状況の人、異世界で無敵勇者(ゲームチェンジャー)を目指す!―加筆修正版―

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状況の人、異世界で無双する

状況の人、王都に帰還する4

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「元々は仮想敵国の方ですものね。でも、友好国に転じれば逆玉もいいところじゃありませんか?」
「そう言うのってさぁ、何か幸せストーリーみたく言われるけどよぉ。イーミュウやロイならともかく、俺たちゃ紛うこと無き正真正銘、画に描いたような庶民なんだぜ? そんなんが、しきたりや慣習に雁字搦めの上流階級の世界で幸せになんか成れるもんかねぇ?」
「あ~、それは何となく想像できるな~。着る服にしても食べる事にしても、ガッチガチのルールだかマナーだかで縛られそうだもんね~。想像しただけで胃に穴が開きそう」
「その辺りは、じきに慣れるんじゃありませんかしら? やはり問題の本質としてはシノさまとフェアーライトさまがどう思っておられるかですし」
「その辺がな~。俺たちがその……男女でいたってのはイノミナの時だったし……」
「陛下じゃダメとか?」
「んなこと無いよ。イノミナもメルも間違いなく彼女本人なんだし、魔導王と分かってからも、なら付き合いヤメ! とは思わなかったし」
「惚気てんの? ま、年齢=彼女いない歴卒業の千載一隅のチャンスだもんね~。これ逃したら一生童貞も有り得るもんね~」
「フェアーライトさまのどこがお気に召しませんの? あ、やはりあの絵草紙の女性のように、カレンさま以上のヤケクソみたいに大きな胸の女性がシノさまはお好みなんですか?」
「バカよね~。あんなの現実にポンポンいるワケないじゃん」
「いる訳無ぇよ、ただのデフォルメだし。あの不自然さが”これは現実ではあり得ません、絵空事です”アピールになってるって言う奴もいるし」
「じゃあ何が不満?」
「おまえも言ってたろ? 自分の人生なのに何か流されていくだけみたいでヤダ、ってヤツ。俺もアレ、感じててさ」
「なるほどね~。だからあたしにも理解、示してくれたんだ」
「そんなこと言われましたら、私やロイは家風に流されまくりですわよ?」
「ん~。そういう生き方に疑問を持ったこととか、無いの?」
 上流社会には有りがち、と言うか話にはよく聞くのではあるがイーミュウやロイは、そう言った事に何も疑問を持たないのであろうか? 洋子はここを機会と、聞いてみた。
「そうですね~。私は一人っ子ですから家を継ぐのは当然と思っていましたし、お稽古事が辛いと思う事は有りましたが、へこたれたら私に尽くしてくれる使用人や領民の働きを無駄にしちゃいますし……これは天が私に与えてくださった役割なんだ、って感じで今に至ってますわね~」
「そうなんだ~。そういう家で育つと自然にそんな覚悟が出来るのかなぁ。やっぱあたしは生まれついての庶民だわ」
 洋子が感慨深げに頷く。
 龍海にとっても、やはりそれは同意であった。
 趣味を楽しむ分には申し分ない前世(?)だった龍海だが、同じ後継ぎであるのにイーミュウほどの明確な思いも覚悟も無かった事には、ある種後ろめたさのようなものは感じていた。
 自分の意地を張れたのはせいぜい趣味を混同した自衛隊入隊くらいなもので、その後の家業入りも流されたに過ぎない。
 イーミュウの環境が恵まれている、と言う事も出来ると言えば出来るが、それだけでは只のやっかみだろう。
 いずれにせよ、これからの自分の人生に明確なビジョンが描けずに逡巡している今のザマは「洋子にどうこう言える身分じゃないな……」と鬱っ気が擡げて来そうで頭を掻きむしりたくなってくる。彼女らより一回り歳を重ねていると言うのに情けない話である。
 とは言え、将来のビジョンなんてものはあくまでその時点での目標(しかも仮)設定に過ぎないだから拘ることも無いだろ? とも考えるわけで。
 などと頭を巡らせていた時、
「我が君主、フェアーライト魔導王陛下のお心を射止めた方の言葉とも思えませんなぁ」
いつもの面子とは違う聞きなれない声に、龍海ら三人は振り向いた。聞きなれないが、龍海と洋子には聞き覚えのある声だ。
「ティーグ! 一等軍曹……」
「オデ市以来ですね、シノノメ閣下」
 声の主はパンター・ティーグ一曹であった。
 メル(イノミナ)の情報から、反戦派貴族の先兵ともいえる立ち位置であり、あのテロ未遂事件の主犯として龍海と対峙したあのウルフ族である。
 ティーグは胸に手を当て、10°を越える45°くらいの角度で頭を下げて龍海に挨拶をした。
 魔導国での、この手の慣習はよくわからないが、龍海の感覚で言えばこの角度の敬礼は無帽時の最敬礼であり、その対象は皇族や、殉職者のような英霊に対して行われるものである。
「閣下って何だよ、気持ち悪ぃなぁ」
「しかしながら閣下は、やがて魔導王陛下と婚媾なされて王配となられるお方。今でも”陛下”とお呼びすべきかと、迷っております次第です」
 彼が本会議のために、大使のパナッソ公爵の使節に同行していたのは龍海も知っていた。
 魔導国、かてても主戦派が主力のシーエス勢にあって数少ない反戦派、穏健派として色々聞いてみたいとは、かねがね思っていた。
 ――いきなり向こうから来たかぁ。まあ改めてこちらの真意を測ろうとして、まず持ち上げてみようってところかな?
「……で、あんたの評価は?」
 値踏みされているものと仮定して、直球で聞いてみる龍海。
 ティーグはそれに呼応するかのように、口元に笑みを浮かべた。
「食糧倉庫での一件から、あんたは掴み所がないとは思っていたけどねぇ、まさか陛下を口説き落とすとは思ってはいなかったから……しかしあんたもまた困惑してるみたいで、こっちもちょっと判断に迷ってるわけなんだがな?」
 件の倉庫でのやり取りの時とさして印象が変わらないと見たのか、当時と同じ口調に戻したティーグ。その声色から、何か再会を嬉しがっている雰囲気すら見て取れた。
「そんな大層なモンじゃねぇさ。あんたの言う通り、今以って迷いまくってるし困惑しまくってるしな」
「そうだなぁ。陛下との件を見ると侮れん奴、とも思えるが、あんな注目されそうな酒を気軽に渡して勘繰られるネタ撒いちまう不用意さ、とかな。こっちもどう捉えたもんか思案のしどころでな?」
 ティーグは例のスコッチの件を持ち出した。
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