スケルトン商人と獣人メイドの異世界転移繁盛記(インフィニティ)

ヒィッツカラルド

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208【仕事のお誘い】

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『あれ、お前、クレマンじゃあないか?』

「あなたは、シロー殿……」

 背中部分の衣類が派手に破けて鞭打ちの傷跡を晒している大男は、元近衛隊のクレマン・ヒューズだった。違法であるゾンビ病ドラッグを使用したとされ、近衛隊を解雇された若者である。

 そのようなあらわな姿の若者が、自分の身なりも気にせずに町中をトボトボと歩いていた。

『近衛隊を解雇されたんだってな』

「はい……」

 クレマンは俯きながら小さな声で応えた。随分とショックを受けているようだ。

『鞭打ちも受けたんだろ。神殿に行って、背中の治療はしないのか?』

「この傷は罰の証です。甘んじて残します……」

『律儀だね~。真面目か』

「――……」

 俺は周囲を見回す。周りはサン・モンの町中。買い物で賑わっている。

『立ち話もなんだ。ちょっと、あそこに座って話さないか?』

「はい……」

 俺が指差した場所は川沿いの欄干。長身の俺たちならば腰を降ろせる高さである。そこに並んで腰を降ろした。

 クレマンは沈み込んだ表情で下を見詰めている。

『それで、近衛隊をクビになって、これから仕事はどうするんだ?』

「しばらくは傷の治療に励みます。貯金は少しありますので、直ぐに働く必要もありませんから……」

『そうか――。でも、次の仕事は探さなくてはなるまい。あては有るのか?』

「ないです。若いころに働いていた人足の大将を頼るか、それか傭兵にでもなります……」

 妥当な考えだろう。ならば、この先は心配なかろう。こいつならば、何とでもなりそうだ。だいぶ真面目ちゃんのようだからね。

 だが、勿体ない。この体格、この筋肉、何より優れた格闘センス。そして、若い。この若さは貴重である。真面目なのもセールスポイントだ。

 何せ、フランケンシュタインの怪物みたいな顔だが、まだ若干十八才の戦士である。それを人足なんかで終わらせるのは、実に勿体ない。

『なあ、少年。もし、良かったら。俺の店に来ないか?』

「店?」

『俺はピエドゥラ村に雑貨店を構えているんだが、フラン・モンターニュに大使館を開いたら、そこに店を移動させようと考えている。そこで、警護兵として働かないか?』

「ほ、本当ですか……」

『ああ、マジだ。だが、まだ、大使館も何も完成していないがな。やっとフラン・モンターニュまでの道を切り開く作業が始まったばかりだ。たぶん、大使館が完成するのは数年後だと思う』

 クレマンは、少し頭を上げて答えた。

「魅力的な話ですね……。しかし、大使館が出来るまで、私は何をしていたら良いのですか?」

『うちの店の警護でも、作業員の手伝いでも構わん。何だったら、フラン・モンターニュの魔物を退治していても構わんぞ。仕事は、幾らでもある』

「なんで、私を誘うのですか?」

『そんなものは単純だ』

「ん……?」

『若さ、体格、武力が高いからだ。しかも元近衛隊だろう。信用もできる』

「ドラッグを使ってクビになった男を信用してくれるのですか?」

『お前は若い。だから、一度や二度の過ちぐらいあるだろう。次に同じ間違いを繰り返さなければ問題無いんだよ』

「そう言うものですか……」

『人生ってのは、その程度で良いんだよ。完璧に人生を歩んで来た野郎のほうが気持ち悪い』

 俺の言葉を聞いてクレマンが力少なく笑っていた。半分呆れているようだった。

「分かりました。それでは、お世話になります」

『おお、来てくれるか』

「それでは、いつから?」

『いつからでも良いぞ』

「それでは、今からでも!」

『早いな……』

「早すぎましたか……?」

『いや、構わんぞ』

「有難うございます!」

『じゃあ、これから盗賊ギルドに殴り込むから、お前も付いて来い』

「えっ………?」

『ゾンビ病ドラッグを売り捌いている盗賊ギルドのアジトを、ちょっくら行って、ぶっ潰そうかと思ってな』

「何を言ってるんですか、あなたは……」

『良いからついてこい、若いの!』

「は、はぁ……」

 そして、俺はクレマンを引き連れて盗賊ギルドのアジトを目指した。

 盗賊ギルドのアジトがあるのは、勝敗通りと呼ばれる路地であった。その路地の前に俺たちは立っている。

 路地の北側が商店街で、南側がスラムなのだ。北と南で、貧困の格差が激しいことから人生の勝敗が別れているとされて、この通りを勝敗通りと呼んでいるらしい。

 その勝敗通りのド真ん中。三階建ての古びた建物が盗賊ギルドのアジトである。一階が酒場で、二階が宿屋、三階が盗賊ギルド事務所。地下室では何をやっているか分からない建物である。

 その建物には、柄の悪い輩が何人も出入りしている。酒場の入り口には見張りと思われる男が常に二人立っていた。まさに組事務所の風貌である。

「ほ、本当に行くのですか……」

『当たり前だ。お前も、俺のところで働くんだから、このぐらいの揉め事は慣れておかないとならんぞ』

「ええ、そうなんですか……」

 クレマンは自分用のアイテムボックスからロングソードを取り出すと腰のベルトに下げて武装する。

『お前、アイテムボックスなんて持っているんだ』

「父の形見です……」

『よし、じゃあ、行くぞ!』

「はい……」

 俺たち二人はルンルンの足取りで盗賊ギルドのアジトに向かう。

 懐かしい話だ。昔はこうしてちょくちょく組事務所に遊びに行っていたものである。あのころは、楽しかったな~。

『さて、腕が鳴るぜ!』

「…………」

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