状況の人、異世界で無敵勇者(ゲームチェンジャー)を目指す!―加筆修正版―

三〇八

文字の大きさ
169 / 197
状況の人、最終決戦へ

状況の人、小休止中2

しおりを挟む

 声の主、それはこの世界にやって来て、初めて依頼を受けた相手である狐っ子のイーナであった。宴に出される各種料理を運んでいる最中のようだ。
「配膳かい? 糧食班勤務ご苦労さまだね」
 後方において食事等、陣地内の兵の生活を支える業務隊の人員には、周辺の市町村民から志願者が募られた。それはイーナの村にも届いていた。
 話を聞いたイーナとエミの姉妹は、あの時の恩返しとばかりに一も二も無く志願したようだ。
「戦勝おめでとうございます! さすがタツミさまですね!」
「エミちゃんもご苦労さま! おお、みな美味しそうだなぁ」
 二人が運ぶ料理を見て、思わず喉を鳴らす龍海である。
「二人とも頑張って働いとったでな、有り難く味わうがよいぞ? 我も手伝ったしな!」
 なぜかカレンも炊き出し組に参加しておった。まあ、彼女の場合は……
「お疲れカレン。でもお前が糧食班行くとは思わなかったよ。国家の思惑には加担しないんだろ?」
「もちろんよ。だがタダ飯と言うワケにも行かんでな。酒代分くらいは手伝うぞよ?」
「カレンさまが参戦なされれば無敵なのに」
「そう言わんでくれエミ。我にも立場と言うものがあるでな」
「はい! あたしとしては、またタツミさまやカレンさまとお会い出来てホントに嬉しいです!」
「ん~、エミはほんに可愛いのう~」
 エミの顔を自分に寄せてなでなでするカレン。エミもニッコリニコニコ。
「イーナも負けずに可愛いがのう」
「え! わ、わたしがですか?」
「炊き出しやっとる最中、砲撃の爆音が響くたびに『タツミさんは大丈夫かしら』とかナイフ持った手元が危なっかしくなるほどソワソワしとってのぉ。先勝の報が届いてタツミが凱旋すると聞いた時の眼のウルウルとかそれはもう……」
「ちょ! カレンさま! 今、言わなくても!」
 そんなイーナの反応を見てニヤニヤするカレンとエミ。
「そっか、心配してくれてたんだ。ありがとね、イーナ」
 と普通に、極めてフツーに微笑みながら礼を言う龍海。
 対してボン! と顔が赤ピーマン化するイーナ。やれやれ、また新しい火種でも?
 因みにアープの教会組、セレナやジュノンらも駆けつけてくれていて、ダニーたち男子組も塹壕や掩体壕掘りなどの雑工員として参加している。
 ――支えた人に、今は支えられている……
 人の縁の繋がりをしみじみ感じる龍海であった。
「お待たせしました~」
 宴に戻った一行、イーナたちが持ってきた料理を皆に振る舞う。
「おお、待ってましたぁ!」
「お疲れイーナさん、エミちゃん!」
「二人ともご苦労さま! そうだ、あなたたちも食べて行きなさいよ」
 労われて、洋子に誘われるイーナたち。
「え、でも、わたしたちは……」
 いいからいいから! と半分強制的に座らされる二人。
「良いではないか、少し付き合え。タツミ! 我も一杯もらうぞ~」
 カンパーイ! 皆がカレンたちの乱入を歓迎して盃を上げた。
 ――今は……いいよな……
 龍海はイーナたちと話して、少しわだかまりが小さくなった気がした。
「失礼しま~す!」
「お、アマリア!」
 そこに、衛生班に出向しているアマリアの姿が。
「あら、お疲れさん! 仕事、終わったの?」
 洋子が彼女にも座席を進めながらアマリアを労った。
「はい! 要治療者のほぼ全員の治療を終えましたわ。目を離せない患者もいくらか居ますけど、軍医長さんが交代しなさいって言って下さって」
「そっか、ご苦労さんだったね。お腹すいてるだろ? さあ食べて食べて」
 調理された食材を前に寄せながら勧める龍海。
 はい! と笑顔で返事して皿とフォークを手に食べ物を物色するアマリア。
「何か欲しいものある? 取るよ?」
「ありがとうございます。じゃあ、そこのソーセージ、お願い出来ますか?」
 ほいほい。龍海は大皿に盛られているソーセージを数本、小皿に受けてアマリアに差し出そうとした。で、彼女の方を向くと、
あーん
アマリアは目を閉じて、口をパックリ開けて待機していた。
 ――へ? 
 一瞬硬直する龍海。こ、これはもしや……
 次のアクションを期待しているアマリアの後ろで洋子がほくそ笑みながら、自らも開けた口に指先をちょいちょいと動かして彼女の気持ちに応えるよう促してくる。
 これもイチャラブ要素の一つであろう。性的な接触は年齢も考えて無理だが、この程度であればハードルも低い。龍海はソーセージをフォークに差してアマリアの口に運んだ。ただそれだけのことなのに、童貞拗らせ症候群の弊害か、はたまた彼女との年齢差か、殊のほか心臓がドキドキしてしまったが。
「おいしいです!」
 ニッコリニコニコなアマリアさん。ホント至福そうなお顔をなさる。
 ――参るなぁ。メチャメチャいい笑顔……
「はっはっは! 無敵の勇者殿も我らが姫殿下には手が震えなさるか! はっはっは!」
 ウエルドが乱入してきた。顔を真っ赤にして、すでにかなりの酒が入ってそうである。
「からかうなよ男爵ぅ~」
 さらに、がっはっは! と重ねて笑い「まあまあ一杯!」とか言いながら龍海の盃に並々と酒を注いできた。
「ねえ、アマリア殿下? 結局、捕虜は何人くらいになったの?」
 洋子が聞いてきた。治療した敵兵も投降した捕虜も後方の簡易な柵で囲まれた収容所に纏められている。
「全部で250人くらいとの事ですわ。無傷で降参した敵兵は50人程度だと思います」
「姫殿下。その中に将校クラスの者は居りますでしょうかのぉ」
 とウエルド。
「情報かな?」
「詳しい兵力、配置なども知りたいとこですけぇの」
「そうだな。守りばかりじゃなく、最終的には敵陣も直接叩かないと相手も諦めないだろうし」
「二度とこっちに手ぇ出す気、起こさんくらいにはしてやりてぇですのう」
「明日、明後日はまだ停戦中ですよね? その間に調べておきますわ」
「ああ、連絡してくれれば俺も立ち会うから」
「いえいえ、そんなお手間は取らせては妻たるの名折れですわ。必要な情報は、ちゃ~んとお手元に届けて、見・せ・ま・す・わ!」
 ニッタァ~……。さきほどソーセージを食べさせてもらった時の笑顔と本当に同一人物なのか? そんな仄暗い地の底から湧いて来そうな笑顔に、一気に酔いが醒める思いの龍海であった。


