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【第五章】閉鎖ダンジョン前編
5-7【寝る前の屁】
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俺はワイズマンの屋敷を出て城の詰所に帰って来ていた。
ベッドの件をベルセルクにお願いしたら、寝るまでに用意すると言っていた。
そして、先程ベッドの搬入が終わる。
時刻はもう夜だ。
今俺は閉鎖ダンジョンの出入り口だと言われている鉄扉の前に立っていた。
「へぇ~、これが閉鎖ダンジョンへの出入り口かぁ~」
俺の斜め後ろに控えて居たパーカーが話し出す。
「番兵の俺らも扉すら開けたことがないんだわ。だからお前さんが本当にここから閉鎖ダンジョンに入るなら、たぶん俺たちも中を間近で見るのは初めてになるんだぜ。お前は本当に行くのか?」
石壁に寄り掛かるパーカーは少し皺が増え始めた額を撫でながら言った。
「ああ、明日になったら入るつもりだ。そのための準備は終わっている」
「凄いな、冒険者ってヤツはさ。俺なら命令されても入りたくないぜ……」
やはり一般の兵士ならこんなものかと思った。
「どれどれ~」
俺は鉄扉にある覗き窓から閉鎖ダンジョンの中を見てみる。
すると、真っ暗な道が、真っ直ぐに続いていた。
ダンジョンの奥から流れ出る空気は乾いている。
見るからに石造りの古風な通路であった。
暗闇にモンスターが蠢いている気配が感じられる。
「やっぱり、何も見えないな」
「閉鎖ダンジョンの中にはアンデッドやらモンスターやらが、ウジャウジャいるらしいぞ」
「そいつらは、この扉まで近付いて来ないのか?」
「出入り口周辺には、結界が張られているから、ここまでモンスターは近寄って来ないらしいぞ」
「へぇ~」
地上はセーフティーゾーンってわけか。
「何かあったら、ここまで逃げて来たら安全ってわけね」
「俺たち警備兵もそうだが、この鉄扉は、地上側から人が入らないようにしているだけだ。だから地上が安全地帯ってのは間違いでもないだろうさ」
「なるほどね~」
しばらくすると階段の上からピイターが声を掛けて来る。
「お~い、二人とも~、飯が出来たぞ~」
「「はぁ~い」」
俺とパーカーが上の階に戻った。
そのまま食堂で飯を食う。
白いパンとコーンスープ、それと鳥の焼き物だった。
ほとんど塩のみの味付けである。
「不味い……」
俺が貧しい味がするスプーンを咥えながら呟くとピイターがお兄さん面で嗜めた。
「わがまま言いなさんな~。この建屋は城の調理場から遠すぎるんだよ~。だから僕らは僕らの分だけ、ここで飯を作ってるんだからさ~」
「賄い飯ってわけかい」
俺がコーンスープをスプーンでかき回しながら問う。
「これ、ピイターさんが作ったのか?」
「ここの警備は楽だから、飯は自分たちで作るんだよね~。お前さんの飯も僕らが作れって言われているんだよ~」
「なにそれ、罰ゲーム?」
「罰じゃあないよ~。僕たち詰所の警備兵三人は、この城に仕える貴族の息子だが、次男や三男ばかりなんだよね~」
「次男や三男だと、なんでここなんだ?」
パーカーさんが説明してくれる。
「俺たちの家は長男様が継ぎやがる。俺たちはスペアだ。でも、もう兄貴は成人していつでも家を継げるんだ。もう俺たちスペアが出る幕もないってわけよ」
「意味が分からんな?」
「ガキのころは子供がいつ死ぬかわからないから、俺たちスペアも大切に育てられたが、大人になったら別ってわけよ。大人は戦争でもないと死なないからな」
「もう、スペアも用がないってことか……」
「まあ、万が一ってこともあるだろうから、ここで暇しながら待機ってことだ」
「貴族の次男も大変だな~」
「俺とピイターはまだ次男だからチャンスはあるが、スパイダーは三男だから、ほぼほぼチャンスはないんだ」
「それで、そのスパイダーってヤツはどこだ?」
「今日は休みだから、出掛けていやがるよ」
「なるほどね~」
なんだ、貴族も大変なんだな。
たかが次男に産まれただけで、こんな端っこ扱いかよ。
よっぽと冒険者のほうが気楽でいいわ。
俺は飯を食い終わったので自室に戻った。
食器の後片付けはピイターさんがやってくれるらしい。
それが彼らの仕事だからだ。
なんとも律儀だね。
貴族も次男になると何でもしないとならないらしいのだ。
彼らも丸くなったのだろう。
いや、次男だから丸く産まれて丸く育てられたのだろう。
まあ、どうでもいいけどさ~。
さて、俺は部屋に帰るとベッドに寝転んだ。
ベッドは魔法の腕輪を使ってベルセルクの爺さんに要求してやったぜ。
でも、ベルセルクの爺さん、すげー怒ってたな。
そんな詰まらない連絡で魔法の腕輪を使うなとか怒鳴ってたよ。
訳が分からんな?
