アポロ・ファーマシー

丸玉庭園

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4-3 石清水のせせらぎジェル

「いや、僕は」
「そうなんでしょ」
「いえ……」
 困り果てている玉野に、モコはビシッとその黒いカラスを指さした。
「じゃあ、そのかぶりもの取ってみせて!」
 今日一番の声で宣言するモコに、玉野は呆れたように息をついた。
「体調が悪いのに、ずいぶん元気ですね」
「いいから。早く証拠を見せて」
「……わかりました。仕方がありませんね」
 そういうと、玉野はかぶりものの境目に指を入れた。
 そして、そのままグッと上にあげる。
 首、アゴ、ほっぺた……と、アポロファーマシーの店主の素顔が一気に暴かれていく。
 たばねられた黒髪が、肩にぱさりと落ちたのが見えた。
「玉野、さん……?」
「ご自分が見たいって言ったんでしょう。何を驚いているんです」
 そこには、モコと同い年くらいの男の子がいた。長い黒髪はうなじのあたりでたばねられている。整った顔立ちに、すずし気な切れ長の瞳。
 ただひとつギョッとしたのは、顔の右半分に真っ黒のツタのような模様が描かれていたのだ。
「それ、なに……?」
「これはですね。ちょっと遠い昔に薬作りで失敗しまして」
 手で顔をおおいながら、玉野は何でもなさそうに答える。
「その日からこの顔を隠すために、カラスのかぶりものをしているんです。これをかぶっていれば、怖がられないでしょう」
(いや。それをかぶってたほうが、みんなギョッとしそうだけど)
 つい、言いかけそうになるが、必死でこらえた。
 玉野はカラスのかぶりものをかぶっているが、ご近所づきあいもいいし、お客さんにもていねいだ。店のリピーターもしっかりとついている。
 かぶっていようが、かぶってなかろうが、このお店が続いている事実こそが、玉野の人柄のよさゆえなのだ。
 だから、顔の模様くらい、と思いたくなる。
 しかし玉野自身が気になるのなら、何も知らない自分がこれ以上口をはさむべきじゃない。
(玉野さんは、優しい。マテリアルだってそう。効果が出たら、払ってくれればいいっていつもお客さんに言っているのを聞いている。その場で受け取ることだってできるのに。もしかしたら払いに来ないかも知れないとは、思わないんだ。だからお客さん自身も、玉野さんのことを信頼できる)
「優しすぎるよ。取ってって言ったらすぐに、かぶりもの取っちゃってさ。見られたくなかったんじゃないの?」
「別に、いいですよ。モコさんになら」
「……えっ」
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