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第一章
下町日和1
しおりを挟む「ふわぁ~~~っ下町日和~~っっ」
私はヒラヒラドレスのすそを持ちながら、馬車に向かって走る。後ろでアルが怒ってるけど気にしない。
お日様ぽかぽか晴天、まさに今日は下町日和。私は勢いよく馬車に乗り込む。
「エミリーお嬢様、本当にお利口にしててくださいね。淑女らしい行動を、と奥様も仰っておりましたよ」
はぁ、とアルは大きくため息をついた。私は少しムッとして、口をへの字にした。
「仕方ないじゃない。久しぶりなんだもの。外に出るの」
皆私を外に出さないようにするんだもの。楽しみで仕方ないのよ。しかも今日は主人公に会えるかもしれないのよ、浮かれるのも仕方ないことだと思うのよね!
そうこうしている内に馬車は下町へ向かい、出発した。大体馬車で30分ほどのところに町はある。私は馬車30分の道のりを1時間かけて歩いていた。今思えばよく歩いたな、と思うし誰かに誘拐されなかっただけでも奇跡なのではないか。
「今日でわたくしが町へ行くのは最後なのよね…」
寂しくなってぽろっとその言葉が出た。それを聞いたアルが怪訝そうな面持ちで首をかしげた。
「お嬢様、何か勘違いをされているのでは…?」
アルのその言葉に今度は私が首をかしげた。
「別に私どもは、お嬢様を外に出さないようにしている訳ではありませんよ?」
「…え?」
「お嬢様が『お忍び』で行こうとするから止めるのであって、お出かけとして私どもと共に行くのであれば、私どもはお嬢様をお止めしません」
目をパリクリしながら、向かいに座るアルを見つめる。いいの?私まだ、町へいっていいの??そんな私の様子をみてアルは少しだけ笑う。
「私にはお嬢様の行動を止める権限はありません。『お忍び』は別ですけどね」
アルは目を細めふふ、と笑う。いつもは見ることのできないレアな顔を私はまじまじと見つめた。アルは基本的に、口元は笑っていても目が笑っていなかったり、困ったように笑うか真顔なことの方が多い。なかなか見ることの出来ない顔なのだ、これは。
「何か顔についてます?」
急に真顔に戻ったアルが、そう言う。見つめすぎていたことに気づき、私は少し恥ずかしくなった。恥ずかしくなって俯いた私にアルは何も言わなかった。
急に訪れた静寂に、お互いの呼吸の音や布が擦れる音、ガラガラとした車輪の音だけが残った。なんとなく気まずくなって俯いたままだったのだが、『何か付いているか』というアルの質問に私は何も返答していないことに気づき、バッと顔を上げる。
さっきから変な行動ばかりする私にギョッとアルは顔を固まらせた。
「何もついてないわ!」
「…反応遅くないですか、お嬢様」
遅くなんてないわ!と私はプィッと顔を背けた。そんな私をみて、くすくすとアルが笑う。
「そういえば、お嬢様。その髪飾りつけてきてくださったんですね」
「だって嬉しかったんだもの。つけてくるわよ」
「でもお嬢様、少し乱れていますよ。…ちょっと失礼しますね」
アルが私に手を伸ばす。先ほどからの恥ずかしさで火照った身体に、アルの指先はひんやり冷たくてぴくりと身体が反応する。アルの顔が近い。本当に綺麗な顔をしているんだなぁ。初めてアルを見た頃よりも今の方がイケメンだと感じるのは気のせいなのだろうか?
アルは私の髪を整え、そこに髪留めをさし私から離れた。
「やはり、お嬢様は赤色とかピンクの可愛らしい色がお似合いですね」
目を細め、アルが微笑む。その表情は、まるで愛しいものを見るような顔で私はまた俯いた。今日のアルはいつもよりも優しげで調子が狂う。とにかく私はアルと目を合わさないようにし、町へ着くのを待った。
ちなみに、このことがきっかけで私の好きな色が赤やピンクになったのは言うまでもない。
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