状況の人、異世界で無敵勇者(ゲームチェンジャー)を目指す!―加筆修正版―

三〇八

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状況の人、最終決戦へ

状況の人、作戦立案中6

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「多いとその分発見されやすくなる。この奇襲作戦はどこまで秘匿性を維持出来るかにかかっているからな。ところで今の月齢は?」
「三日後くらいに半月になるはずだ。時刻は午前3時あたりが一番の狙い目だが、その時間に月光が残るまでには日数が掛かっちまうな。月が沈む12時前には仕掛けないと……」
「ん? 夜戦は月が無い方がいいだろ?」
「そりゃ野戦の話だぜ兄ぃ。空中戦は真っ暗だと、どっちが上か下か分かり辛くなるからな」
「バーティゴ(空間識失調)みたいな状態になるのか? 飛行族でも?」
「街の光と星の光がごっちゃになって感覚が狂うんだよ。あたいでもあまり飛びたくないね」
「そうか。じゃあ、定石通り3時に突っ込もう」
 は?
 龍海の意見に全員が視線を集中させる。当然カレンを除く、であるが。
「シノノメ! 話聞いてたのかよ!?」
「もちろん聞いてたさ、そこは任せろ」
「だ、大丈夫なのかよ……」
「大丈夫じゃオービィ。タツミを信じよ」
「は、はい! カレンさま!」
 直立即答!
「そ、そうか。じゃあ、陽動と救出後の回収部隊を……」
「回収は要らない、俺たちは自力でここまで戻れる。陽動はお願いしよう」
 その後龍海は細かい指示を出し、必要な要請事項を提案した。

                ♦

「作戦はこんな感じだ。洋子、何か意見はあるか?」
 部屋に戻った龍海は作戦要綱を洋子らに説明していた。
 火器や暗視装置があることを知っている洋子、ロイ達は当然ながらポリシックやモノーポリらよりも戦法をすんなり予測・理解した。
「誰に運んでもらうのかな?」
「モノーポリのところにいた空間機動遊撃隊だ。彼らなら俺たちを置いた後、シーエス勢に見つかっても、追いつける奴はシーエスには居ないそうだ」
「ホントに選り抜きの精鋭部隊なのね。じゃあ安心して任せられるか」
 テーブルの上に広げられた略図で侵入コースを指でなぞりながら洋子は呟いた。
「空からの作戦て初めてだよね」
「理屈は俺も分かるけど経験は無いからな~。明日、遊撃隊も加わって現地を想定した訓練を行うことにした。時間は足りないけど仕方がない、出来るだけ回数を稼いで身体に感覚を覚え込ませないと」
「シーエスはメルさんに危害を加える気は無さそうだけど、このまま手を拱いていたら帝国や皇国が攻めてくるもんね」
「色々勝手に決めて来ちまったが……いいのか、洋子?」
「もう! いまさらでしょ?」
「シノノメ卿、自分たちは?」
「秘密の脱出路の出口は、この北西へ向かう街道近くにある。おそらく蜂起軍は万一に備えてここにも兵を配置しているだろう」
「そいつらの排除ですか?」
「いや、それはこっちでやる。最後の扉はご丁寧に手で開ける気は無いからな。お前たちは1~1,5キロ離れた街道の隅で高機動車を待機させろ。そこで合流する。敵兵を排除しきれなければ無線で知らせるから救援に来てもらうかも」
「心得ました!」
「明日あさっては、ロイたちは高機動車の操縦訓練をしててくれ。基本の操作は憶えてるよな?」
「はい! きっと手足の如く扱えるようになります!」
 ロイくん、ふんす!
「大見得切って大丈夫ロイ?」
「まあ、いつもの俺ほどのスピードを出す必要は無いしな。時速40キロ弱でも付いて来れるのは飛行種族くらいなもんだろう。とにかく、車体の感覚を覚えるのが第一だ。今、道の、どの辺りを車輪が通っているかを認識するのを最優先でな?」
「タツミさま、わたくしは……」
 次はアマリアだ。しかし彼女は、人間の急所は熟知している様だが(ガクブル)戦闘となると素人と見なければならない。
 龍海としてはここで待っていてほしいところではあるが、彼女のメンタルを考えると、どちらを選んでも苦渋の選択と言える。とは言え彼女の持つ治癒・回復系の魔法は応急処置と言う点ではポーションに勝るとも劣らない特性を持つ。これは魅力だ。
「とりあえずイーミュウ?」
「はい!」
「この二日間で彼女に拳銃の取り扱いを講義レクチャーしてやってくれ。敵に襲われても、俺たちが駆け付けるまで自分の身を守れるように」
「わかりましたわ!」
「心得ました! イーミュウ先輩、よろしくお願いします!」
「せ、先輩!? そんな! 殿下にそんな、勿体のうございますぅ!」
「いえ、ぜひとも!」
 目を輝かせ龍海・イーミュウを見つめるアマリア。その目は果たして、想い人の傍らにいられる嬉しさか、想い人の役に立てられる喜びか、これから起こる波乱を生き抜く充実感か。
 だが今はその手の事は後回しだ。まずはエンソニック城強襲、メルの救出だ。
 龍海は略図を睨みながらそれぞれの動き・工程を脳内で繰り返し、イメージを練り上げていった。

