詩未満

奥田たすく

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 弓のないバイオリン

 引っ張られる
 尊敬とかいう言葉で
 淡いピンクの和紙でできた袋で包装した気持ちは
 妬みとか 劣等感とか
 そんなものでは決してなくて

 ちゃんと俺にもあるさ 自分が
 だから、きっとそんなことではないのだけれど

 突き詰めていくと自分への失望とか
 明日への一抹の不安だとか
 その辺に収束していく
 本当さ

 こう思えるのも ここまで思いつめたからさ
 ラプラスの悪夢


――――――――――――――――――――――――


 世界に引っ張られる
 あいつの世界に触れる
 俺は右手の爪の先から削れて
 さらさらとしていくのが分かる


 
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