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【第五章】閉鎖ダンジョン前編

5-9【閉鎖ダンジョンにチャレンジ】

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俺はスパイダーさんと初顔合わせを済ませると、ピイターさんに閉鎖ダンジョンへの入り口を開けてもらって内部に潜入してみた。

スパイダーさんは椅子に縛り付けられて屁をかましまくっていたが仕方がない。

我々三人の平和のためだ。

誰か一人に涙を飲んで、屁を漏らして貰うしかなかったのだ。

恐るべし、伝染ぺ。

南無南無~。

そして今の俺は、緩やかな螺旋に曲がる階段を下っていた。

まだ閉鎖ダンジョンに入ったばかりのポイントだ。

出入り口を進んで直ぐに、この螺旋階段に行きついたってわけよ。

なんだか湿っぽいダンジョンである。

壁は古びた石造りで作られていて、勿論ながら明かりは僅かにもない。

俺の明かりはショートソードに灯したマジックトーチの魔法光だけだ。

そして、何よりも螺旋階段の下から温い風が上がって来るのが気持ち悪かった。

なんだか少しカビ臭い。

壁や床にはちっちゃな虫もちらほら見える。

ムカデとかカマドウマだ。

しばらくして螺旋階段が終わると通路の真ん中に出た。

右と左に細い道が別れている。

人が一人だけ通れそうな細い道だった。

俺は異次元宝物庫から筆記用具を出して羊皮紙にマップを築く。

そして床に落ちていた小さな岩に糸を巻き付けた。

とりあえず糸を垂らしながら右に進んでみることにする。

しばらく真っ直ぐな道が続いていたが、どうやら僅かにも下っているようだった。

すると壁に行き当たる。

「行き止まりかよ。いや、行き止まりじゃあないぞ、扉だな」

蜘蛛の巣で汚れていて良く分からなかったが、蜘蛛の巣の裏側に、木製の扉がある。

俺は光るショートソードで蜘蛛の巣を刈り取った。

露になる木製の扉。

「引き扉かな。まあ、引いてみようか」

俺が扉の取っ手を引いてみると、カチャリと音を立てて扉が開いた。

鍵は掛かっていない。

罠もなさそうだ。

そぉ~と隙間から中を覗くと、骸骨のドアップと鉢合わせする。

「どわぁっ!?」

「ホネほね骨骨!!」

「喋った、スケルトンか!?」

てか、スケルトンは扉を押してこちら側に飛び込んで来る!?