                ♦

 陽が落ちたモーグ市の夜を5時間程度照らして、戒厳令下の見回りに勤しむ不寝番の足元を助けていた月が西の山へと沈んで、しばらく経った午前2時半。
 城下の空中哨戒番は地上の不寝番と同様、2時間単位で交代するローテーションだ。
 午前2時から上番したシーエス軍飛行戦闘中隊偵察小隊所属の鳶系有翼種のミラーは、約20分の空中哨戒を経て今はエンソニック城本殿の屋根に降りて立哨をしていた。
 いくら飛翔可能な種族と言えど、2時間ぶっ通しで飛び続けられるわけでは無く、決まりはないが適当な時間で区切りをつけて各種建物等、高所に降りての警戒も行う。飛翔には魔力を使うので(魔力抜きでは翼の大きさもそれを動かす筋肉も全く足りない)有事の際に備えてある程度温存させなければならない。文字通りの羽休めである。
 だが、さすがにこの時間帯は辛いものがある。この辺りが一番睡魔に襲われやすい時間であるのは彼も同様であった。
 収穫の秋を控える今のモーグの夜の空は全体的にうっすら雲に覆われており、月が沈んでしまうと高所から下方、街中の様子などは、ほとんどわからない。故にその辺は地上班に任せて上空中心に目を凝らすが、やはり睡魔が瞼を落とそうと気合を入れて来やがる。
 眼をこすり、軽く頬を張ったミラーは屋根下のバルコニーに目をやった。魔導王執務室に設けられているバルコニーだ。
 それにつながる形で城の外壁を一周する様に細い回廊が設けられており、そこにも不寝番はいた。
 特にこのバルコニー周辺からの回廊はフェアーライトの執務室や隣の居室を警備するために3人が常駐する。そこから手が届く窓や扉は交代番が控える執務室以外は施錠はされているが、簡易なものでしかなかった。
 魔神ディアボルゥ族であるフェアーライトは飛翔能力もあり、この場から逃げようとすれば可能ではあるのだが彼女はそれを良しとしない。故に外からの追加の施錠は施されてはいないのである。
 魔導王フェアーライトの事実上の軟禁……
 指定大演習後、王都制圧作戦が下令された時は少なからず混乱したミラーではあったが、魔導王陛下を擁する事には変わりなく、魔導国が本来の、真の魔導国たらんとする領主シーエスに感銘、今では何の迷いも無くなっていた。いま上番している哨戒も、陛下の出奔防止ではなく、あくまでも陛下を不逞の輩から護衛する任務なのだと……
 ミラーは気を取り直すと、二回目の空中哨戒に着くべく気合を入れた。
 ――気張って哨戒するか!
 そんな思いを込めて両の翼に念を込めるミラー。
 しかし、
「ふっ!」
それと同時に彼は、後ろから伸びた手に自分の口を塞がれた。
 (ぐ、ぐお!)
 心臓がバックファイアを起こした。これが襲撃であることは一瞬で理解はしたが、
――そんな! 音も気配も全く!
それはあまりにも、あまりにも見事な接近であった。
 ミラーは懸命に藻掻こうとするも、
ババババ!
首のあたりから小さく破裂するような音が聞こえたと同時に、全身が硬直した。
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