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【第九章】アンデッドなメイドたち編
9-18【お風呂天国】
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結局俺は、ミイラメイドたちの好意に甘えて、この洋館で一泊することになった。
何故にミイラメイドたちの好意に引かれたかと言えば、お風呂である。
ミイラメイド長のヒルダは、お風呂を沸かしていると述べたからだ。
「お風呂なんて、久々だな~」
この異世界ではお風呂は超贅沢品だ。
俺が前に居た世界では湯沸し器の蛇口を捻れば浴槽に湯が溜まる。
それが当たり前だ。
だが、この世界では違う。
風呂炊き竈すらないのだ。
湯を鍋で沸かし、それから浴槽に人力で移していく。
それは重労働だ。
そんな重労働は平民ではなかなか出来ない。
故にお風呂は金持ちの贅沢なのだ。
そもそもこの世界にはお風呂に入ると言う習慣どころかお風呂自体がほとんど存在していない。
スカル姉さんの下宿でも、各町の宿屋でも、入浴できる浴槽なんて見たことがなかった。
お風呂を見たのはワイスマンの屋敷ぐらいだ。
だから俺はいつも冷たい水浴びか、温めたお湯でタオルを絞って体を拭くぐらいしかしたことがない。
スカル姉さんに以前訊いたが、浴槽にいっぱいいっぱいお湯を溜めて入浴するなんて貴族の連中だけだそうな。
要するに、平民は川や井戸水で行水するのが関の山なのだ。
俺もそうしてたしね。
「そう言えばゴモラタウンの城では見たっけな、ダンジョン内の謎の除き穴から……」
もしかしてあれはサウナだったのかも知れない。
昔の世界では、入浴する文化が無い国ではサウナをお風呂とも言うらしいからな。
そもそもお風呂が当たり前に有る文化圏の人間からしたら、お風呂の無い世界なんてどうしているか、想像もつかないように、逆にお風呂の無い世界の文化圏の人間からしたら、お風呂どころかサウナすら想像できないらしいと聞く。
まあ、何が言いたかったかと言えば、ヒルダはお風呂を準備してくれているのだ。
ならば入らないに越したことはないだろう。
何せ、最高級の贅沢だものね!
俺は客間に案内されると装備品をすべて外して全裸になると、タオルをクルクルと回しながらルンルン気分で待っていた。
そう、部屋の中をスキップで舞いながら待っていたのだ。
「久しぶりのお風呂だな、楽しみだな~」
すると部屋の扉がノックされる。
『アスラン様、お風呂の準備ができましたので、こちらにどうぞ』
「はーい、今行きますよ~」
俺が部屋の扉を開けて全裸でタオルを回しながら廊下にスキップで出て行くと、畏まったヒルダが出迎えてくれた。
ヒルダは俺の全裸を見ても動じていない。
慣れてる感じだ。
『では、こちらに』
「はーい」
流石はベテランのメイド長だな。
ヒルダは俺の全裸に動じることなくメイドとしての職務に専念していた。
そんなヒルダに案内されて俺は屋敷内を全裸で移動する。
そして俺が廊下を進んでいると、背後から霊気を感じ取った。
「寒……。なんだろう……」
霊体感知スキルが反応したのである。
それはメイドたちから感じ取った霊感とは種類が違っていた。
怪訝な感じが強いのかな。
俺は振り返り背後を見た。
しかし、誰も居ない。
いや、居やがるな。
廊下の曲がり角の低い位置から小さな物がこちらを覗き見ていた。
「人形か……」
フランス人形だ。
俺が立ち止まっているとヒルダが声を掛けて来る。
『この屋敷に取り憑く幽霊ですわ』
「人形の霊って、あれかい……」
フランス人形が壁の陰から寂しそうにこちらを覗き見ていた。
俺とフランス人形の目と目が合うがフランス人形は逃げも隠れもしない。
こちらをずっと除き見ていた。
その視線がとても不気味である。
『ヤツらは複数居ます。地下の金庫室を守っているガーディアンドールに引かれてやって来た、捨てられた人形たちの霊ですわ』
「ガーディアンドールってのが、引き寄せたのね……」
ヒルダが歩きながら説明を始めたので、俺も後に続いて歩く。
『この屋敷の主はアナトミーとネクロマンサーを選考しておられました。それで医者のようなこともしておられましたので、お金を沢山稼げて長生きもしました。死ぬまで100歳、死後も150年間生きて、それから死後の魂がどこに行くかを研究するために、自らこの世での生涯を終えました』
「100歳……。すげー、長生きな魔法使いだったのね……。てか、死後も150歳も生きたってなんだよ?」
『マミーとしてアンデッドかして、魔法の研究を続けていたのです』
「ミイラになってまで生き続けたのかよ……」
『はい。その御方が私たちとガーディアンドールをお作りになりました。そして彼ら人形の霊は、この屋敷に引き寄せられ、地下の金庫室を目指すのですよ。仲間を求めてね……』
「へぇ~……」
ヒルダはそれっきり言葉を発しなかった。
そして、しばらくして──。
『到着しました、こちらが大浴場になります』
「やったー、大浴場だ!!」
俺は両開きの扉をフルオープンにして、室内に飛び込んだ。
あっ、まずは脱衣所ね。
でも、脱衣は既に済んでいる!!
