俺のハクスラ異世界冒険記は、ドタバタなのにスローライフ過ぎてストーリーに脈略が乏しいです。

ヒィッツカラルド

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【第十三章】魔王城攻略編

13-24【町作り・開始】

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まずは新スキルの報告です。

今回シロナガスワニクジラを倒して覚えた新スキルは二つですわん。

一つ目は──。

【水泳スキルLv1】
泳ぐ技能が向上する。

はい、まあ今回は水に浸かりましたからね。

無いよりましなスキルだわ。

さて、二つ目は──。

【クロスボウスキルLv1】
弩系武器の戦闘技術が向上する。

あー、これはクロスボウ系の初級なのかな。

バリスタをガンガン撃ってたら大型弩系のスキルを覚えるのかな?

でも、そうそうバリスタなんて撃つことは無いぞ。

まあ、いいか~。

「おーい、アスラーン。そろそろ昼飯だぞ~」

俺が石橋の上でまったりしていると、下からゴリが声を掛けてきた。

「おう、今行くぜ」

ゴリはバイマンと一緒にシロナガスワニクジラをバラして焼き肉を調理していた。

シロナガスワニクジラを解体しているのは二人だけじゃあない。

今日の水辺は騒がしい。

沢山の人々が転送絨毯で、こちら側にやって来ていた。

ソドムタウンで普段は屋台を出しているオヤジたちも加わってシロナガスワニクジラを解体しているのだ。

解体を手伝ってもらう代わりにワニ肉を分けてやることになっている。

まあ、お互いにウィンウィンってことである。

これでしばらくソドムタウンの名物はワニ料理になるだろう。

それにしてもケルベロス料理に続いてワニ料理とは、なんともゲテモノ料理が好きな町である。

「ゴリ、だいぶ解体が進んだな」

「ほら、アスランお前さんの分だ。早く食べろ」

ゴリが皿に山盛りになったワニの焼き肉を差し出す。

俺はそれを受けとりながら言った。

「犬肉料理の次はワニ肉料理か……。これ、食えるのか?」

「大量にあるんだ。食べないと罰当たりだぜ」

ゴリの言う通りだろう。

狩るだけ狩って終わりでは、狩られたほうが可愛そうだ。

食うも供養だ。

だから食ってやるよ。

俺はゴリたちと一緒のテーブルでワニ肉を頬張った。

バイマンが森のほうを見ながら言う。

そこには入り口の村から様子を見に来ていたエルフたちが立っていた。

「彼らは食べないのか?」

「エルフは肉を食わんよ。あいつらはベジタリアンだからな」

「あれでベジタリアンか……」

俺たちが森のほうを見れば、数人のエルフたちが斧を持って木を斬り倒していた。

「本当にあれでエルフなんですかね……」

バイマンが疑うのも仕方ないだろう。

森で木を薙ぎ倒しているのは破極道山やアンドレアたちだ。

エルフなのに水辺でシロナガスワニクジラをさばいている人間たちよりも巨漢なのだから。

「ここのエルフは可笑しいんだよ。まあ、気にすんな。容姿は怖いが悪人ではないからよ」

それにしてもエルフたちにも助かっている。

とりあえず石橋の側を切り開いてエルフの村まで道を作ってくれるそうだ。

そして切り開いた際に出る丸太で家を作る予定である。

向こうも魔王城と道が繋がり、こちらは木材が手に入る。

ここでもウィンウィンってことだ。

しみじみとゴリが言う。

「アスラン。いよいよ町作りが始まったな」

「まあ、まずは俺が住めればいいんだ。まだ魔王城内の清掃が済んでないからな」

ゴリが自分の足元でワニ肉を食べてるホビットの頭を突っつきなから言った。

「アインシュタイン曰く、闇の王妃だっけ?」

俺は湖の中央に建つ魔王城を眺めながら言う。

「気配からして霊体は一体だけじゃあなさそうなんだ」

「たくさんアンデッドが巣くってるのか?」

「おそらくな」

ゴリが自分の胸を叩いてから言った。

「まあ、家の建築は俺に任せろ。お前は冒険を楽しめ」

「サンキュー」

そんな感じで俺たちが昼食を食べていると、転送絨毯が敷かれたテントからテンパのオヤジが出て来る。

キョロキョロと辺りを見回してから俺を見つけると、こちらに駆け寄って来た。

その手には丸められた大きめな羊皮紙を持っている。

「おおう、居た居た。アスラン殿~」

駆け寄るテンパオヤジを見ながらゴリが俺の耳元に口を寄せて訊いてきた。

「あのテンパオヤジは誰だ?」

「名前は忘れたが、君主のポラリスが連れて来たホモ野郎だ」

「へー、男食家なんだ……。こわ……」

「ゴリはそっち系にはモテそうだから気をつけろよ」

「いやいやアスランほどじゃあないぞ」

「えっ、マジ……」

そして俺の前に立ったテンパオヤジが言った。

「何か良からぬ話をしていそうだな……」

感がいいな、こいつ。

テンパは伊達じゃあなさそうだ。

あのテンパには、何かを感知する機能が付いているのだろう。

「それより、なんだい、おっさん?」

