スケルトン商人と獣人メイドの異世界転移繁盛記(インフィニティ)

ヒィッツカラルド

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245【町への進化】

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 時は二週間ほど過ぎた――。俺は、パリオンの市場で買ってきた無表情な白い仮面を被って過ごしている。

 フランスル王国アルル円形闘技場での一件からピエドゥラ村へ帰ってきた俺は、早朝から店の裏庭でブランやソフィアの稽古を眺めていた。

「「210、211、212、213……」」

 ブランとソフィアは二人並んで、バスケットボールの上に直立しながらスクワットに励んでいる。朝の軽いトレーニングだ。

 結局のところソフィアは、押しかけ的に俺の弟子になったわけだ。

 彼女のファイティングスタイルは現代ボクシングに近く、拳技とフットワークを主体にした型である。

 弟子入りの際に「今の戦い方を維持したまま、拳をさらに磨きたい」との希望を聞いた。

 どうやら、ソフィアには彼女なりの長年磨いてきたスタイルにポリシーがあるらしく、そこにこだわりを持っているようだった。

 まあ、気持ちは分からんでもない。俺だって空手を軸に、ボクシング、キック、レスリング、柔道、柔術、合気道、忍術と学んできたが、今でも“空手家”を名乗っている。

 ソフィアにはソフィアの生き様があり、それがボクシング道なのだろう。格闘家にとってファイティングスタイルへのこだわりは、時に必要なものだ。

 そして、俺の目から見たソフィアの実力は「上の下」レベル。一般兵に比べれば圧倒的に強いが、強者の中ではまだ下の方だ。ブランよりは強いが、アイアンバッファローよりは弱い。チェサー・ロッシとは、まず勝負にならないだろう。

 だが彼女はまだ若い。伸びしろがある。指導次第で化けるのは明白だ。

 将来的には独自のスタイルで闘技場チャンピオンを狙えると、俺は見ている。

 ブラン同様、鍛えがいのある弟子だ。将来が楽しみである。

 俺が地べたに座禅しながら弟子たちの稽古を眺めていると、店の前から野郎どもの声が飛んで来た。

「シロー殿~、おはようございます~!」

「チワ~ス!」

 顔を出したのは、元近衛隊のクレマン・ヒューズと、元闘士アイアンバッファローだった。

 二人はサン・モンとパリオンから移住してきて、ピエドゥラ村に住み着いた。こいつらも弟子志願者だ。

 だが――本人たちには言っていないが、俺はあまり期待していない。伸びしろが感じられないのだ。

 とはいえ、本当のことを伝えて絶望されても困る。だから「村で働きながらの弟子」という条件で受け入れた。

 そして、彼らにはフラン・モンターニュの工事を手伝ってもらうことにした。

 俺とヴァンピール男爵、それにパリオンから来た役人の間で、フラン・モンターニュ大使館の領土が正式に決められた。フランモンターニュ下層部を囲む森から50メートル先までが、大使館領土となる。

 領土を示すために木の杭が打たれ、その杭を結ぶように壁を建設することになった。この工事は、こちら側の担当である。

 もっとも、“壁”といっても高さ1メートルほどで厚みもほとんどない。防壁ではなく、単なる区分線のようなものだ。

 ヴァンピール男爵から、村の岩盤や川から採れる石材を資材に使って良いとの許可も得ている。つまり、材料費はタダである。

 俺は店の壁際に置いてあった一輪車を二台指さしながら言った。

『区分壁建設の道具に、その一輪車を使っていいぞ。資材の運搬に便利だからな』

「いちりんしゃ……?」

 二人は壁際の一輪車を眺めながら首を傾げていた。一輪車を知らない様子だ。仕方なく、俺は実演して見せた。取っ手をつかんで前に押す。

『アイアンバッファロー、乗ってみろ』

「へ、へい……」

 大柄なアイアンバッファローは身を丸めながら荷台に乗り、膝を抱えて座り込む。俺はそれを押して移動させた。

『こうやって荷物を運ぶ道具だ。結構重いものでも簡単に運べる』

「これは便利な道具ですね!」

 クレマンが感心していると、荷台のバッファローが調子に乗って言った。

「シロー殿、もっと速く走ってください! これは楽しいですぞ!」

 俺はアイアンバッファローの禿頭をペシンと叩いた。

『遊んでんじゃねぇぞ、ハゲ!』

「げふ……!」

 まあ、なんだかんだあったが、二人は一輪車を押しながら仕事場に向かった。給金分は働いてもらわねば困る。俺は男には厳しいのだ。

 それから数日後――。
 
 パリオンから百人近くの作業員が、大量の資材と共にやって来た。ルイス国王が約束してくれた工事支援である。

 こうして、フラン・モンターニュ大使館の建設が本格的に始まった。

 しかし、完成までは三年以上かかる見込みだ。かなりの大工事である。

 そして同時に、獣人村ピエドゥラは人の出入りで賑わいを見せ始めた。

 この村が“町”へと進化するのも、時間の問題だろう。

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