俺はそのまま奥の入浴場に飛び込んだ。
……って、そんなに広い浴場じゃあないわ。
一般家庭の御風呂よりは大きいけど、銭湯よりは遥かに小さいな。
なんか微妙なサイズ感だわ。
でも、お風呂だーー!!
ひゃっはーー!!
そして俺はお風呂に浸かって脚を伸ばした。
温かいな~~……。
最高だ。
やっぱりお風呂っていいよね~。
畜生、この屋敷は俺が買い取ろうかな。
あー、でも先客が居るから俺がここのお化け退治に回されたんだっけ……。
でも、お風呂がある建物って少ないもんな。
これって本当に貴族の楽しみなんだろうさ。
そうだ、旧魔王城を占拠したら、銭湯を経営して庶民にお風呂文化をすすめようかな。
その文化が庶民に根付けば、どこでもお風呂に入れるかもしれないぞ!!
でも、それには温泉を堀当てないと無理かな?
いや、それって時間が掛からね……?
俺の生涯をそんなことに費やしていいのかな?
駄目だろ……。
文化革命を起こすなら、まずはトイレットペーパーが先だわな。
まずは大便事情をどうにかするのが先だぜ。
じゃないと俺のお尻の皮が擦りきれてしまうがな……。
それにしても、お風呂って天国だな~。
温かい湯船って最高だぜ~。
こうして俺は、一晩の天国を味わえたのであった。
「さて、明日の朝になったら、地下ダンジョンのガーディアンドールとやらをぶっ倒して、金庫室に入っちゃいましょうかね」
そんなことを考えながら今は温かい湯船に浸かる。
何故にミイラメイドたちの好意に引かれたかと言えば、お風呂である。
ミイラメイド長のヒルダは、お風呂を沸かしていると述べたからだ。
「お風呂なんて、久々だな~」
この異世界ではお風呂は超贅沢品だ。
俺が前に居た世界では湯沸し器の蛇口を捻れば浴槽に湯が溜まる。
それが当たり前だ。
だが、この世界では違う。
風呂炊き竈すらないのだ。
湯を鍋で沸かし、それから浴槽に人力で移していく。
それは重労働だ。
そんな重労働は平民ではなかなか出来ない。
故にお風呂は金持ちの贅沢なのだ。
そもそもこの世界にはお風呂に入ると言う習慣どころかお風呂自体がほとんど存在していない。
スカル姉さんの下宿でも、各町の宿屋でも、入浴できる浴槽なんて見たことがなかった。
お風呂を見たのはワイスマンの屋敷ぐらいだ。
だから俺はいつも冷たい水浴びか、温めたお湯でタオルを絞って体を拭くぐらいしかしたことがない。
スカル姉さんに以前訊いたが、浴槽にいっぱいいっぱいお湯を溜めて入浴するなんて貴族の連中だけだそうな。
要するに、平民は川や井戸水で行水するのが関の山なのだ。
俺もそうしてたしね。
「そう言えばゴモラタウンの城では見たっけな、ダンジョン内の謎の除き穴から……」
もしかしてあれはサウナだったのかも知れない。
昔の世界では、入浴する文化が無い国ではサウナをお風呂とも言うらしいからな。
そもそもお風呂が当たり前に有る文化圏の人間からしたら、お風呂の無い世界なんてどうしているか、想像もつかないように、逆にお風呂の無い世界の文化圏の人間からしたら、お風呂どころかサウナすら想像できないらしいと聞く。
まあ、何が言いたかったかと言えば、ヒルダはお風呂を準備してくれているのだ。
ならば入らないに越したことはないだろう。
何せ、最高級の贅沢だものね!
