状況の人、異世界で無敵勇者(ゲームチェンジャー)を目指す!―加筆修正版―

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状況の人、異世界で無双する

状況の人、「話は聞かせてもらったぞ!」2

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「通り雨のあとは、いい風が吹く。外に出てみるか、中佐」
「はっ」
 真偽不明の自由な会話はこれまで、と含みを持たせたベイムの言にリールも応える。
 外に出てみると、ベイムの言う通り周辺は爽やかな風が吹いていた。しかし当然のことながら地面はいたるところが雨で泥濘んでおり、気を付けないと足を取られ転倒しそうだ。
 だがそんな中、
「伝令! 伝令ー!」
 水が弾けるバシャバシャと言う音と、泥が跳ねるビチャビチャと聞こえる音が入り混じった足音が二人の耳に入ってきた。
 さっきまで降っていた豪雨の中をそのまま走って来たらしく、全身濡れ鼠、跳ねた泥は胸のあたりまで飛んでいた。
「伝令! 充て、ベイム副指令。発、帝国国防省戦略会議室! 西部方面軍副指令は直ちに帝府へ帰還、速やかに同会議に出席せよ! 以上であります!」
「帰還ですと?」
「戦略会議室の招集命令だと? 何事か?」
「怖れながら、自分はそれだけしか聞かされておりません!」
 戦略会議室は、軍全体の行動姿勢・指針等を検討する部署である。
 ここに緊急出頭と言う事は、国防に関する捨て置けない何かがあると言う事だ。
 ベイムは伝令兵を一言労い、天幕内で休むよう指示すると、自分の愛馬を繋げた厩に向かった。

                ♦

「なんだとーーーーー!!!」
 野外演習を装って(実際演習自体は行っているが)国境近くの平原に、龍海たちの現状報告を直に聞くために出張って来ていたアデリア王国親衛隊治安部隊長レベッカ・ヒューイットは、モノーポリ城留置所で繰り広げられた素っ頓狂合戦()に参戦するかのような大声を張り上げた。
 余人を排除した天幕内であったにもかかわらず、その声のデカさに周辺の兵たちが思わず一斉に天幕に注目してしまう、そんな声量であった。
「声がデカいっすよ! せっかく人払いしてもらったってのに!」
 お約束だよな~とか思いつつ、龍海は人差し指を口に当て、小声でレベッカを諫めた。
「だ、出すなと言う方が無理と言うものだ! 貴公、この案を本気で宰相や、恐れ多くも国王陛下に進言するつもりなのか!?」
「俺だってまだ頭ン中じゃ整理ついて無いっすよ! 実際、んな方法、無茶振りにもほどがあるって側近連中とも寄ってたかって言ったっすけど!」
「トライデントの報告を見ても、貴公は常に我が国の利になるように心がけて行動してくれていると安堵しておったのに……こんな短時間で篭絡されたのか!? 噂に聞く、男の身も心も虜にすると言うサキュバスなる妖艶な魔族の手にでも堕とされたか!?」
「そんなんなら、こうして隊長に会いに来る事もねぇでしょうに!」


