状況の人、異世界で無敵勇者(ゲームチェンジャー)を目指す!―加筆修正版―

三〇八

文字の大きさ
5 / 197
状況の人、異世界へ転移する

状況の人、異世界に立つ!2

しおりを挟む
 自衛隊上がりの龍海は標準装備の89式小銃や、64式小銃はお馴染みであったが、グァムの射撃場で数回使用しただけのM629が出せるかどうかは正直不安だった。
 だが、看板に偽りは無い様だ。
 あの射撃場で手に取った、44マグナム弾が使用できる銃身長6インチのM629が今、手の中にある。
 しかもその時に触った本体に付いていたスリ傷や、握把グリップの欠落した部分まで全く同じにされている。
 弾倉シリンダーを開くと、弾薬カートリッジは入っていない状態だった。一番最初に手にした時のインパクトそのままに再現されたのか?
 弾を装填する前に、まずは空撃ちで動作を確かめてみる。
 チキッ!
 ゆっくりと撃鉄を起こす。続いて引鉄を引く。
 カチン、ガチン!
 予め撃鉄を起こした後に引鉄を引くシングルアクションで撃鉄を落とした後、そのままもう一度引鉄を引き、ダブルアクションでの撃鉄・回転弾倉の稼働も試す。
 モデルガン等の主要素材である亜鉛ダイカストにみられる粘る感触ではなく、ステンレススチールによる滑らかで軽やかな動きが指に伝わってきた。
 ――まんま629だ!
 グァムでの体験と同じ感触を味わい、警戒に気を付けなければならない今の状況も忘れて口元がニヤついてしまう龍海。全くオタと言う人種は。
 ――む、いかんいかん!
 オタ心を押し込めて、龍海は次に弾薬を再現した。

 拳銃同様に再現された6発の弾丸を装填し、龍海はとりあえずこの獣道を辿ってみる事にした。
 ――44Magで相手が出来るのは、鹿くらいまでかな? 熊よりデカブツだと、ちょっと不安……
 正直、相手が熊以上であると44Magでは心許なく、30口径以上の小銃弾が欲しいところなのだが、鬱蒼と茂る草木が纏わりつきそうな全長の長い小銃は取り回しに苦労しそうだと考えた。もうちょっと開けた場所に出られたら小銃も作りたいと思う。
 拳銃でも、44Mag以上に強力な弾薬が使えるモデルも有るには有るのだが……。
 ――重いんだよな~
 M629とて決して軽くはないが、強力な弾薬になればなるほど、その威力に耐えられる強度が必要となり、銃本体が大きく重くなるのは仕方なし。その辺りのバランスを考慮して龍海はM629をチョイスしたのだ。
 更に龍海は再現で革製のホルスターを作り出し、腰に吊った。これに629を納める。
 武器を装備し、護身の備えが出来たところで、周辺を警戒しつつ獣道に沿って歩き始める。取り敢えず下り気味の方向を目指して進むことに。
 森の中は結構、静かだった。
 耳に入るのは、通り風が吹いた時に樹の枝や雑草がこすれる音以外は、龍海の足が草を踏む音くらい。
 ――こんな調子で済んでくれりゃな……
 森をしばらく歩くと、陽の光に照らされて周辺より若干明るいところが見えてきた。
 そちらに歩を進めると、やがて馬車・荷車が通ったわだちの跡が認められる、街道らしきものが見えてきて龍海はホッと一息を突いた。この街道を歩けばどこかの村か街、とにかく人のいる所に辿り着けるだろう。
 ここまで来るのに魔獣・野獣の類に出くわさなかった幸運に恵まれた事を感謝しつつ、龍海はそのまま街道を歩きだした。

 ――まずは、腰の落ちつけるところを探さなきゃなぁ……
 女神さまの説明によればファンタジー世界で有りがちの冒険者ギルドや商工ギルド等もあるらしいので、それらに所属して職を持つかどうか、まずは情報収集だ。
 情報と言えば……
 ――そういや女神さまの名前、聞いてなかったな……
 龍海自身は女性と話したり交際したりとかに別段抵抗は無い方である。性欲も人並みには持っている。
 だが異性と深い仲まで至った事は無い。
 自分から攻める事はせず、「向こうから来てくれれば……」などとほざくスタンスである。
 初対面の女性に、袖振り合うも多生の縁とばかりに取り敢えず名前やメアド等を聞いておくとか、そう言う積極的な姿勢は全く見られない男だ。
 だからお前はいつまでたっても童貞なんだ、と中学以来の友人にたしなめられた過去の記憶が蘇った時、

ワオー!

