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状況の人、最終決戦へ
状況の人、二回戦中1
しおりを挟むパッパラッパッパッパー! パッパラッパッパッパー!
再び、進軍ラッパがダイブ平原に鳴り響いた。
ドドド ドドド ドドドドド……
ドドドドドドドドドドドドドー!!
騎馬隊が進みだした。
ハイ! ハイヤ!
騎手の掛け声に乗ってプレートアーマーを施された騎馬が東西に分かれて前進し、やがて縦列に並んで楕円の弧を描くような進路を取り、城壁に接近していった。
「弓兵前へ!」
オオオオー!
3千の弓兵が前進を開始、
「放てぇ!」
200mラインを超えた辺りで一斉射撃を始めた。
ヒュバ! ヒュババババ!
ザー!
数千の矢の雨が、再び連合軍防衛隊に降り注がれる。
その隙を突くように、100mラインを騎馬隊が東西に疾走し、更に矢を防衛隊に向かって浴びせかけた。防衛隊は盾に身を潜め、防御一辺倒となった。
バン! バンッバン!
連合軍側の第二防衛線から銃撃が始まった。だが、騎馬弓兵がいるラインは城壁から100m、第二防衛線は壁から更に150~200m離れている。
前回のように歩兵が城壁を越えて乗り込んでくればともかく、城壁の低いところから狙っても騎兵の頭部くらいしか視認出来ない。しかも今回は弓兵はもちろん、騎兵も矢を射掛けてくる。城壁から身を乗り出しての攻撃は自殺行為だ。
「軍司令官殿! 魔道具の音が聞こえますが倒れる兵がいません! おそらく狙えないのでしょう!」
城壁手前の前線司令部。参謀が遠眼鏡を除きながら興奮気味に叫ぶ。
「うむ、やはり騎兵と弓の組み合わせは正解だ。アクシー中佐に信号を送れ! 飛行戦隊による地上攻撃を開始せよ!」
グランドルの指示が飛ぶと、通信士が手旗で飛行中隊に出撃命令の下令を伝えた。
「総員出撃ー! 敵陣地を軒並み焼き払え! 一木一草残らずだ!」
おおー!
鬨の声を響かせ、皇国軍の飛行戦隊が飛び立っていく。魔力を充満させた翼を羽ばたかせ空高く舞い上がる様は友軍にとって、さながら神に遣わされた天使にも見えるだろう。
対地攻撃隊150、護衛戦闘隊350の青空いっぱいに広がる編隊は高度100mに達した時点で水平飛行に移り、アデリア陣地に向かって進行した。
100mの高度であれば真上を狙う弓矢なら届く距離である。しかし飛行隊各員は右に左に蛇行し、地上からの狙いを許さない。それより何より、友軍の全力弓攻撃によって空を拝む事すら困難であろう。
「敵、飛行兵群発見! 12時方向! 数、およそ120!」
――上がってきたか!
自軍と同じく、奴らも陣地後方から飛び立ってきた。上昇中は魔力を飛翔力に全力で振っているので一番無防備な状態であり、距離をとるのが常道である。定番通りの反応だ。
――ガチ合うのは城壁付近か……
「攻撃隊、対地攻撃用意! 戦闘隊、前へ!」
アクシーの命令の下、攻撃隊は若干高度を下げて油脂弾の着火準備に入る。護衛戦闘隊も高度そのままで敵迎撃部隊に挑む。
「我らが敵迎撃隊を引き受ける! 戦闘に入ったら攻撃隊は対地攻撃を開始しろ! 戦闘隊へ! 数はこちらが多い! 無理はするなよ? 2人がかり、3人がかりで確実に仕留めろ! 吶喊!」
オオオー!
雄叫びとともに槍や剣を構え突撃するアクシー隊。数に物を言わせ、すれ違いざまの初撃で半分を落としてやる! とばかりに全速に移る。
距離約50m、会敵まであと数秒。それぞれの武器に得物に力を込める。間を置かず残り30mを切り、各員が連合兵を屠るべく剣や槍、ハルバートを振り上げる!
だが、
ドドドドドドドオオオォォーン!
いきなりの一斉炸裂音がアクシーらを襲った。
バン!
「ぐわ!」
バシン!
「ぎゃ!」
カイーン!
「うがあ!」
アクシーの目に映る、断末魔の叫び声をあげながら音の数と同じほど墜落する皇軍飛行兵の姿。対地攻撃のために高度を下げた攻撃隊の眼前にも、撃墜された戦友がバラバラと落下していく。
――な、何が起こって……ハ!
ドドドドドドドオォォーン!
