異世界で番長目指します。

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第22話【歓声!、完成!、閑静…】

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あらすじ:秀吉達はそれぞれの場所で目標を目指す。キースとライルはどうしても後一歩の所で考え悩んでいたが周りの環境や気晴らしが閃きを与えていた。秀吉はスキルを創生するが自分の予想より違って呆然としていた。



△△朝方の鍛冶場にて▽▽

朝から金属音が鳴る鍛冶場の隅に黙々とペンダント造りに励むキースの姿があった。
昨日は汗を流し葛藤していた悩む表情はなく、熱気に包まれた鍛冶場なのにどこか涼しい風を感じている表情で造るキース。

「…フム。」

キースの顔を遠くから腕を組んで見つめるムドー。

「キースの奴はどうだ?ムドー。」

鍛冶場の出入り口からガルトが声をかける。

「これは親っさん。出迎えもなしに。」

「構うことない。どうだ?」

「まだ1つもできてない…いやできているのですが本人が納得しないのか、木箱に捨ててる状態ですね。」

「そうか。」

するとキースは立ちあがりムドーに近寄っていく。

「ムドーさん。出来ました!見てください。」

ムドーの手に自信作のペンダントを渡すキース。

「どれ……なっ!?この造り方はヤマズ式!」

ムドーは驚きながらマジマジとペンダントを調べる。

「4歳頃、とーちゃんが珍しく行商から本を買い見ながら必死に造っていた事を記憶にありまして。でもとーちゃんは諦めて俺にその本をくれたので必死に読んで覚えましたがとーちゃんから基礎を学んでいくと次第にやり方も忘れてしまって…昨日夜空を見ていたらスゥーと記憶が出てきました。」

異世界の鍛冶師には流派が存在する。東西南北に分かれて4つ。
東はヤマズ式、西はグラム流、南はウッドバック式、北はジオルド流がある。
特に東国のヤマズ式は東国でも口伝や手伝で伝えない技術で一番腕利きの弟子のみ秘伝として書かれた本を渡す習わしで伝える為、世界の鍛冶師からは幻の鍛冶技術と言われている。

「滑らかな仕上げと繊細で脆く見えるが強度がある。」

横で見ていたガルトが話す。

「それだけではないぞムドー。もしこのペンダントが良質なら水の中に入れるがよい。」

ムドーの近くにいた弟子が早々と桶に水を汲んできた。作業していた弟子達も近寄る。
キースのペンダントを水に入れると…ユラユラと漂った。

「なっ!?沈まないなんて!」
「全部鉄だろ?あり得ない。」

ムドーの弟子達にガルトが話す。

「ヤマズ式の製造はこれにある。ワシが若い頃、東国のヤマズ式を見た時は驚いたものだぞ。確かに金属は沈むが!…魔法を込めればどうだ?キース。」

ガルトの言葉にキースが答える。

「はい、正解です。」

ムドーの弟子達は驚く。魔鉄から造る剣や防具には魔力が宿る。それ以外に魔剣や魔防具は出来ないとされていたからだ。しかしヤマズ式は鉄を魔鉄に変わる技法があった。

「本には土魔法の適性者のみ製造できると書いてました。」

するとキースの手に持っていた鉄鎚が光り輝いた。すると黒かった鉄鎚は白色に変化した。

「おおっ、親っさん!白だ!」
「なんとワシと同じか!?」

弟子達も歓声をあげてキースを拍手する。

「うわっ、真っ白!何で?」

その答えをガルトが教えてくれた。

「その鉄鎚には魔法が含まれておってな。赤色なら防具適性、鋼色なら武器適性、白ならば…武具全般の適性がある。」

ムドーが付け加える。

「色が変わるのは見習い卒業だ。今この時から鍛冶師と名乗ってよい。」

キースは大いに喜んだ。



△△朝方の一室にて▽▽

朝から天気が良くアイテム屋に日差しがあたるが一室は仄かに緊張感が漂っていた。

「…ここから…はっ!」

コポコポと沸騰する薬液に素材を素早く入れると手で蓋をするように撫でるとすぐに離して薬液を見つめる。濃い青色がわずかに薄くなり空色にちかい色合いになる。

「ここから…魔力種を…。」

空色の薬液が淡い青色になる。ここでライルが素早く蓋を閉めて薬液を見る。すると煌めくような淡い青色になった。

「おやまあ、ヒッヒッヒッ。」

後ろから見ていたビレッタが驚き言葉がこぼれる。

薬液を火元から離して薬液を冷ます。
冷めてから魔力種に数滴湿らす。すると種が芽吹いてきた。

「やっ…たぁぁあああ!!」

見事に魔力薬を完成させて喜ぶライル。

「見事に造り上げたねぇ。どこで気づいたんだい?」

ビレッタがライルに質問する。

「昨日夜…気晴らしに外に出た時、ビレッタさんが造った魔力薬を見て気が付きました。まるで火が中でユラユラと燃えていると思い火が青くなるにはと考えたら…ありました。魔力薬は空気に弱いのではないかと。」

ライルの指摘にビレッタがにこやかに答える。

「良くわかったね。魔力ってモノは純真なのさ。色や物で変わってしまう程ね。私はねぇライル…色々な薬を造ったからわかるんだよ。錬金術の元は魔力にあるってね。私の信条は錬金は自由に、魔力は丁寧に。どうだい?」

ビレッタの錬金術師としての心得を教わったライルは喜んでうなずいた。

「僕も参考にさせて頂きます。」

「ところで魔力薬だけじゃあつまらないから他の薬も造ってみるかい?」

ライルは元気よくビレッタの製造に釘付けとなった。



△△一方の秀吉は?▽▽

「なんだよぉ~、単なる畑じゃねーかよ!」

秀吉は気だるそうに呟く。人気がなく閑静な場所であったからである。

「農園って言うから果物の1つくれーあるもんだと…チッ!イラついてくらぁ…」

秀吉のイライラの原因はこのスキルである。

△△△△△△△△△△

スキル:消費MP1000
魔神拳:必殺のオーラを敵に放ち魔神の姿に具現化してダメージを与える。怒気と静気が発動中に放つとより敵のダメージ量が飛躍する。

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

全くあり得ねぇーわ!何だよ具現化って!ってかこの異世界に魔神何ていんのかよ!マジでやべぇよ!

秀吉が畑の周りを歩きながら考えていたら地面からニョキニョキと黄緑色の芋虫が現れた。

△△△△△△△△△△

ワームジャンパー
HP2000/MP1000

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

「コイツらかぁ、んっ?何だアイツ?」

△△△△△△△△△△

アースセンチビート
HP3900/MP900

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

土色の身体端に脚をワシャワシャしながら口を左右からカチカチと鳴らす。

「余計な奴まで居やがってぇ…」

秀吉は飛び付いて噛みつくワームジャンパーを殴り飛ばし、蹴り飛ばしと煙にしていく。アースセンチビートが秀吉に襲いかかるが…

「このムカデ野郎がぁ!」

秀吉がアースセンチビートの頭を畑にめり込ましながら吠える。

ピクピクとまだ動こうとするアースセンチビートの頭にさらに一撃めり込ませた。

するとようやく煙に消えた。

「…こんなバチバチに戦闘してもよぉ…」

派手で目立ちたがりの秀吉にはこの閑静な畑は苦手らしい。バトルポーチを見ると見事に肝が入っていた。

「さてと王都にむかうが。」

農園を後にした。











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