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機械仕掛けの家
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日常生活を恙無く送る私としては、あれほど子供の頃憧れていた大学生もいたって普通なものである。間違ってもある日突然目が赤くなって「メザマシ完了」だとか、ある日突然全世界がゾンビだらけになって「すくーるぐらし!」なんてことは起こらないわけで。
普通の。いたって普通な私の日常である。
「オハヨーオハヨーアサダヨーアサd」
バシッ
響「おはよ…ございます、朝、です…か…グゥ…スースー」
目覚まし時計を止めて返事を返して、現在AM6:00。どんなメカニックをつかったとしてもこの睡魔の誘いの手を振り解くことのできる奴なんて、いるはずがないでしょう。少なくとも私、響(ヒビキ)はもちろんできない奴の部類に入る。そうですとも私は楽園へと手を伸ばすことに対してaka二度寝)何の罪悪感をも感じないのです、さぁ堂々と二度寝をしましょう…!
千夏「何をぶつぶつ言ってんの、ほら響、起きるのよーほらーっ」
朝から私を子供扱いして現れたのは私の師匠、千夏(チナツ)。性別 女。年齢不詳。ポニーテールで海色の髪と目、薄ら汚れた飛行服の彼女は、見て取れるそのまま世話焼きだ。
千夏「世話焼きだじゃない、むにゃむにゃ言ってないでほーら」
響「え、あ、いや、ちょっと待って突っ込ませてください、何で私の回想を理解できてるんですか」
千夏「何でって、私は人の心の声が聞こえるのよー?」
響「エスパーだったんですか」
千夏「ま、そんなこと置いといて」
響「持ってき方が強引すぎやしませんか」
千夏「とりあえず早く起きてちょうだいな」
響「子供扱いしないでください。着替えるんであっちいってもらえませんか」
千夏「はいはい分かったわ。二度寝しない、逃亡しない、すぐに上にに登ってきて。じゃ」
響「信用なさ過ぎです」
千夏「息しない、心臓止める、とでも付け足しておこうかしら」
響「死ねって言ってませんかそれはっ!」
千夏師匠はそれ以上ボケネタがなくなったのか、スタスタと私の部屋から出て上へと上がっていった。
私はハイスピードでハンガーに掛かっている紺色の長袖長ズボンに着替え、身支度を整えて部屋を出た。
千夏「あー、今日も朝からよく働いたわー」
ガンっと両足をテーブルの上に投げたしているここは飛行船リアン号の操縦室である。
響「私を起こすのがそんなに重労働ですかそーですかすみませんでしたー」
千夏「そうよ~響ちゃ~ん、なんか食べ物作って~」
響「偉そうに甘えんなですよ~このグータラ師匠が~」
子供扱いが嫌だと言えば甘えてくるあたり腹が立つことこの上ない。何か食べられるものはと食料庫を開ける。
私、響のアイデンティティーは空色の短い髪に、黒縁の眼鏡でフクロウみたいだとよく言われる所。だが断じて私はフクロウなんかに似ていない。似ていないったら似ていない。
我が家とも言えるこの飛行船はかなり年季が入っているようで、__何て言ったら聞こえはいいが要するに中古のオンボロだ。例えるならばハウルの城がもう少し小さくなって空を飛びました、みたいな飛行物体なのである。
飛行していると言っても特別珍しいことでもない。この世界ではごく当たりまえの生活スタイル。マンションもあれば一戸建てもあり、学校だってデパートだってある。飛行船タイプもあれば、地面がそのまま浮いているラピュタタイプもある。そしてこのリアン号は、飛行機操縦訓練学校、テルナミア大学の研究所の役割をしているのだ。
