状況の人、異世界で無敵勇者(ゲームチェンジャー)を目指す!―加筆修正版―

三〇八

文字の大きさ
11 / 197
状況の人、異世界へ転移する

状況の人、連行される1

しおりを挟む
 洋子はそれらも一個目と違わぬ速度で食らっていった。
 試食で出した一個を龍海が食べ終わる前に、洋子は残り二個もペロッと平らげてしまった。
 ごきゅ、ごきゅ、ごきゅ。
「ぷは~。おいしかった~。ごちそうさま~」
 最後にジュースを飲み干し、洋子は合掌して頭を下げた。
「〆て¥1200でございます」
「え~!」
「冗談だよ。少しは落ちつけたかな?」
「うん、ありがとう! ホントおなかペコペコだったから! でも今のそれってどんな技なの? いきなり現れて来たけどマジで魔法なの? 味はまんま、モ〇のと同じだったよ?」
「そうだよ。こちらに転移するときに女神さまに付与された力さ」
 龍海は洋子に今まで自分に起こった事を説明した。
 死んでからの天界での出来事、そしてここに辿り着くまでの事。
 森の中に転移した事、魔法で武器を出せた事、トレドらを救い、その縁で王都に辿り着いた事などを、出来る限り詳細に話した。
「……夢みたいな話だけど、信じるしか無いんだね……異世界転移、召喚、おまけに魔法かぁ……」
 腹が膨れて落ち着きを取り戻したのか、洋子は龍海の話を最後まで聞いてくれた上、今のこの現状を認め始めたようだ。
 部屋の窓から外を見る。
 映画やドラマのセットとしてはデカすぎる城や街並み。
 エキストラで片付けるには種々雑多すぎる、ファンタジー丸出しの種族や容姿の人々。
 そして今、目の前で見せられた魔法……
 ここまで来ると、いやでも認めざるを得ないだろう。
「ハンバーガーも、この拳銃も、さっき言った再現って言う魔法スキルで作り出したのさ」
「銀色なのね。普通、鉄砲って黒色じゃないの?」
「こいつも元々は鉄で出来たM29ってモデルが先行していたんだけどね。これの素材はステンレスでさ、ほぼ錆びないし手入れも楽なんだ」
 説明すると龍海はM629を腰のホルスターに納めた。
 ――そういやこの革ホルスターも元は生き物の皮だよな。やっぱ死んでいる――が無ければいいのかな?
 今どきのナイロン繊維製ホルスターの方が安価で軽量、使い勝手もいいのだが、さすがにこの世界で使うのは躊躇われた。
 金属なら例えチタンであっても――固い鉄だよ! ――と強弁することも出来るかもだが……
 それはともかく、今は彼女の身の振り方である。
「……やっぱり、お城に戻った方が良いのかなぁ?」
 洋子が目線を落としながら零すように言った。
「今はその方が良いと思うなぁ。俺はもう戻れないと女神さまにも言われたけど、君の場合は召喚だし、もしかしたらその方法を逆転させれば日本に戻れるかもしれないよ?」
「あたし、一応死んだのよ?」
「日本で死ぬと同時に転移すればあるいは……死んだ事にはならないかもな」
 あてずっぽうである。口から出まかせである。
 天界があのように絡んだ以上、日本への帰還の可能性はかなり低いと思える。
 しかしゼロではあるまい。
 それが絶望的に低い可能性であっても、彼女に希望を持たせられるのであれば信じさせてあげたいところだ。
「でも、やっぱり戦争なんてヤダよ」
「当然だな。こんな勝手の分からない世界じゃ元自衛官の俺でもご免だ。かと言って、おそらく君の召喚は国の未来をかけた一大計画だったと考えるべきだろうし、連中は血眼になって君を探すだろうな」
「……」

 ドカドカドカドカ……

 洋子が言葉を無くし、部屋がしんみり静かになった途端、何やらゴツイ足音が外から聞こえてきた。
 ――呼ぶよりそしれ、か?
 音の大きさも然ることながら振動・鳴動も派手に感じる。
 音の主は重量級、そして多人数……
 しかもランダムでは無く、左・右、左・右と歩調が合っている。
 こんな足音を龍海は過去、何度も聞いている。
 これは軍事教練を受けた連中に見られる特有の足音だ。
 そう言った訓練を受けた者は号令を受けなくても、無意識の内に自然と周りの者と歩調を合わせてしまうのだ。
 つまり……

 バアァーン!