まだ、五回も使えるじゃあないか。
まあ、いいや。
俺はベッドの上で胡座をかきながら、異次元宝物庫の中をチェックした。
保存食と水は、一ヶ月分ほどある。
武器はショートソード、ロングソード、バトルアックス、ショートスピア、ダガー三本、ハチェット三個、ロングボウと矢が1000本近く。
防具はレザーアーマーが二着、ローブも二着、着替えも二着で、靴も二足用意した。
その他にランタンが三つに油は小樽で二週間分はあるだろう。
これだけの備えがあるのだ。
万が一にも閉鎖ダンジョン内で遭難しても、しばらくは安泰だろう。
直ぐに飢えて死ぬってことも避けられるだろうさ。
そもそもがダンジョン内で遭難しなければ問題ないしね。
まあ、迷子にならないように糸を垂らすつもりだ。
ダンジョンの出入り口から糸を垂らして進む。
帰りはその糸を辿って帰れば、元の場所に戻ってこれるって言う戦法だ。
ミノタウロス伝説の赤い糸ってヤツだぜ。
詳しい話しは知らんけど、ラノベで同じことをやってた主人公が居たからな。
その戦術を真似たのだ。
それにマップも羊皮紙に作るつもりだ。
たぶん、これで大丈夫だろう。
俺ってば賢いな。
問題は、この閉鎖ダンジョン内に巣くうモンスターだ。
ワイズマンから聞いた話だと、ここで昔に死んだ伝説級の勇者がアンデッドに変化して新たな冒険者を殺して居るって話じゃあねえか。
この閉鎖ダンジョン内で死んだら、この閉鎖ダンジョンに呪われてアンデッドとして取り込まれる。
そのまま閉鎖ダンジョンのモンスターになるとか。
その仕掛けが一番ヤバイ仕掛けだわな。
マジで伝説級の勇者様が居たら、流石に俺でもやばかろうて……。
その伝説級の勇者様に出合うよりも先に、ドラゴンの幽霊と出会えばいいだけだ。
まあ、どちらが先かは運任せだよな。
どちらにしても俺は奥に進むしかないってわけだ。
ああ、そうだった。
かなり前にレベルが上がってたよな。
バタバタしていてスッカリ忘れていたぜ。
たしかレベル16になったはずだ。
あれは魔女キルケのババァ~をぶった押した時だから、日にち的にはかなり前の話しだな。
スキルチェックだけでもしておかないと。
俺はステータス画面を開いて確認する。
あれ、新スキルは一つだけかよ、しょぼいな~。
ええ~っと、どれどれ~。
【ダッシュクラッシャーLv1】
すべての武器で、3メートルダッシュ後に強打を放つ。それは攻撃力が2倍された一撃になる。一日に撃てる回数は、スキルレベル分だけ撃てる。
おやや、当たりっぽい攻撃スキルかな。
でも、この3メートルダッシュって、ダッシュしないと攻撃が出ないパターンなのだろうか?
だとすると、使い処が限定されるぞ。
まあ、攻撃スキルだからOKだよね。
しかも攻撃力が2倍じゃあないか。
何よりも火力アップは歓迎だ。
あと【ウェポンスマッシュ】と【ヘルムクラッシャー】、それに魔法は【マジックトーチ】と【オーバーラン】のレベルが上がってるぞ。
これから戦闘力メインのミッションだから心強いわな。
よし、これで今日は気分良く眠れそうだぜ。
俺はランプの明かりを絞ってからベッドに入った。
明日から閉鎖ダンジョンにチャレンジである。
とにかく、眠る。
とりあえずギャグが何もなかったから、屁をプリッとこいてから眠りにつこうと思う。
プリッ。
プリプリプリプリプリッ!
なに!?
屁が止まらねえ!?
