壊していいもの

Soraneko

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壊していいもの

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 壊してもいいもの。いま、僕はそれを探している。理由は簡単さ、むしゃくしゃするんだよ。僕は何とか優しくやろうって頑張ってきた。辛いことがあっても、悲しいことがあっても、むかつくことがあっても、虚しいことがあっても、そうやって頑張ってきた。今となっては、優しくやるってことが、かえって僕自身を縛ってしまったようにも思う。僕の周りにはたくさんの「もの」があって、心無い人たちはそれらに順番をつけるんだ。これは自分にとって大事だから一番最後だ、これはありふれたものだからいつでも壊してやるって。普段優しいふりをしてる人も、陰ではそういうことをしているのを僕は知っている。それって優しい人とは呼べないよね。本当に優しいんなら、「もの」にも優しいはずだもん。誰かの大切なものは、他の誰かにとっては全然大切なものじゃなかったりするって、何かの本に書いてあったけど、僕はそれがよく分かる。でも、その誰かの前だけ大切そうに振舞って、いなくなったら壊してしまう人たちがいることだって、僕はよく知っている。
 
 そんな人たちを見ていると、何だかすごく残念で、空っぽで、遠い気持ちになってしまう。大きくなるにつれて、僕に向けられた刃物はもちろんだけど、そういうのにも僕は少しずつ後を追われてきた。そして僕はそういう人たちにはなりたくないから、とことん逃げた。追手は増える一方だけど。追いかけっこを始めて大分経ったある時、僕はひどくイライラし始めた。正確にいえば、イライラは前から緩やかに溜まってきていたのだけれど、その時僕は始めてそれを大いに感じた。でも走り続けないといけないし、そこら辺に落ちてる「もの」達も誰かの大切なものかもしれないでしょ。イライラは溜まり続けるのに、減らす方法が僕には見当たらなかった。後ろを追ってくる人たちみたいに、僕も何かを傷つけたり、壊すことが出来たら楽だったんだ。でも優しい人になるって決めたんだから、それは出来ない。とても悔しいよ。あんな人たちは楽になれて、僕は苦しまないといけない。優しくなるって決めた時から、僕の一番大切なものは、「壊してもいいもの」だったのかもしれない。

 君の周りにはある?あるならいいけど。でもしっかり確認してから壊してね。誰かがそれを探してるかもしれないから。
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