「ぐが! はがぁ……」
二回目の炸裂音。直後、アクシーは身体のあちこちに凄まじく鋭く重い衝撃を受けた。その内のひとつがアクシーの右目を襲った。
――ま、魔道具? そんな……我ら飛翔種に当てるなど、クロスボウだって……
アクシーは地上に落下する前に、すでに意識を無くしていた。
♦
「よっしゃあ! 一斉射効果大なり! あとは各ペアごとに共闘して敵に当たれ! 近寄るなよ! 混戦は避けるんだ! 距離をとって、まとまって撃破しろ! 友軍に当てるなよ!」
オービィ・オーバハイムの檄が飛んだ。
「行けぇ! 奴ら一人残らずアデリアの空から叩き落せぇ!」
うおおお!
アデリア魔道国連合飛行隊が残存する皇国飛行兵に襲い掛かった。
彼ら全員の手には、龍海が再現した散弾銃が握られていた。先ほどの炸裂音は彼らによる散弾銃の一斉射撃だった。
60人ずつの斉射2回。これで100人近い皇国飛行兵が被弾した。貫通力の弱い散弾と言えど、20mを切ったこの距離ならばOOバック弾は彼らの鎧を撃ち抜くに十分な威力を持っていた。さすがに鎧を抜いた後は大して身体に食い込む事はないが、素肌が出ているところはそうは行かない。特に無防備な飛行魔法力を拡散する翼に被弾しては、その飛翔能力は維持できない。アクシーのように顔面に被弾すれば即死もありえる。
前衛が粗方撃墜されて、皇軍は混乱した。そこへ連合軍は距離をつめ、剣も槍も届かない20m以内で次々と散弾を浴びせかけた。
バン! ジャカ! ドバァン! バァン! バァン! ジャカ!
「装填!」
ペアを組んだ一人が撃ち尽くすと、もう一人が射撃担当。その間に弾薬を装填。
それらを繰り返し連合軍は皇軍飛行兵を次々撃墜していった。
皇軍飛行隊はあっと言う間に総崩れとなった。散り散りに逃げ出す護衛戦隊は連合軍の追撃を受け、撤退に成功した数は50もいないだろう。
対地攻撃隊は更に悲惨だった。重い油脂弾を出来るだけ多く持てるように防具は軽装。武器は護身用の短剣がせいぜい。しかもその油脂弾の重さのせいで飛行速度は限られてしまう。
同士討ちを避けるため連合軍は自然と隊列を組み、味方が射線に入らないように注意を払いつつ、逃げる皇国軍を追撃。あわてて油脂弾を放棄し、速度を稼いだ者が何とか逃げ果せたがこちらも150中30居たかどうか。
翻って連合軍の損耗は当然、ゼロであった。
銃器によるアウトレンジ攻撃により、どれほど練度の高い皇国兵であっても全く手も足も出せず撃退されてしまった。得物の性能差が激しすぎて、残酷なほど当たり前の結果であった。
「敵、戦域から離脱しました!」
「よし! おっと!?」
敵航空勢力の排除の報告を受けたオービィは、地上からの弓攻撃を受けた。
「高度とれ! 最後の仕上げにかかるぞ!」
連合軍は一気に高度200mまで飛んだ。射手と弓種によってはここまででも飛んで来る矢はあるが、殺傷力は知れている。
「よっしゃぁ、広がれ~!」
オービィの指示で約120人の飛行兵が緩衝地帯上空に展開した。
そして散弾と同じく雑のうに入っていたある物を全員が取り出した。
「ピン抜けー!」
出されたものは、MKII破片手榴弾であった。兵たちはオービィの号令に従って銃を追い紐で肩にぶら下げた後、安全ピンを指に引っ掛けて引き抜いた。
この安全ピンを口で咥えて引き抜く行為は映画やドラマでは定番であるし、絵面的にも格好の良い演出ではあるが、実際にピンを引き抜くのに必要な力はそんな生易しいものではない。一生使いたい大事な歯を入れ歯にしたくなければ、どうしてもと言う時以外、避けるべきやり方である。
「投擲!」
号令の下、全員が地上に向けて手榴弾を次々に投げつけた。
ただ、200mもあっては安全レバーを握ったままで投げても途中で炸裂してしまう恐れもあるのでレバーは弱いセロファンテープで軽く巻いてあった。これなら地上に落下した衝撃でレバーが飛ぶようになる。訓練期間中に龍海がオービィらとともに、ポリシック領の荒野で実験して調整されたものだ。
威力は落ちるとは言え手榴弾の破片は200m以上飛ぶこともある。地上と違い、伏せて破片を避けることなど出来ない上空において、龍海は安全距離を200mに設定したのだ。
さて地上はと言うと……
ドバァン!
ドォン! ボカーン!
「うわあぁ!」
「ひいぃー!」
苦心惨憺、地獄絵図そのものである。
手榴弾の装備数は一人4個。つまり500発近い手榴弾が緩衝地帯に振りまかれたのである。
「タツ兄い、任務完了だ」ザッ
「了解! 撤収してくれ、お疲れ様!」ザッ
♦
一方、皇国軍司令部。
「敵飛行兵、引き返していきます!」
「我が方の損害は!?」
「生存者を数える方が早いかと……戦闘隊、攻撃隊合わせて……生存者62名を確認……」
「なん……だと……」
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