……君を守りたかった」
「その気持ちが何より嬉しいですわ」
「ルナ………僕を嫌いにならないで」
「なりませんわ。私はどんなヴォルフ様も愛しておりますもの」
「…………愛の告白?」
「えっ…………あっ………忘れてくださいませ!」
「嫌だ、忘れない。何があっても」

ヴォルフ様がお姫様抱っこしている私のことを強く抱きしめた。容量過多で総て吹き飛びました。推しとは癒やし、推しとは勇気、推しとは元気……ええ、足が治った気がします。

「足にヒビが入っておりますね」

……治ったと思ったのは気の所為だった。推しパワー凄い。本気で完治したと思いました。痛くないし、腫れていることを完全に忘れていたもの。推しって凄いなぁと思いながらヴォルフ様を見た……微笑みが黒く見えるのは気の所為ではないと思う。黒いヴォルフ様も素敵です!腹黒キャラだったのですね!いいと思います!

現実逃避はこれくらいにして、これは本格的に彼らの将来に影響が出てしまう可能性が高まった。特に私を椅子から引き摺り落とした子爵令息は四男で、騎士志望だったと記憶している。この身体になってからの私の記憶力は異常に優れているので間違いはない。途中で志望変更していた場合には、その限りではないけれど、無実の女性に傷を負わせたのは騎士失格と見做されかねない。

「ヴォルフ様、彼らはどうなりますの?」
「……ルナの怪我の状態を見て判断を下すことになるね。子爵令息だけは迅速に騎士科から普通科に異動になるとは思うけれど」

記憶していた通り彼は騎士科だった。ピンク頭の言葉だけを鵜呑みにした彼にも非はあるけれど、それ以上にピンク頭の責任は重い。私を執拗に狙う理由は分からないけれど、私に虐められたなどという嘘偽りを彼らに吹き込み、今回の騒動にまで発展するに至った原因は確実に彼女にある。
簡単に美しい涙を流せる女が心優しく清らかだと誰が言ったんだ。本当の涙は基本的に汚い。涙と一緒に鼻水も出るから。

「ヴォルフ様、彼らは私がピンク頭のご令嬢を虐めたと本気で思っているご様子でした」
「そのようだね………僕を知らないと云った彼女の言葉で青褪めていたから。だからといって、此処までされて赦すことは公爵令嬢としてやってはいけないよ?」
「わ……分かっておりますわ、確認までに」
「うん、ルナは優しすぎるから……僕が盾にも矛にもなるよ」

公爵令嬢としての自覚はある。彼らを赦すことは許容範囲を越えているのだと理解もしている。けれど前世の私が叫ぶのだ。穏便に済ませられないか……と。

この時には、ヴォルフ様が次期公爵としての教育を受けているのもあって、何事もヴォルフ様に相談・確認するようになっていた。私に公爵は荷が重い。けれど入り婿となった者が家を乗っ取らない保証はなかった。だから私が頑張っていたのだけれど……
ヴォルフ様は父からの信頼を得て、私から権利の総てを奪うのではなく、あくまでも子供たちのための中継ぎ役を請け負ってくれたのだ。コミュ症の私が頑張りすぎなくていいように。

そんなことより………私………ヴォルフ様に「愛している」と言ってしまった。言葉にする気は無かったのに。明日からどんな顔で会えば……いや、今からどんな顔をすればいいんだ。
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