95 / 197
状況の人、異世界で無双する
状況の人、テイマーと遭遇する1
しおりを挟む「先の戦では最も激戦区となった地域の種族が、一枚岩でないと言うのも意外な気もするがな」
「勿論その勢力も、よもや売国奴の集団と言う事もありますまい。通じる事が可能であったとしても、簡単に我が国の隷下に入る事は良しとはしませんでしょう」
「上手く動かせて、後方を混乱させる事が出来れば上出来……期待値としてはその程度が妥当かと?」
「うむ。なんとか魔導国を併呑し、アンドロウム・ポータリア両国と比肩する力を得れば今後の、我が国の安泰にも希望が持てる。それを余の国王としての最後の職務とし、王太子に王位を譲って、あとは気楽に我が祖国を眺めながらの隠居生活に入りたいものよの」
「そんな。陛下もますますご健勝あらせられますし、ご隠居遊ばれるにはまだ……」
「老いぼれには有り難い言葉じゃがアリータよ、余も来年には60の大台に入る。この九越えを新生アデリア王国誕生で飾る事が出来ればもう、余のやり残した事はない。まだ、頭や足腰のしっかりしておるうちに身を引き、若手の育成や相談の手助けをするのが最もよいと考えておるのだがの」
「……陛下の祖国への深き慈愛、このレベッカ・ヒューイット、心の底から感服いたしております!」
「そうですね。我らは陛下の御意に沿えますよう、新生アデリア王国誕生を目指し、全力で事に当たる所存にございますわ」
そういうとアリータとレベッカは両手を膝に付けて深く低頭した。
それに笑顔で応えたピエトは、新たに淹れられた茶を口しようとカップを口に寄せた。
と、ここで、
「時に……これは少々先の話に過ぎるのであるが……」
ピエトは別の話題を持ち出した。
「事が首尾よく進み、我らの悲願通りになった暁には、件の勇者……異世界人は元の世界に戻る気でおるのであろうな?」
ピエトの危惧に、アリータもレベッカも眉に力みが生じた。
「計画通り魔導国を併呑できても、それは彼らの人並外れた能力によって成就されることであろう事は疑いはない。故に、その戦勝は彼らの存在があったればこそ、と考える列国は多かろう。もしも彼らが故郷へ帰還を果たし、それが他国に知られれば……二国が侵攻を決意する可能性は無視は出来まい」
「それは……それには対策は必須であるとは考えます。一番の良策は彼らを我が国にとどめ置く事……」
「彼らを足止めするには、最悪、召喚魔法陣を消去して帰還を諦めさせるか……」
「それはかなりの悪手じゃな、レベッカよ。約定を違えられ、怒れる勇者が反旗を振りかざせば我らに押える力はあるまい?」
「せめて、一人だけでも留めたいものですわ……勇者はアデリアに有り、と列国に思わせるべく」
「うむ、そこでな。勇者のサイガはともかく、シノノメの方は……彼は確か、あの歳で独り身だそうじゃな? では彼には王族として我が一族に迎え入れる、と言う褒賞を与えてはどうかの?」
「彼を王族に!?」
「そ、それはまた……」
「末娘のアマリア。あれにはまだ輿入れ先が決まっとらん。アマリアと結婚させて、王太子ウエット・ミンス・チェイスターから連なる王位継承権も与えると持ち掛ければ心が動かんかな?」
「いやしかし、本人曰く彼は一介の庶民だと! ですので、他の貴族がどう思うか……」
「魔導国併呑最大の功績を上げた者であれば、出自がどうあれ反対する者も居るまい?」
「確かに……ですが王位継承権までは……」
「その辺りは交渉材料に過ぎんよ。あくまで優先はウエットの直系じゃ」
「……陛下の御心、御覚悟のほど、確かに賜りました。もうわたくしからは何も申し上げる事はありません……」
「し、しかしながら……」
「うん? 治安隊長、まだ何か懸念があるかね?」
「お言葉ながら……王女殿下ご当人がどう思われるか。確かシノノメは32歳と聞き及んでおります。ですがアマリア王女殿下は……先月12歳になられたばかりですからねぇ」
♦
場所は変わって西方、国境近くの野営地。
近い将来”ロリコン勇者”の称号を背負わされそうになっている事など露ほども知り得ない龍海の緊張感は、迫りくる大型魔獣の気配に、最高に張り詰めていた。
3m越えの大黒熊を仕留めた今は、通常の魔獣であればそれほど身構える事も無いのだが、異種族の魔獣が行動を共にしているだけでも異質なうえに、しかも馬車隊とも同行と言う、この世界の住人であるロイやイーミュウにとっても異様な状況との事。
「しかし歩みに乱れは感じられんな。こちらの火は既に視認しておろうに」
確かに、こちらが気付いてからの彼の動きに変容は認められなかった。全く同じペースで近寄って来る。
グフゥ……グフォォ……
魔獣らの吐息が聞こえるまでになってきた。ついで龍海らのキャンプの火にその姿が浮かび上がって来る。
「ねえシノさん?」
洋子が掠れた小声で聞いてきた。
「ん? 何だ、洋子?」
「近寄ってくる連中、敵意とか殺気、感じる?」
言われて龍海は索敵+を増強、空気の流れまで感じ取ってみる。
「……魔獣の呼吸は普通だよな」
「襲う気ならとっくにその気になってるはずだけど……」
「確かに察知してから相手の動きや気配は変わらないな」
敵意を感じない魔獣と、それに同行する謎の馬車の様子も去ることながら、それを冷静に観察する洋子に対して龍海は正直、舌を巻いていた。
オデ市での一件でも感じていた事ではあるが、勇者として覚醒・成長している現状は素直に喜ばしい事である。
だが、
――日本に戻って、普通のJKに戻れるのか?
そう言った彼女への、危惧に近い思いが擡げているのも確かであった。
まあ、それも今は後回し。直近の事案に集中すべし。
やがて馬車は野営地の端に辿り着いて来た。
ここまで近づくと、その馬車隊の姿がはっきり見えてくる。
ところが……
――馬はどこだ?
龍海はそんな言葉が頭に浮かんだ。やって来た馬車を引いていたのは馬では無く件の魔獣、大黒熊と魔狂牛だったからだ。
魔獣は馬車と同行しているのではなく、馬の代わりに馬車を引いているのだ。
――あ……
龍海はロンドの町で聞いていた、”魔獣使い”の話を今更の様に思い出した。と言う事は、あの馬車の連中は?
「……誰か降りてきますよ」
ロイが小声で注進。
言われて龍海も注視。ロイの言った通り、魔狂牛に引かれた馬車(?)から一人の男が降りてきた。
図体は結構デカい。身長は2m近くあるだろう。
彼はパッと見、丸腰のようだ。
筋肉質な上半身を誇る様に、若干脇を開けながら振る両の手には得物らしいものは携えられてはいなさそうだ。
0
あなたにおすすめの小説
異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』
見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装…
俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。
突然の事で戸惑うクラスメート達…
だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。
「またか…」
王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。
そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。
そして俺はというと…?
『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』
「それよりも不知火君は何を得たんだ?」
イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。
俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。
その場にいた者達は、俺の加護を見ると…
「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。
『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』
王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。
まぁ、その方が気楽で良い。
そして正義は、リーダーとして皆に言った。
「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」
正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。
「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」
「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」
「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」
「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」
「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」
「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」
「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」
俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。
「その…鎧と剣は?」
「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」
「今迄って…今回が2回目では無いのか?」
「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」
俺はうんざりしながら答えた。
そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。
いずれの世界も救って来た。
そして今度の世界は…?
6月22日
HOTランキングで6位になりました!
6月23日
HOTランキングで4位になりました!
昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°.
6月24日
HOTランキングで2位になりました!
皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました
久遠 れんり
ファンタジー
別の世界からの侵略を機に地球にばらまかれた魔素、元々なかった魔素の影響を受け徐々に人間は進化をする。
魔法が使えるようになった人類。
侵略者の想像を超え人類は魔改造されていく。
カクヨム公開中。
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?
八神 凪
ファンタジー
ある日、バイト帰りに熱血アニソンを熱唱しながら赤信号を渡り、案の定あっけなくダンプに轢かれて死んだ
『壽命 懸(じゅみょう かける)』
しかし例によって、彼の求める異世界への扉を開くことになる。
だが、女神アウロラの陰謀(という名の嫌がらせ)により、異端な「回復魔王」となって……。
異世界ペンデュース。そこで彼を待ち受ける運命とは?
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる