状況の人、異世界で無敵勇者(ゲームチェンジャー)を目指す!―加筆修正版―

三〇八

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状況の人、最終決戦へ

状況の人、作戦立案中4

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「うむ、陛下の寧静に於かれては侵さざるもの也――と、それ以外は何も寄越して来ん」
「なんだそりゃ? あんにゃろう、頭弱いくせに小難しい言葉並べればカッコ付くとか思ってんじゃねぇのか?」
「アデリアとの共同路線など、受け入れがたいと思っているのは、まあ間違いないところだろうがな。しかし、まさかクーデターを起こすとは……全く予想しとらなんだわ」
「それでモーグには何時いつカチ込むんだ!? いつまでも手ェ拱いているこたないだろう!」
 オーバハイムはポリシックと並んで穏健派、龍海はそう聞いていたが、随分荒っぽい口のきき方するもんだと肩を竦めていた。穏健派と言うよりも、単に反戦派・非戦派なのだろう。
「落ち着けオーバハイム! もしも血気に逸って俺らが内戦を起こせば喜ぶのは皇国・帝国だけだろうがよ?」
「モノーポリ公の言う通りだ。ここはとにかく慎重に、まずは陛下の御身の安全を最優先に考えねばならん」
「だからこそだろう! そりゃあ先の戦役じゃあ一番奮闘したのは奴らだし、戦死者の数だって最も多かったのは分かるさ。だからって陛下を人質に取るなんて外道な真似しやがって! そんなもん許される筈は無いだろ!」
「オービィ、そのくらいにしておけ」
「でも、ポリのオジキぃ」
「皆、思っていることはお前と同じだ。だからこそ冷静にならねばならん。仮にも領主たるが頭に血を昇らせたままでどうする?」
 オーバハイムを諫めるポリシック。お互いの呼び名から、二者の親交の深さが窺い知れそうだが。
「とにかく、陛下が無事であるのは信用しても良かろう」
「今、最優先は陛下の救出だな。宰相、陛下はエンソニック城から移されてはいないのだな?」
 オーバハイムを宥めたポリシックがシステに尋ねてきた。
「それは間違いない。こちらに忍んできたが最上階の居室に軟禁状態であることを伝えに参ったからな」
「メ……陛下から聞いたけど、その草って奴は要するに陛下直属の隠密部隊なんだろ? 彼らに救出を依頼できないのか?」
 ポリシックに続いて龍海もシステに質問・提案をしてみる。
「いや、連中は諜報に特化した集まりでな。武力に関してはロイヤルガードが担当なのだ。だが奴らもまた拘束、無力化されてしまっておる。誘導くらいは可能かもだが、それまでだろうな」
「現状、エンソニック城は蜂起軍に取り囲まれている。各城門はもちろん、モーグ市内にも分隊を散開させて何か起こった時には、すぐにそこへ集中できるように配置されているらしい。侵入はもとより、それ以上に脱出は困難だろう」
「しかし、ああいった城は時の権力者がこういう事態に備えての、秘密の脱出路とかがつきものだと思うけど……そういうのは?」
「あるにはある。陛下の執務室から直通で市外まで脱出できる極秘通路がな」
「それを逆走して、城内に進入するってのは……当然考え済みだよな?」
 龍海は提案しかけたが、この連中がそれに気づいてない訳ゃないわな、と途中で確認に変更した。
「もちろんだ。しかしこの通路の途中には、出口を含めて5か所の隔壁が設置されておってな、その全てが城側からしか開けられないように施錠されておる。外側には取っ手すら存在せん。それにシーエスもそれは知っておるからな。市の城壁外にある出口には兵を置いているだろう」
 ――脱出以外は使えねぇってことか……しかしLAMやC4を使えば……ダメだな、脱出はともかく、侵入時にそんな派手な音を出すわけには……
 更に、落盤・崩落でも起こせば台無しである。
「大体よォ、あの陛下が部下や市民ほっといて自分だけ逃げるようなお方か? そこ抜きにして救出計画とかやってないでよぉ、シーエスぶっ飛ばすことの方を考えるべきじゃねぇのかぁ!?」
「また血が昇って来たかオービィ?」
「あたいは冷静になってるつもりだよ、オジキ。オジキも分かるだろ? 陛下が、それも一番お膝元のモーグ市民を見捨てるなんてこた、有り得ねぇってさ」
「ん、まあ、それは同意だが……しかし、だからと言ってこちらも軍勢を催して対峙するというのも……」
「王都での戦乱は絶対避けねばならん。それは陛下の御意に沿う行為ではないし、列国の侵攻を許す事にも繋がってしまうだろう。やはりシーエスの出鼻を挫くには陛下を市外へお連れする方が良いと考える」
「だからさ、宰相あねさん。陛下がそれを了承されるわけは無いって!」
「そこでだ!」
 システがオービィの言葉を制する様に声を強める。更に龍海へと視線を見けた。
「シノノメ公に提案……いや、要請したいのだが」
「俺に? 何だ?」
「もしも有効な救出作戦が立案されれば、貴殿には救出隊に同行して、陛下を説得してもらいたい!」
「!」
 システの提案に部屋の中の者全員が一斉に龍海を見る。
「貴殿は陛下の王配候補だ。我らの声はともかく、貴殿の言葉であればきっと陛下も耳を傾けて頂けるであろう。どうか?」
 ――願ってもねぇ!
 自分が必ず彼女を助け出す、そう思っている龍海としてはシステの、この申し出は正に渡りに船である。
 しかし、
「あたいは反対だね!」
それに異を唱える声。
「そりゃ陛下がお認めになった男だってのは分かってるけどよ。陛下のご心眼を疑うわけじゃないが、でもこいつは敵国人であることには変わりはないし、なによりまずは、あたいたち魔導王国臣民がやるべき事だろうがよ!」
 ――う……確かに筋は通っているけど……
「嬢ちゃん、おめぇさんの言ってることは正に道理だけどよ。今は縄張り云々は言ってる時じゃねぇ。出し惜しみ無しで使えるもんは何でも使った方がいいと思うがな?」
 と、モノーポリ。
モノーポリ閣下おやっさんらしくねぇな! 以前なら一も二も無く奴とタイマン張るくらいの勢いで突撃しただろうがよ!」
「陛下や王都と離れたところでやり合うならな。だが今は事情が違うってぇのは嬢ちゃんにもわかろうが? どういう画を描くにせよ、シノノメは外せんぞ?」
「そこが気に入らねぇ!」
 オービィは更に険しい視線で龍海を睨んだ。
「オジキんとこの山賊討伐やら、奴隷商皆殺しとか、ウルフどもの弓矢素手で引っ掴んで投げ返すってのはいいけどよ。だけどよ、いくらなんでも、火竜さまを倒したなんて、そんな戯言なんぞ信じられっか!」
 ――か、火竜、
「こんな冴えない野郎に火竜さまがやられるワケが無ぇ! いったい誰がそんなヨタ吹きまくってやがんだ!」
「また熱くなっとるようだな」
 システも嘆息。
「集まってそろそろ1時間越えたな。一息入れるか?」
 モノーポリは控えていた侍女たちに茶の用意を指示。侍女たちは大声が飛び交った後にも動じず、指示通りに卒無くテキパキと茶の支度に入った。
 システらもそれに同意し、それぞれに席に戻って座った。ただ一人、オービィは憮然とした顔のまま、部屋の出口に向かった。
「オービィ、どこへ行くんだ?」
「クソだよ!」
 バアァーン! 派手な音を鳴らしながら開けられた扉からオービィは外に出て「厠はどこだぁ!」と待機の衛士に大声で聞いて用足しに向かった。
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