俺のハクスラ異世界冒険記は、ドタバタなのにスローライフ過ぎてストーリーに脈略が乏しいです。

ヒィッツカラルド

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【第五章】閉鎖ダンジョン前編

5-3【君主ベルセルク】

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俺はソドムタウンを旅立ってから三日後に、隣町であるゴモラタウンに到着した。

俺がゴモラタウンを見ての第一印象は、デカイ町だと感じた。

「すげーデカイ町だな~」

石作りの城壁からして上に高くて横に長い。

ゴモラタウンはソドムタウンに比べて大きな町だと一目で印象付けられた。

全方を広い広い麦畑に囲まれ、食料は豊富だなとも印象付けられる。

それに町の中の建物も、木造建てなのに五階建ての物件が多い。

ソドムタウンはほとんどが二階建てか三階建てだったからな。

その分だけ、町全体が背高く見えるのだ。

そして町の中央に、馬鹿デカイ城が建っていやがる。

城壁は町を挟んで二重にも建造されてやがるのだ。

「完全に城塞都市だな」

それにさ、人々の行き来も派手だ。

身なりもちゃんとしていやがる。

ソドムタウンのように下品じゃあない。

その分だけ色気は少ない感じだった。

俺は田舎者のようにキョロキョロしながら町に入って行った。

城壁のゲートは二つある。

要するに城壁が二つある町なのだ。

俺は一つ目のゲートで持ち物をチェックされるとすんなり通してもらえた。

そのまま賑わう町を進む。

そして君主の城を目指す前に、ワイズマンの店から探してみた。

この町を拠点にワイズマンは商売をやっていると聞いていたから少し気になったのだ。

そして、人に訊いたら直ぐに見つかる。

町の中でも大きな建物だった。

大きな建物にはスーパーマーケットのように多くの人々が出入りしている。

「なんとも繁盛していやがるな」

あのモッチリ糞オヤジの店なのに生意気である。

俺もその店に入ると店員にワイズマンに会いたいと訊いてみたが、そんなの知るかと雑にあしらわれた。

なんとも失礼な接客だよね。

所詮は原始的な文化だわ。

ここまで繁盛していても、その辺までサービスは行き届いていないのかと実感した。

ここは俺が居た元の世界ではないのだ。

サービス満点の自国ではない。

これが普通なのだろう。

俺はワイズマンを探すのを諦めて城に向かった。

このゴモラタウンにあるって言う閉鎖ダンジョンに付いて、ワイズマンに訊きたかったんだよね。

どういう経緯のダンジョンなのかをさ~。

まあ、情報無しでも構わないか。

なんとでもなるさ。

とりあえず俺は城を目指す。

そして俺は二つ目のゲートに入った。

また持ち物チェックだ。

今度は念入りにチェックされる。

しかも質問攻めだ。

シャキッとした兵士に囲まれながら、野暮臭い役人のおっさんにいろいろと訊かれた。

「でぇ、キミは何しにきたの~?」

なんだろうな、このやる気のない態度はさ。

「ここの君主のベルセルクに呼ばれて来たソドムタウンの冒険者だ」

「あー、そうですか~。で、名前はなんていうの?」

「アスランだ」

「はいはい、アスランね~」

役人は何やら書類に俺の名前を書き込んでいる。

「でえ、これからどこに行くの?」

「だから君主のところだよ」

「本当に~?」

あー、完全に信用してないわ。

疑ってやがる。

悪餓鬼がほざいているって感じで見てるよ。

俺は荷物を指差しながら言う。

「ソドムタウンで、冒険者ギルドと魔法使いギルドからの紹介状を預かっているからさ、ちょっと見てみろってばさ」

俺に促されて役人は、バックパックから書類を取り出し目を通した。

「わ~お、本当だね……」

驚いていやがるぜ。ザマー!

