127 / 197
状況の人、異世界で無双する
状況の人、王都へ帰還する2
しおりを挟む「恐れ入ります。で、まあ、先の大戦から20年が過ぎ、奴隷も二世の時代になって来ました。その中でも素質の有りそうな者、向上心のある者は準臣民として我が方に取り込む事を魔王閣下が承認なされましたので、これは、という逸材は城内においても先ほどのヤマネコ族の様に登用しております」
「そうですか。では彼らはいずれ正規の臣民に?」
「彼ら自身がそれを望むのであれば」
「でしたらモノーポリ閣下同様、陛下の御意に沿って頂いていると?」
「結果としてはそうなりますかな?」
「あの子たちの親の世代も、いつか故郷に帰れる日が来ると言う訳ですね?」
「果たして……それはどうでしょうなぁ」
官房長は鼻で軽く嘆息しながら零した。
「違うのですか?」
「彼らは……」
「はい?」
「彼らは、自分たちはアデリアに見捨てられた、と故郷を深く恨む傾向にあります」
「……」
「捕獲した捕虜も、連行した一般人も、こちらの方が数は多かったですから、戦後捕虜交換の後は身代金での交換になるのはご存じでしょうが、アデリアにはそれに回す資金は有りませんでした」
「たしかアデリア側から、しばらく留保してほしいとの要請があったと聞いておりますが……」
「その通りです。留保と言うと『将来的に引き取る』とも受け取れますが実質は……」
「事実上の放棄……」
「そう捉えて構わないかと。当方と致しましても、労働力の確保と言う点からこれ幸いと彼らを捕虜扱いから奴隷として徴用し、復興労働の人力と致しました。先述の通り、遺族感情を考えれば臣民や準臣民では無く、奴隷制を活用するしか無かったのです」
「その感情がアデリアに?」
コンコン
「失礼いたします」
先ほどの給仕が官房長用のティーカップを携えて戻ってきた。すぐさま官房長の前に並べて、茶の用意をする。
――話題、変えた方がいいかな? いえ……
一介の雑用にそれほど気を使うことは無いかも? とも思ったリバァだったが、テキパキと給仕する少年を見ていると何か気が引けた。
官房長への茶の用意を終えた少年は、一言「ご苦労」と労われた後、会談の邪魔にならぬよう二人の視界の外に出た。
「そう言ったところです。ですから……」
「はい? ハッ!」
リバァは突然、強烈な殺気を感じて身体を硬直させた。
いつの間にかリバァの横に忍び寄ったヤマネコ少年は、右の首元にナイフを突きつけて彼女の動きを封じたのだ。
文官であり、武道は在り来たりの護身術程度しか心得の無いリバァでは全く反応が出来ず、いきなり発せられた殺気を感じ取るのが今の彼女では精いっぱいであった。
「ですから……いくらポータリア・アンドロウムに対抗するするためとは言え、アデリアと組むなどと言う愚行は到底請け入れられるものではなく……それは我々だけでなく、彼らの意思でもある、と言う事ですよ」
読み違えたか? リバァは、そう悔恨を含めて奥歯を軋ませた。
リバァはもちろんの事、宰相システも、魔導王フェアーライトも彼が反対の意思を見せるであろう事は想定内でもある。しかし……
「特使さま、どうか自分たちの指示通りに」
――タイミングが早すぎる……! しかもこの強硬手段!
リバァはヤマネコ少年の警告を聞きながら、懸命に情報整理に努める。
「魔導王陛下の、我ら臣民を戦渦に巻き込まないため、との御心は大変尊き事ながら我らシーエス臣民には得心のいくところではありません。魔導王陛下には是非ご再考をお願いしたく、一両日内に直接魔王閣下自ら、陳情に上がる次第でございます」
「それならば、なぜ今、特使の私に刃を向けますか!? その旨を私に持ち帰らせ、来たる6魔王のサミットで……!」
リバァがそう考えるのは当然であろう。
その上でこの所業は……リバァの脳内でいくつかの点が線として結び合った。それも最悪の様相で。
「ま、まさか、あなた方は王都を!」
「此度の演習は我が方の稼働全部隊が参加しております。我らが思いを魔王陛下にお届けするには絶好の機会です」
――クーデター!
