アポロ・ファーマシー

丸玉庭園

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6-4 百目鬼の呪文

「あの、玉野さん」
「なんでしょう」
「妖精の森って、どこにあるんですか」
「ここですよ」
「ここって、アポロファーマシーの裏庭ですよね」
「そうですよ。妖精たちの住処はもう少し先にあります」
 玉野は、裏庭をどんどん進んでいく。
 アポロファーマシーの裏に、こんなに広い森があったのか、とモコは周りの木々を見渡した。
 青々としげった高い木。これはイチョウの木だ。横に上に広がったイチョウの木が一面に生えている。秋には銀杏の実がなるらしい。その頃になれば、独特の銀杏の香りが漂うんだろう。
「妖精たちは、このイチョウの森がお気に入りなんですよ。だからここに住み着いている。秋になると、金色の森になりますから。きらきら好きな妖精たちが、この町に住んでいる理由のひとつです」
「ミンティだけじゃなくて、他の妖精たちも金色のきらきらが好きなんだ」
「その通り。まあ、妖精が住み着くということは、そこがいい町の証拠です。水がきれいな川には蛍が住み着く、その道理と同じ。妖精が住んでいると聞きつけた、小人や竜らもその町に住み着く。そうして、このイチョウ町が出来上がったんです」
「なるほど。イチョウが妖精たちを呼び寄せた、みたいなものだよね。なら、奈良の金閣寺やエジプトのピラミッドの近くにも、妖精が住んでいるのかな」
「ええ、もちろん」
 この町に、そんなにも不思議な生き物たちが住んでいるんなら、もう全国、全世界に不思議な生き物たちは住んでいるんだろう。
 信じていなかったわけじゃないけれど、そういうものを自覚したとたんなんだか世界が輝いて見えてきた。
 モコの胸は、わくわくで高鳴っている。
 だって、これから、妖精に会えるわけだし。
 いや、いる。
 今まさに、目の前に小さな可愛い妖精の姿が見える。
「げ、幻覚? 妖精が本当に見える」
「いいえ、モコさんは健康ですよ。正真正銘のミンティです」
 ウェーブのかかった白髪に、ミルクのような白い肌、翡翠の瞳にバラの花びらで作られたワンピース。そして、金色の薄い四枚の羽がひらひらと動いている。
 身長は、マグカップくらい。まるでおもちゃ屋に売られているお人形のような愛らしさ。
 紛れもない、妖精だった。モコは目をぱちくりさせて妖精を見つめる。
「か、かわいいっ」
 モコが妖精を堪能している横から、玉野はたんたんと言い放った。
「ミンティさん。僕のカラスを返してください」
 すると、ミンティはバラのワンピースをひるがえしながら、玉野をからかうように笑った。
「ねえ、タマ。その子って彼女?」
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