空で生まれて空での生き方を学んで死んでいく。
地上に住む人間は少ない。
危険だからだ
響「はいできました、ご自分の分くらいご自分で運んでください」
千夏「あら、今日もサンドイッチなのね」
響「文句は受け付けません。食べ終わったら図書館行ってきます」
千夏「あらっ?響、学校は?」
響「今日から休みです。いただきます」
千夏「あぁ、いただきます。そうなの、いいわねー大学は休みが多くて」
響「その代わり師匠より試験が多いですけども」
千夏「」
響「そういえば私のテルナミアの実技試験には来ていただけますか」
千夏「え、えぇもちろん行くに決まってるわ」
響「ふぅん。では私が受ける学科の受験番号は当然ご存知ですよね?」
千夏「こ、こぉのハムおいしーわー」
響「それレタスです」
千夏「」
響「お忙しくて来ていただけないなら、そう言ってくれれば結構ですよ、どーせどーせ」
千夏「お忙しくて来ていただけないわ」
響「ムカつきます」
千夏「しょぼん」
テルナミア学校は蒼之国が運営している国一大きい大学。飛行機の操縦だけでなく、他にも多くの学科があり、ここに来れば大抵のことは勉強できますというのが表向きの顔。
だが、その実態はオールマイティ軍人の育成である。
青い紙の招待状が届けば否が応でも入学せねばならない。
ま、入ったら最後必ず兵士にならなくてはいけないわけではないのである程度気楽ではあるのだが。
響「じゃ、ご馳走様でした。後片付けはよろしくお願いします」
千夏「あ待って待って、一緒に行くわ」
響「はい?」
千夏は飛ぶのが上手すぎるので、あまり一緒に飛びたくない。横からちょっかい出してくるから危なくて飛べたもんじゃない。そんなこと御構い無しで急いでサンドイッチを流し込んでいる。
作ってやったんだからもっと大事に食べろよサンドイッチ!
壁に掛けてあるゴーグルを付けて、引っ掛けてある「トンボ羽根」と呼ばれるハングライダーを背中に背負いベランダへの扉を開けた。
雲一つ無い青空。一面に広がる雲海。
すぐそばには宙に浮く、この国の巨大な王城が見える。
いつも通りのいい感じの上昇気流だ。
こんないい空をこんな奴と一緒に飛ぶなんてたまるか。
響「面倒だから先行ってていいですよねー」
千夏「あらちょっと待ってったら!」
ベランダの柵に立って、ゴーグルを確認して、タイミングを見計らい、腕を広げて、蹴った。
風に乗って、浮かんで、沈んで、飛んで。
いざ目的地へ滑空する瞬間が最高に心地いい。
今日も、いつも通りの空だ。
後片付けは結局誰がすることになったんだろうか。
『蒼歴史:P1~「神之国」より引用。
かつて化学の力で栄えた国があった。真面目で勤勉な民は日の光や風や水や火の力を借りて文明を築いていった。しかし、彼らはあの石を見つけてしまった。』
普通の。いたって普通な私の日常である。
「オハヨーオハヨーアサダヨーアサd」
バシッ
響「おはよ…ございます、朝、です…か…グゥ…スースー」
目覚まし時計を止めて返事を返して、現在AM6:00。どんなメカニックをつかったとしてもこの睡魔の誘いの手を振り解くことのできる奴なんて、いるはずがないでしょう。少なくとも私、響(ヒビキ)はもちろんできない奴の部類に入る。そうですとも私は楽園へと手を伸ばすことに対してaka二度寝)何の罪悪感をも感じないのです、さぁ堂々と二度寝をしましょう…!