プリプリプリプリプリッ!!
うそーーーん!?
プリプリプリプリプリッ!!
ベッドの件をベルセルクにお願いしたら、寝るまでに用意すると言っていた。
そして、先程ベッドの搬入が終わる。
時刻はもう夜だ。
今俺は閉鎖ダンジョンの出入り口だと言われている鉄扉の前に立っていた。
「へぇ~、これが閉鎖ダンジョンへの出入り口かぁ~」
俺の斜め後ろに控えて居たパーカーが話し出す。
「番兵の俺らも扉すら開けたことがないんだわ。だからお前さんが本当にここから閉鎖ダンジョンに入るなら、たぶん俺たちも中を間近で見るのは初めてになるんだぜ。お前は本当に行くのか?」
石壁に寄り掛かるパーカーは少し皺が増え始めた額を撫でながら言った。
「ああ、明日になったら入るつもりだ。そのための準備は終わっている」
「凄いな、冒険者ってヤツはさ。俺なら命令されても入りたくないぜ……」
やはり一般の兵士ならこんなものかと思った。
「どれどれ~」
俺は鉄扉にある覗き窓から閉鎖ダンジョンの中を見てみる。
すると、真っ暗な道が、真っ直ぐに続いていた。
ダンジョンの奥から流れ出る空気は乾いている。
見るからに石造りの古風な通路であった。
暗闇にモンスターが蠢いている気配が感じられる。
「やっぱり、何も見えないな」
「閉鎖ダンジョンの中にはアンデッドやらモンスターやらが、ウジャウジャいるらしいぞ」
「そいつらは、この扉まで近付いて来ないのか?」
「出入り口周辺には、結界が張られているから、ここまでモンスターは近寄って来ないらしいぞ」
「へぇ~」
地上はセーフティーゾーンってわけか。
「何かあったら、ここまで逃げて来たら安全ってわけね」
「俺たち警備兵もそうだが、この鉄扉は、地上側から人が入らないようにしているだけだ。だから地上が安全地帯ってのは間違いでもないだろうさ」
「なるほどね~」
しばらくすると階段の上からピイターが声を掛けて来る。
「お~い、二人とも~、飯が出来たぞ~」
「「はぁ~い」」
俺とパーカーが上の階に戻った。
そのまま食堂で飯を食う。
白いパンとコーンスープ、それと鳥の焼き物だった。
ほとんど塩のみの味付けである。
「不味い……」
俺が貧しい味がするスプーンを咥えながら呟くとピイターがお兄さん面で嗜めた。
「わがまま言いなさんな~。この建屋は城の調理場から遠すぎるんだよ~。だから僕らは僕らの分だけ、ここで飯を作ってるんだからさ~」
「賄い飯ってわけかい」
俺がコーンスープをスプーンでかき回しながら問う。
「これ、ピイターさんが作ったのか?」
「ここの警備は楽だから、飯は自分たちで作るんだよね~。お前さんの飯も僕らが作れって言われているんだよ~」
「なにそれ、罰ゲーム?」
「罰じゃあないよ~。僕たち詰所の警備兵三人は、この城に仕える貴族の息子だが、次男や三男ばかりなんだよね~」
「次男や三男だと、なんでここなんだ?」
パーカーさんが説明してくれる。
「俺たちの家は長男様が継ぎやがる。俺たちはスペアだ。でも、もう兄貴は成人していつでも家を継げるんだ。もう俺たちスペアが出る幕もないってわけよ」
「意味が分からんな?」
「ガキのころは子供がいつ死ぬかわからないから、俺たちスペアも大切に育てられたが、大人になったら別ってわけよ。大人は戦争でもないと死なないからな」
「もう、スペアも用がないってことか……」
「まあ、万が一ってこともあるだろうから、ここで暇しながら待機ってことだ」
「貴族の次男も大変だな~」
「俺とピイターはまだ次男だからチャンスはあるが、スパイダーは三男だから、ほぼほぼチャンスはないんだ」
「それで、そのスパイダーってヤツはどこだ?」
「今日は休みだから、出掛けていやがるよ」
「なるほどね~」
なんだ、貴族も大変なんだな。
たかが次男に産まれただけで、こんな端っこ扱いかよ。
よっぽと冒険者のほうが気楽でいいわ。
俺は飯を食い終わったので自室に戻った。
食器の後片付けはピイターさんがやってくれるらしい。
それが彼らの仕事だからだ。
なんとも律儀だね。
貴族も次男になると何でもしないとならないらしいのだ。
彼らも丸くなったのだろう。
いや、次男だから丸く産まれて丸く育てられたのだろう。
まあ、どうでもいいけどさ~。
さて、俺は部屋に帰るとベッドに寝転んだ。
ベッドは魔法の腕輪を使ってベルセルクの爺さんに要求してやったぜ。
でも、ベルセルクの爺さん、すげー怒ってたな。
そんな詰まらない連絡で魔法の腕輪を使うなとか怒鳴ってたよ。
訳が分からんな?
