状況の人、異世界で無敵勇者(ゲームチェンジャー)を目指す!―加筆修正版―

三〇八

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状況の人、異世界へ転移する

状況の人、冤罪を被る2

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 ――そんな。何が一体どうなった? あ……
 龍海は気付いた。
 いや、この女子高生に関してでは無く周りのヒソヒソ話に、だ。
「なに? 痴話喧嘩?」
「そうかな? 歳離れてそうだけど?」
「妙な服着てるな? てか責任取れとか、なんぞ?」
「そりゃ若い娘が男にそんな風に詰め寄るのは……アレ、でしょう。たぶんあの子、おなかの中に……」
「ああ、それで逃げ出したってか?」
「外道だな、あの野郎!」
「女の敵だわ!」
 どうやら責任と言う言葉一つで龍海は、とんでもない冤罪を被りそうな雰囲気になっているようだ。
 そっちの責任に関しては、一切、全く、完全に、彼女以外のこの世の全女性、元の世界の女性も、こちらの世界の女性を含めても、じぇ~んじぇん身に覚えの無い、天下無敵の童貞野郎なのだが。
 とは言え、こういう時は、例え非が有ろうとも泣いている女側の方が擁護されてしまうのが世の常と言うものだ。
 と、前世の理不尽な世相はともかく、助けたはずのこの娘が今、目の前にいるのは純然たる事実。
 このまま放って逃げる訳にもいくまい。
 龍海は意を決した。
「ちょっと君、ここじゃなくて場所を変えよう! 一緒に来て!」
「な、何よいきなり! どこへ連れて行こうって言うのよ!」
「え!? いや、だって責任取れって言ってただろ? それには、ちゃんと話を聞かなきゃ!」
「ちょ……まさか今度こそあたしを始末しようと!? いや! 近寄らないで!」
 ――いや責任取るのか取らんでいいのかどっちだよ!? って……あああ
 龍海はさらに気付いた。周りの衆人のヘイトが自分に一極集中して向けられていることに。
 鋭く厳しい目をした群衆が、眉間にしわを寄せ、口元をひん曲げて龍海を睨んでいる。
 それはどんな感染症でも敵わないであろう速度で、集まった人々に広がって行った。
 いざとなったら加勢しようと思っているのか腕まくりを始めたマッチョオヤジや、買い物帰りだろうか? 大根の様な根菜を握って左手ポンポンし始めるおばちゃん迄いる。
 ――ここにいてはいけない!
 龍海は女子高生の手を掴んだ。掴んでそのまま走り出した。
「何するのよ!? や、いやいや! 離して!」
「だから責任取れって言ったのそっちだろ! とにかく来いよ!」 
 憎悪にまみれた衆人注視の中、とにかくそこから離れようと「ちゃんと責任取れよクソ野郎!」などと、あちこちからの罵声を背中に受けながら、龍海は嫌がる女子高生を拉致同然に連れ去った。


 
 馬車内で震えてこそいないが、ようやく美少女登場である。
 いや、美少女と手放しで断言するには個人の感想要素が高そうではあるし、襲い掛かる魔獣や盗賊を成敗して、キャ~、素敵! と御都合主義丸出しで、いきなり惚れられるどころか、天下の往来で人殺し呼ばわりまでされて散々な事この上ない。しかしまあ、その辺は今のところ棚に上げておいて。
「結局、君も死んじゃったのか……」
 激昂する彼女をなんとか落ち着かせて、トレドに紹介された宿屋の二階の部屋に転がり込んだ龍海は、ようやく涙が止まった女子高生――雑賀さいが洋子ようこに聞いてみた。
「そうよ、あんたに突き飛ばされてね!」
 龍海の最後に残る記憶。自分が跳ねられる寸前、対向車線に横たわる彼女の姿。
 助けられた……と思ったのは実は龍海の早合点で、そのあと彼女も対向車線で轢かれてしまった……と、まあそう言う事らしい。なんてこった。
「……でもさあ、俺が突き飛ばさなくても結局はあのトラックに跳ねられてたし……」
 自分はともかく、既に飛び出していた彼女は、どのみち跳ねられていたわけで、それをもって自分のせいにされるのは如何なものか?
 龍海ならずとも、そこは言いたいところであろう。
 しかし洋子。
「トラックの方がマシだったわよ! もしかしたら助かる可能性もあったかもしれない! あたしを轢いた車、なんだか知ってる!? クレーン車よ、クレーン車! しかも10tクレーン車! 車両重量は13tを超えるわ! あんたを跳ねたトラックはショートの2t車だったじゃない! 空重量なら3tくらいじゃん! あたしはあんたより体重軽いし、もしかしたら一命をとりとめたかも!」
「いや、そんな上手くいくかぁ!?」
「クレーン車よりマシよ! あたしの最期、分かってんの!? あの、あたしの身長よりでっかいタイヤに、おなか轢かれたのよ!? おなか轢きつぶされて意識無くなる寸前に感じたのは、口から、鼻から、耳から、目から、潰された内臓が噴き出すような感覚よ! わかる!? 完全に即死確定よ!」
「う……」
 その惨状を想像すると、さすがに龍海も気分が悪くなってくる。
 しかし龍海は言ったもんだ。
「そんじゃあ、やっぱ下半身からもしこたま……ぶげ!」
 龍海の顔に激痛。
 手で顔を押さえながらも、足元に落ちるスマホが目に入る。
 これを投げつけられたか。角でやられると結構痛い。
 死ぬと筋力が無くなって下も垂れ流し、とか以前に聞いていた事が頭を過り、つい口にしてしまった。
「すまん、言わんでもいいこと言った。でもスマホこれ、こんな乱暴に扱っちゃあ壊れちゃうぞ?」
「いいわよ。どうせもう使えないんだし……」
 なるほど、こんな異世界では何も受信出来んし送信も無駄だわな……。
 だが電源さえ何とかすれば、記録した音楽再生や画像表示は出来そうだが……かえってホームシックを拗らせるだけか? 
 ――しかし制服と言い、このスマホと言い、よく持ち込めたものだな?
「話しを戻そう。じゃあ君は今まで、一人でこの町に?」
「違うよ。あたしは気が付いたらお城にいたの」
「城?」
「多分、王様とか偉い貴族とかだと思うけど、すごく広くて天井が、やたらと高い部屋で、え~……20人くらいだったかな? 中世が舞台の洋画に出て来そうな恰好の人たちに囲まれててさ。いきなり『成功だ!』とか『勇者様が来て下さった!』とか今度は深夜アニメみたいなセリフが飛び交いだして……」
「君は召喚されたのか? あ……」
 そういや女神さまが、召喚要請が受託されたとか言っていたが……彼女の事だったのか?
 だとすれば、彼女にはマジで勇者の素質なり属性なりが有って、その対象にされたという事か?
「召喚される前に、天界には行かなかったのか?」
「天界? なによそれ。さっきも言ったけど気が付いたらお城だったんだけど?」
 ――ふ~む、召喚の場合と俺の様な転移とは過程が違うのかな? そうだ、確か鑑定スキルを+バージョンでオプションに入れていたはず……
 龍海は鑑定スキルを起動して洋子をスキャンし始めた。
「え? なによ。こっち、じっと見て」
「ごめん、動かないで。今、君の能力をスキャンしているんだ」
「スキャン? なにそれ……あ! 通販サイトにあった服が透けて見えるメガネみたいな!? やだ、見るなヘンタイ!」
「な! どこの通販サイト覗いてたんだよ! そんなんじゃない、君の魔法属性とかを見ているんだよ!」
「あ、あたしの魔法属性?」
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