俺は客間に案内されると装備品をすべて外して全裸になると、タオルをクルクルと回しながらルンルン気分で待っていた。
そう、部屋の中をスキップで舞いながら待っていたのだ。
「久しぶりのお風呂だな、楽しみだな~」
すると部屋の扉がノックされる。
『アスラン様、お風呂の準備ができましたので、こちらにどうぞ』
「はーい、今行きますよ~」
俺が部屋の扉を開けて全裸でタオルを回しながら廊下にスキップで出て行くと、畏まったヒルダが出迎えてくれた。
ヒルダは俺の全裸を見ても動じていない。
慣れてる感じだ。
『では、こちらに』
「はーい」
流石はベテランのメイド長だな。
ヒルダは俺の全裸に動じることなくメイドとしての職務に専念していた。
そんなヒルダに案内されて俺は屋敷内を全裸で移動する。
そして俺が廊下を進んでいると、背後から霊気を感じ取った。
「寒……。なんだろう……」
霊体感知スキルが反応したのである。
それはメイドたちから感じ取った霊感とは種類が違っていた。
怪訝な感じが強いのかな。
俺は振り返り背後を見た。
しかし、誰も居ない。
いや、居やがるな。
廊下の曲がり角の低い位置から小さな物がこちらを覗き見ていた。
「人形か……」
フランス人形だ。
俺が立ち止まっているとヒルダが声を掛けて来る。
『この屋敷に取り憑く幽霊ですわ』
「人形の霊って、あれかい……」
フランス人形が壁の陰から寂しそうにこちらを覗き見ていた。
俺とフランス人形の目と目が合うがフランス人形は逃げも隠れもしない。
こちらをずっと除き見ていた。
その視線がとても不気味である。
『ヤツらは複数居ます。地下の金庫室を守っているガーディアンドールに引かれてやって来た、捨てられた人形たちの霊ですわ』
「ガーディアンドールってのが、引き寄せたのね……」
ヒルダが歩きながら説明を始めたので、俺も後に続いて歩く。
『この屋敷の主はアナトミーとネクロマンサーを選考しておられました。それで医者のようなこともしておられましたので、お金を沢山稼げて長生きもしました。死ぬまで100歳、死後も150年間生きて、それから死後の魂がどこに行くかを研究するために、自らこの世での生涯を終えました』
「100歳……。すげー、長生きな魔法使いだったのね……。てか、死後も150歳も生きたってなんだよ?」
『マミーとしてアンデッドかして、魔法の研究を続けていたのです』
「ミイラになってまで生き続けたのかよ……」
『はい。その御方が私たちとガーディアンドールをお作りになりました。そして彼ら人形の霊は、この屋敷に引き寄せられ、地下の金庫室を目指すのですよ。仲間を求めてね……』
「へぇ~……」
ヒルダはそれっきり言葉を発しなかった。
そして、しばらくして──。
『到着しました、こちらが大浴場になります』
「やったー、大浴場だ!!」
俺は両開きの扉をフルオープンにして、室内に飛び込んだ。
あっ、まずは脱衣所ね。
でも、脱衣は既に済んでいる!!
俺はそのまま奥の入浴場に飛び込んだ。
……って、そんなに広い浴場じゃあないわ。
一般家庭の御風呂よりは大きいけど、銭湯よりは遥かに小さいな。
なんか微妙なサイズ感だわ。
でも、お風呂だーー!!
ひゃっはーー!!
そして俺はお風呂に浸かって脚を伸ばした。
温かいな~~……。
最高だ。
やっぱりお風呂っていいよね~。
畜生、この屋敷は俺が買い取ろうかな。
あー、でも先客が居るから俺がここのお化け退治に回されたんだっけ……。
でも、お風呂がある建物って少ないもんな。
これって本当に貴族の楽しみなんだろうさ。
そうだ、旧魔王城を占拠したら、銭湯を経営して庶民にお風呂文化をすすめようかな。
その文化が庶民に根付けば、どこでもお風呂に入れるかもしれないぞ!!
でも、それには温泉を堀当てないと無理かな?
いや、それって時間が掛からね……?
俺の生涯をそんなことに費やしていいのかな?
駄目だろ……。
文化革命を起こすなら、まずはトイレットペーパーが先だわな。
まずは大便事情をどうにかするのが先だぜ。
じゃないと俺のお尻の皮が擦りきれてしまうがな……。
それにしても、お風呂って天国だな~。
温かい湯船って最高だぜ~。
こうして俺は、一晩の天国を味わえたのであった。
「さて、明日の朝になったら、地下ダンジョンのガーディアンドールとやらをぶっ倒して、金庫室に入っちゃいましょうかね」
そんなことを考えながら今は温かい湯船に浸かる。
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