と、何か大型犬の咆哮らしき声が聞こえてきた。

 ――犬? いや、狼もありえるか?
 龍海は銃を抜くと身を屈めながら、声の聞こえた方へ向かった。
 野犬だろうと狼だろうと、わざわざこちらから危険に近づくのも如何なものか? とは思うが今後の事も考えると、この世界の野獣・魔獣についての生の情報は欲しいところ。今の自分は魔獣と野獣の区別さえつかないのだし。

 しばらく道なりに進み、街道が右に曲がる手前に辿り着いたところで森越しに馬車が止まっているのが確認できた。森を挟んで直線距離は40~50m程度有りそうだ。
 目を凝らしてみると、剣と槍を持った男二人が馬車の前に立ち塞がっているのが見えた。
 彼らの目線の先を追ってみると、先ほどの咆哮の主だろうか? 大きな四足動物が3頭確認できた。
 ――でかいな。山犬、じゃなくてやっぱ狼かな? でも2mまでは無いな。1,5mちょい?
 おまけにその狼、額にユニコーンを連想させる程の見事な角を生やしている。
 龍海としては魔獣のイメージであるが、もしかしたらそういう種類の野獣かもしれない。何せここは異世界だ。
 ――剣士の方が負傷しているのか
 狼に剣を向けてはいるが、剣士は左手で血の滲んだ腹を押さえていた。
 ――ここがマジでナーロッパなら襲われてるのは美麗な女剣士、もしくは馬車内で美少女が震えているものだが……
 残念、戦士は二人とも男のようだ。
 あとは馬車内で美少女が隠れていることを期待して……では無い! ここはやはり助太刀すべきところだろう。
 傍観してやり過ごすにしても、その後にあの獣がこちらに矛先を向けないとも限らないし、なにより彼らから周辺の情報も聞きたい。M629の試射もやっておきたい。
 人道的とはいささか遠い、打算的な思いを巡らせながら龍海は足を忍ばせ、ギリギリ拳銃で勝負できる距離まで近づくと、銃を両手で構えてゆっくり撃鉄を起こした。
 ――距離は30mちょいってとこか……的は大きいし慎重に狙えば……あ?
 構えた途端、龍海は左手に強い違和感を覚えた。
 思い出した。自分の左薬指と小指の魂をオプション添付で差し出していたことを。
 この二本の指が動かない。
 ――予想はしていたけど、思ったより安定しないな。小銃を出すか?
 会敵せずに街道に出たことで気が緩み、メインウェポンたる小銃をすぐに再現しなかったのは迂闊だった。
 しかし間に合うだろうか? 銃本体と弾薬を再現し、弾倉に装填してから銃に装着して狙う……
 と、その時、
 ヒュゥー!
風が吹いた。
 ――やべ! 風上だ!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』 見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装… 俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。 突然の事で戸惑うクラスメート達… だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。 「またか…」 王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。 そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。 そして俺はというと…? 『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』 「それよりも不知火君は何を得たんだ?」 イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。 俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。 その場にいた者達は、俺の加護を見ると… 「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。 『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』 王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。 まぁ、その方が気楽で良い。 そして正義は、リーダーとして皆に言った。 「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」 正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。 「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」 「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」 「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」 「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」 「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」 「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」 「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」 俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。 「その…鎧と剣は?」 「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」 「今迄って…今回が2回目では無いのか?」 「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」 俺はうんざりしながら答えた。 そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。 いずれの世界も救って来た。 そして今度の世界は…? 6月22日 HOTランキングで6位になりました! 6月23日 HOTランキングで4位になりました! 昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°. 6月24日 HOTランキングで2位になりました! 皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました

久遠 れんり
ファンタジー
別の世界からの侵略を機に地球にばらまかれた魔素、元々なかった魔素の影響を受け徐々に人間は進化をする。 魔法が使えるようになった人類。 侵略者の想像を超え人類は魔改造されていく。 カクヨム公開中。

【完結】うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。

かの
ファンタジー
 孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。  ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る

ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。 異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。 一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。 娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。 そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。 異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。 娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。 そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。 3人と1匹の冒険が、今始まる。 ※小説家になろうでも投稿しています ※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!  よろしくお願いします!

俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?

八神 凪
ファンタジー
ある日、バイト帰りに熱血アニソンを熱唱しながら赤信号を渡り、案の定あっけなくダンプに轢かれて死んだ 『壽命 懸(じゅみょう かける)』 しかし例によって、彼の求める異世界への扉を開くことになる。 だが、女神アウロラの陰謀(という名の嫌がらせ)により、異端な「回復魔王」となって……。 異世界ペンデュース。そこで彼を待ち受ける運命とは?

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

処理中です...