転生領主の領地開拓 -現代の日本の知識は最強でした。-

俺は俺だ

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五章 鮮やかな町並み

すれ違い

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「ハクト大将。この施設内に店を開くのを認めてくだせい。」
「……まぁ、とりあえず。理由を聞いてからかな。」

 現在、俺は脚の長い椅子に座り、マッチョ体型のラグンと目を合わせていた。

 何故こうなったのかというと、ハクルドの反応を見てラグンにもこの施設を見せたら、どんな反応をするのかという興味が俺に湧いたところから始まる。
 当時の俺はそうと決めると、直ぐにラグンを転移魔法でこの施設に連れて来て、施設内にある数々の物を見せた。

 俺は、ハクルドのように落ち込むのではないかと、施設内の物に驚いているラグンにウキウキしていると、ラグンがハクルド以上のことを口にしたのが問題だった。

「二号店を開きたい。」と言うなんて、想像出来た人はいないと思う。

 正直、住宅施設に店が建つのは面白そうでいいことだが、こいつは違う。
 この施設内に、慕われているマッチョがいることが問題なのだ。

 俺だって、慕われている奴を見るのは嫌だが、自分よりも上や対等の立場だったらまだ許せる。
 だが、ラグンは絶対に許せない。

 何故かって、当たり前じゃないか。
 ラグンは、俺の弟子という立場なのに俺よりも慕われている。 
 そして、それは俺の存在意義を否定する要素でもある。

 これは、端から見れば部下に対する嫉妬かと思うだろうが、実際は違う。

 俺のしていることは、俺の心を折らせない為に仕方のないことなのだ。

 一度や二度、ラグンが慕われているのを見るだけならば、俺もここまで焦ったりしない。
 だがしかし、ラグンがここに店を立ち上げるというのならどうだろう。
 
 それは、毎日ラグンの慕われている様子を見ることになり、俺が自分の心を壊さないように、耐えることとなる。
 ━━━━絶対にそんなのは嫌だ。

 だから俺は、今日もここにやって来たラグンに、「認めない」と厳しい言葉を言うだろう。
 何度か、「認めてあげよう」という善意の心から出た言葉を、口に出してしまいそうになってしまったことがあるが、絶対に後悔することになるため、心を惜しみ「認めない」とラグンには毎度伝えている。

 ………こんな大将ですまんな。

 こんな俺を大将と認めてくれているラグンに、今日も意味もない理由を喋らせ、心を痛める俺であった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「あ~あ、今日も大将は店を建てることを認めてくれなかったな~」

 大将に渡された転移棒を手に握りながら、少し小さいと感じるベンチに座り悩んでいた。

 大将に認められるにはどうすればいいだろう?

 これは、俺が最近よく考えている事だ。
 こんなことを思い始めたのは、まだ子供の大将に「住宅施設作ってみたから、見に来ない?」と言われた時からだろう。

 当時の俺は、「住宅施設って何?」と内心疑ってしまったが、「大将の言うことだし、絶対に凄い物だろう」と、大将の言葉に首を縦に振り、大将と供に住宅施設へと転移した。

 正直俺は、大将が言っていた住宅施設を舐めていた。
 何故なら、俺の知っている建物とはが違ったからだ。

 大将が子供らしい笑みを浮かべながら見せてきた建物は、一度だけ見たことのある王城の何倍も凄かった。

 ………いや、何十倍と言う方が正しいのかもしれない。
 
 大将の見せてきた住宅施設というものは、見た目は少しダサイかったが、何百メートルと上に続く建物をともせずに支えていた。しかも、横幅が何十メートル以上ある建物をだ。
 
 これが、どんなに凄いことで、素晴らしいことかは誰でも分かるだろう。
 王という国を纏める者が住む王城でも、精々たてよこ二十メートルが限界だからだ。

 とある国の王が、「自分の国の凄さを他国の王に見せてやる。」と五十メートル程の城を建てようと計画したことがある。
 そして、その計画はたったで終わった。

 何故なら、二十メートルを越える辺りに骨組みを作ろうとした途端、その城は崩れ、見るに耐えないものとなったからだ。
 その国の王は、学ぶことを知らない子供のように、何度も何度も五十メートルを越える城を建てようとしたが、その度に失敗した。

 そして、そんなことを繰り返す度に「城を建てる費用の為だ。」と民から食料や金を奪っていった。
 そう、無慈悲にだ。

 当然、生きることも苦しくなった民の中には、餓死する者もおり、王から物を奪われた民は、失敗ばかりする王に苛立ちを感じ、遂にはそのを壊してしまった。
 彼等は、民という存在よりという存在の方がいいと学んだのだ。

 犯罪者と化した民はその国を滅ぼすと、食料と金を求めて違う国へと荒らしに行った。

 心が痛まないのかって? そんな訳ないじゃないか。

 王より深い傷を負った心に、という存在はなかったのだ。
 現在は、犯罪者と化した民達の数は、各国が協力して討伐計画を実行したため少なくなっているが、未だに数は多い。

 そんな犯罪者を生み出してしまった元凶ともいえる、高い建物を建てることの難しさを、子供である大将が簡単に覆してしまったのだ。

 だから俺は今日も、大将に認めなれる理由を探し、大将に認められる存在になるよう努力する。

 …例え、になろうとしても。 
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