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状況の人、異世界で無双する
状況の人、奮闘中3
しおりを挟む「ところでシノノメ卿、明日はやはり魔導国への接近を?」
料理談義も一段落、ロイが今後の予定に話題を振った。
イーミュウとの縁談話に持って行かれるのを避ける思いもあったかもだが、取り敢えずこちらの議題も重要。龍海もロイに応じた。
しかし、
「ロイ~? 話逸らそうとしてなぁいぃ~?」
洋子が意地悪く擦り始める。
最近の洋子は、イーミュウを応援するポジションである事を隠そうとしていない。
同姓で同年代であることも後押ししているのだろう。
「いえ、そちらはそちら、任務は任務です。お気遣い頂いている事は有り難き次第でございますが、我らの将来は我らでちゃんと決めますので」
だがそこはロイも高級将校を目指す士官候補生、いつまでもアワアワしているわけでは無い。最近はその辺のあしらい方も進歩している。
イーミュウもそんな二人を笑顔で見つめていた。
ただ、眉が気持ち哀し気に困り眉毛っぽく見えるのは、龍海の思い過ごしだろうか?
まあ、その辺りも気にはなるが今はロイの言う通り、中央部の魔王モノーポリ領への偵察を重視すべきところである。
「そうだなぁ。ちょいと冒険だが、わざと国境を越えて反応を見るってのも、考えちゃいるがな」
「わざと火の粉を撒き散らすのかや?」
「道に迷って深入りしちゃいました~、てな感じで、出くわしたのがポリシック領の時みたいに盗賊のような反社連中なら場合によっては討伐。正規の官憲ならそそくさと退散……てのは皮算用に過ぎるかな?」
「それは、さすがに甘いでしょぉ?」
「うむ、我もヨウコに同意じゃが……しかし今のお主らの実力なら、小隊の一個や二個、楽に屠れそうではあるがな」
「最近のヨウコさまの魔法力の上達ぶりはすごいですものね。昼間の大黒熊だって、延焼の危惧さえなければヨウコさまの火炎魔法で丸焼きに出来たんじゃありませんか?」
「そこにシノノメ卿の火器を組み合わせればホント無敵ですよ! 宰相閣下やヒューイット隊長の計画通り、対魔導王国戦のゲームチェンジャーにあと少しじゃないでしょうか!?」
ビールが回り始めたこともあり、ロイが声量を上げながら二人を称賛した。
しかし龍海。
「ゲームチェンジャーか……」
口元に付いたビールの泡を舐めながら、龍海はトーンを落としながら答える。
「こちらの世界に来てからもう何か月か経ったけど……洋子、そして俺も魔導王国相手に先陣を切って彼らと対峙することを望まれているわけだが、な……」
「何か気に掛かる事でも?」
「と、言うかな……なぁ洋子? お前は、こちらに来たばっかりの、毛布被って泣いてた頃に比べると見違えるほど逞しくなったと思うんだが……アリータさんたちに応える気は、あの頃と比べてどうだ?」
「ん、みんなのおかげで随分自信持てるようにはなってきたよ? でも、だからと言って、アデリア軍を率いて魔導王国に侵攻! っていう気には……やっぱりね……」
「なぜですか? 今現在のお二方の実力でも、かなりの戦果が期待できると思いますが?」
「いくらあたしたちの戦闘力が高くても所詮は多勢に無勢よ。数万の兵に押し込められたらひとたまりもないわ」
「しかし、お二方が突破口を開いて友軍を誘導、その後に敵の強固なエリアを順次遊撃して優位に導くという戦略はシノノメ卿も早くから……」
「いや、それ以前の問題さ。それに今さらと思われるだろうが、俺はアリータさんらの思惑にはあまり同調できなくてな」
「し、シノさま! まさか王国に反旗を!?」
「んなわきゃ無ぇよ。俺たちはまず第一にアデリアに対する義理を果たさなければならない――これは今まで変わってないし、これからも変わらん。何より、お前たちに不利になるようなことは絶対にせんよ」
「あ、安心しました。ではなぜ、先ほどの様な……」
「まあ、俺たちが日本人だからかもなぁ」
「ニホン……シノさま、ヨウコさまの故郷でございますね。でもそれが?」
「俺たちの故郷は、70年以上も戦争が無かったんだ」
「以前にもお聞きしましたね。こちらの世界では考えられないほど平和な国だと思います」
「我も耳を疑ったわ。知らんと思って我を担いどるのかと?」
「夜中に女が出歩けるとか、大災害が起こっても暴動も略奪もほとんど起きないとか、にわかには信じられませんでしたわ」
「そういうのもあってな。例えばポリシックなんかも仮想敵国なのに、すごく好意的に接してくれただろ? ウルフの連中だっていがみ合ってはいたけど、洋子とケイの例もあるしさ。戦ありきで考えるのもなぁ」
「我はお主らのそういうところは甘ちゃんに過ぎる、と言うておるのだがな。自分らの国で通用した事が、こちらでも通用するだろうと言うのはの」
「わかってるわよ、そんな事。でも、やっぱケイさんとは競う事はあっても、戦いたくないって思うもん」
「友達になれると、そう思っているのかや?」
「悪い?」
「奴はお主を倒して名を上げたい、と思っとるやも知れんぞ?」
「……」
「むしろその方が自然でしょう。それが武勇と言うものです、少なくともこの世界では!」
「カレンやロイの言う事も十分、わかってるつもりだ。俺たちの世界でも故郷は特別・別格の部類だと言うのもな。でもまあ、その辺まで考えた上でだ、俺たちアデリアと魔導国には啀み合うんじゃなくてアンドロウム・ポータリアの二国を共通の敵として考えを共有し合えないか、とも思うんだ」
「確かに二国の思惑には私も苦々しく思いますが……ですが比較的友好的なポリシックでさえ、国家への忠誠は揺るぎありませんわ」
「ああ、ポリシック本人も言ってたしな。しかし、魔導国を併呑した後、帝国や皇国が攻めあぐねるほどの国力を残すと言う、宰相らが考えるような状況を目指すと言うのも、同様に……」
「甘ちゃんだとは考えるな、我も。二国に対抗しようとして結果的に連中の思惑通りに侵略されかねんしの」
「卿には何か腹案でも?」
「あれば苦労は無いんだがな。俺たちの世界でも……ん! カレン!?」
龍海の目がいきなり鋭くなった。
索敵+に何か反応したのか、カレンにも窺うように呼び掛ける。
「おう、何か寄って来おるな。馬車隊の様じゃが……いや、しかし……」
「この気配、馬じゃ無ぇよな……」
「魔獣じゃな。今日ほどの大物ではないが大黒熊、それに魔狂牛のような気配も一緒だが、はて?」
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