箱庭の魔王様は最強無敵でバトル好きだけど配下の力で破滅の勇者を倒したい!

ヒィッツカラルド

文字の大きさ
15 / 41

15・魔王軍編成宣言

しおりを挟む
 大森林内の洞窟前でコボルトたちは愕然とした表情で静まり返っていた。複数匹のコボルトたちが持っていた武器を下げて立ち尽くしている。
 俺と戦っていたコボルトのリーダーであるキングも戦意を失っていた。落ちている愛用の光るシミターすら拾わない。
 力少なく肩を落とすコボルトたちは自分たちの敗北を認めたようだった。降伏している。
 そして、降伏したキングが小さな言葉で俺に確認した。

「あなた様は、本当に魔王軍を編成するのですかワン……」

 俺は先程そう述べた。事実のマジである。
 俺は胸の前で腕を組ながら偉そうに返した。

「そうだ。俺は魔王軍を編成して、勇者をぶっ殺す!」

 何せ勇者を殺さないと世界が崩壊するからな。
 勇者一人の犠牲で世界が救えるのなら、俺はそれでも世界を救うほうを選択するだろう。
 魔王軍と人間たちが戦うはめになっても、世界が絶滅するよりはましだ。
 人間たちを取るか、魔物たちを取るか……。究極の選択だが、俺は少しでも世界が生き残るための選択肢を取る。

 でも、人間と戦争を始めるのは少し気が引けるな。出来れば別の作があればいいのだが……。
 理想はどちらも救うである。
 そうなると、何か打開策を講じなければならないだろう。

 俺の背後に控えていたキルルが言った。

『魔王様は自分の力で勇者を討伐できないから、魔王軍を作り出して勇者討伐を叶えるつもりなのですね』

 実にキルルは物わかりが良い幽霊だな。援護射撃的な発言が的確だ。

 無勝無敗の能力が俺自らの勇者討伐を妨げているから仕方ないのだ。他力を率いて勇者を討伐するしかない。

「そうなる。だからコボルトたちよ、俺の配下に加われ、今日からお前らは魔王軍だ!」

「「「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいだワン!!」」」

 慌てるコボルトたちが声を揃えて発言した。どうやら納得してはくれないようだな。
 そしてキングがコボルトを代表して意見する。

「ま、魔王様、ちょっと待ってくださいだワン!!」

「なんだ、キング?」

「我々はしがないコボルトの集団だワン。数だって戦える男衆は20匹程度だワン。洞窟の中には戦いの足手まといになる女子供や年寄りが30匹ぐらい居ますワン。それに我々は、兵隊としての訓練すら受けたことがないワン。そんな者たちが魔王軍だなんて無理だワン!!」

 も~、ワンワンと言い訳ばかりを並べやがるな。ウザったい。
 だが、キングの意見も一理ある。

 俺は顎をしゃくらせながら威嚇的に怒鳴った。

「黙れ、コボルトどもが!!」

「「「キャン!!!」」」

 俺の怒鳴り声に怯えたコボルトたちが弱々しく身を縮めた。両耳が平たく伏せているし、尻尾も丸まり股間の間に挟み込んでいた。

「俺が作るのは軍隊だけじゃあねえ。国を作るんだ!!」

「ほ、本気ですかワン!?」

『国を……作るのですか!?』

 コボルトだけじゃあなくキルルも驚きの言葉を漏らしていた。

 俺は説明を続ける。

「そもそも軍隊を作り出しても支援がなければ戦えんだろう。軍は国を守る矛と盾だ。それらは国の援助がなければ成り立たない。物資や食事が必須だ。だから俺はお前らコボルトの男衆だけじゃあなく、老若男女すべてを受け入れて養ってやる。お前ら男衆が軍隊と言う矛と盾で、洞窟に隠れている老若男女たちが王国の民となり軍を支援するのだ!」

 そう、これは国作りだ。魔王の国作りなのだ。
 無勝無敗の魔王の俺が勇者を殺すには、魔物の軍隊が必要になる。それだけの戦力が必須になるだろう。
 俺は部下として勇者を討伐出来るだけの兵士たちを持たなければならないのだ。それは、国作りに匹敵するだろう。