「誰がおっさんだ!」

「名前なんだったっけ、忘れたよ」

「キミ、なかなか失礼だな……」

「よく言われるから気にすんなって」

「少しはキミが気にしろ!」

「それより名前なんだっけ。教えてくれないと、変態テンパオヤジって呼び続けるぞ」

「テンパだが変態じゃあないわい!」

「いいから名前は?」

「ハドリアヌスだ。王都で超有名建築家のハドリアヌスだよ!」

自分で超有名とか言っちゃってるよ。

どんだけ自信過剰なんだ。

「でぇ、なんの用だ、ハドリアナル?」

「ちがーーーーーう!!!」

「えっ、何が?」

「それは絶対に間違えてはならない間違えだぞ!!!」

「何がさ?」

「ハドリアヌスだ、ア・ヌ・スだ!!」

「分かったよ、ハドリアナル」

「アウトだ、アウト!!!」

「だから何がさ?」

「それだと俺の名前はハドリ肛門になるだろう!!」

ゴリとバイマンが横を向いて笑いを堪えていた。

「もう肛門の話はいいからさ、なんの用だ?」

ハドリアヌスが手に在る丸められた羊皮紙を俺に差し出した。

「これだ、町の設計図だ!」

俺は羊皮紙を受け取り広げて見た。

ゴリとバイマンも覗き込む。

「うわー、都市の地図だな」

「壮大だな」

「防壁から櫓の塔まで考えられている。私の自信作だ」

それは立派な町の地図だった。

魔王城を中心に、三層に築かれた防壁。

冒険者ギルド本部、魔法使いギルド本部、大聖堂、ゲートの数々、物見櫓、番兵の詰所、鍛冶屋、馬小屋、その他様々な施設の位置が詳細に記入されていた。

ハドリアヌスが腕を組みながら言う。

「旧魔王城の地図を元に作った図面だ。すべてこの通りに作れとは言わんが、すべての施設を効率良い位置に配置してある。これに近ければ近いほど良い町になるだろうさ。籠城にも耐えられるほどにな!」

俺はハドリアヌスを見ながら言った。

「あんた、ただの変態じゃあなかったんだな。こりゃあ凄いぜ」

「誰が変態だ……」

図面を見ながらゴリが意見を述べる。

「だが、これだけの物を完成させるのに、何十年も掛かるぞ」

俺はちょっと威張りながら返す。

「大丈夫、それは魔法と巨人の力で何とかする」

「魔法は分かるが巨人ってなんだよ?」

すると森のほうから地鳴りが響きだした。

「おお、丁度いいところに来たぜ、ミケランジェロ」

「ミケランジェロ?」

すると森を割って一つ目の巨人が現れた。

エルフたちも驚いている。

「サ、サイクロプスだ!!」

皆が驚く中でサイクロプスが俺に話しかけて来た。

「久しぶりだな、アスラン。お前がエルフたちに話を付けてくれてたから、すんなり中に入れたぞ」

ミケランジェロの足元にはエルフの社長が居た。

「アスラン、ワシも嬉しいぞ。500年前の宿敵に合えて胸が踊る気分だ!」

「そ、そうか、それは良かったな」

社長エルフとミケランジェロが喧嘩すると思っていたが、どうやら丸く収まってくれたようだな。

だが、社長エルフの顔はボコボコだ。

服も乱れている。

おそらくミケランジェロと戦ってボコられたのだろう。

俺は振り返ると社長エルフやミケランジェロを背にしながらハドリアヌスに言った。

「建築はエルフの魔法と巨人のパワーで地道にサクサク作って見せるぜ。まあ、お金も使うがな、ハドリアナル」

「だから、ハドリアヌスだってば……」

ハドリアヌスは頭を抱えて苦悩していた。

少しイジメ過ぎたかな?

んん、なんだ?

ハドリアヌスの背後からガイアとアインシュタインがスタスタと近付いて来る。

二人は潜んでいるわけでもないのに、自然とハイド・イン・シャドーになっていた。

そして二人でコソコソと何かを話していた。

それからアインシュタインだけが前に出る。

ハドリアヌスの背後で停止したアインシュタインが両手を組んで両人差し指だけを忍者のように立てた。

「ま、まさか……」

「んん、どうしたのかね、アスラン殿?」

ハドリアヌスは気付いていない。

そのお尻にアインシュタインがカンチョーを突き立てた。

「カンチョー(棒読み)」

ここまでズブリと殺伐とした残酷音が聞こえて来そうであった。

「ギィァァアアアア!!!!」

お尻を両手で押さえたハドリアヌスが背を反らしながら1メートルほど飛び跳ねた。

クリティカルヒットカンチョーだな……。

スゲ~痛そうだ。

飛び跳ねたハドリアヌスは地面に倒れ込むと震えながら唸っていた。

ガイアが万歳をしながら歓喜する。

「ドッキリ大成功~」

「わはー、カンチョー成功だー(棒読み)」

「ぅぅぐぐぅ……」

二人の童はワイワイ騒ぎながら走り去る。

俺は震えながら倒れ込むハドリアヌスに訊いた。

「お尻、大丈夫か? 穴が開いてない?」

すると震えた声でハドリアヌスが答えた。

「き、気持ちいい……。最高だった……」

あー、こいつも変態だった。

忘れてたよ……。


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