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転生ヒロインは最後まで乙女ゲームだと思っていた
大人の事情(第三者視点)
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リリアが、自分の隣に知らない男が寝ていた……という、人並みの感情を持っている者ならば、誰であろうと叫びたくなる状況に陥る少し前……寮で寝泊まりしている総ての生徒が学園に登校し、寮母以外は出払っている時間帯まで遡る。
寮母がいつもの様に清掃道具を取り出し、三階から順に掃除をしていた時だった。来客を報せる鐘が鳴り響いたのは。
生徒に来客がある時には、事前に寮母に報せる決まりになっているのだが、この時間に来客があると報せた生徒は一人もいない。
速達だと思った寮母は掃除の手を止め、大きな声で叫びながら玄関に走った。
「ちょっと待っておくれ!帰らないでおくれよ!」
速達は基本的に有事の際にのみ送られる手紙だ。何が記されているか分からない大切な手紙を、受け取り損ねるわけにはいかない。
「速達かい!?」
寮母は必死な形相で相手を見て………固まった。
玄関で寮母を待っていたのは、王家の紋章が入った手紙を掲げた騎士だったのだ。
「……そのままで構いませんので、お聞きください」
騎士の声が優しく穏やかなものであったことから、自分が裁かれるわけでは無いことを理解した寮母は、ゆっくりと静かに頷き、息を整えながら言葉の続きを待った。
「ローウェン子爵家の居候であるリリア嬢に対し、婚姻に関する王命が出ております」
「………ローウェン子爵令嬢が………婚姻?」
学生の身で婚姻するということは、婚姻しなければならない行為に及んだと認めているようなもの。
それを王命で強制的に行うなど聞いたことがない。
「あの子……婚姻しなきゃいけないことでもしたのかい?」
「……これから、するんですよ」
「!!」
寮母はその言葉で総てを察した。リリアが婚姻することは決定事項なのだから、当然のように相手も決まっているのだろう。
寮母にとっての問題は、リリアが婚姻することではない。騎士が自分に対して、婚姻に【関する】王命が出ていると言ったこと。
「私は何をすればいいんだい?」
「………話が早いですね」
騎士は王命の続きを読み始めた。
「リリア嬢が婚姻するにあたり、寮母【マダム・ローズ】には【リリア嬢が知らない男を女子寮に連れ込んだと思われる状況を目撃した証人】という役割を担って頂きます」
「……………女子寮に男を入れろってのかい?」
「ご安心ください。護衛は徹底的に致します」
「当然だよ!」
王命とはいえ、他人様からお預かりしている大切なご息女たちを危険に晒すわけにはいかない。
「もう一つ、これは女子寮全体で協力して頂くことですが……」
「何だい!?」
「……目撃者になって頂ける生徒を募って欲しいのです」
「…………共犯者にする気かい?」
「いいえ、あくまでも【現場を目撃した生徒の一人】という役回りですので、貴女が大袈裟に騒いだ結果、何も知らない生徒たちが集まってきたのなら…それで構いません」
要するに目撃者が多ければ何でもいいということだ。
「私が大袈裟に騒ぐから…生徒に王命を下すのは辞めとくれ」
「ご英断に感謝致します。……リリア嬢の部屋はどちらに?」
「………何をする気だい?」
「細工の途中で起きられては困りますので」
そう言いながら、騎士は背後を振り返り、女騎士に話しかけた。
「アレは持ってきているか?」
「此方に」
そう言いながら女騎士が懐から取り出したのは美しい香炉。
リリアが違和感を覚えた原因は、この香炉が部屋に置かれていたため、朝とは違うと感じたわけだが、それを無視したのはリリアの責任と言えなくもない。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
リリアが自分が抱いた違和感を無視してベッドに横になった後、数名の女騎士が全身を黒い布で覆った何者かをリリアの部屋に案内し、女騎士がリリアの傍に寄り、起こさないよう慎重にリリアの服を脱がせた。……下着は着せたままなので、全裸なわけではない。
それから黒い布を回収し、男が上半身だけ裸になり、ベッドに入って横になったのを確認すると、黙礼して部屋を後にした。