咳払いの後に役人が言う。

「分かったが、君主様には失礼がないようにな。行って良しだ」

「はいはい、分かったよ。おっさん」

俺は賄賂代のコインを置いてから二つ目のゲートを出た。

すると町並みの空気が変わる。

慌ただしさが消えて、なんとも落ち着いた町並みに変貌した。

行き来する人々の身なりも清楚だし、歩き方も気品がある。

ここからは貴族どもの縄張りってわけかい。

なんだか気にいらない空気感である。

そう感じる自分が雑種なのだと思えた。

俺は真っ直ぐ城を目指した。

そんでもってまた城の入り口でチェックを受けた。

今度は更に長い。

そして沢山訊かれたわ。

もう、うんざりである。

頭に来たので全裸になって暴れてやろうかとも考えたが、ぐっ~と我慢した。

ここで全裸事件を起こしたら、間違いなく処刑されそうだしさ。

そして、一時間ぐらい時が過ぎて、やっと城内に通される。

二人の兵士に連れられて、城の謁見室に通された。

俺をレッドカーペットの上に進めた兵士の一人が耳打ちする。

「君主様の前で片膝を付け、いいな」

俺はしゃあないかと言われるがままに振る舞った。

玉座に腰掛ける君主はヨボヨボのジジイだった。

ワッって、悪ふざけで脅かしたら死んじゃいそうなぐらいのジジイである。

おそらく歳は70を越えてるんじゃないのかなと思えた。

完全に片足を棺桶に突っ込んでるわ。

でも、顔付きは傲慢そのものだ。

老いても欲深そうな糞ジジイに見えた。

正直なところ、この手の人間は好きくない。

玉座に腰掛けた君主のジジイが何も言わずに片手を上げて、あっち行け見たいに手首を振るう。

すると側に付いていた大臣をはじめ、すべての兵士が謁見室からそそくさと出て行った。

人払いかな?

謁見室に残ったのは、俺と君主のジジイだけだ。

おやおや、これでいいのか?

俺に殺されても知らんぞ。

俺がボケた考えを巡らしていると、ジジイが語り出す。

なんともヨボヨボなしゃべりかただった。

少し表情も和らいでいる。

「お前さんが、ソドムタウンの冒険者ギルドから派遣されて来た人物なのだな」

「ああ、そうだよ。あんたが注文した、無名で口が固くて使えるヤツだ」

「ぬぬぅ?」

糞ジジイが皺だらけの眼差しを見開いて俺を凝視した。

「ワシが注文した条件と少しちがうぞ?」

「どの辺がだよ?」

「ワシが注文した人物は、無名で口が固くて人情に長けた使えるヤツだ」

「人情に長けてるは聞いてないぞ?」

「で、お前さんは人情に長けているのか?」

「ん~、分からんな。何せまだ若いお子ちゃまだからな」

「そうか、なら良しとしとこうか」

君主は顎髭を撫でながら納得したようだ。

どの辺に納得したかは俺も良く分からんけれど。

「でえ、お前さんは、ワシの過去を探る覚悟は出来ておるのか?」

「どんな過去だい。こっぱずかしい過去なのか?」

「え、いや、なんと言いますか……」

「はっきり言えよジジイ」

「ちょっと待てや。君主様をジジイ呼ばわりするなよな。取っ捕まえて幽閉するぞ」

「あ~、すまん。そこまで権力を振りかざす糞ジジイだとは思わなかったわ。じゃあなんて呼べばいいんだ?」

「普通に君主様でいい。それかベルセルク様かな」

「じゃあよ、君主のジジイよ。過去ってなんだよ」

「ちょっと待てよ、若いの!」

「なんだよ、君主のジジイ?」

「だからさ、そのジジイってやめないか」

「え、ジジイが嫌なのか?」

「そうそう、それが凄く失礼だぞ。もしもここに兵士が居たら、速攻で幽閉だぞ」

「じゃあジジイはやめて、爺さんでいいか?」

「だいぶ和らいだが駄目かな~」

「わがままなジジイだな、本当にさ」

「だからジジイはやめろってばさ」

「ああ、すまん。ついついジジイって呼んじまったわ」

「なに呼び方で時間を食ってるかな。いいかこれからは君主様って呼べよ」

「分かった爺さん」

「いやいやいや~。分かってないわ、キミは」

「え、ちゃんと『さん』付けて呼んだじゃんか?」

「いや、だからさ。身分が違うんだから『さん』を付ければいいってもんじゃあないんだぞ」

「あーもー、面倒臭いな。分かったよ。君主様でいいんだろ、爺さん?」

「いいや、分かってないわ。お前はさ。馬鹿ですか?」

「え、俺が馬鹿に見えるか?」

「ワシには、無名で口が固くて人情深い使える馬鹿に見えるぞ」

「そんなに誉めるなよ、照れるじゃあねえか~」

「あー、駄目だこいつは。本当に馬鹿だわ……」

「じゃあ話を進めようか、君主の爺さん」

「もう、いいか……、面倒臭い……」

よし、ジジイが折れたぞ。

俺の勝ちかな。

ここからが仕事の話である。

引き続き頑張るぞ。

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