 あの夜、メルに提案された魔導国とアデリアの穏やかな連携への手段。
 つまり龍海とメルが婚姻関係を結ぶと言う案の事である。
 確かに双方の支配者やその子女が結婚して親類となり、長年の諍いや戦を終結させると言う手段は珍しくもない。
 しかし龍海は異世界人である。
 身分こそ公爵級に準じているとは言え、そんなものは画に描いたようなお飾りでしかないし、実質的に国の支配者層とは何の関係もない龍海がメルと結婚したからってどうなるものでもない。
 それどころか、魔導国に寝返った裏切り者呼ばわり確定である。
「だから王国側に提案してほしいのだ。其方、王国では公爵級の身分であると言うではないか。どこかの上級貴族の名を借りて王族の養子になるのだ。いや、国王の落としだねと言う設定の方がいいか? まあ後見が居った方が箔も付くかな? いずれにせよ、その上で余と結婚するのだ。そうなれば両国は親類同士。血を流さず一体となってアンドロウムやポータリアと張り合えるようにもなろうぞ!」 
「いやいやいや! 無理だって! 実際アデリア貴族だって、俺たちなんかどこの何者ともわからない輩って蔑んでいる奴だってきっと居るし! そんな俺たちに国の命運をかけるって事自体、いい顔してない奴いるだろうし! 王族でも絶対に首、縦に振らないよ!」
「其方、余と結婚するのがそんなにイヤなのか?」
「そーゆーこっちゃない! そう言う事じゃないって!」
「そうよな! 何と言っても、留置所の中で余と其方は!」
 ペロチューしちゃったよね~。
「いや、だからあれは!」
「あれは?」
「あ、あれは、俺は君がイノミナだと思ってて! 魔導王陛下だったなんて夢にも思わなくって!」
「やはりイノミナの方が良いか? 実は余もあのキャラは気に入っておってな?」
「すっかり騙されたよ! ホント、情報専門の冒険者だとばかり!」
「うむ、変化へんげの時は、すっかりその者に成り切るようにしておる! そうか、それほど板についておったか!?」
 ――もしかしてこれも「状況の人」の内だろうか?
 などと、自分と何となく重ねてしまう龍海。
 いやいやしかし、影響が違いすぎる。
「だからそれはいいよ! そう言う事じゃないから!」
「イノミナのどこが良かったか? 顔か? もしかして猫耳……あ、いや其方、女を見る時は確か胸から見るとヨウコが言うておったな? うむ、イノミナの時は若干大きく見せるようにしておる。情報源が男の場合、気を引くのに効果覿面てきめんでな! 其方もそれが気に入っておるのか? しかし余の胸は自然体でもそこそこあると自負しておるぞ! ヨウコやイーミュウよりは自信が有ると言える! 何なら確かめて……」
 とか言いながらスルッと服の胸周りの紐を解こうとするメル。胸元がちょおっと顔を出す。
 ――キタ! ラッキースケベ(?)イベント! じゃなくてぇ!
 龍海慌てて、
「あー、ちょっと待って待って! だからそう言う事じゃ!?」
メルの手を止めようと両手で握る。
 と、ここで、
バーン!
「「話は聞かせてもらったわ!」」
けたたましい音と共に少女二人が登場。
「へ? 洋子、イーミュウ!?」
 洋子とイーミュウが乱入してきたのだ。
「ちょ、何でお前ら。宰相たちと飲んでたんじゃ……」
「あんたが酔った陛下連れて部屋抜けだしたから、追っかけて来たんじゃない!」
「若い男が酔った女性を介抱する振りしてする事と言えば、相場は概ね決まっておりますわ!」
「おい! 何でお前らは、男は必ず良からぬ事やらかすって前提でモノ言って来るんだよ!?」
 ――そんなん出来るんなら、この歳まで童貞やってねぇつーの! 
 龍海の心の叫びが彼女らには伝わったであろうか?
 否。
「シノさま! 重ねて申し上げさせて頂きますが、女性をお求めであるならロイにはもう手を出さないで下さいまし!」
 残念ながら否……
「だから、手も何も出してねぇって! つかロイは? カレンは?」
「ロイは宰相と秘書官に遊ばれてるわ」
「ああ、あの二人、食も御洒落も趣味が合わないが、歳下の男が好みってところは共通しておったな」
「カレンさまは酔ったモノーポリ閣下に捕まってました。先々代からのモノーポリ家の忠誠心披露や戦功の自慢話とか延々聞かされておりましてよ?」
「ははは~、あれはキツイ。ホントキツイ。おそらく明日の朝まで続くであろうなぁ」
「そんな事はどうでもいいのよ。陛下、あなた何考えてんの! いくら国のためだからってこんなキモオタと結婚とか!」
「そうですわよ閣下! 仮想敵国民のわたくしが言うのもなんですが、閣下の肩には魔導国の未来が掛かってるんです! こんな両刀のどっちつかずに一生を賭けるなんて、もっとご自分を大切にするべきです!」
「今に始まったこっちゃねェけど、オタ趣味だからってどうしてここまで言われなきゃいけねぇんだよ!」
 無茶苦茶でござりまするがな~。
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