まだ、五回も使えるじゃあないか。
まあ、いいや。
俺はベッドの上で胡座をかきながら、異次元宝物庫の中をチェックした。
保存食と水は、一ヶ月分ほどある。
武器はショートソード、ロングソード、バトルアックス、ショートスピア、ダガー三本、ハチェット三個、ロングボウと矢が1000本近く。
防具はレザーアーマーが二着、ローブも二着、着替えも二着で、靴も二足用意した。
その他にランタンが三つに油は小樽で二週間分はあるだろう。
これだけの備えがあるのだ。
万が一にも閉鎖ダンジョン内で遭難しても、しばらくは安泰だろう。
直ぐに飢えて死ぬってことも避けられるだろうさ。
そもそもがダンジョン内で遭難しなければ問題ないしね。
まあ、迷子にならないように糸を垂らすつもりだ。
ダンジョンの出入り口から糸を垂らして進む。
帰りはその糸を辿って帰れば、元の場所に戻ってこれるって言う戦法だ。
ミノタウロス伝説の赤い糸ってヤツだぜ。
詳しい話しは知らんけど、ラノベで同じことをやってた主人公が居たからな。
その戦術を真似たのだ。
それにマップも羊皮紙に作るつもりだ。
たぶん、これで大丈夫だろう。
俺ってば賢いな。
問題は、この閉鎖ダンジョン内に巣くうモンスターだ。
ワイズマンから聞いた話だと、ここで昔に死んだ伝説級の勇者がアンデッドに変化して新たな冒険者を殺して居るって話じゃあねえか。
この閉鎖ダンジョン内で死んだら、この閉鎖ダンジョンに呪われてアンデッドとして取り込まれる。
そのまま閉鎖ダンジョンのモンスターになるとか。
その仕掛けが一番ヤバイ仕掛けだわな。
マジで伝説級の勇者様が居たら、流石に俺でもやばかろうて……。
その伝説級の勇者様に出合うよりも先に、ドラゴンの幽霊と出会えばいいだけだ。
まあ、どちらが先かは運任せだよな。
どちらにしても俺は奥に進むしかないってわけだ。
ああ、そうだった。
かなり前にレベルが上がってたよな。
バタバタしていてスッカリ忘れていたぜ。
たしかレベル16になったはずだ。
あれは魔女キルケのババァ~をぶった押した時だから、日にち的にはかなり前の話しだな。
スキルチェックだけでもしておかないと。
俺はステータス画面を開いて確認する。
あれ、新スキルは一つだけかよ、しょぼいな~。
ええ~っと、どれどれ~。
【ダッシュクラッシャーLv1】
すべての武器で、3メートルダッシュ後に強打を放つ。それは攻撃力が2倍された一撃になる。一日に撃てる回数は、スキルレベル分だけ撃てる。
おやや、当たりっぽい攻撃スキルかな。
でも、この3メートルダッシュって、ダッシュしないと攻撃が出ないパターンなのだろうか?
だとすると、使い処が限定されるぞ。
まあ、攻撃スキルだからOKだよね。
しかも攻撃力が2倍じゃあないか。
何よりも火力アップは歓迎だ。
あと【ウェポンスマッシュ】と【ヘルムクラッシャー】、それに魔法は【マジックトーチ】と【オーバーラン】のレベルが上がってるぞ。
これから戦闘力メインのミッションだから心強いわな。
よし、これで今日は気分良く眠れそうだぜ。
俺はランプの明かりを絞ってからベッドに入った。
明日から閉鎖ダンジョンにチャレンジである。
とにかく、眠る。
とりあえずギャグが何もなかったから、屁をプリッとこいてから眠りにつこうと思う。
プリッ。
プリプリプリプリプリッ!
なに!?
屁が止まらねえ!?
プリプリプリプリプリッ!!
うそーーーん!?
プリプリプリプリプリッ!!
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