「野郎ッ!」

俺は持っていたショートソードで骸骨の頭を串刺しにしてやった。

しかし後ろから別の骸骨が押し退けて来る。

手には武器を持っていた。

ボロボロな防具も身に付けている。

「武器有り防具有りのスケルトンファイターかよ!!」

ここで戦闘になるが、スケルトンぐらいに遅れを取る俺ではないのだ。

部屋の中から迫るスケルトンは複数だったが、俺は狭い通路内だ。

向こうは一匹ずつしか入って来れない。

俺は一匹ずつ丁寧に戦い、スケルトンたちをぶっ倒してやった。

その数は合計で六体。

難無く俺の連勝が続いた。

そして戦闘が終わる。

俺はすべてのスケルトンを倒してから部屋に入った。

「もう他にモンスターは居ないな」

俺はスケルトンの装備を漁った。

スケルトン六体の武器は、磨けばまだまだ使えそうな物ばかりだったので、異次元宝物庫にすべて収めた。

防具は駄目かな、すべて傷んでやがる。

穴だらけのボロボロだわ。

壊れているってことは、マジックアイテムでもないのだろう。

そして、スケルトンが持っていたお金は僅かだった。

41Gだ。

それとアイテム鑑定は、地上に帰ってからかな。

これだけはいつも通り、最後のお楽しみである。

俺は部屋の中を明かりで照らし出す。

四角い15メートル四方の部屋だった。

天井が高く大きな穴が開いている。

その真下に針の山があった。

その針山に何体も朽ちた死体が突き刺さっている。

「ここは、落とし穴の下の部屋なのかな?」

言いながら俺は視線を天井に上げた。

あー、さっきのスケルトンたちの防具がボロボロだったのは、このトラップが理由なのね。

天井から落ちて来て、この部屋の針山に刺さったのだろう。

俺はその他を探る。

入って来た向かいの壁に扉が見えた。

その他には目立つものは何もない綺麗な部屋である。

魔力感知に何も引っ掛からない。

死体数の割に、しょぼい部屋である。

俺は先を進むことにした。

扉を開けると階段だった。

上に登る階段と、下に降る階段に別れて居る。

おそらく城は町より高い丘の上に建てられていたから、まだ俺が居る位置は町の高さまでは降りて居ないはずだ。

俺は多分まだまだ城の真下ぐらいに居るのだろう。

まずは広く捜索しないで、閉鎖ダンジョンのマップを出来る限り細かく完成させるべきだ。

ならば上の階からかな。

よし、上に進もうっと。

そして、上に登ると少しして部屋に出た。

扉もない、広い部屋である。

部屋の中は静かであった。

モンスターも居そうにない。

横20メートルぐらいで縦は倍の40メートルぐらいだろうか。

天井も20メートルぐらいありそうだ。

部屋の中には大小の大きな岩が転がっている。

天井や壁が崩れた跡らしいな。

俺は警戒しながら進む。

俺が明かりを手にしている以上は、こちら側から不意打ちがあり得ない。

むしろ常に敵から不意打ちを食らうパターンが確定してしまう。

これは暗闇に目が効かない人間の性だから、しゃ~ないんだけれどね。

とにかく、俺は慎重に部屋の中を進んだ。

向かいの壁に出入り口らしい物が見える。

とりあえず、そこを目指した。

そして、一番置くに崩れた大岩の側まで来て気が付く。

大岩の陰に何か居やがる。

それもデカイ何かがだ。

いゃ~な感じだな~……。

その影が俺の明かりに反応して動き出す。

ムクリと立ち上がるのは岩肌を有した大男だった。

身長は2メートル以上あるな。

マッチョな胸板にド太い剛腕。

そして怠惰なデブいお腹。

蟹股で広い体躯。

手には俺の体格と同じサイズの棍棒を持ってやがる。

ゴーレムじゃあないぞ。

もっと生々しい生き物だ。

こいつは生物だわ。

あー、目が凶悪に光ったわ~。

俺を襲う気満々だね~。

そして巨人は持っている巨大棍棒を振りかぶった。

やーべー!!

振り下ろされる大木の棍棒。

俺は横に飛んで棍棒を躱す。

すると棍棒が床を叩きドッーーーンと地鳴りが轟いた。

部屋の中が激しく揺れると天井から小石がパラパラと降って来る。

「この部屋に散らばっている岩は、こいつが降らしたんだね!」

俺は持っていた光るショートソードを岩巨人の足元に投げつけた。

それから背負っているバトルアックスを構える。

「さて、どう戦うかだな」

ドシドシと地面を鳴らしながら岩巨人が迫る。

「よし、作戦が纏まったぜ!」

俺は迫る岩巨人に向かって走りだした。

走って来る俺に岩巨人がクラブを振るった。

逆水平に振られたクラブの下を俺はスライディングで滑り抜けると岩巨人の股座も潜り抜けて背後に回り込む。

「蟹股の巨漢野郎は潜りやすくていいやね!」

そしてすぐさま立ち上がった俺は、振り向こうとしている岩巨人の片足をバトルアックスで攻めた。

「ウェポンスマッシュ!」

必殺技の一撃に、ガキィーー!って派手な音が鳴った。

バトルアックスの刀身が、太い足を切り付け深々と食い込む。

「ふうがぁぁあああだ!!」

「にゃろう!!」

俺がバトルアックスを引き抜くと、岩巨人が痛みで片膝を付いた。

やっぱり大柄の弱点は下半身だね。

足を攻められれば体重が多い分だけ動きが鈍る。

動きを封じれば身長なんて関係無いものさ!!

「どぉらぁっ!!」

俺は低く鳴った岩巨人の頭にバトルアックスを振り下ろした。

一発!

直撃。

頭、硬い!?

二発目も直撃!

それで頭の岩に罅が走ったぞ!?

三発目も命中!

よし、あと一撃でフィニッシュだ!!

そして四発目を打ち下ろそうと振りかぶった時に、岩巨人が無造作に片手を振るう。

俺は岩巨人の裏拳を戦斧を振りかぶって開けていた横腹へモロに食らった。

「うぷっ!」

内臓が激しく揺れましたぞ!?

は、吐きそう……。

だが!

耐える!!

そして、四発目のバトルアックスを振り下ろした。

「おおらぁぁああ!!」

その一撃が深く岩巨人の頭に突き刺さった。

すると岩巨人の目から怪しい光りが消える。

そして、ドシリと岩の大きな身体が力無く前のめりに崩れた。

「ふう~~……」

俺も溜め息を吐きながら尻餅をつく。

「脇腹が痛いわぁ……」

ケチらずにスキルを使うべきだったぜ……。

これだから貧乏性は損するってやつよ。

その時である。

【おめでとうございます。レベル17になりました!】

やり~、レベルアップだぜ!

これでまた一つ強くなりましたわ~。

成長してるぜ、俺~。


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