千夏「何をぶつぶつ言ってんの、ほら響、起きるのよーほらーっ」
朝から私を子供扱いして現れたのは私の師匠、千夏(チナツ)。性別 女。年齢不詳。ポニーテールで海色の髪と目、薄ら汚れた飛行服の彼女は、見て取れるそのまま世話焼きだ。
千夏「世話焼きだじゃない、むにゃむにゃ言ってないでほーら」
響「え、あ、いや、ちょっと待って突っ込ませてください、何で私の回想を理解できてるんですか」
千夏「何でって、私は人の心の声が聞こえるのよー?」
響「エスパーだったんですか」
千夏「ま、そんなこと置いといて」
響「持ってき方が強引すぎやしませんか」
千夏「とりあえず早く起きてちょうだいな」
響「子供扱いしないでください。着替えるんであっちいってもらえませんか」
千夏「はいはい分かったわ。二度寝しない、逃亡しない、すぐに上にに登ってきて。じゃ」
響「信用なさ過ぎです」
千夏「息しない、心臓止める、とでも付け足しておこうかしら」
響「死ねって言ってませんかそれはっ!」
千夏師匠はそれ以上ボケネタがなくなったのか、スタスタと私の部屋から出て上へと上がっていった。
私はハイスピードでハンガーに掛かっている紺色の長袖長ズボンに着替え、身支度を整えて部屋を出た。
千夏「あー、今日も朝からよく働いたわー」
ガンっと両足をテーブルの上に投げたしているここは飛行船リアン号の操縦室である。
響「私を起こすのがそんなに重労働ですかそーですかすみませんでしたー」
千夏「そうよ~響ちゃ~ん、なんか食べ物作って~」
響「偉そうに甘えんなですよ~このグータラ師匠が~」
子供扱いが嫌だと言えば甘えてくるあたり腹が立つことこの上ない。何か食べられるものはと食料庫を開ける。
私、響のアイデンティティーは空色の短い髪に、黒縁の眼鏡でフクロウみたいだとよく言われる所。だが断じて私はフクロウなんかに似ていない。似ていないったら似ていない。
我が家とも言えるこの飛行船はかなり年季が入っているようで、__何て言ったら聞こえはいいが要するに中古のオンボロだ。例えるならばハウルの城がもう少し小さくなって空を飛びました、みたいな飛行物体なのである。
飛行していると言っても特別珍しいことでもない。この世界ではごく当たりまえの生活スタイル。マンションもあれば一戸建てもあり、学校だってデパートだってある。飛行船タイプもあれば、地面がそのまま浮いているラピュタタイプもある。そしてこのリアン号は、飛行機操縦訓練学校、テルナミア大学の研究所の役割をしているのだ。
空で生まれて空での生き方を学んで死んでいく。
地上に住む人間は少ない。
危険だからだ
響「はいできました、ご自分の分くらいご自分で運んでください」
千夏「あら、今日もサンドイッチなのね」
響「文句は受け付けません。食べ終わったら図書館行ってきます」
千夏「あらっ?響、学校は?」
響「今日から休みです。いただきます」
千夏「あぁ、いただきます。そうなの、いいわねー大学は休みが多くて」
響「その代わり師匠より試験が多いですけども」
千夏「」
響「そういえば私のテルナミアの実技試験には来ていただけますか」
千夏「え、えぇもちろん行くに決まってるわ」
響「ふぅん。では私が受ける学科の受験番号は当然ご存知ですよね?」
千夏「こ、こぉのハムおいしーわー」
響「それレタスです」
千夏「」
響「お忙しくて来ていただけないなら、そう言ってくれれば結構ですよ、どーせどーせ」
千夏「お忙しくて来ていただけないわ」
響「ムカつきます」
千夏「しょぼん」
テルナミア学校は蒼之国が運営している国一大きい大学。飛行機の操縦だけでなく、他にも多くの学科があり、ここに来れば大抵のことは勉強できますというのが表向きの顔。
だが、その実態はオールマイティ軍人の育成である。
青い紙の招待状が届けば否が応でも入学せねばならない。
ま、入ったら最後必ず兵士にならなくてはいけないわけではないのである程度気楽ではあるのだが。
響「じゃ、ご馳走様でした。後片付けはよろしくお願いします」
千夏「あ待って待って、一緒に行くわ」
響「はい?」
千夏は飛ぶのが上手すぎるので、あまり一緒に飛びたくない。横からちょっかい出してくるから危なくて飛べたもんじゃない。そんなこと御構い無しで急いでサンドイッチを流し込んでいる。
作ってやったんだからもっと大事に食べろよサンドイッチ!
壁に掛けてあるゴーグルを付けて、引っ掛けてある「トンボ羽根」と呼ばれるハングライダーを背中に背負いベランダへの扉を開けた。
雲一つ無い青空。一面に広がる雲海。
すぐそばには宙に浮く、この国の巨大な王城が見える。
いつも通りのいい感じの上昇気流だ。
こんないい空をこんな奴と一緒に飛ぶなんてたまるか。
響「面倒だから先行ってていいですよねー」
千夏「あらちょっと待ってったら!」
ベランダの柵に立って、ゴーグルを確認して、タイミングを見計らい、腕を広げて、蹴った。
風に乗って、浮かんで、沈んで、飛んで。
いざ目的地へ滑空する瞬間が最高に心地いい。
今日も、いつも通りの空だ。
後片付けは結局誰がすることになったんだろうか。
『蒼歴史:P1~「神之国」より引用。
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