その僅か数分後のことだった。リリアの叫び声が女子寮全体に響き渡り、寮母が計画通りにリリアの部屋を開け、それを【大勢の者が目撃】することになったのは。
つまりは……二人の間には本当に何も無かったのだが、寝た振りをしていた男と、この国の王家とが繋がっていたのだから、総ては【大人の事情】として処理された。
所謂【予定調和】であるため、誰に訴えた所で無駄なのだ。
寮母がいつもの様に清掃道具を取り出し、三階から順に掃除をしていた時だった。来客を報せる鐘が鳴り響いたのは。
生徒に来客がある時には、事前に寮母に報せる決まりになっているのだが、この時間に来客があると報せた生徒は一人もいない。
速達だと思った寮母は掃除の手を止め、大きな声で叫びながら玄関に走った。
「ちょっと待っておくれ!帰らないでおくれよ!」
速達は基本的に有事の際にのみ送られる手紙だ。何が記されているか分からない大切な手紙を、受け取り損ねるわけにはいかない。
「速達かい!?」
寮母は必死な形相で相手を見て………固まった。
玄関で寮母を待っていたのは、王家の紋章が入った手紙を掲げた騎士だったのだ。
「……そのままで構いませんので、お聞きください」
騎士の声が優しく穏やかなものであったことから、自分が裁かれるわけでは無いことを理解した寮母は、ゆっくりと静かに頷き、息を整えながら言葉の続きを待った。
「ローウェン子爵家の居候であるリリア嬢に対し、婚姻に関する王命が出ております」
「………ローウェン子爵令嬢が………婚姻?」
学生の身で婚姻するということは、婚姻しなければならない行為に及んだと認めているようなもの。
それを王命で強制的に行うなど聞いたことがない。
「あの子……婚姻しなきゃいけないことでもしたのかい?」
「……これから、するんですよ」
「!!」
寮母はその言葉で総てを察した。リリアが婚姻することは決定事項なのだから、当然のように相手も決まっているのだろう。
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「当然だよ!」
王命とはいえ、他人様からお預かりしている大切なご息女たちを危険に晒すわけにはいかない。
「もう一つ、これは女子寮全体で協力して頂くことですが……」
「何だい!?」
「……目撃者になって頂ける生徒を募って欲しいのです」
「…………共犯者にする気かい?」
「いいえ、あくまでも【現場を目撃した生徒の一人】という役回りですので、貴女が大袈裟に騒いだ結果、何も知らない生徒たちが集まってきたのなら…それで構いません」
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「私が大袈裟に騒ぐから…生徒に王命を下すのは辞めとくれ」
「ご英断に感謝致します。……リリア嬢の部屋はどちらに?」
「………何をする気だい?」
「細工の途中で起きられては困りますので」
そう言いながら、騎士は背後を振り返り、女騎士に話しかけた。
「アレは持ってきているか?」
「此方に」
そう言いながら女騎士が懐から取り出したのは美しい香炉。
リリアが違和感を覚えた原因は、この香炉が部屋に置かれていたため、朝とは違うと感じたわけだが、それを無視したのはリリアの責任と言えなくもない。
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リリアが自分が抱いた違和感を無視してベッドに横になった後、数名の女騎士が全身を黒い布で覆った何者かをリリアの部屋に案内し、女騎士がリリアの傍に寄り、起こさないよう慎重にリリアの服を脱がせた。……下着は着せたままなので、全裸なわけではない。
それから黒い布を回収し、男が上半身だけ裸になり、ベッドに入って横になったのを確認すると、黙礼して部屋を後にした。
その僅か数分後のことだった。リリアの叫び声が女子寮全体に響き渡り、寮母が計画通りにリリアの部屋を開け、それを【大勢の者が目撃】することになったのは。
つまりは……二人の間には本当に何も無かったのだが、寝た振りをしていた男と、この国の王家とが繋がっていたのだから、総ては【大人の事情】として処理された。
所謂【予定調和】であるため、誰に訴えた所で無駄なのだ。
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