条件があまりにも揃いすぎており、その結論に達するのにさして時は掛からなかった。
――彼らは、モーグを武力制圧する気だ!
「し、しかし王都までの間にはハスク公爵領が! ハスク公はこんな横紙破りを容認するとは思えません!」
シーエス領内で穏健派のトップといわれるハスク公爵は、東北部のビアンキ侯爵夫人らと共に反主流派のまとめ役であったはず。蜂起軍の領内通過を認めるとは思えないが。
「此度の大演習は我が領の北方のほとんどが状況地域に指定されております。故にハスク領の軍兵も参加しておりますれば、訓練目標の変更も有り得るわけでして。まあ、ビアンキ侯爵辺りはご不満に感じるやもしれませんが」
――反戦派の連携が切り崩されている!
「ご安心を。こちらの指示に従って頂ける限り、特使殿には危害を加える事は有り得ません。どうか不用意な行動は慎んで頂きますよう、切にお願い申し上げます」
そう言うと官房長はテーブルをコンコンと叩いた。
それを合図に扉が開き、二人の衛兵と一人のメイドが入ってきた。
「お連れしろ」
官房長の指示に従い、まず衛兵がリバァの両手に枷を掛けた。
「こちらへ……」
その後メイドがリバァの左腕を絡めて誘導する。
その伸び切った狼の耳、獲物を狙うかの如き鋭い眼光や卒の無い所作は、彼女が単なる侍女では無く武に秀でた荒事にも対応できる者であることが即座に分かった。
リバァではとても敵わないと。
「わ、私と同行した部下たちは!?」
「事の次第が成功裏に収まれば、特使殿とご一行の身柄は即座に解放させて頂きます。それまで、どうかご理解の上ご堪忍を」
そう言い終ると官房長は小さく顎を杓った。
それを受け、三人はリバァを連れて応接室から出て行った。
0
あなたにおすすめの小説
異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』
見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装…
俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。
突然の事で戸惑うクラスメート達…
だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。
「またか…」
王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。
そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。
そして俺はというと…?
『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』
「それよりも不知火君は何を得たんだ?」
イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。
俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。
その場にいた者達は、俺の加護を見ると…
「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。
『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』
王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。
まぁ、その方が気楽で良い。
そして正義は、リーダーとして皆に言った。
「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」
正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。
「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」
「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」
「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」
「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」
「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」
「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」
「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」
俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。
「その…鎧と剣は?」
「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」
「今迄って…今回が2回目では無いのか?」
「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」
俺はうんざりしながら答えた。
そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。
いずれの世界も救って来た。
そして今度の世界は…?
6月22日
HOTランキングで6位になりました!
6月23日
HOTランキングで4位になりました!
昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°.
6月24日
HOTランキングで2位になりました!
皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました
久遠 れんり
ファンタジー
別の世界からの侵略を機に地球にばらまかれた魔素、元々なかった魔素の影響を受け徐々に人間は進化をする。
魔法が使えるようになった人類。
侵略者の想像を超え人類は魔改造されていく。
カクヨム公開中。
【完結】うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。
かの
ファンタジー
孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。
ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?
八神 凪
ファンタジー
ある日、バイト帰りに熱血アニソンを熱唱しながら赤信号を渡り、案の定あっけなくダンプに轢かれて死んだ
『壽命 懸(じゅみょう かける)』
しかし例によって、彼の求める異世界への扉を開くことになる。
だが、女神アウロラの陰謀(という名の嫌がらせ)により、異端な「回復魔王」となって……。
異世界ペンデュース。そこで彼を待ち受ける運命とは?
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる