スケルトン商人と獣人メイドの異世界転移繁盛記(インフィニティ)

ヒィッツカラルド

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18【誤解が解けたら】

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 酔っぱらった冒険者が俺の背中をバンバンと叩いてくる。

「がーはっはっはっ。そうなのか、お前さんがあの子を人攫いから助け出したのか!」 

『そうなんですよ。それで行き場所が無いっていうから、メイドとして雇ったってわけで』

 「済まん済まん、つい誤解しちまってよ!」 

「俺たちはお前さんがロリコン野郎かと思っちまってよ~。本当に済まねえ~」 

「痛たた……。畜生、まだ頭がグラグラするぜ……」

  酒場の隅でハゲ頭の大男が腫れた顎を擦りながら椅子に座っていた。他の連中は、俺が奢った酒を楽しそうに煽っている。

 「とりあえず、乾杯だ~」

 「「「「お~~!」」」」 

 俺と客たちの間で勃発した喧嘩は、綺麗さっぱり収まっていた。

  どうやら彼らは俺がチルチルを無理矢理部屋に連れ込んで、夜な夜な如何わしいことをさせていたと勘違いしていたらしい。

  たぶん俺のことを、ロリコン野郎のゲス人間だと思っていたのだろう。

  だが、その誤解も解けた。俺の隣ではチルチルが朝御飯を食べている。その彼女が俺の無実を証明してくれたのだ。

  そして、俺は冒険者たちに誤解させたお詫びとして酒を奢っているところだった。

  昨日アサガンド商店で稼いだお金があったから少し奮発したのである。この手の男たちは酒を飲めば、大体の蟠りは解決するものだ。どこの国でも、それは変わらない様子である。

  しかし、残念なことに俺はお酒が飲めなかった。酒を飲むと顎をすり抜け垂れ流しになってしまうのだ。たぶん食事も同じだろう。これも骸骨の性である。

  だから男たちには、俺はゲコだと伝えてある。皆、自分が飲むことに夢中で疑いもしなかった。 

「シローのにーさん、小便をちびってるぞ」 

『あんたらにビビって、さっき漏らしちゃった……』 

「嘘つけ~。お前さんは俺たちより強いじゃあねえか~。がぁはっはっはっはっ~」 

 俺は酒を酌み交わしながら出された食事や店の内装などをチェックしていた。キョロキョロと見回す。

  チルチルが食べているパンは黒くて硬そうだ。力強く噛みちぎりながら食べている。

  スープはコーンスープっぽい。具はジャガイモだけである。

  そして、皿もスプーンも木製だった。酒が注がれているのも木製のジョッキである。

  さらにはカウンターの奥でジョッキに注いでいる酒も大きな樽に入っている。ガラスの瓶は、少しばかりカウンター奥の棚に飾られるように置かれている数本だけであった。そのほとんどが黒いボトルだけだった。透明なものは無いし、透明なグラスは形が歪でくすんでいた。

  俺はふらりと立ち上がるとカウンターに向かう。そして、長身を活かしてカウンター内を覗き込む。

『なるほどね~』

  水は大きな水甕に入っているようだ。スープを煮込んでいる鍋は黒い鉄製。しかし、お玉は木製である。俎板は輪切りの丸太で、包丁は中華包丁のような形だった。勿論、竈は薪で、冷蔵庫なんてありゃしない。

  お店の女将さんが怪訝な顔で注意してきた。

「何を覗いているんだい?」 

『いや、ちょっと厨房に興味があってね……』

 「変なお客さんだね~、も~」 

 元居た席に戻った俺は、チルチルが食事を終えたのを確認すると彼女に告げる。

 『よし、チルチル。そろそろ仕事の時間だ。アサガンド商店に向かうぞ』

 「はい、シロー様!」 

 チルチルが元気良く立ち上がると、お客たちが彼女を励ます。

 「白いお嬢さん、仕事を頑張ってくるんだぞ~」

 「そいつはチンチンが立たないから優しくしてやりな~」 

「はい!」 

 意味を分かっているのか分かっていないのかは不明だが、チルチルがお客たちに礼儀を正してお辞儀する。さすがは大店の娘だ。ちゃんとした教育は受けているらしい。 

 それから俺とチルチルは二階の部屋に戻ると荷物を持って宿屋を出た。

 「シロー様。お荷物はメイドの私が待ちますから、渡してくださいません!」 

『いいよ、俺が持つから。5キロもあるんだぞ』 

「そのぐらい持てます!」 

『いいから、俺に持たせておけ。俺は力持ちだからさ』 

「むむぅ~……」 

 俺が持っている鞄には塩袋が5キロ分も入っている。量が多すぎてアイテムボックスに入り切らなかったのだ。

 アイテムボックスは便利だが、立方体で20×20×20しかスペースがない。多くの荷物を運ぶには小さすぎるのだ。

 まずは商売を円滑にするのに、アイテムボックスの大きさを広げないとならないだろう。

  アイテムボックスはスキルレベルを上げると少しづつ大きさが広がるらしい。それが最優先だろう。

  そのような訳で今回は鞄を持ち出したのだ。

  そして、俺たちはアサガンド商店に到着する。店内に進むとピノーさんが待っており奥の客間に通された。

「では、さっそく商売のお話に入りますか」

『はい、分かりました』 

 俺がテーブルに塩袋を並べると若い従業員が天秤で丁寧に重さを量りだした。その作業を待っている間に俺は、鞄から胡椒を取り出してピノーさんに見せてみる。

 『ピノーさん。相談なのですが、これなんて買ってもらえませんでしょうか?』 

「それは?」 

『胡椒です』 

「胡椒ですって!!」

  メーカー物のあらびき胡椒15グラムで120円程度の安物だ。小瓶で蓋はプラッチックだが大目に見てもらいたい。

 「見せてもらっても宜しいでしょうか!」

 ピノーが食いついた。

 『はい、どうぞ。15グラムしか入っていませんがね』 

 ピノーは小瓶を手に取ると中身を眺める。そして、訊いてきた。

「このガラスの瓶は……?」 

『私の国で作られた瓶ですが……』 

 そこに注目するか――。

「これ程までに繊細な作りの小瓶は珍しいですぞ。しかもそこに胡椒をしたためるとは……」

  やはり疑われているようだ。

『私の故郷はガラス細工が盛んな地域でしてな。あは……』 

「それで、この胡椒を如何ほどで譲ってもらえるのですか?」 

 どうやらもう買う気らしい。それなら話が早い。  俺は背後に控えているチルチルに目をやった。するとチルチルが気を利かせて耳打ちしてくる。

 「15グラムならば、1000ゼニルは硬いかと――」

『そんなにするの!』

  聞いてからびっくりした。まさか胡椒がそんなに高級品だとは想像にもしなかったからだ。塩なんかよりも稼ぎが多いではないか。 

 ピノーが悪い大人の目付きで言う。

「これを1500ゼニルで買いましょう。ただし――」 

 ただし、なんだろう?

「この小瓶も込みの値段です。さらにはもっと品物が欲しいですな。用意できますか?」

『用意は問題無い。少し時間をもらえれば用意しますとも』

「本当ですか!」

『はい、明日にはある程度の個数を用意します』

「明日に、ですと……。国まで帰らずとも在庫が在るのですか!?」

 あっ、しまった……。

 どうやらピノーは、俺が国まで歩いて帰って在庫を取ってくるのだと思っていたらしい。

 俺は声をひそめてピノーさんに言った。

『実は言いますと、私は魔道士の見習いで』

「ふむふむ……」

『ゲートマジックと言う魔法が使えましてね。その魔法で荷物の運搬が可能なのですよ』

「誠ですか!」

『見ててください』

「はい……」

『ゲートマジック』 

 すると客間の真ん中に扉が現れる。

『これが、そのゲートです』

「はて、私には何も見えませんぞ?」

『えっ……』

 チルチルもそうだったが、ピノーにも扉は見えていないらしい。

『それじゃあ、ちょっと待っててください』

 俺は扉をくぐると家に戻った。そして、こたつの上に置いてあった皿を手に取る。皿の中には煎餅が入っていた。

『これでも、もっていくか』

 俺は煎餅を持ってアサガンド商店の客間に戻る。

『ただいま~』

「消えたシロー様が再び現れた!!」

『これ、お土産です。私の国の茶菓子ですので食べてください』

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