状況の人、異世界で無敵勇者(ゲームチェンジャー)を目指す!―加筆修正版―

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状況の人、最終決戦へ

状況の人、戦後処理中2

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「ここで女子会やるのって、帝国軍に止め刺すためだろ?」
「……なんでそう思うのだ? いつも言っとるように我ら古龍は……」
「アーシーにも見抜かれてたじゃないか。ポータリアに刻み込んだ近代兵器への恐怖。それがあってこそ、この先アデリアに侵攻する気を起こさせないための抑止力になるんだけど、それと同等のものをアンドロウムにも刻まないといけない。もちろん5万以上の連合軍兵力ならこちらが勝ったろう。でも、抑止力として恐怖を植え付けるには足りない。兵力と戦術を駆使すればあるいは? と思われては火種は燻り続けるだろうし。だから本来なら、火器をこちらに移動してポータリアと同等に攻略するべきだったんだが、それだと時間もかかるし戦死者もどんどん増えてしまう」
「……」
「そこで、古龍たちとつるんでいる俺がアデリアにいる――俺に何かあれば、お気に入りの餌場を奪われた古龍たちの怒りを買う。そうでなくとも、あのポータリアを蹴散らした謎の軍勢までいる。だからポータリア同様、帝国も手を出せなくなった」
「ふふ、考えすぎじゃ」
「予想・対策を尽く上回る異世界勇者の操る魔導兵器群。そして古龍との連携。どちらが欠けたとしても、この世界には抗える手段はない……これはポータリア・アンドロウム両国に、しかと刻み込まれた。最高のインパクトを持ってな。お前のおかげだよ」
「……お主がそう思いたければ……まあ、そう言う事にしておこうかの?」
 龍海の読みは概ねの所で正鵠を射ていた。しかし、それならば最初からカレンが龍海に加勢しても良かったろうが、やはりそこはアーシーが言うようにギリギリであったのだ。
 なにより、龍海が出来る事を全力で出すその姿勢・思いをどこまで示すか? それは龍海・洋子の師匠たるカレンの進級試験であったかもしれない。それゆえ他の古龍たちも是認したのだろう。
「ありがとな、ホントに」
 龍海はカレンにグラスを差し出した。
 カレンもそれに応え、
チン!
グラスを交わした。そのままグイっと飲み干す。
「終わったのう……」
 そう呟くカレンのグラスに次のビールを注ぐ龍海。続いて自分のグラスにも注ぐ。
「だな。まだポータリアやアンドロウムと捕虜の身代金や賠償の交渉、終戦協定とかの戦後処理も時間がかかるし、アデリアと魔導国との正式な同盟も……」
「嫁を二人も抱え込まねばならぬしな」
 ニヤ付きながら龍海をイジるカレン。しかし、実際どう落としどころを付けたものかは龍海としても全く五里霧中だ。しかし今は、
「でもまあ、一番の懸念だったアデリアと魔導国の安全保障は道筋が出来た。これで洋子を日本に帰してやれる」
これに尽きる。全ての始まりであり、これまでの龍海の行動はすべからく「洋子の日本への帰還」に帰結する。それが大幅に、いや、もう直前まで進むことが出来たのだ。
「お主は……」
「ん?」
「お主は、ホントに帰らぬのか? 洋子と共に故郷へ帰りたいとは思っておらんのか?」
「……無いな」
 龍海は寝ころんだ。視界は星空でいっぱいだ。
「召喚魔法陣はあくまで一人用だ。そりゃ、もしかしたら纏めて送り出すことも可能かもしれないけど、それでもしも不具合でも起こして洋子の帰還に支障が出たら取り返しがつかないし、それより……」
「それより?」
「俺、ここが好き、なんだよ」
「……」
「もともと、もう故郷くにには帰れない条件での転移だったし。そうじゃなくても、もういろんな人との関わりが出来て、それが凄く心地よくてさ」
「縁、か……」
「ああ。その中には勿論、お前もいる。お前がいなけりゃ、こんなにも早く目標を達成することは出来なかった。ホントに感謝してるよ」
「なにか、それ? もしかして我を口説いとるのか?」
「ごめん、もう定員オーバー。でも、お前さえよければ今までの様に付き合っていきたいんだけどな?」
「つまり、これからも我の餌場として傍に居ると言うのだな?」
「おまえが、俺に愛想尽かさない、限りは、な」
「ふふ。お主が再現リプロダクションを使えなくなったら離別も考えようかの? それで良いか、タツミ?」
 などと揶揄からかい気味に龍海に尋ねるカレン。だが、
「ん?」
返事が来ない。
「タツミ?」
 かぁ~……かぁ~……
 カレンが覗き込むと、龍海は溜まった疲労に負けて大いびきをかいて寝入ってしまっていた。持っていたコップも手から滑り落ち、ビールが全て土に染み込んでいく。
 カレンは、やれやれとばかりに軽~く嘆息すると、その寝顔に自分の顔を近付けた。
「ほんに、ご苦労じゃったな。今は……ぐっすり眠るがよい……」
 しばし龍海の寝顔を眺めるカレン。
 やがてカレンは龍海の唇に、ゆっくり、ゆっくりと自分の唇を重ねた。
 別段、舌を絡ませるでもなく、唇を揺らして感触を受けるわけでも無く、そのままじっと唇を重ね続けた。時折り秋の虫の音が耳に入るだけの、そんなひと時だった。
 ひとしきり口付けを続けたカレンはやがて体を起こし、給仕中に着けていたエプロンを掛け布代わりに龍海に被せてやった。
 龍海の屈託のない寝顔を眺めながら微笑むカレン。そこへ、
「む!」
いくつかの視線を感じたカレンはフッと振り向いた。
「な!」
 そこにはテントから顔を出してこちらを窺っているウェンたち古龍連が!
「ちょ! お主ら、見てたのか!? いつから!?」
「『ふふ、考えすぎじゃ』『ありがとな』くらいからかなぁ? いや~意外なもん見ちゃったね~」
「やるじゃねぇのカレン!」
「ヒューヒュー!」
「明日の朝、タツミくんがどんな顔するか楽しみですわ~」
「もう、いっそのことつがってしまえ! ほれ一気に!」
「や、やめんかお主ら! 黙って覗くとか趣味悪いぞ!」
「「「「「つ・が・え! つ・が・え!」」」」」
 なんか妙な雰囲気で「つがえ」コールし始める古龍たち。顔を真っ赤にして苦虫噛み潰しまくるカレン。
 そんな喧騒の中にも拘らず、よほど疲れていたのであろう龍海は、相も変わらず鼾を立て続けていた。