 宴も区切りがつき、一人二人と幕営地に戻っていく中で、龍海とウエルドは陣地の一番南西部に設けられた戦場墓地に赴いていた。酒を供えて手を合わせて冥福を祈る。
「心配していた航空兵力、出て来なかったな」
 一息、黙とうしていた龍海。目を開けて墓地から満天の星空に目を移し、今日を振り返って話しかけた。
「有翼種、かてても戦闘に耐えうる飛翔族の数は少のうおます。地べたで這いずるワシらと違うて立体で飛び回る連中はどこの国でも虎の子ですけん。此度の様に数的に優勢な状況では、こちらが仕掛けない限り出て来んとは思いましたが……」
「次は出るよな? 兵力はどのくらいの差がある?」
「敵はおそらく500前後。対してこちらはその1/3以下でっしゃろな」
「数は負けてるが割合としてはこちらが上なんだな」
「魔導国はオーバハイム閣下の竜人族含め、飛翔族の割合が多いですけぇ。そうは言ーても、絶対数は圧倒的に不利。常識で考えれば当方は全滅必死ですわな。まあ、その辺はオービィ閣下次第でんな」
「今日もえらく、トんでたもんなぁ」
 思い出してフッと笑う龍海とウエルドは、供えた酒瓶の栓を開けた。その酒を埋葬した戦死者の上に振り掛けて供養とする。
 ウエルドは最後に残った一口を飲み、空となった瓶を死者の霊に手向ける様にかざした後、墓前に置いた。
「あんた方には、謝った方が、良いのかな?」
 墓を眺めながら、龍海が零すように話す。そう、先ほど引っ掛っていた事だ。
「なんですかい? こいつらの事ですかい?」
「まあ、そうなんだけど」
 そう答えられて、ウエルドも改めて墓地を見つめ直す。
「そうですなぁ、捉え方次第やが……勝ち戦やったし、お前らの死は無駄にせんかったぞ、と胸張る事も出来るし、ワシらだけ生き残ってすまんのう、とも取れるんやが……」
「いや、実はな……」
「ほ?」
「この連中も死なせずに済ませた、これからの戦でも誰一人死なせずに済む、そういう方法も有るには有るんだ」
「……どう言うこってす?」
 二人はしばらく、戦死した英霊の前で人目を忍ぶように話し合っていた
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』 見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装… 俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。 突然の事で戸惑うクラスメート達… だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。 「またか…」 王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。 そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。 そして俺はというと…? 『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』 「それよりも不知火君は何を得たんだ?」 イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。 俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。 その場にいた者達は、俺の加護を見ると… 「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。 『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』 王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。 まぁ、その方が気楽で良い。 そして正義は、リーダーとして皆に言った。 「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」 正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。 「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」 「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」 「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」 「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」 「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」 「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」 「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」 俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。 「その…鎧と剣は?」 「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」 「今迄って…今回が2回目では無いのか?」 「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」 俺はうんざりしながら答えた。 そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。 いずれの世界も救って来た。 そして今度の世界は…? 6月22日 HOTランキングで6位になりました! 6月23日 HOTランキングで4位になりました! 昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°. 6月24日 HOTランキングで2位になりました! 皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました

久遠 れんり
ファンタジー
別の世界からの侵略を機に地球にばらまかれた魔素、元々なかった魔素の影響を受け徐々に人間は進化をする。 魔法が使えるようになった人類。 侵略者の想像を超え人類は魔改造されていく。 カクヨム公開中。

【完結】うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。

かの
ファンタジー
 孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。  ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る

ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。 異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。 一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。 娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。 そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。 異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。 娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。 そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。 3人と1匹の冒険が、今始まる。 ※小説家になろうでも投稿しています ※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!  よろしくお願いします!

俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?

八神 凪
ファンタジー
ある日、バイト帰りに熱血アニソンを熱唱しながら赤信号を渡り、案の定あっけなくダンプに轢かれて死んだ 『壽命 懸(じゅみょう かける)』 しかし例によって、彼の求める異世界への扉を開くことになる。 だが、女神アウロラの陰謀(という名の嫌がらせ)により、異端な「回復魔王」となって……。 異世界ペンデュース。そこで彼を待ち受ける運命とは?

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

処理中です...