「きゃ!」
 扉が勢いよく全開され、洋子の口から悲鳴が漏れた。
 と同時に、全身金属プレートの鎧に身を固めた重装甲兵士が部屋になだれ込んできた。
 龍海は反射的にM629に手を掛けた。しかし抜く事無く、すぐに離した。
 例え素材が鉄であっても鎧程度の板厚では44Magの前には紙同然だ。対人用としてはこの弾薬、オーバーキルにすぎる。
 だが、鎧の素材がミスリルだのアダマンタイトだのと言われるファンタジーマテリアルだとすれば効果は不明だ。
 何より人数が多すぎる。
 この狭い部屋内に4人が乱入した上に、さっきの足音からすれば廊下から一階、おそらくは宿屋の外、表にも裏口にも兵が展開されている可能性は高い。

 コツ、コツ、コツ……

 また足音が聞こえてくる。しかし今度は、先ほどより軽い音だ。しかも人数は一人。
 真打登場と言ったところか?
「失礼致します、勇者様」
 ――女?
 この声、ちょっと太めではあるが一聴で女だと思われる声だった。
 こういう登場の仕方をする手合いは、大体は指揮官あたりと相場が決まっているのだが……。
 やがて声の主が部屋に入って来た。
 予想通り、その人物は目の鋭い、いかにもこの兵たちの隊長・指揮官であるという雰囲気を漂わせた女性だった。彼女が通る時、兵が姿勢を正したりしているので信憑性が更に増した。
 その女性は龍海と洋子を一瞥すると、
「私はアデリア王国親衛隊治安部隊長レベッカ・ヒューイットと申します。勇者ヨウコ・サイガ様の御身柄をお守りするため罷り越しました。どうか我らとご同行の程、お願い致します」
自己紹介に加えて、ここに来た目的、任意同行の要請と実に簡潔に申された。だが丁寧な言葉遣いながら、その押しの強い口調に「問答無用」を感じさせる話し方ではある。
 洋子は思わず龍海の陰に隠れたが、彼女らはこちらが抵抗しても当然のごとく力尽くででも連行する気でいるだろう。でなければ、たかが小娘一人拘束するのに、この武装・人数の展開は大げさに過ぎる。如何にも対勇者用――強者向けの布陣だ。
 ――レベッカ・ヒューイット……
 他の兵士とは違って彼女は軽装であった。
 しかも大変に強い眼力でもってこちらを言い竦めて来る。
 緋色の髪を後ろに纏めた美麗な顔にその鋭い眼光。
 重装の鎧を着けていないのは、そんじょそこらの戦士など物の数では無い、わが身に切先を当てられるものなら当ててみよ、という自信の表れであろうか?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』 見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装… 俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。 突然の事で戸惑うクラスメート達… だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。 「またか…」 王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。 そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。 そして俺はというと…? 『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』 「それよりも不知火君は何を得たんだ?」 イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。 俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。 その場にいた者達は、俺の加護を見ると… 「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。 『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』 王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。 まぁ、その方が気楽で良い。 そして正義は、リーダーとして皆に言った。 「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」 正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。 「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」 「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」 「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」 「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」 「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」 「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」 「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」 俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。 「その…鎧と剣は?」 「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」 「今迄って…今回が2回目では無いのか?」 「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」 俺はうんざりしながら答えた。 そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。 いずれの世界も救って来た。 そして今度の世界は…? 6月22日 HOTランキングで6位になりました! 6月23日 HOTランキングで4位になりました! 昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°. 6月24日 HOTランキングで2位になりました! 皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました

久遠 れんり
ファンタジー
別の世界からの侵略を機に地球にばらまかれた魔素、元々なかった魔素の影響を受け徐々に人間は進化をする。 魔法が使えるようになった人類。 侵略者の想像を超え人類は魔改造されていく。 カクヨム公開中。

【完結】うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。

かの
ファンタジー
 孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。  ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る

ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。 異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。 一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。 娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。 そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。 異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。 娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。 そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。 3人と1匹の冒険が、今始まる。 ※小説家になろうでも投稿しています ※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!  よろしくお願いします!

俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?

八神 凪
ファンタジー
ある日、バイト帰りに熱血アニソンを熱唱しながら赤信号を渡り、案の定あっけなくダンプに轢かれて死んだ 『壽命 懸(じゅみょう かける)』 しかし例によって、彼の求める異世界への扉を開くことになる。 だが、女神アウロラの陰謀(という名の嫌がらせ)により、異端な「回復魔王」となって……。 異世界ペンデュース。そこで彼を待ち受ける運命とは?

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

処理中です...