                ♦

 あの防衛戦から六カ月を越える月日が流れ、比較的温厚な冬を越えたアデリアには春が訪れていた。
 この国にも新年を祝う習慣があるのだが、それがアデリアでは四月一日なのだそうな。
 本来アデリア地方の暦では一月が新年であったが三〇〇年前までこの地域を支配していた大国の暦に合わせて以来、四月が新年とされているらしい。習わしで四と記されてはいるがこの四月の名前は「新」を意味する言葉で語られるとの事。まあその辺は歴史を知らない龍海たちにとっては、とにかく四月がお正月、とだけ解釈していた。
 しかし今年の新年はいつもより増して祝賀ムードが盛り上がっている。
 それは、四月一日を以て、新生統一国家「アデリア魔導国連邦」建国が正式に宣言されるからである。
 準備期間が半年程度とは、かなーり駆け足ではあるが、やはり新年に合わせたいとの意見が優先され、実際細かいところは整備途中でもある。
 ただ、アデリア、魔導国とも自治に関しては今まで通りなわけで、これからは一緒に頑張りましょう的な側面が強く、連邦府は新設されるがこれは大した権限があるワケでは無く、二国の連携を調整する役と言える。まあ、いろんな問題やトラブルが有ったらそのたび出張って仲裁やら間を取り持つとかを行うのが主な仕事である。
 で、その連邦府の初代総裁に魔導王フェアーライトの王配にしてアデリア国王の第三王女アマリア・チェイスターの娘婿たるタツミ・シノノメが指名されたのである。

「大統領でも良かったんじゃな~い?」
 洋子が弄る弄る。
「いつか統一政府が出来て権限が強くなればそれでもいいけど、現段階ではそれまでの繋ぎだからなぁ。てか、なんで俺がそれをやらされるんだよ、もう。政治なんて全くのド素人だよ、俺は?」
「アデリアと魔導国との橋渡し役であるからな。双方の王室と親類の其方が最も適しているのは道理では無いか?」
 明日の建国宣言イベントと、明後日の挙式に備えてメルもアデリア・魔導国の国境中央、ツセー市とオデ市の間にある緩衝地帯の上の方に建設された連邦府敷地内の龍海の屋敷に訪れていた。
「ついに明後日ね~、メルさん。衣装合わせで見たメルさんのウエディングドレス、ステキだったわ~」
「そ、そうか? いや、何か恥かしいな。あんな腕や肩を露出する服など、あまり着慣れないもんでな」
「フフ、花嫁衣装など着慣れていては、それはそれで問題であろうが? 今はアマリアが合わせておるのだったな?」
「そうね、今ごろフィッティングの真っ最中くらいかしら? そう言えば、イーミュウのドレスもよかったな~。プリンセスラインのドレスで、サイドのリボンが良く似合ってたのよねぇ~」
「そうだったな。あの歳で可愛らしさはもちろん、優雅さも程よく醸し出していて、彼女にピッタリであったし。余のドレスにも参考にさせて頂いたな」
「確かにさもありなんであったが、我としては小僧の方がな~」
「ロイ? 彼は軍装の礼服に近かったと思うが……あ、アッチの事か?」
 カレンの言にメルが反応。更に洋子。
「いや~、ロイったら、あんなところで思い切るかしらねぇ~」
「あ? ちょ! あの話題は封印しろって言っただろ!」
 龍海くん、声が荒れて来てます。
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