詩未満

奥田たすく

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 ライ麦畑
 稲穂を口に含んで
 引き抜けば
 血と茶色い青臭さ

 空に色はない 色はない
 少女は輪郭を失って
 ただの影になった

 空に色がなけりゃ
 時間が分からなかろうよ
 季節も分からなきゃ
 明日も分からなかろうよ

 稲穂がなけりゃ
 風が分からなかろうよ
 風が分からなければ
 君が分からなかろうよ

 色はないくせに
 風も分からないくせに
 雲だけはずれていく
 何も教えてくれない
 雲だけはそこにいる
 
 
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