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四章 風鈴の音
美の執念
しおりを挟む「う、嘘でしょ。シャンプーとリンスが一年待ちなんて………」
私は、メイドであるカシアに言われた言葉に、自分の耳を疑った。
「ええっと………お嬢様には大変申しにくいことなのですが……シャンプーとリンスの販売元であるライト辺境伯が、最近シャンプーとリンスの販売数を劇的に減らしておりまして、シャンプーとリンスがあまり市場に出回らないのです。」
カシアが申し訳なさそうに、シャンプーとリンスの販売数が書かれた紙を渡してくると、シャンプーとリンスの販売数が四分の一程までに下がっていることが分かった。
「どうしてここまで販売数が下がるのかしら……………折角、ランド公爵の妻であるハルナ様みたいに、髪がさらさらになると思ったのに。」
私が自分のパサパサな髪を触って溜め息をつくと、カシアが閃いたような顔で私にアドバイスをしてきた。
「それでしたら、サーファクルト辺境伯(ライト)に直接会いに行くのはどうでしょうか。………ルラ様のお父上様であるシマ様の方が、ライト辺境伯様よりも貴族階級が上ですしね。」
カシアが首を傾げながらぽつりと言葉を漏らすと、私はカシアの言葉に首を縦に振って頷いた。
「で、でかしたわカシア。は、早くお母様のところに行ってお母様を説得しましょう。」
カシアの腕を強引に掴むと、シャンプーとリンスの為にお母様のところへ走ることにした。
……これで、私の髪もばっちりよ。
私は、自分の髪がさらさらになっているところを想像すると、自然に足に力が入っていった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「確かに、それはいい考えね。」
お母様に、カシアの考えを説明すると、お母様もいい考えとカシアのことを褒めていた。
「じゃあ、後はお父様だけど……………」
私は、お父様に説明することを考えると、急に頭が痛くなってきた。
…………だって、金と食べ物にしか興味がないあのお父様よ。
どうしたらあの父親にシャンプーとリンスについて説得出来るかと考えたが、いい案は何も浮かばなかった。
…………はぁ、私の夢も終わったのね。
私は、お父様を説得することが無理だと分かると、肩の力が自然に抜けていくのが分かった。
「大丈夫よルラ。私があの人を説得しとくから。」
お母様はウインクをしながら堂々と言っているが、私はお母様の言葉を未だに疑っていた。
「いくらお母様でも、おのお父様を説得するのは無理なのでは………」
私は、お母様の目を剃らしながらぽつりと呟くと、お母様は黙ってしまった。
………やっぱり無理なんだわ。
これ以上ここにいても仕方ないことを私は察すると、弱弱しく足を動かしてこの部屋を出ていった。
「はぁ~、シャンプーとリンス欲しかったな~」
私が傷ついた心を部屋で癒していると、カシアがタコをひっぺがすような勢いで扉を開け、私の部屋に入ってきた。
「た、大変ですルラ様。ライト辺境伯の跡継ぎが近くに遊びに来ているらしいです。」
「何ですって‼」
私は、カシアの次の言葉に興味を示した。
「どうやらライト辺境伯の跡継ぎは、ハクルド公爵様とランド公爵様と遊びに来たようで、商店街で楽しく買い物をしているとの情報が、各店の店主から送られてきました。」
カシアが半ば興奮した様子で口を動かすと、私はとあることを決意した。
「ち、違う場所に行かれないように、早く跡継ぎ殿に会いに行くわよ。」
着替え室から服を取り出すと、このチャンスを逃さないように、カシアに馬車を出すように指示を出した。
………あの父親の下に生まれてしまったことに、どれだけ泣いたか覚えていないが、侯爵だということで生まれて始めてあの人に感謝した。
この世界に来て、私は始めてあの人にいい感情を持った。
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