 俺の傲慢を見ながら、なで肩に力を揺るめたキングが呟いた。

「魔王様は、王国を作るつもりでありますかワン……?」

 俺の口角が吊り上がる。その微笑みが答えであった。その笑みが俺の自信を知らしめる。

「魔王様、ほ、本気ですかワン……」

 キングはやっと理解してくれたようだった。

「そうだ。コボルトだけじゃない、この辺に住む知的な魔物はすべて配下に納めてまずは町を作る。魔物の町だ!」

「魔物の町……ですかワン……」

 俺の理想にキルルが呆れた口調で呟いた。

『壮大ですね……』

 皆がじとぉ~~っと俺を見ている。皆の視線で理解できた。
 こいつら俺を信用してないな。無理だと思ってやがる。
 ならばと俺は強気で言い切った。

「町は時間を掛けて都市に育て、更に時間を費やし都市をやがては王都にまで引き上げる。村から始まり国まで成長させるんだよ」

「それは確かに魔物の王国だワン……。ですが……」

 俺の壮大な計画を聞いたキングが俯いた。そのキングの耳が力無く伏せている。

「でも、王国だなんて無理だワン……」

 また不満かよ。あー、イライラするな!

「何故だ!?」

「我々コボルトは寿命が短い短命種。国を作れるほど数を増やせませんワン……」

「そこは他の種族も巻き込んで国を作るからもんだいないだろ。この世界にはコボルトの他にゴブリンとかオークとかも居るんだろ」

「確かに魔物にはいろいろな種族が存在するワン。しかし、その種族が一つに纏まった経験はないワン。我々はゴブリンとすら仲良くなんて出来ないワン……。今まで何人かの魔王が誕生したけれど、どれもこれも単一種族の魔王だったワン……」

「一種族しか統一出来てないのか?」

 俺はキルルに訊いてみた。

「本当か、キルル?」

 この世界の知識に明るいキルルが答える。

「本当だと思います。今まで魔王軍は魔族を率いても魔物のすべてを率いたことはないはずです。そもそもすべての魔物が一つの国を、いいえ、軍隊すら組むのは不可能だと思いますよ……。それにコボルトとゴブリンが吊るんでいるところすら見たことがありません」

 種族の違い、言語の違い、習性の違いが壁なのかな?
 どうやらRPGのキャラ編成のように簡単にはいかないようだ。

「なるほどね」

 この世界の住人が言うのだから間違いないのだろう。
 だが、俺は違うのだ。勇者を倒すために歴史を変える。理も変える。その力が俺にはある。あるはずだ。だから、そこまでやるつもりだ。

 そして俺は奥の手を語る。

「ならば俺のもう一つのチート能力を披露しないとならないか」

 元々今披露するつもりだったんだけどね。こうなったら宣言してから使ってやるよ。

『もう一つの能力ですか?』

「俺には魔王の能力として、無勝無敗の能力のほかに、もう一つ能力があるのだ!」

 一つ、身体能力の向上。
 一つ、無勝無敗の能力。
 そして、三つ目だ。

 俺は自信ありげに言ってやった。
 キルルもキングも何事かと目を丸くしている。

『もう一つのチート能力ってなんですか──?』

「クゥンン~??」

 コボルトたちが不思議そうな表情で俺を見ていた。キルルも疑問を抱いて首を傾げている。

「なあ、キルル。墓城から持ってきたカップをこっちによこせ」

 俺はキルルが抱えていた陶器のワインカップを指差した。

『これですか?』

 ここに来るまでの道中で俺の股間を隠していた陶器のワインカップだ。
 フワフワと飛びながら近付いて来たキルルが陶器のワインカップを俺に差し出した。
 全裸の俺は陶器のワインカップをキルルから受け取ると、反対側の手首に口を当てる。
 そして、前歯でガリっと手首を噛み切った。頸動脈が切れてプシュっと大量の鮮血が飛び出る。
 ちょっとだけ痛かった。

『魔王様っ!?』

 キルルが心配するなかで俺の手首からドクドクと鮮血が流れ落ちて行った。その鮮血を俺は陶器のワインカップに受け止める。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました

まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。 その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。 理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。 ……笑えない。 人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。 だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!? 気づけば―― 記憶喪失の魔王の娘 迫害された獣人一家 古代魔法を使うエルフの美少女 天然ドジな女神 理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕! ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに…… 魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。 「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」 これは、追放された“地味なおっさん”が、 異種族たちとスローライフしながら、 世界を救ってしまう(予定)のお話である。

処理中です...